Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
# ……と書きつつ、実質「カードキャプターさくら」妄想であったりします。
# 今回は2回目。
^L
それぞれの使命を帯びて、別々の場所で働いて来たさくらとまろん。
同じ日本で同じ時期に動いている二人がもしも出会ったら…という設定で、「神風・愛
の劇場」シリーズの中でも何度か二人が共演する話がありました。前回から続く番外編は、
「神風・愛の劇場」本編にさくらちゃん達が登場した、神風・愛の劇場 第172話にお
いて、さくらちゃん達がどのように動いていたのかを描くものです。
5回連続予定のその2です。
その1は、<newscache$w4dgoi$tc5$1@news01e.so-net.ne.jp>からどうぞ。
以前のさくら&ジャンヌ妄想のことをお忘れの方は、以下からどうぞ。
★CCさくらVS神風怪盗ジャンヌ 〜激突! 視聴率争奪戦(嘘)〜
<8fmjm7$fhl$1@news01bd.so-net.ne.jp>からのスレッド
http://ccsf.homeunix.org/ccs/ccsF-list5.html#Jeanne
(CCSF)
★カードキャプターさくらF 第10話「さくらとまろんと冬の海」
<9leqm1$gt3$1@news01cd.so-net.ne.jp>からのスレッド
http://ccsf.homeunix.org/ccs/ccsF-list12.html#F-10
(CCSF)
既に第172話のことを忘れてしまった方は、以下から参照して頂けると幸い。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その10)は<newscache$sfa7uh$klk$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は<newscache$9pfavh$4kg$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その12)は<newscache$t8l1xh$f2h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は<newscache$d6j5yh$q4j$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その14)は<newscache$sjiiyh$nsj$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その15)は<newscache$vkkgzh$hqd$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その16)は <newscache$mxh60i$oqb$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その17)は<newscache$03mh0i$c1i$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その18)は<newscache$n8rc1i$7l8$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その19)は<newscache$bmku2i$ss9$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その20)は<newscache$utnv3i$3mc$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その21)は<newscache$xvgx3i$zjj$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その22)は<newscache$8c5l4i$42a$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その23)は<newscache$mu7l4i$4d5$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その24)は<newscache$9kdl4i$164$1@news01e.so-net.ne.jp>からそれぞれどうぞ
それでは、「レリーズ!(封印解除)」(←実質、さくら妄想なので)
★神風・愛の劇場 番外編『さくらとまろんと遊園地』(その2)
●水無月ギャラクシーワールド:ショッピングモール
遊園地の中に入っても、知世は走るのを止めませんでした。
背後から、「待って下さーい」との声が微かに聞こえましたが、無視します。
「ねぇ知世ちゃん。何で走るの?」
「急がないと、乗り物に乗れませんわ」
そう言い、人混みをかき分けるように駆けて行く知世達。
しかし、さくらが急に「待って」と叫び、知世は足を止めました。
「さくらちゃん?」
「あれ、雪兎さん」
「まぁ…」
アイスクリーム屋の前で、アイスを舐めている少年は、紛れもなく雪兎でした。
「雪兎さーん」
さくらが声をかけると少年もこちらを見て笑顔を見せ手を振りました。
「さくらちゃん。それに知世ちゃん」
「雪兎さんもこの遊園地に来てたんですか?」
雪兎の前に立ち、さくらは尋ねました。
「うん。桃矢とバイトでね」
「あ、売り物食べて大丈夫なんですか?」
「大丈夫。これはお金を払って買ったから」
「おぃ、雪。店番戻れよ」
店の中から、桃矢がひょっこり顔を出しました。
毎度のことながら、どうして行く先々でお兄ちゃんは、バイトをしているんだろうとさ
くらは思います。
もう少し考えれば真実に辿り着きそうですが、これまでと同様、それ以上さくらは深く
考えることはありませんでした。
「お兄ちゃん」
「何だ怪獣。来てたのか」
「怪獣言うな〜!」
「ああっ。兄妹喧嘩をなさるさくらちゃんも猛烈可愛いですわ〜」
「そんな所までビデオに撮らないで〜」
ビデオでさくらと桃矢の様子を撮影していた知世。
ちらりと視線を後ろに走らせると、先程の御曹司が追いついて来ていました。
「それじゃ、私達はこれで失礼しますわ」
「おう」
「楽しんで来てね」
「知世ちゃん、そんなに強く引っ張らないで〜」
●水無月ギャラクシーワールド:ジェットコースター『ユピテル』付近
暫く走り続けて、漸く御曹司の追跡をかわした知世。
走るのを止め、取りあえず何らかのアトラクションに乗ろうと思います。
「さくらちゃん。まずは何に乗りましょうか?」
「そうだね。あれにしようよ!」
さくらはコースが白く塗られたジェットコースターを指さします。
「ジェットコースター『ユピテル』やな」
さくらの肩に乗るケロちゃんがリーフレットを手にして言いました。
「木製だから『ユピテル』なんて、安直ですわね!」
「何で?」
「ユピテルはラテン語で『木星』の意味ですわ。さくらちゃん」
「ラテン語を知っているなんて、知世ちゃん凄い」
お父さんの書庫の掃除を手伝った時に教えて貰ったので、ラテン語という言語があるこ
と位はさくらは知っているのでした。
「それに、それだけではありませんのよ」
「何?」
「木製のジェットコースターは、あれより以前にも幾つかあったんですけど、初
めてのジェットコースターは何て名前だったでしょう」
「ひょっとして、『ジュピター』?」
再放送で観たアニメ番組に登場する、雷を放つ美少女戦士の姿を思い浮かべながらさく
らは答えました。
「正解! 誰が考えたか知らないけど、名前の付け方が安直過ぎますわ。この急
流下りのメルクリウスも……あら?」
知世のことを二人の少女が見ていました。
その内の一人、栗色の髪をした少女と目が合います。
一瞬の後、それが会おう会おうと思っていた日下部まろんだということに知世は気付き
ます。
「わぁっ。まさかこんな所で会えるなんて!」
さくらも気付いたのでしょう。
知世が声をかける前に、さくらが声を上げました。
「本当ですわ、さくらちゃん」
「え? え?」
まろんは、戸惑っている様子でした。
自分達のことを忘れてしまわれたのだろうか。
ちょっと、残念な思いを知世は抱きます。
「えっと、確か……日下部まろんさん、でしたわよね」
「凄い知世ちゃん。名前、覚えていたんだ」
「一度出会った人の名前は忘れませんわ」
まろんの方を見ると、かなり驚いた表情でした。
一年振りに、こんな場所で出会うなんて凄い偶然ですから、無理もありません。
「あの時は、本当にありがとうございました」
知世、一瞬遅れてさくらは頭を下げました。
「まろん、誰よ。この娘たち」
まろんの隣にいたショートカットの女の子が、不審そうな目を知世達に向けました。
「そ、それは……」
知世は、事情を説明しようとしました。
しかし、その女の子の目つきの鋭さに、意味も無く口ごもってしまいます。
「それは?」
「去年の……」
「あれ? 日下部さんと東大寺さん!?」
振り返ると、水無月グループの御曹司が立っていました。
どうやら、御曹司はまろんの知り合いだったようです。
「ちっ」
思わず、知世は舌打ちしてしまいました。
「それでは、まろんさん。急ぎますのでこれで失礼します」
「あ、はい。どうも…」
まろんの返事を皆まで聞かず、知世はさくらの手を引いて走り出すのでした。
●水無月ギャラクシーワールド:中心部
「中々楽しいことになっているね」
行き交う人々を眺めながら、エリオルは呟きました。
この地の中には、人外の者の気配に満ちていました。
悪魔、龍族、天使…。そして人間だった者の魔の気配。
クロウの記憶を持つエリオルは、クロウであれば感じることが出来たように、それらの
気配の正体を即座に見破っていました。
「どうするの?」
奈久留が声をかけました。
「これから何が起こるのか、もう少し様子を見てみよう。だが、彼女達が気付くのは面白
くないな」
「何をするつもりですか?」
エリオルの肩に乗るスピネルが尋ねます。
「何時もやっていることだよ。魔物の気配を消す。クロウの気配を消す時のように完全に
は行かないだろうが、薄めることは出来る」
「では、もう少し目立たない場所へ」
スピネルが言い、歩き出したエリオル。
だが、その足が止まります。
「ほう。懐かしい男がいるな」
彼の視線の先には、一人の青年が立ちこちらを見ていました。
しかし、直ぐに視線をそらすと、歩き去ってしまうのでした。
●水無月ギャラクシーワールド:ジェットコースター『ユピテル』
「こちらですわ。さくらちゃん」
「これが『ユピテル』なんだ。凄〜い」
「ネーミングセンスはありませんけど、コースレイアウトはまぁまぁですわね」
まろん達に捕まっているのでしょう。
御曹司はそれ以上追いかけては来ず、どうやら無事にジェットコースター『ユピテル』
の前に辿り着いた知世達。
その入り口の前に、知世にとっての妖精が現れました。
「あら、あなた大道寺知世さん?」
知世が挨拶する前にその妖精──山茶花弥白──が声をかけました。
「え…。あ! こんにちわ。弥白さん」
弥白に見とれていた知世は、慌てて挨拶をしました。
「お母様はお元気?」
「はい。母も来たかったそうですけど、仕事の都合で」
「こちらの方はお友達?」
「はい。同級生の木之本桜さんですわ」
「こっ、こんにちわ」
「こんにちわ」
緊張した表情で、さくらは弥白に挨拶しました。
弥白は黒い服を着て盲導犬を連れた金髪の女性と一緒で、その横にいる眼鏡の女性、そ
して少年と一緒に、視覚障害者であろう金髪の女性を案内しているのだと思われました。
「(私も弥白お姉様を少しは見習って、ボランティアでもしようかしら)」
そんな殊勝なことを知世は考えたりもしたのですが。
「待って下さ〜い」
「あら」
遠くの方から、さくらとの時間をぶちこわす疫病神の声が微かに響きました。
「水無月さん」
「え? 大和さん?」
黒服の女性も声を聞きつけたのでしょう。
疫病神の名を呟きました。
「しつこいですわね」
聞かれないよう小さな声で、知世は呟きます。
「弥白さん。それでは、私たちは先を急ぎますので。ごきげんよう」
「あ…。ごきげんよう」
「行きますわよ。さくらちゃん」
「あ、ちょっと知世ちゃん」
呆気にとられている様子の弥白を置き去りに、知世はさくらの手を引いて再び逃げ出そ
うとしました。
「ねぇ、大道寺知世さんって言ったわよね」
「はい。あの…」
視覚障害者とは思えない程の素早さで、黒服の少女が知世の前に立ちはだかったのは、
その時です。
ぶつかりそうになり、慌てて知世は急停止します。
その所為で、さくらが背中にぶつかってしまい、声を上げました。
「あの男性から逃げ回っているのかしら」
「それは…」
「あの方、私の知り合いなの。決して悪い人じゃないわ。出来れば、どうして逃げ回って
いるのか教えてくれないかしら」
笑顔を見せつつも、逃げを許さない口調で黒服の女性は言いました。
「そうなの? 知世さん」
「……」
黒服の女性の話を聞いて、弥白も知世に問いかけて来て、どう答えたものか知世は迷い
ます。
「山茶花さーん。瀬川さーん」
そうしている内、水無月グループの御曹司──水無月大和だと今、名前が判明しました
──が追いついて来ました。
「はぁはぁはぁ。やっと追いつきました」
「私はさくらちゃんと三…二人でここに遊びに来たんですの。案内は不要ですわ」
漸くといった感じで追いついた大和に対し、突き放すように言いました。
「そんなぁ」
困惑した様子で大和が言いました。
大和には大和の事情があるのは何となく判りますが、こちらにもこちらの事情があるの
です。
「駄目よ、知世さん。大和さん、困ってるじゃない」
すると弥白が、諭すように知世に言いました。
「気持ちは判るけど、貴方は我が儘ばかり言える立場じゃないの。判るでしょ」
「判りましたわ」
それまでの態度を百八十度変え、知世は答えました。
何と言っても弥白は知世の憧れのお姉様。
彼女の言う事は絶対なのでした。
「水無月大和さん」
「僕の名前、知ってたんですか」
今、知ったばかりですけど。
心の中で知世は呟きます。
「水無月さんもお仕事ですから、ついて来ても良いですけど…」
「ありがとうございます」
「案内は不要ですから」
がんがんと心の中で五寸釘を知世は打ち付けていました。
「判ってます」
「それでは参りましょう。さくらちゃん」
「うん」
「それでは、弥白さん。ごきげんよう」
「ごきげんよう。大和さんもね」
「あ、はい。失礼します」
大和を置き去りにするのは諦めたものの、知世は彼が居ないが如く振る舞うことに決め
ました。
一方さくらはと言うと、大和の方が気になるらしくちらちらと振り返って見ています。
「あの…」
「何ですの」
「そのビデオカメラなんですけど」
「私のですけれど?」
「良かったら、僕が撮りましょうか? お友達とツーショットで」
大和はにこやかな笑顔を見せて言いました。
「駄目ですわ」
「え? でも、それだと大道寺さんは映らないんじゃ…」
「だって、さくらちゃんの美しい姿を本当に美しく撮影するのを他の方にお任せ出来ませ
んもの!」
ツーショットには心惹かれましたが、さくらちゃんの撮影を素人にさせる訳にも行きま
せん。
「と、知世ちゃん……」
「は、はぁ…」
「さ、さくらちゃん。先に行って下さいな。私は後から撮影しますから」
「う、うん…」
さくらを先に歩かせて、撮影を続ける知世なのでした。
●水無月ギャラクシーワールド:ジェットコースター『マルス』
当初木製コースター『ユピテル』に乗ろうとしていた知世達。
しかし弥白達の前からあのような形で立ち去った以上戻る訳にも行かず、結局向かった
先は遊園地の中心部にあり、そそり立つロケット(レプリカですが)が一際目立つジェッ
トコースター『マルス』でした。
「さくら、さくら」
その途中、ケロちゃんがさくらに小声で話しかけました。
「何? ケロちゃん」
大和に気付かれぬよう、さくらも小声で答えます。
「何か妙な気配がするんや」
「クロウさんの気配?」
「違う。何か、それとは別の…そう、あれは“フン”の気配や」
「糞?」
さくらは顔をしかめます。
「あれは、波(WAVE)をカードに戻した時の話や。フンという名の妖怪と会ったという話は
したやろ?」
さくらは小さく肯きます。
「あの妖怪と似たような気配がさっきから微かにする」
「どうしよう」
「別に人に害を与えるような妖怪や無かったから、そんなに気にせんでもええと思うけど
な」
「なら、良いけど…」
そう言いつつも、さくらはちょっと不安そうな表情を見せました。
「それに、別の匂いもする」
「何?」
「何か蜜柑のような香りが…」
「蜜柑?」
さくらはくんくんと鼻を鳴らします。
すると本当に蜜柑のような香りがして来ました。
「さくらちゃん」
「ほぇ?」
「ここは場所が悪いようですわ。戻りましょう」
「え!?」
さくらが見るところ、『マルス』の入り口に客が並んでいる気配はありません。
しかしその一方で、コースターが動いている気配もありません。
だから多分、コースターが故障か何かしているのだろう。
そう思い、さくらと知世、そして大和は元来た道を引き返すのでした。
●水無月ギャラクシーワールド・大観覧車
「(もう、時間がありませんわ…。仕方ありませんわね)」
腕時計をちらりと眺めた知世。
いつの間にか時間は、午後五時半を回っていました。
小狼との約束を考えると、さくらとの二人きり(ケロちゃんと大和もいますが)の時間
はあと僅かしかありません。
「さくらちゃん。観覧車に乗りませんか?」
「ほぇぇ。大きい観覧車だねぇ」
「日本最大の観覧車なんですよ」
後ろから大和が解説しますが、知世は聞き流します。
「水無月さん」
「はい」
知世からの呼びかけに、期待を込めた表情で大和は応えます。
「観覧車にさくらちゃんと二人で乗って来ますから、水無月さんは下で待っていて下さい
ますか?」
「はい! え…?」
元気良く答え、直後にみるみる暗い表情となった大和。
その表情を見て、知世はくすりと笑います。
「さ、参りましょう。さくらちゃん」
「うん…」
さくらは、大和の方をちらちらと見ながらも、それでも知世と一緒に来るのでした。
●大観覧車:ゴンドラの中
大和を地上に残し、ゆっくりと大観覧車のゴンドラは上昇して行きました。
太陽は既に傾き、遊園地を夕陽の赤い光が照らしています。
6人は乗れるはずのゴンドラ(この大観覧車ではキャビンと称していますが)には、今
はさくらと知世の二人きり。
「ぷはー。あー疲れた」
……二人ではありませんでした。
ケロちゃんの声がして、知世の表情が微妙に変化します。
一方、さくらの表情は明るくなりました。
「ケロちゃん。お疲れ様」
「まぁ慣れとるさかい、どうってことないけどな」
仕方無く知世は、ビデオカメラで、さくらとケロちゃんの話している様子を撮影を始め
ました。
「知世ちゃん」
「何ですの?」
「あの、水無月さんって人も一所に乗って貰えば良かったのに」
さくらちゃんと二人っきりになりたいと言う私の想いが判らないのかしら。
そう、心の中で呟いた知世。しかし、何時ものようにその想いを口に出すことはありま
せん。
そう、あの時と同じように。
●一昨年:友枝小学校校庭
「でも、知世ちゃんのお母さんって、うちのお母さんのこと大好きだったんだね」
その日は友枝小学校の運動会。
園美と藤隆が話している様子を見て、さくらは言いました。
「わたしもさくらちゃんが大好きですわ」
「わたしも」
無邪気に、さくらも答えます。
「そろそろ閉会式らしいぞ」
「はーい」
呼びかけられ、走り出したさくら。
その背中に向け、知世はこう心の中で呟きます。
「きっと、さくらちゃんとは違う意味の『好き』ですけど」
●現在:大観覧車
「(いつかはさくらちゃんにも、私の気持ちを気付いて頂けるのかしら)」
本当に小さく、知世はため息をつきました。
「(でも、あんな男にも優しいのがさくらちゃんの良いところ何ですけど)」
そう思い、頬を緩めた知世。ですが急に思い出したことがありました。
「忘れていましたわ!」
「どうしたの?」
「何や!?」
鞄から知世は携帯電話を取り出します。
「やっぱり…」
着信履歴を見ると、ボディーガードから電話が来ていました。
さくらとのデートを邪魔されないよう、マナーモードにしていたのですが、その後で携
帯を確認するのを忘れていたのです。
自分の迂闊さを呪った知世。しかし、小狼との約束の時間までに着替えさせれば良いか
と思い直します。
「さくらちゃんのお洋服、遊園地の正門前に届いているそうですわ」
留守番電話に入れられていた伝言を聞き、知世はそう答えました。
「そ、そう…」
さくらは複雑な笑顔を見せました。
「ですから、この次は正門に参りましょう」
時間も丁度良い感じですしね。
心の中で知世は呟きます。
「正門言うたら随分遠いな」
「ケロちゃんが歩く訳じゃ無いじゃない」
「でも、遊ぶ時間が減るやないか」
「私は制服でも良いんだけど」
「そういう訳には参りませんわ! 今日は大切なさくらちゃんのデートの日。こんな大切
な日には、それなりの服を着なければ」
「デート? 私が? 誰と?」
不思議そうな顔で、さくらは知世を見つめます。
ここで小狼との約束を話せば、さくらは赤面しつつも納得してくれるでしょう。
しかし、それではサプライズ効果が薄れてしまいます。
「(こうなったら…)」
どさくさ紛れに告白ですわ。
お母様にも出来なかった告白を。
「もちろん…」
その続きの台詞を知世は言う事が出来ませんでした。
「何や!?」
「知世ちゃん、あれ!」
さくらが指さした先を知世は見ました。
「怪盗ジャンヌ!?」
「うん! ジャンヌだよ!!」
ジャンヌは一端着地し、再び跳躍すると今度は大観覧車の目の前を通り過ぎて行き、海
面に突き出たジェットコースター『ネプトゥヌス』の方へと飛んで行きました。
「今度は何を盗まれたのでしょうか」
「ジャンヌはただの泥棒じゃないよ。知世ちゃん」
さくらが知世の言葉を訂正しました。
「それは判っていますけど…」
「おい、さくら!!」
ケロちゃんが警告の声を発します。
「ああっ!!」
「大変!」
ジャンヌが跳んでいった先のジェットコースターで光が一閃、コースが崩落して行きま
した。続いて、乗客達のものであろう悲鳴が響き、コースターが海に落下し…かけて途中
で止まりました。
しかしそれは遠くから見ても奇跡としか思えない止まり方で、何時海に落ちるとも判り
ません。
「助けなくちゃ」
「カードキャプターさくら、出動やな!」
「うん!」
さくらが返事をした時、ゴンドラの灯りが消えました。
「停電!?」
「そうみたいですわ」
大観覧車だけで無く、遊園地内部の灯りも消えていました。
「急がなくちゃ!」
さくらは鍵を取り出し、星の魔法陣の元で呪文を唱えます。
「星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ! 封印解除(レリーズ)!!」
「(ああっ。バトルコスチュームを着て頂くことが出来ないのが残念ですわ〜)」
封印を解除するさくらの姿をカメラに納めつつ、知世は心の中で残念がっていました。
「剣(SWORD)!!」
杖を縦に掲げ、さくらはカードを上に投げました。
杖は剣に変化し、さくらはその剣で鍵がかけられている扉を強引に開けました。
開いた扉からはそれ程強くはありませんが風が吹き込み、知世の髪をなびかせます。
「翔(FLY)!!」
今度はさくらの背中から翼が生えました。
それはゴンドラの中を埋め尽くす程の大きさで、知世の視界が白一色に染まります。
「さくらちゃん!」
「危ないから知世ちゃんは、ここで待ってて!!」
危険でもさくらちゃんの側にいたい。
そう言いたい知世ですが、知世の視界が再び開けた時、さくらは本来の姿を取り戻した
ケルベロスと共に急速に暗闇へと染まりつつある空へと飛び出しているのでした。
(続く)
番外編なのに、異様に長くなっているのは気にせずに。
では、また。
−−−−
携帯@ mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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