◆22:10 9回表 十番高校の攻撃

> 亜美 「12人の娘たちは・・・本当に、
>     薬師如来様に属し、その12の大願を守護する、
>     十二神将・・・なんですか?」





 その言葉に、愕然として振り向くスターライツ。頷く火球皇女。

火球 「正確に言えば、その遷し身でしょうね。」
亜美 「皇女は、最初から御理解されていたのですか?」
火球 「見れば判ります。私も東方よりやってきた、神の端くれで
    すから。同じ出自の神々は、何より懐かしいものです。」

 そう言いながら、また懐かしげな顔をしてフィールドに目をやる
火球皇女。一人一人数え上げながら、懐かしい顔を深めてゆく。





火球 「ほら。いまセンターで光る壁を支えている、あの娘。
    相変わらずお元気そうですわ、宮毘羅大将。」

 宮毘羅(くびら)。亥神こと第一願「光明普照」を守護し、自身
から発する光明で世界を普く照らす神。確かに今の亞里亞はA.T.
フィールドから発する光で球場を照らしている。





火球 「おや、伐折羅大将はベンチでお休みですか。おやおや、
    相変わらず周りを御人徳で率いておられるようですね。」

 伐折羅(ばさら)。戌神こと第二願「随意成弁」を守護し、威徳
と人徳により人々を悟りの境地に導く。確かに可憐は妹たちの中
でもその優しさからオピニオンリーダー的存在だ。





火球 「迷企羅大将もベンチにおられますね。相変わらずお仲間
    のご要望に応える為に御尽力されている様で。」

 迷企羅(めきら)。酉神こと第三願「施無尽仏」を守護し、人々
の願いを叶え、満ち足りた環境に導く。鈴凛が作り出すメカニッ
クの数々は、確かに皆のリクエストに応えるものだ。





火球 「安底羅大将は・・・おや、これはまた可愛らしい姿で。
    しかしだからこそ皆の心の支えになるのでしょうね。」

 安底羅(あんてら)。申神こと第四願「安立大乗」を守護し、人々
の悟りを確立させ、永遠のものにする。一番の妹だからこそ他人へ
決意をさせうる存在である雛子ならでは、だろう。





火球 「安頁羅大将も変わっておられませんわ。相変わらず回り
    の皆を励ましておられますね。」

 安頁羅(あんにら)。未神こと第五願「具戒清浄」を守護し、人々
の日々精進させるとともに善行を促す。確かに皆の応援団を是認す
る、花穂ならでは。





火球 「珊底羅大将は・・・なるほど、キャッチャーですか。それ
    に周りの様子を調べてはアドバイスに忙しい事でしょう。」

 珊底羅(さんてら)、午神こと第六願「諸根具足」を守護し、迷い
を生ずる原因をことごとく消滅させる。「チェキよぉ!」と言いな
がら細かい調べ物をし、それを周りへフィードバックする四葉こそ
確かに相応しい。





火球 「おや?因達羅大将がいらっしゃいませんね?・・・あぁ、
    先ほど此処から医療の場へ立ち去られた方ですか。」

 因達羅(いんだら)、巳神こと第七願「除病安楽」を守護し、人々
の病気を完治し、心身に安楽を与える。鞠絵が病弱であるのは、周
りの者の病魔を一身に引き受けているからに違いない。





火球 「波夷羅大将は・・・おや、一番のお姉さんですね。成る程、
    だからこその女性格、ですか。」

 波夷羅(はいら)、辰神こと第八願「転女得仏」を守護し、女性的
な優しさだけでなく力と勇気を得る。確かに12人の妹たちの中で
最も女性を意識させるのは咲耶だった。





火球 「摩虎羅大将は・・・あぁ。相変わらず真っ直ぐな御様子。
    成程、人界に於いては、健全な精神は健全な心に、ですね」

 摩虎羅(まこら)、卯神こと第九願「安立正見」を守護し、心中の
邪悪な感情を除き健全な精神を得る。皇女の言った様に「健全な精
神は健全な肉体に宿る」を日々実践しスポーツに励んでいるのは衛。





火球 「まぁまぁ。真達羅大将の御様子と来たら。まるでそれでは
    ただのお悩み相談ではありませんか。」

 真達羅(しんだら)、寅神こと第十願「苦悩解脱」を守護し、人々
の苦悩や災難をことごとく消滅させる。事ある毎に悩める者を自身
の占いで導いているのは、確かに千影だった。





火球 「招杜羅大将は、全く変わっておられませんね。依然として
    皆様に美味しい食事を用意されているのでしょうか。」

 招杜羅(しゃとら)、丑神こと第十一願「飲食安楽」を守護し、
食事に関する苦悩を除き健全な食を与える。これはまさに白雪の
役目だった。





火球 「そして毘羯羅大将。どうやら才覚を生かし、周りの者へ
    衣装を与え続けておられるようですね。」

 毘羯羅(びから)、子神こと第十二願「美衣満足」を守護し、満足
する衣類を得て健全な精神を宿らせる。コンクールの時の衣装、別
荘でのカーテンウェアを作り出したのは、確かに春歌だった。





火球 「・・・ほら? 何の不思議もありません。」

 また、にこりと微笑む火球皇女。あまりの事に声も無い3塁側ベ
ンチ。と、そこへうめき声が聞こえてきた。





はるか「・・・なるほどな。僕らの相手をしていたのは、神様だっ
    たのか・・・」
みちる「・・・どうりで適わない訳ね・・・」
せつな「・・・旧き神々との戦い、ですか・・・原作でもTVでも、
    其処までの戦いはしませんでしたね・・・」





 むくり、と起き上がる外部太陽系3戦士。そして。





美奈子「ひどいよ・・・神様が相手なんて・・・しかも守護神?
    十二神将?そんなの・・・そんなの勝てる訳ないじゃない」





亜美 「はるかさん!みちるさん!せつなさん!美奈子ちゃん!」

 驚き、亜美は4人を支えようとした。それを押しとどめながら、
はるかは言う。

はるか「僕らの事はいい。それより、うさぎちゃんを支えてくれ。」
亜美 「そんな!」
みちる「私たちは、何があっても勝たなければならない。そうでしょ?」
亜美 「でも、でも神様が相手なんですよ!」
せつな「それでも、ですよ・・・」

 せつなが、弱々しく微笑む。この壮絶な笑みに、はるかな過去か
ら戦い続けている戦士の歴史を感じ取った亜美は思わず竦んだ。彼
女の思いを察したか、美奈子が続けて言う。





美奈子「それが、セーラー戦士と言うものだから・・・ですね?」