こん○○わ、PARALLAXです。

"S. GOTO" <goto.shinichiro@tx.thn.ne.jp> wrote in message
news:9er4vo$b92$1@news.thn.ne.jp...
> 後藤です

ども(^○^)/。では、続き。

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【突然妄想劇場】瀬戸内少女野球団 球魂一発 北の○○・南の××
        炸裂! 女の意地が、マリンスタジアムに花開く
               (3回表 第2打者 その1/2)
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◆11:50 3回表 十番高校の攻撃  1アウト 第2打者

四葉 「1アウトちぇきーーーーー!」

 はーいっ!

 再びグラウンドへ散ったシスターズ。存分に自分を理解できる者
と語り合えた事からか、マウンドの鈴凛の顔は実に晴れやかだった。
ふと3塁側ベンチを見返せば、此方の亜美ちゃんも満足そう。その
手には、数式と化学式と証明記号と汎用定数を表すギリシャ文字と
線図形がびっしり書き込まれたグラウンドの航空写真があった。つ
い先ほどまで掛かり、鈴凛との二人掛かりで仕上げた証明だ。今の
グラウンドはすっかり整備されて消え去っているが、これさえあれ
ばまた何時でも検討を再開できる。亜美はそれが楽しみだった。

亜美 「あと、後もう少しで時空のゲート問題が解ける。そうした
    ら鈴凛ちゃんが開発しているコンタクトゲートに私が開発
    した超次元エネルギーポンプを結びつければ、ボゾンジャ
    ンプが完成するわ。そうしたら火星の後継者をうふふふ…」

 ・・・結構危ない事を考えているみたいです(^^;)。

爺や 「プレイ!」
ほたる「・・・よろしくお願いします。」

 さてバッターボックスに視線を戻せば、そこでバットを構えるは
先ほどまでと打って変わって小柄な少女。肩口で揃えた黒髪が白磁
の肌に映え、哀しげに潤む瞳が容良く整えられた鼻梁と唇の上で光
る、絶世の美少女。その名も十萠蛍。セーラー戦士中でも最も可憐
ながら最強の存在として知られた、まさしく終局の女神に相応しい…

山田 「・・・随分と贔屓が入ってないか?」

 や、やかましいなぁ。と言うか地の文に突っ込まないでくれ。

鈴凛 「ふっふっふ。書き手の贔屓を随分と受けているだけど、
    このアタシの超技術に勝てるかな!?」

 不穏な事を叫びながら、鈴凛がモーションを起こす。相変わらず
モーションだけではどんな球が来るか全く判らない。この辺りはさ
すがの技術と言えよう。伊達に練習を積んだ訳ではないようだ。

ほたる「でも・・・打つ!」

 だが実のところ、ほたるは超剛速球については最初から捨ててい
た。あんな球、もしも自分が手を出したら腕の1〜2本は持ってい
かれてしまいそうだ(一般人と比べ4本分少ない所が流石のセーラー
戦士)。しかし他の球、糸張り用のキャッチボールレベルの球とか
超遅球なら自分でも何とかなる。そして、

ほたる「まだ、糸は張られていない。ならば第1球を打てば。」

 この打席のほたるは、実は左打席に入っていた。本来右利きの彼
女には随分と違和感のある打席だったが、事前の投球練習の時に糸
が張られているかどうかを、どうしても確かめておきたかったのだ。
それに、どうせ自分の力では長打は望めない。精々、当てて転がす
だけだ。ならば、少しでも1塁ベースに近い方が有利だ。

鈴凛 「何を考えているのかは大体判るけど、そんな事このアタシ
    が予想してなかったと思うの!?」

 鈴凛の投球モーションが終わる。来る!

 びゅっ! ずばん!

爺や 「すたーいく、わんっ!」
ほたる「・・・え!?」

 なんと先の打ち頃な棒球からは打って変わったスピードボール。
1回表の超剛速球と比べては確かに劣るが、それでも140kmは
出ていそうだった。とても中学1年生が打てる球ではない。目論見
が外れ、打席で呆然とするほたる。だが思いは3塁側ベンチも同じ。

美奈子「うそっ! あんな球も持っているの!?」
まこと「亜美ちゃん、判る?」
亜美 「そう・・・そうね。
   (さっき紹介して貰ったメカ鈴凛ちゃんじゃない事は確かね)
    ・・・あっ、そうか! バイオモーター!」
はるか「何だって? 体内にブーストパーツがあるのか彼女は?」
亜美 「いぇ、そんな大層な物じゃ。きっと糸巻きに仕込んである
    鞭毛モーターを使って、投球に力を入れているんです。」
みちる「と言うと、寧ろサイボーグと言うよりパワードスーツね。」
せつな「厄介ですね。そんな物を多用されたら絶対に打てません。」
亜美 「あ、いえ、大丈夫だと思います。さっき聞いたんですけど、
    バイオモーターは1回高出力で使うと、暫く休ませないと
    使えないらしいんです。だから次の球は、きっと・・・」
うさぎ「超剛速球?」
亜美 「あ、それは大丈夫。もう超剛速球が来る事は無いから。」
レイ 「あれ?亜美ちゃん、何でそんな事、断言できるの?」
亜美 「そ、それは・・・とにかく大丈夫よ。」
   (ふぅ、いけないいけない。メカ鈴凛ちゃんの事は秘密なん
    だから。女と女の約束、ね。)

 既に鈴凛が超技術を使って投球するのはデフォルトであり、かつ
ルール違反と見なさなくなっているらしい事はさて置いて(笑)、こ
の亜美の分析で3塁側ベンチは沸き立った。次は必ず超遅球。これ
なら間違いなくほたるにも打てる。初ヒットは目の前だ。

レイ 「ほたるちゃーん! 次は絶対に超遅球よー!」
美奈子「亜美ちゃんが言ったんだから間違いないわー!」
まこと「打てる打てる大丈夫! ガンガンいけー!」

 打席で「次に1球目みたいな球が来たらどうしよう」と考えあぐ
ねていたほたるが、このベンチからの応援で落ち着きを取り戻した。
それにマウンドでこの応援を聞いた鈴凛の表情が僅かに動揺してい
る。どうやら間違いない。第1球で糸を張ったらしい鈴凛が次に投
げるのは、間違いなく超遅球だ。

ほたる「今度こそ、打つ!」

 鈴凛が相変わらずのモーションを起こし、そして投げた。予想通
り、モンシロチョウが止まる超遅球がふわふわと、しかし一直線に
此方へ滑ってくる。さっきのお茶会で四葉ちゃんがバラしてくれた
から、このモンシロチョウが「見えるけど見えない球」の幻像と同
じ、鈴凛特性の衝撃蒸発薄膜(つまりミットに収まるだけでも消滅)
で出来ているフェイクだと判っているから、何ら躊躇う事はない。
ちなみにこれを知ったせつなさんは、いつも通りの笑顔に青筋立て
ていた。ちょっと怖かった。こんな事をつらつら考えながら、超遅
球がホームベース上に到着するのを待つ、ほたる。下手に早くスイ
ングを起こすと四葉ちゃんがスピードを調整しちゃうから、できる
だけコンパクトに早いスイングで振りぬけた方が良いとまことさん
が言っていたので、そのつもり。

ほたる「来た!えぃ!」

 きん!

うさぎ「やたっ!当たった!」

 躍り上がって喜ぶ3塁側ベンチ。が、それも束の間。

爺や 「ファール!」

 必要以上に気合が入ってしまったのか、それとも中学生女児に大
人用の金属バットは重かったのか。バットに当たったボールはコロ
コロと転がり曲がり、惜しくもベースラインを割ってしまった。わ
ずかに失望する3塁側ベンチ。だが次の瞬間、目を見開く事になる。

美奈子「なに、あれ!」
レイ 「うそっ! どうやったの?」
まこと「ボールが・・・勝手にミットに入ってく・・・そんな!」

 驚くのも無理は無い。3塁線上を跨いでコロコロと3塁側ベンチ
の方へ向かっていたボールが、突然意思を持つが如く、くぃと曲が
り、あまつさえ其処から跳ねてそのまま3塁を守る咲耶のグラブの
中にすぽっと入ったのだから。当然、咲耶は自分の方に飛んでくる
ボールへグラブを向けただけ。左手以外、微動だにしていない。

咲耶 「・・・驚かれましたか? 実は私たち、こんな事も出来る
    んです。」

 ちょっと恥ずかしげにはにかみながら、にこっと笑って3塁側ベ
ンチに語りかける咲耶。呆然としているセーラーチームへ種明かし
をする。自分の真上にボールを放る咲耶。頂点で突然方向を変え、
そのままレフト白雪のグラブへ。白雪が自分の目の前に軽くボール
を転がすと、突然跳ね上がったボールがそのまま弾丸ライナーで、
後ろにグラブだけ向けボールを見ていないショート春歌のグラブに
吸い込まれる。ぽいとピッチャー鈴凛に春歌からトスされたボール
は途中でぐいと方向を変えセカンド可憐のグラブへ。以降は次々と
「遥かに遠くを浮遊しているボールを自分に引き寄せ、自分のグラ
ブにおさめる」超人守備を、シスプリチーム側守備陣がデモする。

亜美 「・・・そうか、これも『見えない糸』の力・・・」
咲耶 「流石、亜美さん。そう、鈴凛ちゃんや四葉ちゃんだけでは
    ありません。私たちも、この『糸』が使えるんです。」

 正確には、バッテリーの二人ほど自由自在に操れる訳ではない。
しかも「糸」の射出機構を内蔵する各人のグラブに格納されるボビ
ンは必然的に極小にならざるを得ず、また射出機構の出力もそう大
きくできない事から、守備範囲は自分を中心に精々半径15mほど。
しかし極めて高初速で打ち出される「糸」は容易に空中のボールを
絡めとリ、内蔵された極薄高回転振動モーターが十分にボールを地
面に落とさないほどの速度でグラブに引き寄せる。当然キャッチ時
の衝撃は極めて大きくなるが、それはグラブの皮に含浸された衝撃
吸収ジェルが完璧に押さえ込み、かつ手首まで覆うグラブ内骨格の
パワーサポートフレームがボールの運動量を消す。わいのわいのと
咲耶を囲んで、これら「鈴凛特製スパイダーマングラブ」の説明を
受けていたセーラーチームは、最後には一言も無かった。当然なが
ら、ルール違反を指摘する者なぞ居ない。そもそも鈴凛の繰り出す
超技術によるパワーサポートはとっくに認められているのだから。
が、ひとつだけ判らなかった事を、はるかが聞いた。

はるか「しかし、どうしてこれを、こんなタイミングで使ったんだ?」
美奈子「そーよそーよ! いきなりこれを使ってアウトにした方が
    良かったんじゃない? わざわざ私たちに教えて、結局は
    あなた達、大損してるのよ?」
咲耶 「だって・・・





    だって、卑怯じゃないですか。」





レイ 「え?・・・」
可憐 「私達は、お姉さんたちの力をよく知ってます。だって有名
    なセーラー戦士の方々ですから。TV、見てました。」
まこと「あ、有難う。でも、それは私たちも覚悟の上だから。」
千影 「だが私達の能力を、あなた方は知らない。これは不公平で
    あろう。ならば知らせるべきだ。私達はそう考えた。」
みちる「でも鈴凛ちゃんの超技術も、最初は知らなかったし。」
鈴凛 「確かに最初は、いろんな事を黙ってました。あやまります、
    ごめんなさい! でも、ホントはみんな、怖かったんです。」
せつな「怖かった・・・て、そんな・・・」

 思わず言いよどむせつな。が、鈴凛の目、そして自分たちを見つ
めるシスプリ側チームの娘たちの目を見て、何も言えなかった。真
剣に自分たちを見つめる目。逸らしはしない。しかしそれだけに、
瞳の奥に浮かぶ僅かな怯えが伝わってくる。だが、それも今は・・。

鞠絵 「みなさん、凄い人です。地球を救っちゃう人たちです。そ
    んな人たちを相手に、私たち、どうやって戦ったら良いん
    だろう? 凄く悩みました、考えました。」
可憐 「そんな時、鈴凛ちゃんが『糸』を使う事を提案してくれま
    した。それで私たち、一生懸命練習したんです。」
千影 「勿論、最初から上手く操れた訳じゃない。鈴凛ちゃんの作
    ってくれたこのグラブも、最初から此処まで完成されてい
    た訳でもない。だけど私たちには、これしかなかった。」
咲耶 「最初は傷だらけになりました。鈴凛ちゃんの作ってくれた
    ユニフォームが無かったら、腕や首や脚が切り落とされて
    いたかもしれない怪我なんて、しょっちゅうでした。」
春歌 「私、ショートカットになりそうになりましたし。」
白雪 「あのね、私のこのリボン、すぐぼろぼろになりましたの。」
衛  「使っていたスケボーがあっさりみじん切りになった時は、
    結構ぞっとしたな。」

 淡々と、しかし凄絶な事実を語ってゆく妹達。呆然とそれを聞き
ながら、はるかは重ねて尋ねざるを得なかった。

はるか「ならば・・・ならば、どうしてだ? 何故、これを秘密に
    使おうとしない? 実力差のある相手を倒すためなら仲間
    さえ騙すような手段だって正当化される。ましてや敵に自
    分たちの手の内を明かさない事は初歩の初歩だ。何故?」

 畳み掛けるように尋ねるはるか。ほかのセーラー戦士たちも思い
は同様。銀河最終決戦ではるかとみちるが仲間を裏切ってまで敵に
接近した記憶は、まだ新しい。一様に押し黙り、妹たちの言葉を待
つ。そして数秒後。ぽつり、と咲耶が答えた。





咲耶 「だって、みなさん、普通のお姉さんじゃないですか。」





 はっ、と驚いたように咲耶を見つめるはるか。皆も同様。そんな
セーラー戦士たちに、妹たちは淡々と言葉を繋いでいった。

千影 「さっきのお茶会、とても楽しかった。しかし私達はそこで、
    私たちが抱いていた怖れが、如何に的外れか知った。」
鞠絵 「皆様、とても素敵な人たちです。綺麗で格好良くて優しく
    て。それでいて強い。でも全然、怖い人なんかじゃありま
    せんでした。私たち、漸くそれを知ったんです。」
可憐 「だから私たちも、自分たちの力を最初から見せていこう、
    そうみんなと決めたんです。お互いに普通の人なら、私た
    ちだけ色々秘密にしているのは不公平じゃないかって。」

 それはセーラー戦士たちにとって、あまりに衝撃的な言葉だった。
ただただ人々を守らんがために強さを追及し、遂には明らかに人と
懸け離れた力を持つに至った自分たち。当然、自分たちがどう思わ
れているかは判っている。強さの象徴。地球を守るヒーロー。憧れ。
だがそれは、明らかに「普通の人々」から一線を引かれ、遠ざけら
れた存在。それが私たちだ。だからこそ、自分たちがセーラー戦士
である事は極力友人たちから隠そうとする。または最初から友人な
ど作らない。「普通の人々」から懸け離れてしまった存在が出来る、
それが唯一の「普通の生活」を送る為の自己防衛作だった。だが…

雛子 「あのね、あのね、ヒナね、まこちゃんのクッキー、好き。」

 とことことまことの傍により、ユニフォームの裾をくいくいと引っ
張りながら、雛子がまことに言う。それを見、かつ他の妹たちも、
自分達を見ている事を、セーラー戦士たちは感じていた。

 優しく、暖かく、それでいて何ら特別でない、「普通」の視線を。

 ばっ!

可憐 「きゃ!」
咲耶 「ちょ、ちょっと、はるかさん!」

 いきなりはるかが、目の前で自分を見上げていた可憐と咲耶を抱
きしめた。驚く可憐と咲耶。が、はるかは決して腕の力を緩めよう
としなかった。と、間近に迫るはるかの唇から声が漏れる。嗚咽…?

はるか「すまない・・・お願いだ・・・暫く、このままでいさせて
    くれ・・・君たちの暖かさを、僕に感じさせてくれ・・・」

 戸惑った様に、それでもはるかの為すが侭に身を預ける可憐と咲
耶。はるかが流す涙が、自分の頬を濡らすのが判る。ふと見渡すと、

みちる「お願い。千影ちゃん、春歌ちゃん。今は、このままで…」
千影 「よ、よかろう。私は構わぬ。」
春歌 「みちるさん、いい匂い・・・」

と、はるかと同じくぽろぽろと泣きながら二人を抱きしめるみちる、

せつな「暖かい・・・手なんですね・・・」
衛  「えへへ、そう?でもガサついてるでしょ?」
せつな「いえ、素敵な手です。私は大好きです・・・」

涙を溢れさせそれを拭おうともせず、衛の手を握り締めるせつな。

 見渡せば、他のセーラー戦士たちも、皆が瞳に涙を浮かべていた。

 やっと、やっと逢えた。自分たちを遠ざけない人々に。自分たち
を遠い存在と、決して思わない人々に。いや、それは違うかもしれ
ない。自分たちこそ、人々から自分たちを遠ざけていた元凶だった
のかもしれない。力を理由に、人々から遠ざかり、仲間だけで固ま
った自分たち。自分たちの力を最も怖れていたのは、他ならぬ自分。

 しかし。手を伸ばせば、其処に友は居た。

 漸く、それを理解できたセーラー戦士たち。その想いが抱擁を続
けさせる。本当は、このままずっと居たい。だが、時間がそれを許
さなかった。今の自分たちは彼女らと戦っているのだ。それを自覚
したはるかとみちるが妹たちを開放した時、試合は漸く再開された。

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また途轍もなく長くなってしまったので、一旦切ります(^^;)。では。
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