Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
異動していたりで1ヶ月も間が(汗)。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その12)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その9)は、<newscache$kmlkui$f61$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その10)は、<newscache$0gaavi$und$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は、<newscache$2dwgwi$cth$1@news01f.so-net.ne.jp>から
それぞれどうぞ。
では、改ページ後にゲームスタート!!
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その12)
●桃栗町の外れ ノインの館
空に日が高く昇った頃。ノインの館に一人、また一人と来客がありました。
来客が訪れる度、この館のメイドと皆に認識されているエリス、そして龍族の姫君であ
るアン、そしてノインの養子と見なされている全ことシルクの誰かが出迎えます。
来客の半分は、毎朝のように行われている朝食会に参加している顔なじみ。
しかし残りの半分は、屋敷の中には殆ど足を踏み入れたことも無い者でした。
呼び鈴が鳴らされたことにより、新たな客の来訪を知ったエリス。
きっと、元人間の誰かか、人間界に隠れ住んでいた龍族の誰か。
魔界では殆ど使われない呼び鈴を使われたことから、来訪者をそのように予測し、出迎
えたエリス。その予想は、確かに間違いではありませんでした。
人間界風に扉を開けられるのを待っていたらしい来客。
エリスは内側から扉を開け──そしてすぐに閉めました。
「何で閉めちゃうの? 開けてくれよ〜」
続いて、外側からドンドンと扉を叩く音。
渋々、と言った様子でエリスは扉を開けました。
「何であんたがここにいる」
「ノイン様に招待されたんだ」
玄関先に立っていた龍族の青年──シド──は、手に白い封筒をひらひらとさせました。
その封筒に押された封印が、確かにノインが使っているものだと確認したエリスは、渋々、
シドを案内するのでした。
*
「皆さん大体お揃いのようですので、そろそろ始めましょうか」
広すぎるので普段はあまり使われることの無い大食堂。その長テーブルに居並ぶ面々を
見渡し、ノインはそう宣言しました。
ノインの合図でエリス達が、食事を運んで来ました。
今日は、様々な種族の者が居並ぶことを考慮して、魔界の宮廷料理が遅い朝食のメニ
ューとして選ばれました。
もっとも、全ての材料が人間界では入手出来ないために、エリスにしてみると風味がや
や異なってしまっているのですが、そのことに文句をつけるものはありません。
「始める前に、一つ聞きたいことがある」
開口一番、トールンが声を上げました。
「何か?」
「何故、こ奴がこの場におる」
部屋の隅で、エリスはうんうんと肯きます。
トールンの視線は、末席の方に座っているシドの方に向けられていました。
「はい。私が独断で呼びました。ご報告が遅れ、申し訳ありません」
しれっとノインは言ってのけました。
「何のために?」
「そうですね…。この話は、後でするつもりだったのですが。ミカサ」
右横に座るミカサにノインは肯きました。
ちなみに左横には本来の魔界の者の隊長、という立場にあるシンがちょこんと座り、小
さくなっています。
「はい。本日付で、派遣軍に新たな人事を発令します。まず、ユキ」
「はいっ?!」
自分が呼ばれるとは思っていなかったユキが驚いて立ち上がります。
「ユキを私の従兵から昇進させ、私の副官補にします」
「えええっ!?」
「この前の戦いで神の御子を止めた功績…という名目ですが、元々貴方程の力の持ち主が、
一兵卒の立場にある方が不自然だったのです。良い機会でしょう」
ユキにノインが補足します。
「立場的には私の副官のミナの下ということになる。が、ミナはレイと共に前線に出るこ
とが多いからね。ミナが私の側にいない時には、代わりに私の副官の仕事もすることにな
る。頼んだよ」
「は、はいっ」
背筋を伸ばして、ユキは言いました。言ってから、レイの様子を伺ったユキ。
ミカサの言葉が、まるでミナが自分の職責を果たしていない、という風に聞こえかねな
かったからです。
しかし、レイはあまり気にしている風に見えませんでした。
むしろ、何か考え事をしているようにも見えます。
「そしてトールン殿」
「儂か?」
「はい。貴方をこの地にいる龍族全体の指揮官に任命します。これまで、魔界から来た龍
族と、人間界に居残っていた龍族の指揮官が別々でしたので。経験から考えると、トール
ン殿の方が指揮官として適切かと」
「承知した。全力を尽くす」
腕組みをしてトールンは肯きました。
「続いてシド」
「はい」
「貴方を龍族の若衆頭に任命します。トールン殿を補佐するように」
「はいっ」
「なんだと!?」
シドの返事とトールンの怒鳴り声が同時にしました。
「何でこ奴が…」
「調べたところ、龍族の若者の間で人望がある様子でしたので」
「それはこ奴が遊び…」
「それと、アウストラリスでの戦い、特に救出作戦における功績も考慮されています。ち
なみに、報告書はトールン殿、貴方から提出されたものですか?」
「ぐう…」
「へぇ…」
言葉に詰まったトールン。
そしてシドは意外そうな表情でトールンのことを見るのでした。
「そして最後にエリス」
「あたし?」
「貴方には、現在の職に加え、旅団本部付併任を命じます」
本職は魔王宮の侍女、なのですがそれを知らぬ者が多いことを考慮し、それは抜かして
ノインは伝えます。
「何それ」
「あなたはこの部隊の指揮命令系統から浮いた存在ですのでね。魔王様にお願いして、役
職につけて貰いました。本部付ですので、役割はこれまでと同じで結構です。ただし」
「?」
「私の言う事は聞いて下さいね。何しろ、この部隊の中では私は二番目の地位ですので」
「やなこった」
「魔王様直々の辞令ですよ?」
「う…」
エリスは横を向いてしまうのでした。
*
「さて、そろそろ本題に入りましょうか」
人事の話が済んだ後、暫くは食事の時間となりました。
大体皆が食べ終わった頃、ノインは本題に入ります。
「良い報告と悪い報告が一つずつあります。どちらからしましょうか?」
参加者を見渡し、ノインは言いました。
「悪い方から聞こう」
この場で一番偉そうにしているトールンが言います。
良い報告から聞きたいと考えていた者も居たのですが、敢えて争おうとする者はいませ
ん。
「はい。実は、天界の軍勢に動きがあります」
ノインが言うと、室内の空気が一変しました。
「動き…とはどの程度なのじゃ」
「大軍を天界が動かす兆候があります」
がたん、と音がして、その場にいた者は物音の方を注視しました。
「あ…」
視線の集中を感じたレイが、恥ずかしそうに腰を下ろします。
「今朝、天界周辺で最大一万を超える軍勢が集結、訓練を繰り返しているとの情報が魔王
様より届きました。天界の出身者としてレイ、この状況をどう見ますか?」
コホン、咳払いして動揺を鎮め、レイは話し始めました。
「そ、そうだな。その数だと常備軍では間に合わず、間違いなく動員をかけている。わざ
わざ見せつけるように訓練をしているのは、普段は別の仕事をしている者達を動員してい
るので、再訓練を行わなければ軍勢として動くことがそもそも出来ないという裏事情があ
る」
「つまりは、天界の連中の動きは見せかけで、すぐには動けない、ということだな。昔な
らば、天使共はこの程度の軍勢は即座に動かして見せたものだが…」
横から口を挟んだのはトールン。
トールンの推測にレイも小さく肯きます。もっともそれは、トールンの言葉に気圧され
たようにも見えましたが。
「豪州大戦の影響、かな」
人間達の隊長でもあるオットーが口を挟むと、レイは今度は大きく肯きました。
「そうだ。数年前のアウストラリス、人間達の言うオーストラリアにおける戦いでは、今
の天界の軍勢の中核を担うはずだった天使が多く失われた。数だけは後から天使を新たに
増やすことで補いがついたが、知識は詰め込めても経験から培われる勘だけはどうしよう
も無い。そのお陰で、今の天界は兵士の数はいてもそれを現場で動かす指揮官が足りない
という状況にある」
そこまで喋った時、レイの耳に僅かに音が届きます。
横目で見ると、それはミカサが手元にあった書類を握り、くしゃくしゃにしていたので
す。何か気に入らないことでも言ったのだろうか。そう思いつつもレイは話を続けます。
「とは言え、天使達はいざという時は全て兵士として戦うよう普段から育てられている。
従って、指揮官などおらずとも、それだけの数がこの地に侵攻すれば、間違いなく激戦と
なるだろう」
レイはそこで話を止め、どうするのかというつもりで、ノインの方を見ます。
「さて、対応方針についてですが、まずは現状分析です。天使達の方は済みましたので、
ユキ、現在の我が方の戦力について教えて下さい」
ノインが言い、ミカサが肯くとユキはすっくと立ち上がりました。
「現在、私達の人間界派遣部隊──第二親衛旅団「フィン・フィッシュ」──は二個大隊
の兵力とその他部隊から構成されています。第一大隊、ミカサ様、いえ、ミカサ大隊長殿
率いる第一飛行猟兵大隊は、人間、天使、各々2中隊から構成される合計八百九十名と龍
族百三十七名から構成されています。人間の土地勘と魔法力、天使の機動力と障壁による
防御力、龍族の打撃力と耐久力を組み合わせた魔界でも強力な部隊の一つと言えます。─
─もちろん、練度の低さという点では不安がありますが。次に、シン隊長殿率いる第二大
隊ですが、魔界の志願した諸種族からなる混成部隊です。数は作戦途中で増減を繰り返し、
地下に潜んだまま呼びかけにも応じない部隊もありで推計ですが、実体と知性を持つ者だ
けに限定しても一千五百は下りません。その他、実体を保たない悪魔や、使い魔達を含め、
旅団全体では三千〜五千の兵力が現在あると推測されます」
書類も何も見ずに戦力を諳んじたユキの報告は細かい数字を除けば皆の共通認識でもあ
ったので、この点については質問は誰からもありませんでした。
「では、この戦力が正面からぶつかった場合の戦況の予想についてですが…。もし龍族と
天使が1対1で戦った場合、どちらが勝つと思いますか? トールン殿」
「我ら龍族が勝つに決まっておる! 天使共の障壁はやっかいじゃが、障壁毎叩きつぶし
てしまえば良い」
勇ましく言い放ったトールンに、周囲の龍族の者ですらあきれ顔です。
しかし、ノインはにこやかに微笑んでいて、次の質問をします。
「では仮に、十対十の戦いであるとすればどうでしょう?」
「うむ…。過去の戦いの結果からすると五分五分じゃな。奴ら、組んで戦うのに慣れてお
る。それに引き替え我らは……」
「では、百対百では?」
「正直なところ、群れた天使共は強い。負ける気はせんが、容易に勝てる相手では無い」
呆れていたトールンの周囲の龍族達は顔を見合わせ、今度は肯き合いました。
一方で正面に座っていたレイ達堕天使は、何となく恥ずかしそうな表情を浮かべていま
す。
「トールン殿の言う通り、敵は容易に勝てる相手ではありません。ましてや、我々は神の
御子、即ち日下部まろんをも相手にしなければなりません。更には、人間達な街の無差別
破壊、ましてや無闇に人命を奪うことまで魔王様に禁止されている以上、勝ち目は更に薄
いものとなるでしょう」
「人を無闇に傷つけることを禁止されているのは、天界も同じだ」
レイが口を挟むと、ノインも肯きます。
しかしミカサは何処か遠い所に視線があるように見えて、レイには仕方がありませんで
した。
「ちょっと、良いでしょうか?」
「何じゃ、シド」
「天界軍の侵攻が迫る今、僕たちがここにいる目的って何でしょうか?」
「無論、神の御子を護衛の天使毎殲滅することに決まっておろうが」
そう言い放ったトールンのことを無視してシドは続けます。
「2つ、ノイン様にお聞きしたいのですが。一つは、魔王様、そしてノイン様は、神の御
子をどうされるつもりなのか。倒すのか、捕らえるのか、それとも説得なり脅迫なりで言
う事を聞いて貰うのか。そしてもう一つは、僕たちがこの地に留まる必要性。地上に取り
残された僕たちが部隊に合流したことで、後は魔界に帰れば作戦目的の半分は達成されま
すよね? 後は神の御子を何とかするだけ。それだけであれば、この地に長期間、大軍を
置く意味は無いのではと思うのですが。そろそろ、人間達も僕たちの存在に気づく頃だと
思うし」
何を偉そうに…という視線でトールンはシドのことを睨みます。もっとも、自分で報告
書に彼の功績を書いたように、シドの実力を認めてはいるのです。ただ、彼の前でそれを
口にすることだけは絶対に出来ないのですが。
そしてそう自分が感じる理由についても、トールンとしては認めたくないところです。
「私が何故、神の御子の魂を追いかけ続けているかについて、改めて語る必要は無いと思
います。これまで私は、神の御子の魂をすぐにでも肉体から切り離し手中に収めること─
─それがジャンヌ・ダルク様の魂を神からお救いする唯一の方法だと信じて来ました。実
のところ、今でもそう思っています」
そう言い、ノインは周囲を見回します。
「しかし、我々は日下部まろんという人格に、作戦のためとはいえ少々関わりすぎたよう
です。そのせいで、彼女の肉体を傷つけることに躊躇する者が出て来ました。それを最も
強く主張するお方はここにはおられませんが」
本当は、自分が一番傷つけたくないのではないかとミカサは思いますが、勿論表情には
現しません。
「つまり、クイーンは神の御子のことを倒そうとは考えていないと?」
ノインが言わなかった名前をシドは口にします。
「その答は是でもあり否でもあります。クイーンは出来れば日下部まろんという存在を傷
つけたくはない。しかし、必要な時にその存在を消去することに躊躇いは覚えないはずで
す」
言いながら、心の中でノインは呟きます。
私自身もフィンの思惑は判らないんですけどねと。
「クイーンの思惑などどうでも良い。とにかく、我らはどのような心構えで居れば良いの
だ」
トールンが怒ったような声を上げました。
もっともトールンは怒ったような声が常態なので、周辺の者も首をすくめただけですが。
「話が横道に逸れました。神の御子に対する我々の対応ですが、クイーンの思惑はこの場
にいる者の胸に止め、基本的に倒す方向で総攻撃の準備を整えるよう、配下の部隊に命じ
て下さい。部隊を何時でも動かせる状態にしておくと同時に、人間の姿となれる者を使っ
て、神の御子の住処の周囲に攻勢の発起点となるべき場所を幾つか選定して下さい。また、
威力偵察として神の御子とその周辺の天界の者に対して、限定的に攻撃をかけることも許
可します。ただし、人間達にあまり危害を与えないように。可能ならば神の御子は生け捕
りにして欲しいところですが、不可能であれば魂の回収だけで構いません。無論、威力偵
察のために無駄に戦力は損なわないように」
「ノイン様!」
ノインが口にした作戦が、予想外に積極的であったことに驚いたミカサは思わず声を上
げてしまいます。
「……と同時に、この場にいる方々にお願いします。総攻撃の後、直ちに魔界へ撤収出来
るよう、手はずを予め定めておいて下さい」
「撤収じゃと?」
「ほぅ…。一撃離脱、ということですか」
声を上げたのはトールン。
そして、何もかも承知という風で肯いたのはオットーでした。
「はい。レイの話からすると、我々には今少しの時間が残されているようです。残された
僅かな時間を利用し我々は総力を挙げて神の御子を倒します。そして天界の者共がこの地
を訪れる頃までには我々は故郷へ──魔界へと帰還するのです」
そう語りかけるノインを見つつ、ミカサは思います。
この人は一体どこまで本気なのだろうかと。
(第174話・つづく)
そう言えば、良い話の方を未だ書いてなかった…orz
では、また。
−−−−
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Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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