Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
またまた一週間空いてしまいました(滝汗)。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その9)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
では、改ページ後にゲームスタート!!
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その9)
●桃栗町・オルレアン
日曜日の朝ではありますが、間近に迫った全国大会に向けた新体操部の練習のため、都
は朝早く目を覚ましました。
三日前、新体操の地区大会団体戦の応援に出て以来に顧問のパッキャラマオ先生や他の
部員達と顔を合わせることになりますが、随分久しぶりに会うような気がします。
「よしっ!!」
薄紫色のパジャマ。それに袢纏を羽織った姿でベランダに出た都。
そこから見える朝日に照らされつつある街の景色を眺めつつ、都は両手で頬を軽く叩き
ました。ふと浮かびかけた、それまでの二日間の出来事を頭の中から振り払うように。
*
手早く身支度を調え、自分より早起きしていた桜の作ってくれた朝食を早食いした都。
歯を磨く時間ももどかしく、家を慌ただしく後にしました。
一旦エレベーターの方に向かってから吹き抜けの向かい側の廊下を戻り都は、まろんの
家の扉の前に立ちました。
何時ものように寝ているであろうまろん。
彼女をたたき起こすために、チャイムを連打しようとして思い止まりました。
「(チェリーちゃんを起こしちゃ、悪いわよね)」
昨日再会した、英国親善大使の娘のことを都は思い出したのでした。
都はポケットの中に手を突っ込むと、中から鍵を取り出し、鍵穴へと差し込み回します。
少女の一人暮らし。万が一のことがあってはと、まろんの母ころんの幼なじみである桜
に、まろんの家の鍵が預けられているのでした。
「(そっと…。抜き足、差し足……)」
音を立てずに都は扉を開けると、抜き足差し足で廊下を進みます。
まろんの部屋へと向かう廊下の照明は落とされ、暗闇に包まれていましたが、都は迷う
ことなく、物音を立てずに歩いて行きました。
まろんの両親の寝室を通り過ぎる時、ひょっとしたらこっちかな? とも迷った都。し
かし、常識的にはそちらはお客様、即ちチェリーが寝ているはずでした。
まろんの部屋の扉の前に立った都は、ドアノブに手をかけ…。
「!!」
「ご、ごめん!!」
扉を開いた都が見たもの。それは、パジャマを脱ぎかけのまろんの姿。
慌てて扉を閉めてから、女の子同士、何を遠慮する必要があるのかと思います。
「ごめん、都。朝練だよね? 今用意するから」
「早くしてよね」
部屋の中から、まろんの声がしました。
普段の彼女の声からすると小さな声。
きっと、チェリーを起こしたくないと思っているのでしょう。
都も思いは同じなので、小さな声で答えました。
「あ、あの。お早うございます。都さん」
そんな気を遣っていた位なので、背後からチェリーの声がしたので、都は起こしてしまっ
たかとどきりとします。
「チェリーちゃん?」
振り返った都。果たしてそこにはチェリーが立っていましたが、予想と異なり、既に寝
間着では無く着替えた姿──昨日とは別の服──でした。
「おはよう。チェリーちゃん。起こしちゃった?」
「いえ、随分早くに目を覚ましちゃって。と言うより眠れなくて。イギリスだと今頃は、
普段寝るより前の時間なんですよ」
「ええと、時差9時間だっけ? 小学生にしては夜更かしじゃない?」
「良く、母に叱られます」
「チェリーちゃん。起きてたの?」
振り向くと、桃栗学園の制服の袖を通しかけたまろんが立っていました。
「お早うございます。まろん…お姉ちゃん」
「(お姉ちゃんと呼ばせてるのね…)」
都は心の中で舌打ちしました。
「ごめんね。すぐ、朝ご飯用意するから。都、ちょっと待っててくれるかな?」
「良いわよ。どうせそうだろうと思って早めに来たんだし」
「あの、私、自分で出来ますから」
「ううん。お客様にそんなことさせられないわ」
そう言うなり、足音も軽やかにまろんはキッチンへと駆けて行きました。
*
すぐ用意すると言っただけあり、まろん(と手伝った都)の用意した朝食は、トースト
に目玉焼き、ウインナソーセージ、ミニトマトにレタスといった簡単なものでした。
「チェリーちゃん、牛乳飲む?」
「えっと、私は良いです」
「駄目よ、ちゃんと飲まないと、育つ所育たないから」
そう言うと、まろんはチェリーの胸を突きました。
「きゃっ。痛い」
「あ、ごめん」
「まろんのは育ちすぎじゃ」
「いや〜ん。都、止めて」
「冗談言ってないで、早く食べる」
「はいはい」
そう言い、まろんは席につきました。
都は無言でカップに牛乳を注ぎ、チェリーの前に置くと、自分はキッチンへと身を翻し
ました。
「あ、洗い物なら後で私が…」
「はいはい。口動かす前に食べた食べた」
「はぁい。じゃ、チェリーちゃん、食べようか」
「はい」
*
二人が大体食べ終わったところで、都はマグカップに並々といつの間にか作っていた
コーヒーを注ぎ、まろんとチェリーの前に置きました。
「あ、ありがとう」
「これ飲んで、シャキッと目を覚ます!」
「はぁい」
「それでさ、どうすんのよ?」
「何が?」
「チェリーちゃん。留守番させるの?」
「そうだねぇ。あ、そうだ。チェリーちゃんに学校に来て貰ったらどうかな」
「え?」
「ねぇチェリーちゃん。私達、これから高校の新体操部の練習なんだけど、良かったら見
学に来ない?」
都の問いかけに答える前に、まろんはチェリーに話しかけました。
「新体操…ですか? まろんお姉ちゃん達が?」
「うん。退屈かなぁ」
「そんな事無いです。でも、良いんですか?」
「良いって、良いって。先生には私達から話しておくから」
そう言うと、まろんは都に目配せします。
「?」
視線を向けられた都は、その意味は分かりません。
しかし、チェリーを一人置き去りにするつもりも無かったので、まろんに対して肯くの
でした。
*
「行ってきます」
家には誰にも残ってはいませんが、そう言い残し3人で部屋を出ると、まるで待ってい
たかのように隣室の扉が開きます。実際、待っていたのでしょうが。
「稚空…。おはよう!」
「おはよう。学校か?」
「うん、新体操部の朝練。もう、全国大会も間近だし」
「そうか…」
何か言いたそうな表情を浮かべつつ、結局稚空は何も言いません。
「じゃ、行くね」
「おぅ。早く帰れよ」
「うん」
稚空が黙っているので、まろん達はエレベーターへと向かうのでした。
●桃栗町・桃栗山山麓・ミカサ達の宿営地
結局、眠り続けるミナの側で一夜を明かしたレイ。
寝ないで看病…とは行かず、自分自身も昨日の一戦の疲労から回復していないこともあ
り、気がつくと眠り込んでいました。
「おはようございます」
「…あ?」
部隊では古参の堕天使の療兵長に挨拶され、レイは目を覚ましました。
いつの間にか、レイの身体の上には毛布がかけられてもいます。
「おはよう。いつの間にか、眠ってしまったようだな」
「この前の戦いでお疲れの身体。器が休息を求めているのでしょう」
「これは、あなたが?」
レイは毛布を持ち上げ尋ねました。
療兵長は、自分よりも年長なので、自然と言葉遣いが丁寧にもなります。
「いえ。私がここに来た時には既に。きっと、部下の方のどなたかがかけてくれたのでし
ょう。部下に慕われておいでだ」
「そうでしょうか? 訓練でしごいたので嫌われていると思ったのですが」
魔界での短くも激しい訓練の日々。僅か一月前に突然指揮官として任命され、新参者で
あるのに自分よりも年長も多い堕天使達をしごき上げた日々。きっと、あまり好かれては
いないと思っていたのです。ミナの方は自然と気配りが出来る性格故、自分とは違って好
かれているようでしたが。
「そう、自分を卑下するものでもありませんよ」
「…ところで、ミナの具合は?」
「治癒は殆ど終わっています。日が高く昇る頃には意識も戻るでしょう」
「判った」
「今日は確か会議でしたな?」
「ああ。昼前には戻ると思う」
「判りました」
立ち上がったレイは、小机の上に積み上げられた紙と書籍に目をやります。
その中の一枚をレイは手にしました。
「そうだ。後で話そうと思っていたのだが、頼みがある」
「何でしょう?」
「実はな……」
レイは療兵長の耳元で何事かを囁くと、その紙を示します。
「可能だろうか?」
「中隊長殿もご存じかとは思いますが、部隊にはありません。我々には必要の無い物なの
で」
「そうか…」
落胆した表情を浮かべるレイ。
「ですが、他の種族の部隊に知り合いがおります。その伝手で何とかなると思います。彼
らなら、持っていそうです」
「そうか。しかし、他の種族に知り合いなどいたのか」
「向こうも我らを恐れているようですが、近づいて話してみると、案外良い者も多いです。
また、我々の知らない知識を色々持っていて勉強になります。いや、中隊長殿はご存じか
とは思いますが」
「そうだな…」
ノインやミカサ、トールン。そしてアンやエリスの姿がレイの脳裏に浮かびます。
「しかしレイ様。これを手に入れて…。いや、聞きますまい」
「済まない。だが、もうこれ以上仲間が倒れていくのを見たくないのだ。そのためだと思
ってはくれまいか」
「判りました。お、そろそろ時間なのでは?」
「そうだな…」
そう呟くと、レイは後を療兵長に託して、出立の準備を整えるため、ミナの部屋を後に
します。心中に、複雑な思いを抱えながら。
●桃栗学園・体育館
まろんが歩きながら、チェリーに町のことを案内していた所為で、普段より学校に到着
するまでに時間がかかりました。
そのため、まろん達が学校に着いた時には、他の部員達は勢揃いしていたのです。そん
な中、チェリーを連れて「遅れました!」と現れたまろん達。
当然のことながら、既に練習を始めていた部員達の冷ややかな視線とパッキャラマオ先
生の叱責を浴びることを都は覚悟していたのですが…。
「…という訳で、私達は昨日はイギリスから来た親善大使の娘さん、こちらのチェリーさ
んを案内していたんです」
「成る程、そういう訳ザマスか」
「(…それで、チェリーちゃんを連れて来た訳ね)」
成る程確かに嘘はついていない。温泉施設の中で一緒に遊んで、後は家に帰って来たの
を案内していたというのかは疑問だけれど。
まろんの言い訳を聞きながら、都はそう思います。
チェリーが昨年町を両親と共に訪れた事を記憶していた部員は少なくなく、もちろんパ
ッキャラマオ先生自身もそうであったため、部活動を一日サボっていただけ(金曜日は地
区大会の翌日で部活動の方は休みだったのです)のまろん達への感心をチェリーで逸らす
ことが出来るかもしれない。そんなまろんの企みは上手く行ったようでした。
「…で、彼女にここを見学して貰おうかと思うんですけど…」
まろんがそう切り出すと、パッキャラマオ先生はじろり、とチェリーの方を睨み付け、
やや気の弱い所のあるチェリーは身を縮めます。
実際には睨んだ訳ではなく、彼女が注目すると、視力の関係でどうしてもその様な目つ
きとなるだけだったのですが。
「良いザマスよ。危ないから、こっちの方で見ているザマス」
「はい。ありがとうございます」
言われた通り、チェリーは体育館の隅に腰を下ろします。
「早く、日下部達は着替えるザマス」
「はぁい」
部室に行く前に、体育館の方に顔を出したまろん達。
パッキャラマオ先生に指摘されるまでもなく、部室へと向かおうとしました。
すると、パッキャラマオ先生も二人の後をついて来たのです。
何だか嫌な予感がした二人。
ですが、そのまま部室へと向かいます。
部室までパッキャラマオ先生はついて来て、自分でドアを閉めます。
「あ、あの…」
「そこに座るザマス」
部室の折りたたみ式のテーブルの側に並んだパイプ椅子。
その一つに先生は腰掛けて、二人に座るように指示します。
二人の嫌な予感度は上昇するばかり。
「本当は、何をしていたザマス?」
「え、あの、その…」
「一昨日のことザマス。風邪を引いてお休みというのは恐らく、嘘ザマスね?」
「そ、それは…」
「でも、チェリーちゃんと昨日一日一緒だったというのは本当です!」
まろんが叫びます。
「それは信じるザマス」
「(ほっ)」
「けど、一昨日は風邪だったと言うのは嘘ザマスね? 日下部」
「それも本当です」
「実は一昨日の夜、一人暮らしなので心配で、日下部の家に電話をかけたザマス。そした
ら、誰も出なかったザマス。実はその後に東大寺の家にも電話をかけたザマスが、こちら
もお母様は出たけれど、東大寺は留守だったザマスね。確か、お母様は……」
「う……」
まさかそんなことをしていたとは。まろんの顔色が変わります。
「ごめんなさい!!」
まろんが言う前に、都が大声で言いました。
「あたしがまろんを無理矢理誘ったんです。委員長に遊園地の招待券を貰って…。捨てる
のも勿体なかったし、部活も休みだから良いなって」
「水無月ギャラクシーワールド、ザマスね」
まろんと都は肯きます。
「そんなことじゃないかと思っていたザマス。あの日、水無月にも連絡を取ったザマス。
水無月の行き先は聞いていたので、そこに怪盗ジャンヌが現れたと聞いて無事を確認した
ザマス。水無月は無事だったザマスが、他の生徒はいなかったかと聞いたところ、水無月
は何故か一瞬躊躇ったザマス。それで、ピーンと来たザマス。ああ、東大寺のお母様には、
伝言無用と言ったので、東大寺はこのことを知らなかったザマスね? ともあれ、二人と
も無事で良かったザマス」
本当は遊園地ではもの凄く怖い思いをしたのですが、もちろんまろん達はそのことを口
にはしません。
「それで? 昨日の行き先は?」
「温泉スパ桃栗…です」
その名前を口にした時、パッキャラマオ先生は口をあんぐりと開けました。
「本当にお前達仲良しコンビは……事件のあった所ばかり…」
そう言うと、こつんこつんと二人の頭を拳骨で順番に叩きます。
「ごめんなさい」
「別に遊びに出かけるのがいけないとは言わないザマス。その時期では無いとは思うザマ
スが、お前達は勉強でも部活動でも実績を残しているザマス。私が言いたいのは、嘘はい
けないということザマス。この頃町では怪盗ジャンヌ絡みで物騒な出来事が多いザマス。
だから、何かあった時、生徒達の居場所が判らないと心配ザマス。特に日下部は一人暮ら
し。何かあったらと思うと、私は心配で心配で……」
まろん達に取っては意外な展開。パッキャラマオ先生はハンカチを取り出し涙を拭きつ
つそう言ったのです。
「ごめんなさい」
「とにかく、嘘をついてのズル休みはいけないザマス。判ったザマスか?」
「はぁい」
二人は頭を垂れて、謝ります。
「まぁ、若い内は色々と秘密も多いザマスが……」
パッキャラマオ先生がそんなことを呟いていましたが、それは聞かなかったことにして。
「それは兎も角として、お前達には罰を与えるザマス。これから一週間、部室の掃除当番
は東大寺と日下部がやるザマス。これは日下部が昨日、無断欠席した罰も兼ねているザマ
ス」
「え〜」
「え〜じゃないザマス。返事は?」
「は〜い」
「もっとシャキッと!!」
「はい!」
「宜しい。では、早く着替えて練習に復帰!」
「はい!」
二人の返事を聞き、パッキャラマオ先生は満足げに肯きます。
そして身を翻しかけたのですが。
「そうだ。日下部」
「はい」
「昨日、ツグミさんには会ったザマスか?」
「え? ツグミさん? どうして…」
「昨日、わざわざ学園まで、日下部を訪ねて来たザマス。お前達はどうせサボりだろうか
ら、家に行くように言ったザマスが…。会ってないザマスか?」
まろんはこくこくと肯きます。
「電話とかで連絡は?」
まろんは今度は首を振ります。
「東大寺、お前は?」
「いえ、何も……」
都は何故かバツの悪そうな表情を浮かべます。
「(ごめんまろん。本当は母さんに聞いていたけど、伝え忘れていたの)」
都はそう、心の中で呟きまろんに手を合わせていたのです。
本当は、知らず知らず、まろんに事実を伝えるのを回避していたのだと気付かないまま。
そしてまろんはそんな都の心中も知らず、どうしてツグミさんが学園にまで訪ねてきた
のだろうかと考えているのでした。
(つづく)
こちらは今、少女何角形なんだろう……。
では、また。
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