──爛漫と咲き乱れる桜の木々の下
   二人の社長が桜を眺めつつ談笑している──

A社長:今年も,見事に咲きましたな。
B社長:いやぁ,立派なもんです。

A社長:お宅の桜の咲きっぷりは,実に華やかですなあ。
B社長:いやいや,あなたの所の優雅さに比べれば,まだまだですよ。

A社長:こう桜の花を眺めていると,実に心が洗われますね。
B社長:一種の生命の神秘という奴でしょうか…
A社長:この,血のように映える赤,とでも言いましょうか…
B社長:魂の鼓動を感じますな。


A社長:……ところで。
    お宅,去年は何人程,お埋めになられたのですかな?
B社長:実は…これくらい……(ごにょごにょ)
A社長:何と! なかなか奮発なさいましたな。
B社長:いやいや……で,お宅は?
A社長:私のところは…まあ,これくらいでしたか……(ごにょごにょ)
B社長:ふふ…やりますな,お宅も。
A社長:それほどでもありませんよ。ハハハハハ。
B社長:ハハハハハ。


A社長:こう桜の花を眺めていると,実に心が洗われますね。
B社長:魂の鼓動を感じますな。


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江原 純一    mailto:j-ehara@pop17.odn.ne.jp

※梶井基次郎「桜の樹の下には」(青空文庫)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/card427.html