佐々木@横浜市在住です。

<8k18m6$h2o$3@meshsv230.tk.mesh.ad.jp>の記事において
parallax@mbf.nifty.comさんは書きました。

>> こん○○わ、PARALLAXです。御返答、有難う御座います。

こんにちわ。度々失礼します。^^;

# う〜ん、SっF〜っ。(アスカ風)

>> その蒼く輝く星を見ていると、ふと何かを思い出しかける事があ
>> る。全てを包む優しさを秘めた、その蒼い輝き。いや、それは本
>> 当に青だったか? 緑がかってはいなかったか? 
>> ・・・「それ」とは、一体誰の事だ?

この時代になっても地球が青い星でよかったですなぁ。
しかし、生き永らえても大事なもの「忘れて」しまうなんて悲しい。
# ちょっとだけ、ソウヤーの「スタープレックス」の「彼」を思いだしました。

とっても秀逸な妄想というよりは立派な小説風。
そこでまたまた触発されてしまうわたし。(笑)

****** 妄想妄想っと。


■知世伝説・最終章 『時を越えて』

ぼんやりと物思いにふけっていた知世を現実に引き戻したのは
けたたましい警報音でした。知世は天井に向けて質問します。

「何が起こったのです?」

何処かから返る声。

「反乱です!」
「まぁ…」

とりたてて驚く程の事もない。
知世は浮かせかけた身体を椅子に戻すと簡潔に指示しました。

「鎮圧なさい」
「はっ!」

ふぅ。溜息が漏れます。あの人達は何が不満だと言うのでしょう。
完全に調整された環境。凡ゆる細菌やウィルスと無縁であり、
全ての人間が天寿を全うする理想郷。
それなのに彼等は、それが人類の退廃と停滞の原因だと主張している。
そして事もあろうに、その責任が全て私に有ると。
馬鹿馬鹿しい事。私はあなた達が望んだ世界を与えたのに。

本当?

自分でも判らなくなる事がある。
最初は私自身が望んだのでは?
いいえ、違う。違ったはず。
私ではない誰かを。
そう、その誰かと共に生きたかった。
永遠という名の時を。

どのくらいの時間が過ぎたのでしょうか。
微かに感じられた震動が止み、辺りは静寂に包まれました。
やがて静かに開く入り口の扉。一人の女性がそこに立っています。

「あら、誰がよこしたのかしら。あの子達以外は
 入れない様に言ったはずなのに」
「大道寺…知世さん?」
「え?」

随分と久しぶりに聞く名前でした。
そういえば、ずっとずっと昔、私はそう名乗っていたのだと
知世はかすかに思い出していました。

「貴女、ロボットでは無いのね」
「ええ」
「何者ですか?」
「あなたが反乱軍と呼んでいるグループの一員です」
「あらあら。生き残ったという訳なのね」
「そうではありません」
「どういう意味かしら」
「シティ政庁関係者…と言っても大部分はロボットですが。
 彼等は全員我々が制圧しました」
「そうなの」
「残っているのは、あなただけです」
「それで、ご用は何かしら」
「あなたには引退して頂きます」
「残念だけど、それは出来ない相談ですわね」
「何故です?」
「何故って…」

何故なのだろう。何が目的で生きているのだろう。
何が目的で生きてきたのだろう。
それとも、どうして生きていると問うべきなのか。
いったい何時まで?

「私は此を守らねばならないの」
「住民はあなたを必要としてはいません」
「ここのシステムは私が居ないと崩壊してしまうのよ」
「代替システムの実証試験は月面で成功しています」

そう。月。そこにはかつての主を慕って眠りに就いた者の住家。
その眠りを妨げない為に一切の立入りを禁じた場所。
でもそれがかえって盲点となって抵抗組織の基地になったとは。

「あなたがシステムから離れても、現在のまま数年はもつはずです。
 その間に順次システムの変更を行い、同時に政治体制を変革します」
「それが貴女達の言い分?」
「住民の総意です」
「仮にそれが事実としても、不満が有る者は出ていけば良いでしょう。
 ここでの生活を強要している訳ではありませんわよ」
「何処にあなたの支配が及ばない星が在ると仰有るのですか?」
「探せば良いでしょう」
「本気で言っているの?」
「嘘は嫌いですから」

くす。思わず零れる笑み。
そういえば昔は嘘が楽しかった事もあった気がします。

「お願いです。どうかシティの中枢へのコードを公開して下さい。
 あなたの身の上は保証します。けっして無礼な事はしませんから」
「もう充分に無礼ですわ」
「私はあなたの説得を任されています。
 しかし、私が失敗した場合は突撃隊がここへやってきます。
 その場合は…」
「殺すと仰有るのね?」
「ですから…」
「判っていない様ね。貴女方にはわたくしは殺せませんわよ」
「やはり噂は本当だったんですね」

シティの住民は統治者が数百年を生きているとは知らされてはいません。
しかし、どこからか情報は漏れるものなのでしょうか、
統治者は不死身なのだという噂が何時の頃からか
人々の間に流布されていたのです。

「たとえこの"わたくし"を殺しても、代わりはいますの」
「そうですか…」

暫く思い悩んだ様子だった彼女は、顔を上げると知世に更に歩み寄りました。

「何故、私が説得役に選ばれたか判りますか」
「いいえ」
「私を見ても何も感じませんか?」

改めて女性をまじまじと観察する知世。
栗色の髪を短くまとめ、その瞳の色は碧。
微かに記憶の何かに触れる気がします。

「何処かで遇ったのかしら」

女性は目線を彷徨わせて、何かを探している様な顔をしていました。
そして。

「知世ちゃん…」
「は?」
「思い出して、知世ちゃん!」
「貴女、いったい…」
「私、さくらです。木之本さくら」

知世はあっけにとられた様に彼女、さくらと名乗った女性を見詰めました。
その名を聞いた途端に封じていた記憶が堰を切ってあふれだしました。

そうだった、私が欲しかったのは。
共に永遠を分かち合いたいと願ったのは彼女。
大切な大切な、貴女。木之本さくら。
でも貴女は去ってしまった。私の許を。
私は貴女を探すために全人類を統轄する
社会機構の創設に心血を注いだ。
だが貴女は何処にも居なかった。
貴女の名前の入った小さな墓標を残して。

「嘘。さくらちゃんは死んだはず」
「ごめんね。あの墓は偽物なの。私が居なくなれば
 知世ちゃんが悪魔の実験を止めてくれると思ったから。
 ケロちゃんとユエさんが手伝ってくれた。
 カードさん達も」

悪魔の実験。そうかもしれない。
お母様の残したデータを引き継いで、貴女の為の
ボディストックを作ろうとした私。
でも、貴女はそれを嫌がった。そして。

「でもそれは何百年も前の事。それなのにどうして貴女が」
「信じられないのも無理ないよね。
 知世ちゃんから隠れている為に、私は宇宙へ旅立ったの。
 凍結睡眠装置と共に。でも、数年で戻るはずの軌道計算が
 狂ってしまって。抵抗運動の人達に救われたのが去年の事なの」
「本当…なの…」
「最初は私も信じられなかった。何百年も経っていて
 そして知世ちゃんが生きていたなんて。
 でも、だからこそ逢わなきゃいけないって思ったの」
「さくら…ちゃん…」
「ただいま、知世ちゃん」

二人はきつく抱き合いました。
ずっとずっと忘れていた温もりが知世の心を満たしてゆきます。
シティの制御権が市民議会に委譲されたのは
それから数日後の事でした。

(完)


>> >                                   HAPPY END
>>
>> ・・・・ですね(^^)。

# どんなもんでしょう。^^;;;

# っと、ここまでがジュブナイル版です。(笑)
# 素直なハッピーエンドが好きならここまでで止めておいて下さい。
# 以下は、ちょっと苦いおまけ。


■知世伝説・エピローグ 『新たな旅立ち』

制御権の委譲後、知世は全てのボディストックを破棄し
大深度地下施設を切り放して宇宙の彼方へと放逐しました。

そして今、知世はその永い旅を終えようとしていました。
最後の身体の寿命が迫っていたのです。
いかな医療技術の進歩があっても、人工的に伸ばし続けた
その知世の疲れ切った身体を癒す事は出来ないのでした。
集中治療室のガラス窓越しに見守るさくら。
その脇に立っているのは細身の若い男性でした。
抵抗運動組織の指導者。コードネーム、SNOWRABBIT。
彼はそっと、さくらの肩に手を置いて話ました。

「気に病む事は無いんだ」
「でも、私の所為で知世ちゃんは」
「それは違うよ。彼女が自分で選んだ事だから」
「それでも私は」
「思い出してごらん。あの日の事を」

さくらは彼の言葉に導かれて遥かな昔に『主』から受けた命を思い出していました。

「もし私に何かあったら、お願い、知世ちゃんを目覚めさせて」
「わたくしが、ですか?」
「これはあなたにしか出来ない事なの、判るでしょ?」
「はい」

記憶を溯るにつれて、術が解けて本来の姿に戻るさくら。
長い髪には今でも在りし日のまま美しい色を残すリボンが巻いてあります。
そして、その白い頬に涙が伝っていきます。
また同様に、彼も本来の姿に戻っていました。

「何故泣く?」
「本当にこれが主の望んだ事なのでしょうか」
「ケルベロスが率いた部隊が主の船を発見した時、
 既に睡眠装置の機能は停止寸前だった。
 或いは主は、ここへ戻ってくる事を怖れたのかもしれない。
 いずれにしても、我々に与えられた最後の使命が発動されたのだ。
 他に選択の予知は無かった」
「…そう、ですね」

再び栗色の髪に戻ったさくらは集中治療室の扉を開くと
知世の傍に腰掛けて、その瘠せた手を包み込む様に握りました。

「ありがとう…」

知世は最後にそう言ったと、後にさくらは語りました。

*

星々を見渡せるシティの中心街最上層。
そこで黙って立っている彼に声をかけたのは一匹の虎に似た生き物でした。

「こないなトコにおったんか」
「何の用だ」
「例のアレ、許可降りたで」
「そうか」
「議会でも散々もめた様やけど、まぁそれなりに人類に
 貢献したっちゅうのは事実やからな。
 そのぐらいエエやろって事になったみたいや」
「肝心の主の方はどうなんだ」
「順調や。あと4ヶ月ぐらいで生まれる言うてたわ」
「ならいい」
「知世が5ヶ月年下になるんやなぁ」
「前もそうだった」
「そやったか?」
「ああ」
「何でそないな事知っとったん?」
「…」
「新しい主かぁ…」
「ああ」
「わいらの旅を終わらせてくれるのは誰やろか」

二人の許へやってきた一人の女性。

「お、どないや」
「はい。市街の外れですが良さそうな所です」
「広いんか?」
「ええ。坂の上ですが私達が暮らすには充分です」
「そか」
「それと」
「ん?」
「もう一軒見付けておきました」
「何やお前はまた別居かいな」

しかし、傍らに立つ彼は何も答えませんでした。

「ですが本当にわたくしが親代わりでよいのでしょうか」
「いっちゃんマトモな人間の暮らしが出来るのは
 お前だけやさかい、頼むな」
「はい」
「しかし名前を何とかせなな。親娘同じちゅう訳にもいかんやろ」
「もう決めています」
「何や?」
「今日から私は撫子と名乗りたいと思います」
「そうか、そらええわ」

そして、またカードキャプターの伝説が動き出す。

(ほんとに完)


# な〜んてねぇ。(モンコレ風)
# 臭っさ〜。(ギップルちゃん)

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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