4回裏[1]
◆14:15 4回裏 プロミストアイランドの攻撃・・・?
と開始したい所だったが、なにやらセーラーチームがベンチ前で
ごそごそと円陣を組み、なかなか守備に付かない。どうやら「魔球
投手」はるかの傍若無人に業を煮やしたセーラーチームが守備陣営
の練り直しを図っているようだ。それを察し暫く待つシスプリチー
ムだったが、3分過ぎ、5分過ぎ…の時点で流石に不審に思ったウ
グイス嬢こと眞深が様子を見に行った。其処で彼女が見たものは、
円陣中央で囲んでいた「山」に全力で取り組む彼女らの姿だった。
当然その山には、1本の棒が直立していたりする(ちゅどーん)。
美奈子「そーっと、そーっと・・・」
うさぎ「ふー、ふー、」
美奈子「ちょっとうさぎちゃん! 吹かないでよ!」
レイ 「あぁあ美奈子ちゃん、怒鳴ると危ない、危ない。」
まこと「そんなに欲張るから。しかし・・・そんなにやりたい?」
はるか「(ぼそぼそ)指先サイズ、わーるどー、しぇい」
みちる「きんぐ、まで言ったらディープサブマージよ、はるか?」
せつな「惜しい事です・・・あそこで風さえ吹かなかったら。」
ほたる「・・・せつなママまで・・・(;_;)」
それを了解した瞬間、流石の眞深もキレた。いや、それでなくても
キレ易いんだが、今回は憑依する間もなくキレた。
美奈子「そっとそっと・・・やったぁ!」
眞深 「アンタらはいったい、何やっとるかー!」
眞深と美奈子が怒声と歓声を上げるのが同時だった。と、どちら
の声に負けたのかは判らないが、セーラーチームが円陣を組んで囲
む1本の棒が、ぐらり、と倒れ、それを見たセーラーチームの面々
が悲鳴を上げる。
ほたる「あ、倒れた。」
うさぎ「えー、これで終わりぃ?」
せつな「ですね。さて、そうしますと・・・」
美奈子「やりぃっ! トップ、わったしー!」
亜美 「そんな・・・私が2番目?」
みちる「はるか、あなたドベよ?」
はるか「くっ、貴様も士官なら大局を見据えろ!」
レイ 「そんなこと言ってもダーメ。はい、これで決定ね。」
どうやら新ポジションを「棒倒し」で決めていたらしい。これに
当然ますますキレてつっかかる眞深だったが、
うさぎ「だって『円陣を組んだら棒倒し』は基本でしょ?」
眞深 「春風高校の光画部みたいな事を言うなぁ!」
美奈子「おいおい。人生には生き抜きも必要よ?」
眞深 「アンタらは息抜きの間に人生やってるんでしょが!」
みちる「まぁ、上手いこと言われちゃったわ。」
せつな「これは1本取られましたね。」
はるか「棒倒しなだけに?」
みちる「お〜い山田く〜ん、はるかから座布団2枚取って。」
はっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは
青空に無駄に爽やかな笑い声がこだました。夏も、もう近い。
ほたる「・・・みんな・・・駄目すぎ・・・」(;_;)
◆14:25 4回裏 プロミストアイランドの攻撃 第1打者
さて漸くグラウンドに散るセーラーチーム。新ポジションは等幅
フォントな図で、以下の通り。結構、熾烈な争いだった様だ。
せつな
|
ほたる | はるか
\ /\ /
レイ みちる
/ \
まこと 美奈子 うさぎ 控:なし
\ | /
\ | /
亜美
さて迎えるバッターは春歌。持ちネタの多さから言えば1塁側で
屈指の娘。しかし当然、バットを無心に構える姿からは「何に憑依
するか」は皆目見当が付かない。しかしピッチャー美奈子は。
美奈子「なんに憑依したって無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!
私のピッチングは世界一ィィィィィィィイイイイイイイイ!」
その根拠レスな自信はどっから来るのだろう?と思わされるほど
のJOJOな掛け声を上げながら、美奈子が第1球を投球。なんと
アンダースローだ。バレーをこなしていた美奈子ならスパイクや
サーブの応用で当然オーバースローだと見ていた1塁側ベンチは
これで吃驚。しかもなお
うさぎ「うわぁ、上がった上がった上がった上がった上がった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・あ、落ちてきた落ちてきた落ちてきた落ちてきた」
ぽす。
爺や2「すたーいく、わん!」
おそろしく山なりの軌道を描いたボールが数秒の滞空時間の後、
春歌の目の前を「縦に」抜けた。この魔球に重ねて驚く1塁側。こ
れへ悠然と笑いながら、マウンドで返された球を受け取る。
美奈子「私って元々アンダーの天井サーブが得意なのよね。」
はたしてそれって関係あるのか?と疑惑を覚えなくも無いものの、
成績がそれを証明している。第2球もほぼ同じコース。しかし縦に
落ちてくるボールはとても打てない。手を出した春歌が見事に空振り
する。ふらふらとしたスイングから、まだ憑依していないらしいが。
爺や2「すたーいく、つー!」
余裕で笑う美奈子。が、その慢心が安易な投球に繋がった。簡単
にストライクを取りに行こうとした、同じコースの第3球が投じら
れた、その瞬間。春歌が遂に、今回の正体を現した。
春歌 「兄様と『合体』するのは春歌です! 何方にも邪魔させは
致しません! カミカゼセットだって拒みはしませんわ!」
亜美 「まさか! ドレッドも無いのに、これを使うの!?」
突然に「たわわ」なナイスバディになった春歌が叫んだ台詞を聞
き、亜美は自分の耳を疑った。れっきとした海賊ではあるものの、
操縦するドレッドも無い彼女に何が出来る?しかもレジからの補給
はおろか、肝心の合体相手である蛮型すら無いのに。が、そんな自
分の考えが甘い事を、亜美は次の瞬間に思い知った。
ずごごごごごごごごごごごごごごごごごごごご!
春歌が立つバッターボックスが割れ、地下から巨大ロボットが姿
を表した。CGフルポリゴンで描かれた刺だらけの奇態なロボット
が、背中に付けた巨大な砲をむんずと掴んで外し、飛んでくるボー
ルに立ち向かう。砲口から励起したペークシスプラズマの冷たい光
が立ち上り、戦艦すら打ち抜くビームの発射体制が整う。
美奈子「そんな!もうヴァンドレッドになってるじゃない!反則!」
とかマウンドの美奈子が叫ぶものの、もう遅い。憑依システムが
基本的に「何でもアリ」である事は最初から判っていた事だから。
春歌 「いっけー!」
すっかり海賊時代の性格に戻ってしまった春歌が、ふらふらと上空
に上がるボールへ手持ちの砲を向けた。
亜美 「そうか! 放物線頂点部で打てば、落下軌道に関係ない!」
そう。春歌が貴重なロボット系持ちネタを使う理由がこれだった。
縦に落ちてくる「超山なり球」は狭い鋭角の放物線を描く都合上、
軌道頂点でほぼ静止する。普通なら打とうとも思わないポイントだ
が、ここを打てる身長がある持ちネタによっては格好の餌食と出来
るボールだった。そして、
どごぉおおおおおおおん!
ディータ、もとい春歌は上空で静止するボールを文字通り「撃った」。
当然ボールは瞬時に蒸発・・と思いきや、なんと高エネルギービーム
の奔流の只中で圧される様に飛んでいる。さすが「糸」で絡め取られ
ても傷一つつかないボール、並みの物質で出来ている訳ではない。
鈴凛 「アーカム財団と技術交換したんだ。あのボールには『時間の
流れが無い』んだよ。」
光速のビームに圧され、光圧推進で場外へ向け一直線に飛ぶボー
ル。見事、春歌の場外ホームランが成立・・・するかと思いきや。
ほたる「サイレンス・ウォール!」
何者もそれを越える事適わずのジェリコの壁が、再び球場上空に
展開した。光すら阻む次元壁が、フェンス手前の上空でボールごと
ビームを止める。必然的にガス惑星すら太陽化するビームと次元壁
のせめぎあいが始まる球場グラウンド。まるで太陽の中に放り込ま
れた様なエネルギーの爆流が球場全体を荒れ狂う。尤もセーラーチ
ームの方はこの程度の環境は慣れっこで平然としているし、1塁側
も雛子が支えるマジカルバリアーで守られている。残念ながらそれ
らの庇護対象にならなかった主審と塁審の計3名は瞬時に蒸発して
しまったが。しかしこのままではビームとバリアの千日手。だが。
はるか「いいぞほたる!そのまま支えていてくれ!」
ライトのはるかがフェンスに駆け出す。勢いを殺さず、そのまま
フェンス際で垂直に立ち上がっているサイレンスウォールにスパイ
クを掛け、平然と垂直の次元壁を駆け上がってゆく。ほんの数秒で
上空300mのポイントで拮抗するビームと次元壁が激突するポイ
ントに到着し、なんら躊躇わずそのエネルギーの大嵐の中に身を投
じ、あらゆる物質がプラズマ化している中で、
はるか「ワールドーーーー、シェイキン!」
自分の技を奮った。この一撃でビームの奔流を吹き飛ばすワールド
シェイキングが炸裂し、恒星の只中であった様な光と熱の塊だった
空間が一瞬で晴れ渡り、その中にぽつん、と白球が浮かんでいるの
が見える。
はるか「頂き。」
ボールと一緒に自由落下しながら、空中ではるかはボールを掴み、
中継に入ったみちるへ空中からトスした。ノーバウンドでそれを受
けたみちるへ、再度補給された主審が宣言する。
爺や3「あうと!」
数秒掛けて自由落下を楽しんだはるかが、元の自分のポジション
に、すたっと降り立つ。その姿を見、コクピットでコントローラに
手を置いていた春歌が、にこっと微笑みながら言った。
春歌 「流石、私と同じ名を持つ御姉様だけありますわね。矢張り
この程度では太刀打ちできませんでしたか。では、また。」
■4回裏1アウト|1|2|3|4|5|6|7|8|9|− ■
■Sailors|0|0|1|1| | | | | |2 ■
■Sisters|2|0|1| | | | | | |3 ■
■塁無 NEXT:鈴凛・四葉・花穂 ◆ マウンド 美奈子■
水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
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