Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その13)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その9)は、<newscache$kmlkui$f61$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その10)は、<newscache$0gaavi$und$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は、<newscache$2dwgwi$cth$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その12)は、<newscache$7dr5yi$6oe$1@news01d.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
では、改ページ後にゲームスタート!!
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その13)
●……
「殺したんだ、私のイカロスを」
「違うの、私は」
「殺したんだっ!」
私は、手にした大きな石を下ろした。
私の下には、恐怖に歪んだ大切な人の顔。
駄目…この手を振り下ろしては。
駄目…止まらない!
●桃栗町西部郊外・ツグミの家
「!」
嫌な夢を見て跳ね起きたツグミ。
視覚障害者の見る夢は、最初から全盲の場合は映像は無いと盲学校の同級生に聞きまし
たが、そうでは無いツグミの場合、映像はあったりなかったりします。
もちろん、映像が見える時は大抵、昔の出来事を夢に見ている場合が殆どで、それが遠
い記憶となった今では、夢は殆どが音だけの世界であるのですが。
「(何て夢を…)」
ツグミはまろんとイカロスの姿を一度だけその目で見たことがあります。
ツグミはその姿を決して忘れることは無く、以来、時々夢の中に一人と一匹が登場する
ことになったのですが。
「(私が、日下部さんを傷つけてしまうなんて…)」
ベッドの上で起き上がったツグミ。
やや大きめの寝台。その上では二人並んで眠ることもあったその寝台ですが、あいにく
とここ最近は泊まる者もいません。
昔はそれでも寂しさなど感じなかったのですが、ツグミは最近強く感じています。一度
温もりを知ってしまうと、もう元には戻れないのだと。
「(会いたい…)」
今日も出かけよう。そうすれば、あの人に会えるかもしれない。
そう決めると、枕を抱きしめていたツグミは着替えを始めるのでした。
●桃栗町の外れ・ノインの館
朝食兼会議の終了後、参加者の過半はそれぞれの持ち場へと帰って行きました。
残る半数──本来の朝食会の参加者──は、ノインの要請でそのまま館に留まっていま
した。
「本当に、あれで宜しかったのですか?」
出されたお茶に手を伸ばさず、ミカサはそう切り出しました。
本当であれば、あの時ですぐにでも聞きたいところでしたが、その場では我慢していた
のです。
「と言うと?」
本当はミカサが何を言いたいのか判っているのですが、ミカサ以外の者のため、ノイン
は敢えてそう聞きます。
「威力偵察の許可を出したことです。あれではこの街の人間を巻き込んで──」
話し続けようとしたミカサをノインは手で制します。
「人間達にあまり危害を加えないように、とも命令してますよね?」
「しかし──」
「素直に聞く連中ばかりであれば良いのですが…」
ぽつり、とシンが呟くと、腕組みをしたトールンが肯きます。
「皆が聞くことは無いでしょうね」
「なら尚更!」
立ち上がり、身を乗り出してミカサは叫びます。
「ミカサ様」
隣席のユキに囁かれ、我に返ったミカサ。
着席してこほんと咳払いをします。
「先程話したとおり、私は近々派遣軍を魔界へと引き揚げさせるつもりです」
「その前に総攻撃じゃな」
「それを最終的に決断するのはクイーンですがね。それはともかく、引き揚げの日が近い
と知れば、褒美目当てに手柄を立てようと先走る者が出るでしょう。これは、過去の記録
を調べれば判ります。そこで、一定の条件の下に攻撃を許可することにしました」
「つまりガス抜き…ですか?」
そう言いつつ、それ程単純な話では無いだろうとミカサは感じています。
「そう考えて頂いて構いません。ああもちろん、部下のやり過ぎについては、ここにいる
皆様で目を光らせて頂くということで。著しい軍律違反に対しては即時処刑も許可しま
す」
ノインは紅茶のカップを手にして口をつけました。
「そう言えば、一つ聞いておらなんだ」
紅茶を一気に飲み干すと、トールンが言いました。
「何でしょう?」
「ノイン殿は先程、良い報告と悪い報告が一つずつあると言った。良い報告の方をまだ聞
いておらん」
「ああ、それですか。皆さん、総攻撃のことを勝手に良い報告だと勘違いされたようで…。
実は、今朝方魔界にいるクイーンから手紙が届きました」
「クイーンからは何と?」
「『玉は我が手中にあり』手紙にはそうありました」
この場ではこれまで、共通語である魔界語が用いられていたのですが、フィンからの手
紙は、この地の言葉で記されていたため、この部分だけは日本語でノインは言いました。
それを聞くと、ミカサとユキは顔を見合わせます。
そしてトールンとシンは何の事やらという態度。
最後にオットーが「ほぅ…」という感じの表情を見せて言いました。
「魔王様は、最強の持ち駒を使われるつもりのようですな。しかし、どう使われるおつも
りなのか」
「それは私にも判りません。…が、これで案外あっさりと今回の戦いも決着がつくかもし
れませんね」
「待て待て。儂には何のことやら判らんぞ」
トールンが二人の会話に割って入ると、シンもこくこくと肯いて言います。
「玉…というと、何か大切な物のようですが。それは?」
「取りあえずは秘密ということで。『敵を欺くにはまず味方から』ですよ」
ノインの言葉にその場にいた者はもちろん納得することはありません。
しかし、文句をつける者もありませんでした。
ミカサはまたノイン様の悪い癖がと思い、シンは遠慮深いので敢えて聞こうとはせず、
そして付き合いがやや長いトールンは、こういう時のノインはどう聞いても何も教えては
くれないだろうと判っています。
「レイ?」
トールンの次位に文句をつけそうなのに、何も言わない者の名をノインは呼びました。
後で何か文句を言われては叶わないと思ったからです。
「あ…ああ」
レイは生返事を返します。見れば、何事かを考えている風でした。
「済まない。部隊運営のことで、考え事をしていてな」
「何かお悩みでも?」
「何名か、体調の優れぬ者が居るのだ。だが、心配には及ばない」
「そうでしたか。ま、貴方の部隊はもめ事は起こさないと思いますので、聞いていなくて
も問題はありませんが」
「それは良くない。何の話だ」
身を乗り出したレイに、ノインは先程の話をもう一度繰り返しました。
「そうか…了解した。ところで、今日はこれ以上、何か話し合うことはあるだろうか?」
「いえ。何か話し合わなくてはいけないことはこれで終わりです」
「ならば、私は陣に戻る。実はそろそろ、ミナが目を覚ます頃合いだ」
ノインが肯くと、レイはすっくと立ち上がり扉へと向かいます。
レイが手をかける前に扉が開き、ケーキを山盛りに載せたお盆を両手と頭に載せエリス
が現れました。
「あれ? レイ様。もうお帰りですか?」
「ああ」
「折角ケーキを持って来たのに」
「ミナが目を覚ます頃だ。今日は遠慮する」
「だったら……」
●桃栗山山麓・久ヶ原神社跡地
「……という訳だ」
「なるほろ」
口の中にケーキを入れたままでミナは言いました。
昼前に宿営地に戻って来たレイは、療兵長から別の用件と共にミナが意識を回復したこ
とを教えられました。
早速、ミナの部屋を訪れたレイ。
ミナはレイがエリスに無理矢理持たされたケーキの匂いを嗅ぎつけ、起きたばかりなの
にそれを欲しがるところをみると、考えていた以上に元気らしいと知り、レイは安堵しま
す。
「食べるか喋るか、どちらかにしたらどうだ」
「だって…」
口元にチョコレートクリームをべったりとつけながら、両手にケーキを持ったミナは反
論しようとしました。
「だっても何も!」
レイはミナの口元のクリームを指で拭き取ると、ぺろりと舐めます。
「あ〜。汚いな、もう」
「ミナのだったら汚いなんてこと、ないさ」
「ケーキならまだ沢山あるのに。あ、判った」
「判ったって、何がだ」
「レイはケーキより私の方が良いのかな?」
ケーキを置き、服に手をかけたミナを慌ててレイは止めます。
「馬鹿。傷が癒えたばかりで無理をするな」
「冗談よ。…で、今日は会議だったのよね? どんな話だったの?」
「そうだな」
今日の会議の伝達事項を話すと、明るいとは言えない照明の下でもミナの顔色が変わっ
たような気がします。
“私達にはもう、残された時間は無いということなのね”
ミナはレイの手に手を重ね、心の声で呼びかけます。
“あの場では言わなかったが、もしかすると既に先遣隊が降下しているかも”
“まずいわね。このままでは…”
“こうなったら手段は選んでいられない。早急に決着をつけないと”
“どうやって?”
“正面から叩く作戦には準備も知恵も足りない。そこでだ…”
レイが作戦を説明すると、ミナは呆れたような表情を浮かべます。
“それ、レイがやるつもりだったの?”
“仕方がないだろう。他の者には出来ないし、やらせたくもない。これでも、訓練は積ん
でいる”
“あまり成績は良くなかったんじゃなかった?”
“それは言わないでくれ…”
“じゃ、決まりね”
“決まりって何が?”
“私がやる”
“馬鹿。怪我も未だ完治していないだろう?”
“この作戦ならば問題ない。だから、ね”
ミナは、レイの作戦を元にした修正案を伝えました。
結局レイは、ミナの作戦を採用することにしました。
「ま、駄目で元々な作戦だからな…」
しかし本当は駄目元な作戦ではいけないのは判っています。
それに、怪我から回復したばかりのミナに無理もさせたくありません。
しかし今のレイには、他に適当な作戦を考えつくことも出来ず、結局はミナの作戦に肯
きました。すまない、とミナに心の中に詫びながら。
●桃栗町中心部
お昼近く、イカロスを連れ外出したツグミ。
僅かばかりの買い物と用事を済ませ、今日は何時もの噴水広場のカフェの外に並べられ
た席に腰を落ち着けました。
昨日は学園まで訪れても空振りだったので、今日は夕方になってから直接訪問してみる
つもりです。それにここはまろんも良く通る場所。待っていれば、出会う機会もありそう
です。
注文した飲み物と食べ物に形ばかり口をつけ、ツグミは周囲の物音に耳を澄ませていま
した。
*
新体操部の朝練は午前中で終了しましたが、まろんと都は部活をサボっていた罰で、部
室を掃除するように命じられていて、結局、約束通りお昼を食べに桃栗町の中心部に繰り
出したのはお昼過ぎの時刻となりました。
「どこで食べようかな?」
「適当に選べば?」
「そうはいかないよ。折角チェリーちゃん、日本まで来たのに」
「取りあえず、噴水広場の方に行きましょ」
都の言葉に従い、まろん達は噴水広場へと続く階段を登って行きました。
「待って」
先頭をずんずんと進んでいた都が突然立ち止まりました。
都の後ろを歩いていたまろんは、背中に顔を埋める形になってしまいます。
「良いレストランを思い出した。そっち行こう」
その場で身を翻した都は、まろんの両肩に手を置き、元来た方向に戻るように促しまし
た。
「そうなの?」
特に考えがある訳でも無かったまろんは、都に背中を押されるようにして、階段を下り
て行くのでした。
*
テーブルについて小一時間。ツグミの願いが通じたのか、良く知る声が噴水広場に続く
階段の方向から聞こえてきました。
思わず、駆け寄りたくなる衝動を抑え、偶々そこにいたら出会った、という風に彼女に
接するべく、ツグミは呼吸を整えました。
しかし、ツグミの努力は全くの無駄に終わったのです。
お昼をどうしようか話し合いながら、噴水広場へと向かって歩いて来たまろんと都。足
音からすると、他にも二人ほど連れがいるようでした。
しかしながら、彼女達が噴水広場に達する直前、都が突然良いレストランがあると言い
出し、四人は回れ右をしてしまいました。
「(待って…!)」
まろんを追いかけ、呼び止めたかったツグミ。
しかし、身体はおろか、口すらも動かすことが出来ませんでした。そうしている内、ま
ろん達の声は遠ざかり、やがて聞こえなくなってしまいました。
そうなってから漸く立ち上がることの出来たツグミ。
しかし、最早追いかけることも叶わず、仕方無く再び椅子に座ります。
「(どうして……?)」
私に気づいてくれなかったのだろうか。
まさか、気づいていたのに、わざわざ引き返した?
そんな筈は無い、そんな……。
「こんにちわ」
嫌な考えがツグミの頭の中を満たしそうになった時。
ツグミに声をかける女性の声がありました。
そして、ツグミはその声に覚えがあります。
「麗子さん?」
「どうしたの、涙なんか流して?」
そう言われて始めて、自分が泣いていたことにツグミは気づくのでした。
(第174話・つづく)
そう言えば1クールとか言った気がしますが気のせいです(汗)。
ただ、後3〜4回で終わる予定です。
では、また。
−−−−
携帯@ mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735