現在、河出書房新社版ホームズ全集を読んで(読み直して)おります。
で、この全集にはオックスフォード版の注釈が附されているのですが、
第1巻「緋色の習作」の注釈の中に、ちょっと面白い記述がありました。
(以前は見過ごしてた)
それによると、「緋色の習作」の第2部が、H.G.ウェルズ「盲人の国」
に影響を与えたことは明らかなのだそうです。

 緋:モルモン教徒の共同体で一夫一婦制の恋愛の自由を奪われる
 盲:盲人の共同体で視力を奪われる
   (実際は「緋色」みたいに強制されるものではなかったです)

まあ、この注釈の主張そのものはどうでもいいです。問題は、ここに
紹介されてた「盲人の国」のプロットが、なんかヴァーリイ「残像」に
よく似てるな、と思ったこと。

で、たまたま岩波文庫の「タイムマシン」に収録されてたのを見つけた
んで、斜め読みしてみたんですが、何というか、「残像」は明らかに
これのリメイクですねえ。個人的に結構好きだったんで、ちょっとだけ
ショックを受けてしまいました。ハヤカワ文庫の解説でもウェルズには
全く触れてませんでしたし。これでトリプルクラウンってのは、あげた
ほうもわかっててあげたんでしょうけど。

とはいえ、今でも何か「残像」が忘れ難いことには変わりありません。
一方で「盲人国」のほうが良い感じな部分もある気はして、どっちも
捨て難いです。オリジナルという意味では「盲人国」に軍配をあげたい
けれど、そもそもの元ネタは「捕まえて見せ物にしようと一つ目小僧の
国に行ったら、逆に自分が見せ物にされてしまった」とかいう小話か
何かじゃないのかという気もするし。

こんなこと、普通のSFファンにとっては常識なんでしょうねえ。
やっぱり古典は読んでおくべきですねえ。反省しました。
新作なんか読んでる暇があったら古典を読まねば。
# といいつつ、最近はSFの新作自体読んでない。
ちなみに、ちょっと検索してみたら、ウェルズあたりはかなりフリーで
読めるみたいですね。英文なんで挫折したけど。まあいつかは。
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AMANUMA