Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その9)です。
日曜日に投稿しようとしたら、ニュースサーバが止まってました…^^;;;;
# だからって投稿が木曜日の言い訳にはならない。
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その9)
●濱坂市・水無月ギャラクシーワールド・レストラン『銀河亭』
遊園地にツグミがいたことは意外ではあっても、驚きではありませんでした。
もちろん、彼女の連れが全であったことも、彼女の家に彼がしばしば出入りを
していたことを知るまろんにとって、驚きではありません。
──どうして自分を誘ってくれなかったのかという嫉妬は抱きましたが。
しかし、山茶花弥白がツグミと一緒にいたことだけは、まろんの理解の範囲外
でした。
驚きの後、まろんは思い出しました。
少し前、弥白がツグミの家に運び込まれ、ツグミが介抱したということを。
「(山茶花さん、お礼のつもりで招待したのかしら?)」
そう予想して、少し落ち着いたまろん。
しかし、都はそうではありませんでした。
言葉こそ発しないものの、弥白をじっと睨み付けていたのです。
弥白もそれに気がついていて、都の方を睨み付けているようです。
店内はざわついた雰囲気とやや過剰気味の音量で音楽が流れていて、ツグミは
二人の間に流れている空気が読めないらしく、まろんの方に向けて微笑を向けて
います。
「(どうしよう? この前のこと、都には話す事は出来ないし…)」
人外の者が関わった事件に弥白が巻き込まれたこと。
そんなことをどうやって都に説明したら良いのでしょう。
「あら。どなたかと思えば桃栗学園の果物コンビ」
まろんが躊躇している間に、弥白が口火を切りました。
「果物…?」
「どういう意味よ」
「二人とも、相変わらず仲が宜しいこと。今日はデートかしら?」
都の質問には答えず、弥白は言いました。
「まぁ、デートなの?」
弥白の言葉を聞いて、ツグミもそう言いました。
「う…」
「そうよ。文句ある?」
ツグミを前にして、そうで無くても女の子同士で、そう言い切るのは躊躇う程
度の良識はまろんにもあります。
しかし、都はそんなことにはお構いなしで断言すると、隣席のまろんに寄り添
うようにしました。
「ありませんわ。それでしたら、お二人の邪魔をしてはいけませんわね」
「そうね」
弥白が言うと、ツグミまで肯いて頭を下げると、先程「予約席」となっていた
席に、ツグミ達は歩いて行きました。
「あ…」
誤解なの。そう口走りそうになったまろん。
とは言え、隣にいる都のことを思うと、その言葉をそっと胸の奥にしまい込ま
ざるを得ないのでした。
●濱坂市・湾岸地区
背中に視線を感じ、アクセスは振り返りました。
すると、この地には珍しい浅黒い肌をした男性が一人と少女が二人いて、その
うちの一人の少女が自分の方をじっと見つめていたのです。
「(俺が見えるのか?)」
稚空を例に挙げるまでも無く、その様な人間は極々希にいます。
このままでは厄介なことになる。
そう思い、隠れる場所の算段を始めたアクセス。
しかし、その少女はもう一人の少女の手を取り、アクセスとは反対の方向へ向
けて歩いて行ってしまいました。
「(気のせいか?)」
元々物事を深く気にしない性格のアクセス。
彼女達のことをそれ以上考えるのは止めにしました。
それよりも問題は目の前の結界です。
それ程厳重に張られたものでは無いらしく、ちょっと力を入れれば破ることが
出来そうな気がしました。
とは言え、その際に少々音を立ててしまうのは確かです。
以前、フィンと空中戦を演じた時に大きな音を街中に鳴り響かせてしまい、そ
のことがテレビで報じられたことがあります。
その時は後で稚空に怒られてしまいました。
「(…どうする?)」
少し考えたアクセスは、彼にしては珍しいことに慎重に力を制御して、光球を
両の掌の中に形成していきました。
そしてそっと、それを押し出すと結界に小さな穴を穿ちました。
「今だ!」
身体を小さくしていたアクセスは、小さな穴から結界の外へと躍り出ました。
アクセスが通り過ぎた直後、結界は何事も無かったかのように元に戻りました。
「自己修復型かよ…。危ねぇ」
そう呟きつつ、下界を見下ろすと下の人間達は何も気づかずに歩き回っている
ように見えました。
取りあえずは気づかれなかったようで、アクセスは一安心。
次に、結界がどの様に張られていたのかが気になりました。
すると、ビルの屋上に札のようなものが張られていましたから、ヒトの魔術で
張られた結界なのでしょう。
「(ノインが近くに居るのか?)」
そう思い、辺りを見回しましたがそれらしき人影はありません。
暫く周囲を監察した後、そのまま遊園地へとアクセスは向かうことにしました。
建物に取り憑いていた悪魔は気になりましたが、少なくとも現時点では手の出
しようがありません。中には人間が大勢居るのでしょうから。
だから、しっかりとアクセスはそのビルの形と場所を記憶しておきました。
そうしてから、再び遊園地へと向かおうとした時です。
アクセスの近くを何かが高速で通り過ぎていきました。
「何!?」
アクセスが急速に展開した障壁に、今度は何かが命中して下に落ちて行きまし
た。
悪魔達が使う「気の矢」とは違う、実体のある物です。
アクセスが再びそれが飛んで来た方向を見ると、ビルの屋上に人影が見えまし
た。
その人影を注視したアクセス。
「あいつ…」
アクセスが見たその人影。
それは、ヒトに大変良く似ていましたが、ヒトではありませんでした。
そして、彼のことをアクセスは知っていたのです。
「隊長じゃねぇか!」
魔族達の隊長。あまり強そうでは無かったけど、稚空に大怪我をさせた魔族。
そうと気づくと、アクセスは転進を止め、その男の方にまっしぐらに飛んで行
きました。
●水無月ギャラクシーワールド・レストラン『銀河亭』
席について、料理を注文した後でツグミは耳を澄ませました。
普段はそんなことはせずとも「聞こえてきてしまう」ツグミですが、店内は音
楽と人の話し声で満ちており、自分の後ろ斜めに座っているであろうまろんと都
の様子は伺うことが出来ませんでした。
席について判ったのですが、そこは自分達4人とイカロスに加えて、まろんと
都が座っても大丈夫なだけの空間がありました。
「日下部さんのことが気になりまして?」
弥白に声をかけられ、ツグミの胸が高鳴りました。
「え?」
「あの二人は、昔から本当に仲良し。それ以上でも以下でもありませんわ」
山茶花さんは、私に何を伝えようとしているのだろうか。
そもそも、私と日下部さんの間の何を知っていると言うのだろう。
「日下部さんは、別に…」
「好き、なんでしょう?」
ツグミは、頬が紅潮するのを感じました。
まろんを相手に言うのであれば、平気で口に出せる言葉なのに、第三者の前だ
とこんなにも恥ずかしいのは何故だろうか。
「ツグミお姉さんもでぃすか? 僕もまろんお姉さんのこと、大好きでぃす」
弥白達の会話を聞いていたのでしょう。
全が口を挟んできました。
もちろん、「好き」の意味は今弥白が口にしたそれとは異なるのでしょうが。
この場にいるもう一人、大門佳奈子もこの会話を聞いている筈ですが、何も口
にはしませんでした。
「そうね、私も日下部さんのことが大好きよ。もちろん、全君のこともね」
「わぁい」
*
席につき、全員が注文を終えた後ツグミは心ここにあらず、という雰囲気でし
た。
その原因はもちろん、先程出会ったまろん達にあるのでしょう。
まろんとツグミの関係について、以前調べたことのある弥白。
その記憶は何故かかなり断片的なものとなってしまっていますが、二人の関係
については確信していたのです。
まろんと都の関係を今まで知らなかったのだろうか?
そんなことを弥白は思います。
まろんと都のことは新体操の世界を通じて中学時代から知っていた弥白。
二人の関係がどんなに深いものであるか知っています。
そしてその関係の限界も。
だから、弥白は本当のことを教えました。
それをどうツグミが受け取ったのか、その後の彼女の反応からは判りませんで
した。
「そうね、私も日下部さんのことが大好きよ。もちろん、全君のこともね」
その時、ツグミの普段は閉じられている瞳は確かに弥白を見ていました。
碧き瞳。予想していなかったその色に、弥白は少々驚きました。
「あの、弥白様」
「なぁに?」
「もしも宜しければ、ツグミさんのお友達のお二方も、ここに来て貰ったら如何
でしょうか?」
横を向くと、佳奈子が眼鏡の奥から弥白をじっと見つめていました。
「そうね。日下部さん達もお誘いしましょうか」
同じことを考えていた弥白は、佳奈子がそう言ったのを幸いとばかり、ツグミ
にそう提案しました。
「いいえ。止めておきましょう」
「え?」
「日下部さんと東大寺さんの邪魔をしたら悪いわ」
そう言うと、ツグミはテーブルの前に置かれたコップを手探りで手にして水を
一口。
そしてその後は、二度とまろん達の方を気にするそぶりは見せないのでした。
そんなツグミの様子を見て、弥白はツグミにすら聞こえないような小さい声で
呟きます。
「やせ我慢は、身体に良くありませんわよ」
*
弥白とツグミ、そして全と一緒に入ったレストラン。
そこで出会ったのは、佳奈子の大切な人の宿敵。
と言うことは、もちろん佳奈子の宿敵でもあります。
もちろん佳奈子は、そのことを表情に露わにすることはありませんでしたし、
実際に行動に出る度胸もありません。
「二人とも、相変わらず仲が宜しいこと。今日はデートかしら?」
「え?」
弥白の言葉に、佳奈子は小さく声を上げました。
「そうよ。文句ある?」
何か気配を感じて、佳奈子は後ろを見やりました。
見上げると、ツグミの表情が微妙に変化していました。
その変化はすぐに消えてしまいましたが。
その後で席に座った後も、ツグミがまろん達の方を気にしているのが判りまし
た。
「(そうか、この人は私と“同じ”なんだ)」
このことに、弥白様は気づいているのだろうか?
鋭い方だから、ある程度は気づいているのだろう。
だけど、完全には気づいてはいないかも。
何故なら。
「(弥白様は、私とは“違う”から……)」
*
ツグミ達が去った後で、まろんがちらちらとツグミ達の座った方角を見ている
のは気づいていました。
しかし、そのことをわざわざ指摘するような無粋な真似は都はしませんでした。
その代わり、食事が終わったら有無を言わせずまろんを連れ出して、絶叫マシ
ンフルコースをご馳走するつもりです。
そうすれば、まろんはツグミのことなど忘れて、自分のことだけを見てくれる。
その確信が都にはありました。
「ねぇ、都」
「何?」
「折角だから昼ご飯位、ツグミさん達と一緒に食べようよ」
ぷちん。
都の頭の中で、何かが音を立てました。
そしてカウンターに荒々しく手をつき、都は立ち上がりました。
「まろんは…まろんは、何も判ってない」
叫ばなかったのは、都の中に残っていた最後の理性。
そう言うと、都は席を離れました。
「都!」
「トイレよ。……一緒に食べたければ、勝手にすれば。私は嫌だけど」
それだけ言うと、都は化粧室と書かれた方へと歩いて行きました。
*
「そろそろ、昼食にしようか」
「はい!」
ヒトの食事など、本来は悪魔族にはあまり価値の無いものなのですが、ユキに
取ってはミカサと一緒であるというただ一点において、何よりも価値があるもの
でした。
ガイドブックによれば、ショッピングモールには和洋中のレストランとファー
ストフードの店が軒を連ねている……筈でした。
「あれ? ここもお休みですね」
「明日開店と書いてあるね」
「ああ、あの『銀河亭』と書かれているレストランは営業しているみたいだ」
「じゃあ、そこにしましょう!」
今日は招待客だけで本格的なオープンは明日から。
と言うことで、ショッピングモールの店の半分位は、シャッターを下ろしたま
までした。
仕方無く、空いている店に入ったところが店内は大混雑。
席はカウンター席しか空いていないとのことで、仕方無く店員の案内に従って
いると。
「!」
「!」
自分達が案内された席の隣には、彼女達の宿敵がこちらに背を向け座っていま
した。
「“ミカサ様! 神の御子です!”」
「“ああ、判っている”」
「“どうしましょう?”」
幾らなんでもすぐ隣は拙い。
そう思い、周り右しようとしたユキ。
しかし、その肩に手が置かれました。
「ミカサ様?」
振り向くと、ミカサは大胆にも御子──まろん──の隣に腰を落ち着けてしま
っていました。
「君も座ると良い」
「……はい」
そう言われては、ユキも従わざるを得ません。
ミカサの隣に腰を下ろしました。
「あれ?」
今の短い会話が聞こえたのでしょうか。
まろんがこちらに顔を向けていました。
「ど、どうも」
「ユキさん?」
「はい」
「こんなところで会えるなんて、凄い偶然! えっと…」
ミカサの方を見て、まろんは口籠もりました。
「ひょっとして…日下部まろんさん?」
「私のこと、知ってるんですか?」
「ええ。ユキから話を聞いてます」
「あの…」
「申し遅れました。私は西郷三笠と言います」
「ユキさんとは、あの…」
興味津々という表情で、まろんが二人を見ているのがユキには判りました。
実はユキもミカサがどう答えるのか、内心ドキドキしながら見守っていたので
すが。
「ユキとは、職場の同僚でして」
「同僚…そうなんですか」
「(はぁ…同僚かぁ)」
もっとも、まろんの顔を見ると興味津々という表情は変化していませんでした
から、彼女は良いように誤解してくれたのでしょう。
そしてユキにとっては誤解の方こそ真実であって欲しかったのですが。
「あ…そう言えば」
「?」
「ごめんなさい!」
「え?」
突然、両手を合わせて謝ったまろんにユキは戸惑いました。
「その…今日、一緒に行こうって言ったような…」
その言葉を聞いて、ユキも思い出しました。
今朝も一度思い出していたのですが、午前中は幸せに浸っていたので忘れてい
たのです。
「ああ、そのことでしたら、気にしないで下さい。実は、あの後で私達もチケッ
トを入手したのですが、まろんさんにそのことをお伝えするのを忘れてて。だか
らその件はおあいこってことにしませんか?」
と、ユキが提案するとまろんの表情に安堵の色が浮かびます。
「そう言えば、アンさんは? 今日は一緒じゃ無いんだ」
「今日は、叔父さんと買い物に出ています」
「ふ〜ん。それじゃあ…」
そう言いかけたまま、ユキとミカサのことを見比べたまろん。
ユキとしては誤解してくれてもちっとも構わないので、平然とした表情で受け
流します。
「ところで、まろんさんはどなたとご一緒なんですか?」
本当は知っていましたが、カウンターに並べられたコップを見ながら敢えてユ
キはそう尋ねました。
「都と一緒なの…。はぁ」
急にまろんの表情が暗くなったのが判りました。
「どうかしたんですか?」
「あ…。ううん、何でも無い」
そう言ってはいるものの、何かあったのは明らか。
そのようにユキには感じられて仕方ありませんでした。
「ちょっと失礼」
気になると、確かめられずにはいられない性格だったユキ。
すぐさま立ち上がると、化粧室と書かれた場所に向かいました。
ヒトがこの様な場所で席を外すとしたら、ここか電話をかけているかの二択で
あろうと考えたからです。
化粧室の扉を開けると、丁度中にある個室の扉をから目的の人物が姿を現した
ところでした。
辺りの様子を探り、この部屋の中に他にヒトは居ないのを確認してユキは言い
ました。
「こんにちわ。東大寺都さん」
「あ、あんた…。ユキさん?」
「はい」
そう言うと、ユキは笑顔を見せました。
そして、都の顔をじっと見つめます。
「(ちょっと辛いけど…今の体力なら、行ける)」
ユキは都の瞳をじっと見つめました。
その目を逸らそうとした都。
しかし、何故か身体が動きませんでした。
何とか目を逸らさなくちゃ。
何故かそうしなければいけない気がして、都は必死に目を逸らそうとしました。
しかし、その努力はなかなか報われることがありませんでした。
背中を伝って汗が流れ落ちる感触。
どれ程時間が経ったのか、漸く視線が外れました。
と同時に、都の意識は闇の中へと落ちて行くのでした。
(つづく)
では、また。
# ちなみに、1999年の12月18日です…^^;;;;
# 妄想本編は今、2000年3月3日ですが。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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