工繊大の塚本と申します.

In article <63779d4e-c1e8-4dc9-b4ab-d6835f73d44f@r41g2000yqm.googlegroups.com>
kyokoyoshida123 <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> プリントからの命題です。
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/prop_3_2_first.jpg
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/prop_3_2_second.jpg

これは <ecde0663-8af3-4023-972e-b06aa363e505@b38g2000prf.googlegroups.com>
の続きですね.
 
> 問意は『X_1×X_2⊃Eがμ_1×μ_2可測
> (即ち,E∈σ({A×B;A∈M_1,B∈M_2})=:M
> ならばa.e.x_2∈X_2において
> E^{x_2}はμ_1可測,集合…(*)。
> 更に,a.e.x_2∈X_2においてμ_1(E^{x_2})はμ_1可測関数…(**。
> そして∫_{X_2} μ_1(E^{x_2})dμ_2=(μ_1×μ_2)(E) …(***)となる』
> 
> だと思います。

より正確に言えば,
殆ど全ての x_2 ∈ X_2 について, E^{x_2} は μ_1 可測, 従って,
殆ど全ての x_2 ∈ X_2 について, μ_1(E^{x_2}) は定義できて,
殆ど全ての x_2 ∈ X_2 で定義された関数 μ_1(E^{x_2}) は
 μ_2 可測関数である, というわけです.
 
> 下記は意訳しながら証明してみました。
> 
> [証]
> 『(i) E∈Mが((μ_1×μ_2)(E)=)μ(E)=0 …① の時,
> E⊂∃F∈A_{σδ};μ(F)=0 …② (∵命題1.6
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/prop1_6.jpg
> より,
> 0=μ(E)=μ_*(E)
> (∵E∈M) =μ_*(F).
> そこで当空間は完備化空間と仮定されてるハズ(でないと証明できない)なので
>  F∈Mでμ(F)=0)
> 任意のx_2に対E^{x_2}⊂F^{x_2}で(∵E⊂Fから明らか) ,
> F^{x_2}はa.e.x_2∈X_2でμ_1測度0を持つ
> (∵もしa.e.x_2∈X_2でμ_1(F^{x_2})>0なら今,F∈A_{σδ}なので
> 0<∫_{X_2} μ_1(F^{x_2}) dμ_2 (∵μ_1(F^{x_2})≧0より)
> =(μ_1×μ_2)(F) (∵(7))で②に反する)

この部分, 意図は分かりますが, 記述としては正しくありません.
「 a.e. x_2 ∈ X_2 で μ_1(F^{x_2}) = 0 」の否定は
「 a.e. x_2 ∈ X_2 で μ_1(F^{x_2}) > 0 」ではありませんから.
「μ_2({ x_2 | μ_1(F^{x_2}) > 0 }) > 0 」ですね.

直接的には, 任意の正数 ε について,

  0 ≦ εμ_2({ x_2 | μ_1(F^{x_2}) > ε})
    ≦ ∫_{X_2} μ_1(F^{x_2}) dμ_2 = (μ_1×μ_2)(F) = 0

より, μ_2({ x_2 | μ_1(F^{x_2}) > ε}) = 0 なので,

  0 ≦ μ_2({ x_2 | μ_1(F^{x_2}) > 0 })
     = μ_2(∪_{n=1}^∞ { x_2 | μ_1(F^{x_2}) > 1/n })
    ≦ Σ_{n=1}^∞ μ_2({ x_2 | μ_1(F^{x_2}) > ε})
     = 0

といったところです.

> ので仮定されている測度μ_2の完備化がE^{x_2}がμ_1可測である事を示している
> (∵もし完備化が仮定されてなければ
> E^{x_2}⊂F^{x_2}でμ_2(F^[x_2})=0からμ_2(E^{x_2})=0が導けない)

 μ_1(F^{x_2}) = 0 から μ_1(E^{x_2}) = 0 を導くのですね.

> 従って,Eが零集合の時はE^{x_2}はμ_1可測を導けた』
> 
> あと,Eが零集合の時の,(**)成立と(***)成立の証明についての記載がありません。

 μ_1(F^{x_2}) = 0 となるような, 殆ど全ての x_2 ∈ X_2 について,
 μ_1(E^{x_2}) = 0 なのですから, μ_1(E^{x_2}) が可測関数であることは
恒等的に零である関数が可測関数であることから明らかです.

# 測度零である集合上で関数の値を変えても可測性は変わりません.

又, 恒等的に零である関数の積分は零ですから,

  ∫_{X_2} μ_(E^{x_2}) dμ_2 = 0 = (μ_1×μ_2)(E)

となることも明らかです.

> 『(ii) もしEでのこの仮定を引き下げる(?)とに
> F\E=Zが測度0を持つようなE⊂F∈A_{σδ}なるFを見つけるために
> 命題1.6を再度使うと
> ∀E∈Mに対し,(μ(E)=)μ_*(E)=μ_*(F)なる,E⊂F∈A_{σδ}が存在する』
> ここからはEが零集合でない場合の証明についての記述だと思います。
> 
> ここで,μ_*(F)=μ_*(E)=μ_*((E\F)∪F)≦μ_*(E\F)+μ_*(F)(∵可算劣加法性)
> となる事は分かったのですが
> これからどうしてもμ_*(E\F)=0が導けません。

 E も F も(従って E\F も)可測集合なのですから,

  μ(F) = μ(E) = μ((E\F)∪F) = μ(E\F) + μ(F)

となり, μ(E\F) = 0 は明らかです.

> とりあえずμ_*(E\F)=0なるFが採れたとすると,
> 『F^{x_2}\E^{x_2}=Z^{x_2}なので(∵E⊂Fだから明らか),
> 我々はちょうど証明したケースを適用すればよい.そして
> a.e.x_2∈X_2に対して,
> E^{x_2}が可測である事が分かる
> (∵F^{x_2}∈A_{σδ}なのでF^{x_2}はμ_1可測
>  (∵命題3.1
> http://www.geocities.jp/narunarunarunaru/study/prop3_1.jpg
>  ),
> そしてZ^{x_2}もμ_1可測(∵(i))
> よってE^{x_2}=F^{x_2}\Z^{x_2} …③ もμ_1可測
> (∵σ集合体の定義))
> そしてμ_1(E^{x_2})がμ_2可測関数である事は
> μ_1(E^{x_2})=μ_1(F^{x_2})-μ_1(Z^{x_2})(∵③と可算加法性)から
> μ_1(F^{x_2})はμ_2可測関数(∵命題3.1),
> μ_1(Z^{x_2})もμ_2可測関数(∵(i)の(**))からμ_1(E^{x_2})もμ_1可測関数
> (∵命題"f,gが有限値可測関数ならばαf+βgも可測関数(α,β∈R)")』
> 
> となると思いますが
> μ_1(F^{x_2})とμ_1(Z^{x_2})とが有限値である事が言えないと
> 命題が使えずμ_1(F^{x_2})-μ_1(Z^{x_2})が可測関数である事は言えませんよね。
> どうすれば有限値であることが言えますでしょうか?

 μ_1(Z^{x_2}) は殆んど至るところで値が零の関数です.
可測関数 μ_1(F^{x_2}) が有限値であろうとなかろうと,
それから μ_1(Z^{x_2}) を引いた関数はやはり可測関数です.
 
まあ, きちんと { x_2 | μ_1(E^{x_2}) > a } という集合と
 { x_2 | μ_1(F^{x_2}) > a } という集合の差が測度零である
ことをチェックするのは良い練習問題かも知れません.

> 『最後に(ii)での(***)の証明,についてですが
> ∫_{X_2} μ_1(E^{x_2})dμ_2
> =∫_{X_2} μ_1(F^{x_2}-Z^{x_2})dμ_2
> =∫_{X_2} μ_1(F^{x_2})dμ_2-∫_{X_2} μ_1(Z^{x_2})dμ_2
> =(μ_1×μ_2)(F)-(μ_1×μ_2)(Z) (∵命題3.1と(i)での(***))
> (μ_1×μ_2)(F\Z) (∵可算加法性) =(μ_1×μ_2)(E)』

こちらでは μ = μ_1×μ_2 の加法性を使っていますね.
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塚本千秋@応用数学.基盤科学部門.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp