Path: news.ccsf.jp!tomockey.ddo.jp!feeder.erje.net!eu.feeder.erje.net!eternal-september.org!feeder.eternal-september.org!mx04.eternal-september.org!.POSTED!not-for-mail From: chiaki@kit.ac.jp (Tsukamoto Chiaki) Newsgroups: fj.sci.math Subject: Re: ZFC公理系のみからの自然数の定義について Date: Mon, 29 Oct 2012 11:28:14 GMT Organization: Kyoto Institute of Technology Lines: 123 Message-ID: <121029202814.M0204207@ras2.kit.ac.jp> References: <120823201937.M0716151@ras1.kit.ac.jp> <121009204332.M0413709@ras2.kit.ac.jp> <121019213028.M0130809@ras2.kit.ac.jp> <121024173620.M0225737@ras1.kit.ac.jp> Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp Injection-Info: mx04.eternal-september.org; posting-host="3df8f68f87f11e5e35eb7b48cfdfb59e"; logging-data="18458"; mail-complaints-to="abuse@eternal-september.org"; posting-account="U2FsdGVkX190y4iU/K3NUekBfPctiaRF" X-Newsreader: mnews [version 1.22PL7(UNI)] 2008-02/02(Sat) Cancel-Lock: sha1:mtE++sIdJf5Alcz0cjm8LWByAKg= Xref: news.ccsf.jp fj.sci.math:3752 工繊大の塚本です. In article "Kyoko Yoshida" writes: > In article <121024173620.M0225737@ras1.kit.ac.jp> > Tsukamoto Chiaki writes: > > 「選択公理」がなくても定義は出来ますよ. > > 普通の無限集合の定義とは一致しないだけで. > > うーん、どういったものでしょうか? 言ったそのままです. 普通の「無限集合」の定義と, 「デデキント無限集合」の定義とがあり, 「デデキント無限集合」であれば「無限集合」になりますが, 「選択公理」がなければ「無限集合」が「デデキント無限集合」 になることは証明できません. > http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_infinite_set__01.jpg > で大丈夫でしょうか? 前半の単射性の証明ですが, ちゃんと教科書が読めているとは 評価できません. x \in { x } というのは Axiom of pairingの公理と { x } の定義から従うことです. x \cup { x } = y \cup { y } から分かるのは ((x \in y) \lor (x = y)) \land ((y \in x) \lor (y = x)) であり, それは ((x \in y) \land (y \in x)) \lor ((x \in y) \land (y = x)) \lor ((x = y) \land (y \in x)) \lor ((x = y) \land (y = x)) と同値ですが, x \neq y (つまり, \lnot (x = y), このとき \lnot (y = x) でもあります) のときは, (x \in y) \land (y \in x) が成立することになります. このとき, \cdots x \in y \in x \in y \in x という無限下降列の存在は自明のようではありますが, それが Axiom of regularity に反することは ちゃんと「証明」してみて下さい. > あと,Axiom of extensionalityとは簡潔に言えば集合x,y,zが在って, > x=y∧y=zならx=zと言う主張でしょうか? ((x = y) \land (y = z)) \to (x = z) というのは「等号の公理」の一部であり, Axiom of extensionality とは違います. # p. 167 参照. > 当初は「集合a,bが在って,(x∈aならx∈b)∧(x∈bならx∈a)の時,a=bとする」が > Axiom of extensionalityの意味かと思ってましたが それで正しい. > Axiom of extensionalityが登場する時点では記号"∈"が未定義状態でした。 集合論においては, 「集合」 x, y に対して x \in y が 成立するか, しないか, ということが命題として意味を持つ ということが仮定され, さらに, その記号 \in を含む命題 について「集合論の公理」が成立していることが仮定されている時, 何が言えるのか, を考えるのです. 「集合」とか \in というのは最初から最後まで定義を持たないもの と考えることもできますし, 「集合論の公理」全てが満足されて いるということが「集合」とか \in の意味を限定していると 考えれば, それら全てで定義されていると考えても良いでしょう. > それで,ZF公理系の前に記号"∈"を下記のように定義してみました。 だから ZF 公理系の「前に」記号 \in を定義するというのは 公理論的集合論の立場ではありません. > [公理ア] xを集合と呼ぶ事にする。 これって何の意味もありませんね. > [公理イ] {x}を集合と呼ぶ事にする(対集合の公理(?))。 { x } の定義もなしに { x } という文字列を使うのですか. > [公理ウ] {x,{x}}を集合と呼ぶ事にする(合併集合の公理(?))。 > [公理エ] {x,{x}}が集合ならばA:={x,{x},{x,{x}}}も集合とする。 > そして一番外側の中括弧とカンマ(カンマが無い場合も含む[公理イ])で > 区切られたx,{x},{x,{x}}は集合Aの元と呼び, > x∈A,{x}∈A},{x,{x}}∈Aと記述する。 > [公理オ] 元を全く持たない集合(これをAとする)が存在する > (∵[公理ア]ではφは中括弧を持たないので記号"∈"が使えない), > この時,A=φと表す事にし,Aは空集合であると言う。 貴方の「公理」では与えられた場合についてのみ \in が使えることになっているので, x, y を勝手な集合とする時, x \in y に意味があるかどうか すら分からないことになります. > このようにZF公理系の前に記号"∈"を定義して置かないと, > ZF公理系を述べる際に迚も不便になりそうに思いました。 貴方は何も定義出来ていませんし, そういう定義をしようと思うこと自体, 一階述語論理で形式された公理論的集合論の立場に反しています. > http://www.geocities.jp/a_k_i_k_o928346/def_of_natural_number__04.jpg > で大丈夫かと思います。 I_A (教科書での N_A) の定義はそれで良いですが, I_A が任意の recursive set (教科書での inductive set) の 部分集合であることの証明は省かれているようですね. Peano の公理の部分は「 Peano の公理」の理解が 違っているようにも思います. 因みに教科書に書いてあるのは「略証」です. ちゃんと「証明」にまで, 行間, 或いは, 語間を埋めて, 完成させて下さい. -- 塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学 Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp