himtkitk wrote:

>> アメリカ人に取っては"正義"と言うのが思考停止する一つの key word なん
>> だよな、誰のための正義かとかどうしてそれが正義か?とかはあんまり議論
>> しないで済む。

日本も戦中は「テンノーヘーカ」というマジックフレーズがありましたが、アメ
リカ人にとって、それと同じ力が「正義」にはあります。「自由世界」とか「人
権」を守るのが「正義」であると言えばそこから先、平均的なアメリカ人は言葉
を失ってしまう。

そしてその「正義」は、他のすべての価値観に優先するわけです。いったんそれ
が発動すると、世界は「善」と「悪」とに単純に二分化されて、よその国の価値
観や他国の事情なんか知ったことではなくなってしまう。「正義」そのものは
「善」でも、それをよその国や文化に対して発動することはそれほどいいことで
はないかもしれない、というところまでは思いが至らない。つまり思考停止。こ
ういう自国民の性癖を意識的に利用しているのがアメリカの政治でしょう。


>> そうですね、日本臣民は『国益』ってのにだまされたからその分カッコ無し
>> で健康な国民になったのでしょう。

その「国益」は実際は海軍省陸軍省の「省益」に過ぎなかったわけです。「国
益」だといつわって「省益」を追及した結果、太平洋戦争では日本は完全に引き
際を誤ってしまった。そういう意味では明治以来の日本の政治は「国益」という
言葉をついぞ国のために使ったことはなかったと言えるかもしれません。実際に
はむしろ「国益」という言葉がつかわれない場所で、日本の国のためになってい
た民間レベルの活動もけっこうあったわけですが、そっちの方はついぞ「国益」
と呼ばれたことがありませんでした。今だって、NGO、NPOの活動を「国
益」という言葉で表現することはまずないでしょう。


>> 一神教では無いから元々政治に正義ってのは馴染みが無かったし、、、

「正義」と訳されている 'justice' という概念は、結局絶対神を信仰する連中
のものなんですね。「テンノーヘーカ」はそういう意味では日本における人工的
な絶対神の役割を果たしていたわけです。しかしそういう人工的なものは日本に
はやっぱりなじまないから、天皇が象徴となった今のほうが日本にとっては自然
な状態なんでしょう。

萩原@グリフィス大学