工繊大の塚本です.

# 元記事は base64 で encode されていました.

In article <ec81851a-ab88-4bef-9f1e-b4b169848de5@12g2000pri.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> 因みに2つの射が等しいの定義は何なのでしょうか
> (調べてみたのですがちょっと見当たりませんでした)?

圏論の立場から言えば, それは given である,
というだけです.

> 任意のdomとcodが等しい2つの射の経路が等しい時,

図に描かれている射についてですね.

> この図式は可換であると言い,
> 等号で結べない2つの射の経路が存在する時,
> この図式は"非可換である"と言ったりするのですね。

そうです.

> 数ベクトル空間を紐解いてみたのですが,

斜体上の数ベクトル空間について書かれてありましたか.

> 特に右ベクトル空間として定義するという記述はちょっと見当たりませんでした。
> 表現行列で表記の際に右ベクトル空間して取り扱うだけことなのですね。

斜体上の場合との整合性の問題です.

> > 行列の積が線形写像にならないのです.

この「積」はタテベクトルへの左からの行列の積のことです.

> f:F^l→F^m、g:F^m→F^nが線形写像(但し,Fは斜体)で
> fとgの表現行列をA(m×l行列),B(n×m行列)とすると
> f(x)=Ax∈F^m, g(y)=By∈F^nと書け,g○f(x)=g(Ax)=B(Ax)=(BA)x.

だから, 行列の積(線形写像の合成)の話ではありません.

> この時,行列の性質からg○f(x+y)=(BA)(x+y)=BAx+BAy=g○f(x)+g○f(y)
> f(cx)=A(cx)=cAx=cf(x)となり,
> 一応はBAは線形写像になっていると思うのですが。

斜体の元を係数とする行列 A と斜体の元 c と
斜体の元を係数とするタテベクトル x については,
 A(cx) = c Ax は一般に成立しません.
 A(xc) = (Ax) c であれば, 成立します.

> この時,1×nベクトルとn×1ベクトルとの積は
> v=Σ_{i=1}^n x_i v_iを意味していると看做すのですね。

斜体上の右ベクトル空間(例えば, 斜体の元を
係数とする n 次タテベクトルの全体)の元 v_i の
横並び [v_1 v_2 … v_n] と
斜体の元を係数とする n 次タテベクトル
 [[x_1],
  [x_2],
   …
  [x_n]]
との積 v = [v_1 v_2 … v_n][[x_1],
                            [x_2],
                             …
                            [x_n]]
は v = Σ_{i=1}^n v_i x_i を意味しているのです.

斜体でなく, 可換体であれば,
右ベクトル空間も左ベクトル空間も同じことで,
スカラー倍を左からの積に書き直しても良いので,
 v = Σ_{i=1}^n x_i v_i としても構いません.

> (f(v_1),f(v_2),…f(v_m))=(w_1,w_2,…,w_n)(a_ij)
> これがf(v_j)=Σ_{i=1}^n a_ij w_i (但し,j=1,2,…,m)
> を意味していると看做すのですね。

斜体であれば, f(v_j) = Σ_{i=1}^n w_i a_{ij}  (j = 1, 2, ... , m)
とすべきところですが, 可換であれば,
 f(v_j) = Σ_{i=1}^n a_{ij} w_i と書き直しても
構いません.

> そうですね。左線形空間と同様に右線形空間もできますね。
> でもスカラーが可換体ではなく斜体なら右線形空間ではなく,
> 右加群と言うべきではないのでしょうか?

斜体について, 右線形空間という用語も使われます.

> なるほど。y=Axではなくy=xAと定義するのですね。
> Aを[v_1,v_2,…,v_m],[w_1,w_2,…,w_n]を
> それぞれK^mとK^nの基底としての表現行列とすれば

ヨコベクトルの数ベクトル空間を使うなら,
基底のベクトル v_1, v_2, ... , v_m の並びは
縦並びにします. だから,

 f([[v_1],
    [v_2],
     …
    [v_m]])
 = [[f(v_1)],
    [f(v_2)],
     …
    [f(v_m)]]
 = [[a_{1 1} w_1 + a_{1 2} w_2 + … + a_{1 n} w_n],
    [a_{2 1} w_1 + a_{2 2} w_2 + … + a_{2 n} w_n],
     …
    [a_{m 1} w_1 + a_{m 2} w_2 + … + a_{m n} w_n]]
 = [[a_{1 1}, a_{1 2}, ... , a_{1 n}],
    [a_{2 1}, a_{2 2}, ... , a_{2 n}],
     …
    [a_{m 1}, a_{m 2}, ... , a_{m n}]]
    [[w_1],
     [w_2],
      …
     [w_n]]

となります. つまり, この場合は,
 f(v_i) = Σ_{j=1}^n a_{i j} w_j  (i = 1, 2, ... , n)
とすることになります.

> ψ_A(x)=Σ_{k=1}^m c_k ψ_A (v_k) = Σ_{k=1}^m c_k Σ_{i=1}^n a_ik w_i
> =Σ_{k=1}^n c_k (w_1,w_2,…,w_n) t(a_1k,a_2k,…,a_nk)
> = t(c_1,c_2,…,c_n) ・((w_1,w_2,…,w_n)A)となりこれから
> どうしてもxAにはなりませんが。勘違いしてますでしょうか?

使う式を勘違いしています.

つまり, ヨコベクトルを数ベクトルとして使うなら,
ベクトル空間のベクトルの並びは縦並びにして,
基底の像を基底で表すのは行列を左から掛ける形になります.
そうすれば, 数ベクトルへの行列の線形な作用は,
右からの積で書くことにになります.

話は対称なのです.

> なるほど。繰り返し申してますが
> 成分がスカラーのベクトルと成分がベクトルのベクトルは
> 縦横区別して表記するのですね。

一次結合を, スカラーの並びとベクトルの並びの,
行列の積を計算するような形で表すなら,
そうすることになります.

> という事は一応は私の
> http://www.geocities.jp/merissa0/study/linear_algebra/matrix_representation_20090816.jpg
> という定義でも問題はないが一般的ではないのですね。

使う場面が違います. 混ぜてはいけません.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp