8回表[1]
◆20:00 8回表 十番高校の攻撃
鈴凛 「あ、ほれ、ぽちっとな。」 ぴ。
ごぼごぼごぼ、ざばざばざば! ごごごごご がきょがきょん!
最早一々描写する必要も無いと思われるが、前回で月光蝶のナノ
マシン群に食い尽くされたプロミストアイランドは、こうしてきっ
ちり3度復活した。当然、全ての物は元通りのまま。流石に慣れて
いる妹たちは、海底から浮上中の島へクルーザーを乗り入れ巧みに
球場へクルーザーごと乗りつけ、さっさと1塁側ベンチで守備支度
を整えると、
四葉 「ちぇーーーーーーーーきーーーーーーーーーーーーー!」
はーーーーい!
グラウンドへ散っていった。どうやら御子様の多いチームなので
「よい子は寝る時間」である9時前には方を付けたいらしい。この
手際の良さに呆然とするセーラーチームだったが、流石に前回から
引き続き呆然としっぱなしと言う訳にもいかず年上の手前もあり、
若干あたふたとしながらも3塁側ベンチに入る。だが。
美奈子「結局、まだみんな気絶中なのよねぇ。」
そう。打たれ強いセーラー聖闘士の事だからそろそろ目覚めても
良いと思うのだが、何故か全員が全く目を覚まそうとしていなかっ
た。まぁ目覚めたら目覚めたで悪夢のような試合が待ち構えている
のだからこのまま気絶して、という気持ちは判らないでもないが、
レイ 「そんな事、許す訳が無いでしょ! 私たちばっかに押し付
けて自分は逃げようなんて、火星に代わって折檻よっ!
こぉらうさぎ!起きなさい!起きなさいったら!」
ぺしぺしぺし。 ばしばしばしっ どすどかばきぐしゃ
亜美 「ああぁレイちゃん、そんなにやったら折角のタヌキ寝入り
だったのが、本当に気絶しちゃう。」
まこと「って言うか、もう手遅れみたいなんだけど」(^^;)
頭の上に飛ばしていた小鳥の数を数羽増やして、うさぎは今度こ
そ熟睡状態になった。一方、
ほたる「ねーはるかパパぁ、みちるママぁ、せつなママぁ。起きて
よー。これじゃ何時もの日曜日みたいじゃないー。」
とか言いながら「沈黙の鎌」で気絶中の3人を「つんつん」する
ほたる。気絶している(と見える)3人の幸せそうな寝顔を見ている
と何故かムカムカ来ていっその事このまま永眠させちゃろか、とも
思うものの、扶養家族の身では貴重な収入源(しかも3つ)を失う訳
にもいかない。いっつも苦労するのは私なんだから、と溜息をつく。
ちびう「まもちゃんも帰ってこないしねー。棄権かなー、こりゃ?」
流石にそうするしかないか、と3塁側ベンチが項垂れた、その時。
♪ちゃーららー、ちゃららちゃーららー、ちゃらららー、ちゃらー
ちびう「あれ? はるかさん達の入場ソング?」
美奈子「イノキッガンバレッ!」
レイ 「その掛け声も違えば入場ソングってのも違うっ!」
亜美 「って言うか、これ外部太陽系3戦士登場のテーマと違うわ。」
ほたる「え、そうなんですか? 私には同じに読めるんですが…」
まこと「文字だけだと判らないからねぇ。」
メタな突っ込みにうるさいやぃと書き手が悩んでいる時、実に
都合良く名乗りが挙がる。しかも声の位置からすれば丁度3塁ベン
チの上だ。流石、小娘4人のアマゾンズとは配慮の程が違う。その
心遣いに感謝して、スポットライトなぞ当ててしまおう。ぴかっ。
「夜の暗闇、貫いて!」
「自由の大気、駆け抜ける!」
「3つの聖なる、流れ星!」
びし!びし!びし!とカクテルライトいやスポットライトに照ら
された3人がポーズをつける。ではついでにとっとと名前も書いち
まおう。我々には時間が無いのだ。はい、決め台詞をどうぞ。
星野 「セーラー・スター・ファイター!」
大気 「セーラー・スター・メイカー!」
夜天 「セーラー・スター・ヒーラー!」
ライツ「セーラー・スター・ライツ、ステージ・オン!」
おぉ〜〜〜。 ぱちぱちぱちぱち・・・
グラウンドに散ったシスプリチーム側から、感嘆の声と拍手が
パラパラと上がる。尤も咲耶や鞠絵や春歌は辛うじて覚えていた様
だが、雛子と花穂はぽかんとしたままだ。まぁ本放送時に就学前で、
再放送もまだ其処まで行っていない状態では無理もなし。なのだが。
星野 「・・・どうもウケが今ひとつだなぁ・・・」
夜天 「おぃおぃ。はるばる太陽系まで渡ってきてこれじゃ、折角
来てやった甲斐が無いってモンだぜ?」
大気 「仕方ありませんよ。我々の登場期間は所詮1年ありません
でしたから。こうして出して貰っただけでも僥倖です。」
タイトルにまで自分たちの名乗りを入れて貰えながら今ひとつ爆
発せず、しかも長寿シリーズの幕引き役となってしまったキャラの
悲哀を噛み締めるスターライツの3人であった(哀)。と、そこへ。
美奈子「ちょっとちょっとー! 星野さーん!」
星野 「あれ、美奈子ちゃん? おひさ。」
ひらっとベンチ上から飛び降りる3人。気絶したまま死屍累々の
面子をベンチに見て流石に呆れる彼らにセーラーズが話し掛ける。
レイ 「それで、今日は一体何しに?」
夜天 「何しに、てのは御挨拶だなぁ。手が足りないから助っ人に
来て、って頼んだのはそっちだぜ?」
ちびう「えー! うさぎったら二股掛けて頼んでたの?」
大気 「嘘を言うんじゃありません夜天。此方が押しかけたんです。」
まこと「押しかけた? だってあんた達、普段は王女様の御守だろ?
こんな事している暇があるのかい?」
星野 「それが大丈夫・・・っつーか、どうしても来なきゃならな
くなって。つまりこれは、命令なんだ。そゆ事。」
ほたる「命令? どういう事ですか?」
如何にも「俺は見たくない」と言わんばかりの顔の伏せ方で、自
分たちが飛び降りてきた3塁ベンチの上を指し示す星野。大気も夜
天もそっぽを向いている。何だ?とセーラーズが向いたその先には。
火球 「ごーごーれっつごー、せーらーすたーず!
がんばれがんばれ、かっとばせー! おー!」
普段のゾロッとした格好は何処へやら。しかも何処から調達して
きたのか全く判らないピンクのレオタード(フリヒラミニスカ付き)
を着た火球皇女が、、脚を振り上げ腕を振り上げして応援している
姿があった。しかも両手にポンポンなんか持っちゃったりして。本
人は一生懸命らしいんだが、ヘアスタイルとメイクが典雅な中華風
女王様のままだからミスマッチな事この上ない。かぱ、と「開いた
口が塞がらない」状態で口を開けたまま、これを見ていたセーラー
チーム。ぎぎぎ、と首を回したレイが、傍らで頭を抱えている星野
に聞く。
美奈子「あれ・・・火球皇女?」
星野 「・・・見りゃ判るだろ。」
レイ 「わかんないわよ、あんなの。 どうしたの、一体?」
夜天 「どうしたの、って、皇女の頭の中身の事か?」
亜美 「勿論それも心配ですけど・・・え?つまり星野さんたちが
此処(地球)にきた理由って、火球皇女の依頼なんですか?」
星野 「ありゃあ依頼、なんてもんじゃねぇな。」
大気 「あれは正確に言いますと『駄々を捏ねた』になるかと。」
夜天 「酷いんだぜ? あんた達の野球やってる姿を銀河セーラー
ネットワークの固定カメラで覗いた皇女が『私も野球した
い! ポップコーン買ってペンペンバット買ってかちわり
買って応援するの!』とか言い出して聞かなくって。」
それは野球じゃないだろう、とか思うものの「イッちゃった」姿
で懸命に応援する火球皇女に突っ込める者なぞ居る筈も無い。
レイ 「と、とりあえず前向きに話しましょ。」
美奈子「そ、そうそう。で、実は来てくれて凄く助かったの。」
亜美 「御願いします星野さん大気さん夜天さん、試合に出て貰え
ませんか? 丁度3人足りない所だったんです。」
勿論スターライツに否やは無かった。「応援するの!」と駄々を
捏ねる皇女に付き合わされる以上、自分たちもポンポン持って脚を
上げなきゃいけないんだろうか、ならば格好はレオタードなんだろ
うか、するとまたTVシリーズの時と同じ様な格好をしなきゃなら
ないんだろうか、このメリハリの無いボディラインでビキニなんか
着なきゃならないんだろうか、あんな恥ずかしい真似をするのは本
編だけで沢山だ、あの時もアクション満載だったからカップが碌に
被らない胸だとずれてずれて思わずポロリなんてのが撮影中にさん
ざん起きたんだからこんなSSなんか出たかぁないぞ、と悩んでい
た彼らだったから、そのまま素直に打席に立つ事を承諾した。
星野 「じゃ、早速!」
夜天 「いっちょやったるか!」
大気 「ふふふふふ。スターライツ、久しぶりのステージですね!」
と、すたすた打席に向かった・・・そのまま3人で連れ立って。
■7回表0アウト|1|2|3|4|5|6|7|8|9|− ■
■Sailors|0|0|1|1|0|0|0| | |2 ■
■Sisters|2|0|1|0|0|2|0| | |5 ■
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水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
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