工繊大の塚本です.

In article <5b329ebe-5a34-4108-9550-20e22154767f@l16g2000pra.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> そうでした。Φは微分可能なら連続で全単射だからOとO'は位相同型になりますね。

確かに, O と O' は位相同型になりますが,
結局, それは compact の像が compact だと
いうことだけで証明されますからね.

> よって,あらゆる位相的性質は保存されるから
> EがLebesgue可測ならΦ(E)もLebesgue可測となるのですね。

 Borel 集合であるという性質は位相的性質ですが,
 Lebesgue 可測という性質は, 零集合であるという性質が
連続写像では保存されないので, 位相的性質であるとは
言えません.

> つまり,「Φが有界閉領域AでLipschitz条件を満たす⇔AとΦ(A)は位相同型」
> が成り立つのですね。

違います. m(A) = 0 のとき m(Φ(A)) = 0 が言えるのです.

> ∀x,y∈E_nでE_nは有界閉領域だからmax{|Φ(x) - Φ(y)|;x,y∈E_n}が存在するから
> どのようなMが採れますでしょうか?

  Φ(x) - Φ(y)
  = ∫_0^1 d(Φ(x + t(y - x))/dt dt
  = ∫_0^1 DΦ(x + t(y - x))・(y - x) dt

ですが, M = max_{x,y ∈ E, t ∈ [0, 1]} |DΦ(x + t(y - x))|
とすれば,

  |Φ(x) - Φ(y)|
  = |∫_0^1 DΦ(x + t(y - x))・(y - x) dt|
  ≦ ∫_0^1 |DΦ(x + t(y - x))||y - x| dt
  ≦ M |x - y|

となります.

> 今,OとO'は位相同型である事から
> Eが零集合の時にはΦ(E)も零集合とは言えないんでしょうか?

言えません.

> やはり,Lipschitz条件が必要なのでしょうか?

必要です.

> 零集合は位相的性質ではない!?

その通り, 零集合であるというのは位相的性質ではありません.
例えば,  (0, 1) から (0, 1) への位相同型で,
Cantor 集合を測度が正の集合に写すようなものが存在します.

> ところでここはどうしてEが零集合である事を議論なさっているのでしょうか?
> (b)ではEが有界閉領域の場合と非有界の場合とだけ
> 議論すれば十分だと思うのですが…。

任意の可測集合は, F_σ 集合と零集合の和集合として書ける
ことを用いるのです. 零集合の像が零集合であることを
 Exercise 8 の (b) と同様に示して, 証明が完結します.
 Exercise 8 の線形写像の場合には R^d で Lipschitz ですが,
 Φ は locally Lipschitz しか言えませんから,
有界の場合と非有界の場合に分けました.

> locally Lipschitzである事は各有界閉領域E_nが∀x,y∈E_nでmax{|Φ(x) -
> Φ(y)|;x,y∈E_n}が存在する。

それからは何も出ません.

> それからどのようなMが採ればいいのでしょうか?

上のように御議論下さい.

> 今,0<∃ε∈R;

ある ε について, ではありません.

> lim_{ε→0} |Φ(x)-Φ(z_k)-Φ'(z_k)(x-z_k)|/|ε|=0という事ですね。

 |x - z_k| < ε であることに注意します.

> 一階微分したTaylor展開はΦ(z_k-x)=Φ(z_k)+DΦ(z_k)+o(ε)
> (但し,D:=∂/∂x_1+∂/∂x_2+…+∂/∂x_dでo(ε)=1/1!DΦ(z_k-εx)(0<ε<1))
> ですよね。

何度も言うように違います. 又, 複雑に間違いましたね.

  Φ(x) - Φ(z_k)
  = ∫_0^1 DΦ(z_k + t(x - z_k))・(x - z_k) dt
  = ∫_0^1 DΦ(z_k)・(x - z_k) dt
    + ∫_0^1 (DΦ(z_k + t(x - z_k)) - DΦ(z_k))・(x - z_k) dt
  = DΦ(z_k)・(x - z_k)
    + (∫_0^1 DΦ(z_k + t(x - z_k)) - DΦ(z_k) dt)・(x - z_k)

ですから,

  |Φ(x) - Φ(z_k) - DΦ(z_k)・(x - z_k)|/|ε|
  ≦ |Φ(x) - Φ(z_k) - DΦ(z_k)・(x - z_k)|/|x - z_k|
  ≦ |∫_0^1 DΦ(z_k + t(x - z_k)) - DΦ(z_k) dt|

であり DΦ の連続性から, ε→0, つまり x→z_k のとき,
 DΦ(z_k + t (x - z_k)) → DΦ(z_k) なので,

  lim_{ε→0} |Φ(x) - Φ(z_k) - DΦ(z_k)・(x - z_k)|/|ε| = 0,

或いは,

  Φ(x) - Φ(z_k) = DΦ(z_k)・(x - z_k) + o(ε)

です. Taylor の定理としては,

  Φ(x) - Φ(z_k) = DΦ(z_k)・(x - z_k) + o(|x - z_k|)

と書いてあるのが普通でしょう.

> これからどうして
> lim_{ε→0} |Φ(x)-Φ(z_k)-Φ'(z_k)(x-z_k)|/|ε|=0が言えるのでしょうか?

上から明らかですね.

> はい。

変だと思わないのは重症です.

> どのように解釈すればΦ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)が出てくるのでしょうか?

明らかですね.

> f(a+h,b+k)=f(a,b)+Df(a,b)+1/2!D^2f(a,b)+…+1/(n-1)!D^{n-1}f(a,b)+R_n
> (但し,D:=∂/∂x+∂/∂y,R_n=1/n!D^nf(a+θh,b+θk) (0<θ<1))
> や
> f(x,y)=f(a,b)+Df(a,b)+1/2!D^2f(a,b)+…+1/(n-1)!D^{n-1}f(a,b)+R_n
> (但し,D:=(x-a)∂/∂x+(y-b)∂/∂y,R_n=1/n!D^nf(a+θ(x-a),b+θ(y-b)) (0<θ<1))
> ですよね。

間違いです.

> で今,変数はd個あるので,
> Φ(x_1+h_1,x_2+h_2,…,x_d+h_d)=Φ(x_1,x_2,…,x_d)+DΦ(x_1,x_2,…,x_d)+1/2!
> D^2Φ(x_1,x_2,…,x_d)+…+1/(n-1)!D^{n-1}Φ(x_1,x_2,…,x_d)+R_n
> (但し,D:=∂/∂x_1+∂/∂x_2+…+∂/∂x_d,
> R_n:=1/n!D^nf(x_1+θh_1,x_2+θh_2,…,x_d+θh_d) (0<θ<1))
> や
> Φ(t_1,t_2,…,t_d)=Φ(x_1,x_2,…,x_d)+DΦ(x_1,x_2,…,x_d)
> +1/2!D^2Φ(x_1,x_2, …,x_d)+…+1/(n-1)!D^{n-1}Φ(x_1,x_2,…,x_d)+R_n
>  (但し,D:=(x_1-h_1)∂/∂x_1+(x_2-h_2)∂/∂x_2+…+(x_d-h_d)∂/∂x_d,
> R_n:=1/n!D^nf(x_1+θ(x_1-h_1),x_2+θ(x_2-h_2),…,x_d+θ(x_d-h_d)) (0<θ<1))
> ですよね。

間違いです.

まあ, Taylor の定理が正しく書けないのは珍しくありませんが.

> 何処が間違ってますでしょうか?

 Φ(x) = Φ(z_k) + の先は, (x - z_k) について
一次の項, 二次の項, … とだんだん近似が上がって行く
ようになっていないとおかしいわけですが, 貴方の式の
右辺には (x - z_k) が現れていません.

> Φ^-1もC^1級で連続なのですね。

多くの教科書ではその仮定の下に証明が与えてありますが,
実は要りません.

> Φ(x)=Φ(z_k)+Φ'(z_k)(x-z_k)+o(ε)からどうやって
> m(Φ(Q_k)) = |det(Φ'(z_k))| m(Q_k) + ε_kが得られるのでしょうか?

ですから, 簡単ではありません.

> Σ_{k=1}^∞ m(Φ(Q_k)) = Σ_{k=1}^∞ |det(Φ'(z_k))| m(Q_k) + o(1) となる
> (∵Landauの記号の定義)。
> でいいでしょうか?

そう出来れば良いのですが, 難しいでしょう.
 
> するとどうやって。。

この text の著者は簡単に示せると思ったのでしょうが,
 Hint 通りには出来ないでしょう. 他の教科書で証明を
探して御覧になるのが良いと思います. まあ, ちゃんと
証明してある教科書は余りありませんが.

> そうでした。{h→0}|f(x+h)-f(x)-g(x)|/h=0なる

ここでも h が一つ抜けていますね.

  lim_{|h|→0} |f(x+h) - f(x) - g(x)h|/|h| = 0

です.

> なるほど。ΦはR^dからR^dの写像でしたから,
> その微分Φ'はR^dからR^dの線形写像で,
> Φ'の表現行列[Φ']はd×d行列という事ですね。

これは良いのですが,

> Φ'(z_k)は[Φ'](z_k)の事でしょうからd×1行列ですよね?

違います. z_k は微分をとる点を表しています.
 Φ'(z_k), 或いは, DΦ(z_k) は, 行列表示すれば,
 [(∂Φ_i/∂x_j)(z_k)] という d×d 行列です.
なるほど, そういう理解では Taylor の定理は
書けませんね.

> これは積分値が∞の場合も考慮されいるのでしょうか?

 E が有界領域である場合を考えていますから,
連続関数の積分は有限値です.

> えーと,Riemann和という事はQ_1,Q_2,…がEの分割になっていて,
> ξ_i∈Q_iに対して,

 z_i を Q_i から取っているのです.

> Σ_{i=1}^∞(Q_iの面積)・ξ_iで

  Σ_{i=1}^∞ ( Q_i の面積)・|det(Φ'(z_k))| です.

> これがΣ_k |det(Φ'(z_k))|m(Q_k)=Σ_{i=1}^∞(Q_iの面積)・ξ_i
> となっているという事でしょうか?

それは随分と混乱していますね.
 ∫_E |det(Φ'(x))| dx に対応する Riemann 和ですよ.

> ん? Riemann和は有限個の和でしたよね?

元々はそうですね. 有限で切ったものの極限になると
思えば良いでしょう.

> In article <090427173537.M0123233@cs1.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chiaki@kit.ac.jp> writes:
> > Σ_k |det(Φ'(z_k))| m(Q_k) → ∫_E |det(Φ'(x))| dx
> > となります.
> 
> すいません。何故このように言えるのでしょうか?

だって, Riemann 和の極限は存在して Riemann 積分に
なるのですから. 気持ちが悪ければ, Lebesgue 積分論で
示せば良い. 各 ε ごとに, diam Q_k < ε となる分割と
 Q_k の中心 z_k を用いて,

  f_ε(x) = Σ_{i=1}^∞ |det(Φ'(z_k))| χ_{Q_k}(x)

とし, f_ε(x) → |det(Φ'(x))| となることを示せば,
有界収束定理が使えます.

> m(Φ(F))=m(Φ(E∪F\E))=m(Φ(E)∪Φ(F\E))と変形できるのは何故なのでしょうか?

 E ⊂ F で, Φ は bijection だから. 何処に問題が
ありますか.

> 閉集合の可算共通部分も閉集合でしたね。

今, F_n は 開集合です. F = ∩_{n=1}^∞ F_n は
 G_δ 集合ですね.

> m(Φ(F_n))から∫_{F_n} |det Φ'(x)| dxとなるのは何故でしょうか?

 (b) の結果でしょ.

> lim_{n→∞} ∫_{F_n} |det Φ'(x)| dx=∫_{lim_{n→∞}F_n} |det Φ'(x)| dx
> はどうして言えますでしょうか?

ああ, そこでは F_n は減少列であるとしています.

> 非有界閉集合Eを互いに素な有界閉集合の和∪_{i=1}^∞E_iとして表される事を

 E は可測集合と言うだけです.

> 示して各E_iに対して,,
> m(Φ(E_i)) =∫_E_i |det Φ'(x)| dxで両辺を足すのでしょうか?

そうです.

> > Φ は bijection ですから O'_i = Φ(O_i) となっています.
> 
> 位相同型の定義からそのようなO_iが採れるのですね。

 bijection というだけで O_i は存在しますし,
 O'_i が Borel 集合なら, O_i = Φ^{-1}(O'_i) も Borel です.

> 次に0≦fが単関数ではない場合はf_n↑fなるdetermining sequence{f_n}が採れ,
> ∫_O' f(y)dy=lim_{n→∞}∫_O' f_n(y)dy(∵Monotone Convergence theorem)
> =lim_{n→∞}∫_O f_n(Φ(x))|detΦ'(x)|dx
> (∵f_nは単関数より,証明済みの上記を使う)
> ここからどうすれば
> =∫_O lim_{n→∞}f_n(Φ(x))|detΦ'(x)|dxが言えますでしょうか?
> f_n(Φ(x))|detΦ'(x)|が単調増加関数列である事を言わねばMCTは使えませんよね。

 f_n↑f なら, (f_n(Φ(x)) |det Φ'(x)|)↑(f(Φ(x)) |det Φ'(x)|) は
自明です.
-- 
塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp