◆AM07:30 庭

 じ〜わじわじわじわ、じ〜わじわじわじわ、じ〜わじわじわ・・

 早朝とは言っても既に気温は真夏日を突破している。今日も記録
的な猛暑になるだろうと思いつつ、庭先に出されっぱなしなパラソ
ルが作る影の下で、眼前に広がる海原を渡る重めの風を感じながら、
航は愛用のメール端末を何時ものように開いた。

「アキヲへ。今日もこのプロミストアイランドに暑い夏の日差しが
 降り注ぐ。暑い。全く暑い。この暑さに妹たちも若干錯乱気味だ。
 例えばこれなら太陽熱で目玉焼きが焼けると、庭先のバーベキュー
 用鉄板を磨いて太陽にかざし本当に焼いてしまった子とか(でも美
 味しかった)。太陽からの熱を防ぐ為にバンアレン帯を燃やすと称
 して沖合いに偶々停泊中の研究用原潜から核ミサイルを打ち上げ
 ようとハッキングを開始する子とか(でも何でシービュー号がこん
 な所に?)。無料の冷気を招くと称して魔界への通路を空けてしま
 い、冷気も招いたが御友人も大挙して招いてしまった子とか(本人
 は、次は妖邪門にしようと言っている)。水着ですら暑いと称して
 下着も付けずスケスケのキャミワンピ1枚でうろつく子とか(でも、
 なんでその格好で僕に張り付くんだろう)。こんな時こそ皆の応援
 と称し炎天下チアリーディングを始め約3分で熱中症でぶっ倒れ
 た子とか(それでもバトンは手放しませんでしたとさ)。色々だ。
 とっとと医療センタのエアコン効いたロビーに診察順待ちの振り
 をして避難している子は頭が良いと思う(でも留守番の飼い犬は
 見事に「たれぱんだ」状態だ)。だが、この猛暑の中でもきっちり
 ペチコート付きのフリヒラ満開な足首までの長袖ロングドレスを
 着込みパラソル一つで汗一つかかず涼しげな顔をしている子もい
 るのだから、人間の可能性は無限だと日々痛感させられる。この
 連日の日照の御蔭で島の太陽発電レティクルは全開運転だそうだ
 けど、電力消費も鰻登りだから結局おっつかないだろう。…」

 と、例によって*男*へのラブレター作成の余念の無い航。これ
だけの綺麗どころに囲まれ数ヶ月を暮らしているにも関わらず相変
わらずの貞心ぶりに頭が下がる(笑)思いだが、そんな航だからこそ
妹たちも貞操の危機を感ぜずオープンに接していられるのかもしれ
ない。ま、一部過激派からの攻撃は残念ながら不通の様だが(笑)。

衛  「あ!いたいた。あにぃー! あさめしだよー!」
雛子 「あさごはんだよー! おにーたまー!」
可憐 「早く来て、おにーちゃん! でないと溶けちゃうわ!」

 メールの作成が丁度佳境に掛かった所だったが、航はあっさりパ
ッドの蓋を閉じた。可憐が妙な引っ掛けを言う娘ではない事は十分
承知しているから、彼女が「溶ける」と言うからにはきっとまた白
雪が珍妙な発想で作り上げた創作料理が食卓を飾っているのだろう。

航  「溶ける・・・シリアルのミルクアイス掛けくらいなら、
    まぁ許容範囲内なんだが・・・朝っぱらから流し素麺の
    出し汁カキ氷&冷凍みかん添えってのは勘弁だなぁ・・・」

 どんな料理でも味を確かにするその腕前には毎度舌を巻かされる
が、毎回「皿の盛り付けを見なきゃ良かった」「素材を聞かなきゃ
良かった」「『美味しい』以外の褒め言葉を言わなきゃ良かった」
と「見ざる・言わざる・聞かざる」が三拍子揃う料理を食うのは、
流石にかなりのプレッシャーだった。ましてや他の妹たちが「おに
いちゃんが箸をつける前の皿に手を伸ばすのはマナー違反」と互い
に牽制しあっているのであれば尚更だった。

航  「今行くよ!」

 が、それでも食べずばなるまい。それが兄の勤めと言うものなの
だから。今日も暑くなりそうな日差しの向こうに広がる青空を見上
げながら、航は妹たちが口々に自分を呼ぶサンテラスの入り口に脚
を向けた。今日も彼女たちと何時もの1日が始まる、と思いながら。





 しかし。





 こんな平和なプロミストアイランドにも、





 世界の覇権を狙う暗黒の魔手は、刻一刻と迫っていたのだった!





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【突然妄想劇場】シスターロボット大戦 γ シナリオ 0538
       南海の大決戦! 恐竜帝国の魔手からアイランドと
       お兄ちゃんを守れ! 波濤を越え乙女の涙は輝く…

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◆AM07:45 ダイニング

一同 「いっただっきまーす!」

 食事の度毎に囲むこの巨大な食卓と、妹たちが唱和する挨拶にも
航はもう慣れた。最初は随分と面食らったものの、慣れてしまえば
全員で一つの食卓を囲むと言うのもオツなものだ。例え囲んでいる
食卓が14名もの人数を一堂に円周上へ並べる都合上で、直系7m
近いものだったにしても(一人当たり1.5m弧)。

亞里亞「兄〜や〜、お〜だ〜し〜と〜お〜そ〜ば〜と〜み〜か〜ん〜
    の〜お〜か〜わ〜り〜は〜?」
航  「ごめん、亞里亞ちゃん。もういっぱいだよ。」
可憐 「お兄ちゃん、シリアルとアイスのおかわりは?」
航  「あ、有難う可憐ちゃん。貰うよ。」
亞里亞「くすん・・・兄〜や〜、食〜べ〜て〜く〜れ〜な〜い〜」
可憐 「亞里亞ちゃん、可哀想…お兄ちゃん、亞里亞ちゃんのも」
航  「はははは・・・そんなバカな。」
亞里亞「亞〜里〜亞〜は〜、こ〜れ〜が〜好〜き〜。」
可憐 「だからってチョコシリアルのチョコばっかり舐めてちゃ
    駄目よ、亞里亞ちゃん。」
亞里亞「くすん・・・兄〜や〜に〜、あ〜げ〜る〜。」
航  「って、そんな嘗め回してゲヨゲヨになったシリアルを差し
    出されても困るんだけど(^^;)。」
亞里亞「くすん・・・飴〜は〜舐〜め〜て〜く〜れ〜た〜の〜に〜」
可憐 「亞里亞ちゃん、可哀想・・・お兄ちゃん、御願い。」
航  「なはははは・・・そんなバカな(^^;)。」

 ちなみに今日の航の両隣は、当番表に基づき可憐と亞里亞。良か
った。雛子が隣の時には食べ散らかす世話をしなければならず気が
気じゃないし、咲耶が隣の時には「あ〜んして。それとも口移し?」
な攻撃をかわさなきゃならないし、鞠絵が隣の時には何時ぶっ倒れ
るか判らない彼女の気配を探るので落ち着けないし、千影が隣の時
には何時妙な薬物が自分の皿に放り込まれるか判らないからとても
気が抜けないし、春歌が隣の時には箸の持ち方の矯正が延々と続く
し、鈴凛の時には新開発の自動食事機が何時動き出して「モダンタ
イムス」が始まるか判ったもんじゃないし、花穂ちゃんに「ふれー
ふれー」されながら食べるのはかなりのプレッシャーだし、四葉ちゃ
んに天眼鏡片手で覗き込まれるのは相当億劫だし、衛ちゃんがワイ
ルドに早や食いするのにはついつい煽られてしまい結局胃炎を起こ
す事になるし、白雪ちゃんが隣に来た日にはメニューの論評をしな
きゃいけなくなるからそりゃもう・・・。

可憐 「・・・お兄ちゃん、どうしたの?」

 は、として意識を取り戻す航。いかんいかん、*また*トリップ
していた様だった。にこ、と微笑んで誤魔化しシリアルを掻き込む。





 いや、掻き込もうとした、その瞬間だった。





 どがぁぁぁぁあがががががあああががががががああああががああ!

 (6倍角ほどで御読み頂けますと臨場感が増します by 書き手)




春歌 「きゃっ!」
花穂 「きゃあ!」 こけっ
衛  「なんだ!?」
鞠絵 「地震!?」
咲耶 「人工島にそんなもの無いわよ!」
眞深 「んじゃ爆発!?」
鈴凛 「ボ、ボクのせいじゃないよ!」
千影 「…フ。わたしのせいでもないぞ…」

 突然にダイニングを襲った轟音と震動に悲鳴を上げる妹達。まる
でマグニチュード8級の直下型地震の様な音と揺れの暴力が彼女た
ちを翻弄する。が、それも一瞬で止み、後に残るは惨憺たる惨状の
リビング。この揺れ方からして、どうやら地震ではなかったらしい。
しかし其処は「動に在って静を忘れず」のヒロインたちだからノー
ダメージ。伊達に鈴凛4号でのパニックを潜りぬけた訳ではない。

 あ、約1名は例外。

可憐 「きゃあっ! お兄ちゃん、大丈夫!?」
四葉 「こ、これは『怪奇!ミルキーウェイの怨念が兄チャマに
    とり付く!』の段デスね! チェキしちゃうデス!」
白雪 「うわぁ、ミルクいっぱいの兄様ですの! おいしそうです
    の! む! 来た来た来た来た来ましたですの! 今晩の
    メニューは『兄様のミルク冷製ガスパッチョ』ですの!」
花穂 「起きてっ起きてっおにーちゃま! ふれーふれー!」
春歌 「花穂ちゃん、兄君殿を応援する前に、自分が起きなきゃ。」

 まぁ丁度シリアルを掻き込もうとしてミルク一杯のボウルを持ち
上げていた時に直下型地震に襲われればこうなるだろうなぁと言う
惨状を文字通り体現していた人物が、テーブルの向こうにミルク
一杯*だった*ボウルを被ってひっくり返っていた。慌てて介抱に
走る可憐、続いて妹達。これだけの惨状ともなれば両隣の人物が被
害を被らない筈は無いのだが、可憐はきっちりドレスに染み一つ付
けていない処が流石。ではもう一人の隣人はと言うと?





亞里亞「亞〜里〜亞〜は〜、此〜処〜が〜好〜き〜。」





 ちゃっかり自分の皿持参でテーブルの下に避難していたりする。





◆AM08:10 ダイニング

航  「あ痛たたたた・・・なんなんだよ、まったく・・・」

 どうやら漸く着替え終わったらしい航が自室から這い出てきた時
には、既に妹達がリビングを片付け終わり先の轟音の震源地である
海辺へ、全員が出かけ払った後だった。あれだけの惨状がたった数
分で全く元通りと言う様子に先ずは唖然とする航だったが、

航  「そんなバカな。」

で終わってしまう辺りが、如何にも彼らしいと言えよう。ともあれ
特に用事は無くなったらしい事を見越した航は、この大惨事を早速
「アキヲへ」とやらかすべく愛用のメールパッドを開き・・・

衛  「あ!何やってんだよアニィ!この大事な時に!」

 ・・・開いた所で、今日もまた平和な1日が過ぎ去ってしまった
事に哀悼の涙を流した。そのまま自分の涙ごと、蓋を閉じる。

春歌 「衛ちゃ〜ん、兄君殿は、もう御召し変えを終えられた様で
    すか? ならば早速、海辺へと参らせ給いましょう。」
雛子 「・・・ねぇねぇ衛ちゃん? 春歌ちゃんってば、何を言っ
    てるの?」
衛  「え?あ、要するにアニィと一緒に海へ行こうってさ。」
雛子 「ふ〜ん。ひなね、全っ然わからなかったの、クシシシ。」
春歌 (ちょっぴりムカ)

 どうやら海辺からとんぼ返りで自分を呼びに来たらしい妹たちへ
微笑むと(困った時の得意技)、航はポケットにパッドを押し込んで
妹たちと連れ立ちリビングを出た。





 再び此処に帰る事が出来るだろうか、などとは微塵も考えずに…。





◆AM08:15 海岸

航  「そんなバカな。」

 絵に描いたような呆然とした表情で、それを見上げる航。黒々と
した影を砂浜と遠浅の海に落としながら、それは不時着した時の姿
勢そのままに傾いで止まっていた。しかし悪目立ちしそうな真黄色
の機体は然程壊れていず、砂丘にめり込む機体下面の大口径ターボ
ファンも、巨大なコンテナ上にずらっと並ぶターボジェットも、見
た目では無傷の様だった。ただ機体正面に突出するコクピットだけ
がまるで狙い済まされたかの様に、見るも無残に打ち砕かれている。
しかしそんな細かいディテールなど目に入らず、航はただただ眼前
に聳える巨大な機体に目を奪われていた。友人の影響で、モニター
越しには見た事が何遍もあるものの、こうして目の前で実物を見る
のは初めての機体。こんなに巨大だったのか、これは・・・。

雛子 「おっきいねー。ひなたちのおうちがはいっちゃいそうだね」
衛  「そりゃあMSを何機も運べる飛行機だからね。大きいよ。」
白雪 「ふぇ? MSって、なんですの?」
鞠絵 「えっとね、そもそもは宇宙開発用の機動マニピュレータで」
四葉 「それは兎も角!この四葉がチェキした所に拠れば、さっき
    の音と地震はこれが落っこった時の衝撃に違いないデス!」
可憐 「それはもう、誰だって判ってると思うけど(^^;)。」
千影 「…気配を感じない…どうやらこの機体は無人の様だな…」
花穂 「え? じゃあこの飛行機って、リモコンなのぉ?」
咲耶 「千影ちゃん、とりあえずそういう事にしといて。御願いだ
    から『今は無人だが…』なんて言いださないでね。」
亞里亞「・・・亞〜里〜亞〜は〜、此〜処〜が〜好〜き〜。」
春歌 「って亞里亞ちゃん、翼の下に潜っちゃ危のう御座いますわ」

 呆然と見上げる航同様に、此方も巨大な墜落機を眺めている妹達。
砂浜の足跡からすると既に機体へ大分と近寄って探索していたらし
いのだが、そこはそれ「如何なる事より兄を優先」の妹たちらしく、
航の砂浜到着と同時に三々五々集まってきた。御蔭で何ら脚を運ぶ
事無く情報が集められたのは良かったが、如何せん肝心な事が聞け
ていない。でも・・・この手には詳しそうな妹約2名は、何処だ?

可憐 「え? 鈴凛ちゃんと眞深ちゃん?」
咲耶 「あぁ、眞深ちゃんならこの機体を見た途端に『お宝満載!』
    とか叫んで、あそこのコンテナハッチに突進してたけど。」
鞠絵 「鈴凛ちゃんもそれに続きました。もう目を爛々と輝かせて。」

 あぁやっぱり。で?

春歌 「鈴凛ちゃんが言うには、これは輸送機だそうです。」
衛  「えっと、・・・なんて所の輸送機って言ってたっけ?」





白雪 「確か・・・連邦軍って言ってましたの。」
花穂 「名前は、ミディアって言うんだって。可愛い。」





鞠絵 「だ、そうです。砂浜への減り込み具合からすると、随分と
    重い物を運んでるんじゃないかって。今、中で調査中。」
可憐 「それと、砂浜に残った航跡からすると、どうも九州の方か
    ら、こう低空で、此処の瀬戸内上空を飛んでいたんじゃな
    いかって言うの。正規の高空航路を使わずに、まるで四国
    と山陽の山並みの間を掻い潜るようにして、」

 と、手振りを交えて離す鞠絵と可憐。流石の航も此処まで聞けば
何某かヤバめな代物が格納されているらしい事はカンで判る。この
ままではまた碌な事に巻き込まれかねないと瞬時に悟った危機感覚
で周囲の妹たちへ警告を発しようと、航が口を開いた瞬間。

鈴凛 「みんなー! ちょっと来てー!」

 何時の間に其処まで入り込んだのやら、な鈴凛がコンテナ中層に
あるハッチから顔だけ出して、砂浜に並ぶ姉妹たちへ叫んだ。どう
やらコンテナの中に入れるハッチもあるらしく、鈴凛の声を聞いた
妹達が連れ立って機体へと歩いてゆく。此処で止めるのが兄と言う
ものなのだろうが、そんな能動的な行動が出来るようなら元々苦労
はしていない。と言う訳で航も、両脇前後をがっちり妹たちに固め
られ、墜落した機体へと脚を運んでいた。





 「如何にも軍用」と言った、灰色に鈍く輝く巨大コンテナへと。





◆AM08:20 ミディア輸送機 コンテナ内部

航  「そんなバカな。」

 と言ってみても始まらない。尤もそんな思いはどの妹たちも同じ
様で、全員が眼前の信じがたい光景を、ぽけらっと口を半開きにし
て見上げていた。此処は連邦軍輸送機ミディアが抱える巨大コンテ
ナの内部。どうやら堅牢極まるコンテナそのものの筐体と、その内
部に縦横無尽に張り巡らされていたショックアブソーバーの御蔭で、
中の荷物は無傷のようだった。ぱらぱらと広大なコンテナに散って
いった妹達が、巨大な「荷物」の束、と言うか「機体群」を見上げ
ながら、口々に好き勝手な感想を言い始めていた。

四葉 「かっこいーデス!おっきいデス!でもこんなのチェキしき
    れないです!けど写真は撮っておくデス!」ぱしゃぱしゃ
衛  「うわー、後ろにすんげー噴射口がずらっと。って事は、」
春歌 「これ飛行機・・・なんですか?全部?」
鞠絵 「と言うよりロケットみたいに見えるけど・・・」
千影 「…ふむ…天空を貫く矛先か…禍々しい力を感じるな…」
花穂 「えっと、赤いのと、銀色のと、黄色いのがあるのねー。」
雛子 「あれぇ? おんなじかっこのがいくつもあるよ?」
亞里亞「ひ〜、ふ〜、み〜、よ〜・・・お〜ん〜な〜じ〜の〜が〜
    よ〜っ〜つ〜づ〜つ〜あ〜る〜の〜。」
白雪 「つまり3つ1組4セット、全部で12機ですの。1ダース
    で1ケースですから、セット価格でお得になりますの。」
可憐 「通販食品の特売じゃないんだけど(^^;)。でもそうすると、
    つまり飛行機で飛行機を運んでたって事なの?」
咲耶 「どう見てもそうだけど…ねぇお兄様、これって、何なの?」

 しかし航には到底答えられなかった。少ない(と言うか殆どいない)
友人に「漢だったらこれを見て泣け!」と無理矢理見せられた番組
に登場していたそれは、モニター越しで眺めるよりずっと巨大で、
かつ暴力的な力強さを漂わせていた。それはそうだろう。何せコイ
ツラは*たった1機(正確には3機1組)で強大な侵略者から日本を
守った*曰くつきの代物なのだから。

航  「そんな・・・そんなバカな・・・」

 この強大な機械が自然に放つ雰囲気に圧倒されてしまい、無言に
なってしまった航。思わず不安になってしまう妹達。と、そこへ。

鈴凛 「いやー、この機体にお目にかかれる日がくるとはねー。」
可憐 「あ、鈴凛ちゃん。」

 コンテナ内中層部をぐるっと取り巻くキャットウォークから降り
てきた鈴凛が、感嘆しきった表情を浮かべて帰ってきた。散らばっ
ていた妹達が集まり、航と一緒に鈴凛を取り囲む。

咲耶 「で、鈴凛ちゃん? 結局これって、何なの?」
鈴凛 「れ? 知らないの? みんな?」

 こくこく、と首を縦に振る一同。はぁ、と溜息をついて答える。

鈴凛 「メチャ有名じゃないの。でもまぁ、実物大になっちゃ
    判らないのも無理ないかな?





    ゲットマシンだよ。」





可憐 「・・・自転車には見えないけど?」





鈴凛 「それはケッタマシン! これはゲットマシン!」
花穂 「・・・ねぇねぇ鞠絵ちゃん、どう違うの?」
鞠絵 「わ、私に聞かれても(^^;)。」
鈴凛 「全然違うじゃないの! これが自転車に見える!?」
衛  「あのタイヤ、ボクのBMXよりゃ頑丈そうだなぁ。」
白雪 「でもペダルがありませんの。これでは漕げませんの。」
鈴凛 「だぁら違うってのに! これはゲットマシン! 自転車じゃ
    なーい! つーかみんな東海圏出身じゃないでしょ!」
咲耶 「そりゃまぁ、自転車にはロケットノズルなんかついてない
    ものねぇ。でもフラッシャーは付いてるみたいよ。」
雛子 「あ、ひなねぇ、ひなねぇ、補助輪がついていれば自転車に
    乗れるんだよ。えらい? クシシシシ。」
亞里亞「亞〜里〜亞〜も〜乗〜り〜た〜い〜の〜」
春歌 「あぁ、だから三輪車なんですのね。」
鈴凛 「人の話を聞けー!」

 ま、そんな耳を持ち合わせているのなら今頃は航がこの島に居る
訳はなし。と言う訳で口々に「目の前の機体は自転車に見えない」
事を言い合った後に、漸く妹たちは鈴凛の説明を聞く気になった。

鈴凛 「これはゲットマシン! 九州は阿蘇山碌にある早乙女研究
    所が開発した、元は宇宙開発用の多目的活動用作業機械!
    3体の航空機が3つの組み合わせで合体して、3種類のロ
    ボットになるんだけど、今のこれは合体前の状態。ただ、
    これはどうやらその次に開発された純戦闘用マシンの方。」
咲耶 「え! じゃあこれって、兵器なの?」
白雪 「ま!怖いですの!でもやっぱり飛行機なんですの?」
鈴凛 「あ、大丈夫大丈夫。どうやらどの機体もパイロットが乗っ
    てないみたいだし、がっちり封印されているから。」
鞠絵 「それじゃ、これは飛ばないのね。ほっ。」
雛子 「えー、飛ばないのぉ? そんなぁ、もったいなーい。」
鈴凛 「でもコンテナに止めてあるラッチを外せば、簡単にばらせ
    るみたい。流石だなぁ、緊急にバラす時の事も考えて作っ
    てあるんだ。庫内ガントリークレーンもあるしね。」
四葉 「むー! 四葉は飛んでるトコをチェキしたいデス!」
可憐 「でもでも、こんな機械を運ぶ時って、大抵燃料を抜くんで
    しょう? ならば飛ぶわけ無いわね、ね。」
鈴凛 「それがねぇ、この機体って機内のゲッター炉を熱源とする
    熱核ジェットで力任せに飛ぶ機体だから、推進剤が要らな
    いんだ。それに反動推進系(RCS)は充填されてるみたい。」
衛  「え! 核ジェット! 凄ぇ凄ぇ! それで、その炉って?」
千影 「…成る程な…禍々しい力を何処からも感じると思ったが…」
鈴凛 「うん、千影ちゃんの言う通り。ゲッター炉はきっちり稼動
    していて、今はアイドリング状態。と言うか、一旦動かし
    始めたら滅多な事では火を落とせないみたい。つまり、」
花穂 「あっちこっち止めてあるのを外して、クレーンでコンテナ
    から下ろして、おそとに出せば、」
亞里亞「・・・こ〜れ〜、飛〜ぶ〜の〜?」
鈴凛 「・・・うん。」

 ひぇええええ!と驚いてしまう妹一同。尤も、鈴凛を除く年長組
は兵器なんか見たくも無いと封印する気で一致し、一方お子様連中
は手に入った飛行機を飛ばす気満々だったりするから、直ぐにすっ
たもんだの激論が始まる。こんな危ない物はさっさとコンテナごと
海に流してしまおう、いやそれでは折角の新品機体が勿体無いから
1機だけでも飛ばそう、いやいや見たところきっちり武装している
みたいだから矢張り危なすぎる、いやいやいや大人しく飛ばすだけ
なら問題ないはずだ、とそりゃもう喧喧囂囂。女3人集まれば姦し
いと良く言ったものだが、それが4倍ともなれば桁が違うどころで
はない。で、いい加減言い争いに疲れた所で言うは、妹達の良心。

可憐 「ねぇお兄ちゃん? どうしたらいいと思う?」

 その声に即座に反応し、各人各様の期待に満ち満ちた目で航を見
る妹一同。つーか航、あんたいたの?

航  「そんなバカな。」
咲耶 「それは判ってるから。兎に角、こんな危なっかしいものを
    島に降ろすわけには行かないったら。」
四葉 「でもでも、このまんま沈めちゃうなんて勿体無いデス!」
白雪 「そうですの。ちょっとくらい飛ばせてやらないと勿体無い
    オバケが出ちゃいますの。オノコシは許しませんですの。」
春歌 「白雪ちゃん、お食事じゃありませんのよ。」
鞠絵 「そうです。それにだいたい、こんなに大きい飛行機なんか
    飛ばせる人がいるんですか?」
雛子 「鈴凛ちゃんなら飛ばせるよ、きっと!」
花穂 「そうそう! 飛ばせる飛ばせる! 頑張れ頑張れ!」
鈴凛 「いやー、流石にコイツぁボクでも無理だと思うけど。」
千影 「…先には、新品の機体なんだから詳細なチュートリアルが
    コクピットに付いている筈だと言ってなかったか?…」
可憐 「ちっ千影ちゃん、そういう事は黙ってて、御願い!」
衛  「嘘は良くないぞー、嘘は。それにこんなのを飛ばすゲーム
    って、よくアニィがやってるじゃん。」
亞里亞「亞〜里〜亞〜も〜、乗〜り〜た〜い〜の〜。ぶ〜〜ん。」
咲耶 「いや、そーいう風に飛ぶ機体じゃないと思うけど…。」
可憐 「・・・で、どうしよう、おにいちゃん?」

 また、二十四の瞳にじっと見つめられる航。冷汗三斗。

航  「は、はは、ははは・・・なんなんだよ、まったく・・・。」

 ま、こうなったらこの兄が何も決断できない事は他ならぬ妹達が
一番良く知っている。尤も多数決を取ろうにも、先の発言内容で判
るとおりに丁度6対6。決まる訳がない・・・あ。





眞深 「あったしも飛びたいなー。と言う訳で、飛ぶ側に1票。」





 こいつを忘れてたっけ。どうやらミディア機内のお宝探索は終わ
ったらしく、何時の間にやら姉妹たちの輪の外に立っていた眞深が
ひょいと手を上げながら、こう無責任に言い放った。その割には何
も持っていないのが妙だが。そして当然、猛然と上がる非難の声。

咲耶 「眞深ちゃん! なに考えてるの!」
春歌 「そうです! こんなのに乗ってもし何かあったら、只じゃ
    すみませんのよ! 怪我だけじゃすまなかったら、一体!」
鞠絵 「それに入院するって、寂しいのよ・・・せつないのよ・・」
千影 「…それにこれは禍々しい力を発する機械だ…こんなものが
    もし暴走でもすれば、私の力では止められぬ…。」
鈴凛 「まー、何せ戦闘機だからねぇ。いくらボクでも、チュート
    リアルだけで飛ばすのは、ちょっとキツいなぁ。」
可憐 「眞深ちゃん、御願い。無茶言わないで。」

 が、そんな年長組の妹たちを無表情に見ると、ちょいちょいと手
招く眞深。訝しげな表情で眞深に付いてゆき、皆の輪から少し離れ
る上記6名。当然ながら航も年少組もついて行こうとしたが、

眞深 「アンちゃん、ちょいとその子たちの面倒見といて。」

と頼まれた航が、訳の判らないままに雛子・白雪・亞里亞・衛・花
穂・四葉をおしとどめる。思わず呟く航。

航  「なんなんだよ、まったく・・・。」

 ちょいと離れ、頬寄せ合ってぼそぼそとやっている年長組。その
中から突然、眞深と鈴凛を除く妹達の悲鳴が一瞬上がったが、すぐ
にまたぼそぼそと小声で相談し始める。と、数分でその話し合いも
終わり、また航の周りに集まってくる年長組の妹達だが、何故か皆
表情が強張っていた。そんな彼女らの様子に思わず不安になってし
まう、航以下年少組の妹達。が、其処は手馴れたもので各年長組の
妹達が巧みに年少組の者をあやしてゆく。これで自分を縋る妹達か
ら解放されほっとした航だったが、今度は眞深に引っ張られた。

航  「ちょ、ちょっとちょっと、なんなんだよ、まったく、」
眞深 「いーから来る! 大事な話があるんだから。」

 ぐいぐいと航を引っ張り、そのまま階上へ向かうキャットウォー
クの階段を上り始める眞深。その真剣な様子からどうやらただ事で
はないと考えた航が、1歩遅れて大人しくついてゆく。カンカンと
硬い音をヒールから響かせてキャットウォークを歩いてゆき、眞深
は途中に開いていたハッチをくぐった。つられて航も。途端に驚く。

航  「こ、これは!・・・そんなバカな・・・」
眞深 「ははっ、やっぱビックリした?」

 其処は満天の星だった。いや、星と見紛ったのは天井から壁面ま
でを覆い尽くすようなコンソールの彼方此方で乱舞する、LEDと
ディスプレイの輝き。何処から集められたかも判らない情報群が、
幾多のコンソール上に、暗い室内の中で明滅している。

航  「そんな・・・なんなんだよ・・・」

 思わず、ふらふらっと室内へ歩を進める航。

眞深 「あ。」

 どてっ

眞深 「危ないよ、アンちゃん。」

 遅いって。

航  「痛たたた・・・・なんなんだよ、まったく・・・うわぁ!」

 何か柔らかく重いものに躓きコケてしまった航が、起き上がるべ
く傍らの床をまさぐり、それに触れてしまった。ぐにゃり、と柔ら
かい大きなもの。布に覆われている・・・いや、服を着ているのだ。

航  「ひ、ひひ、ひひひひ・・・人じゃないか!つ、冷たい!」
眞深 「あー、アンちゃんは死体に免疫が無かったか、やっぱ。」
航  「なななななななんなんだよ! 死体!? 救急車!」
眞深 「遅いって。それより落ち着いてよ。こんな所でパニクッた
    って仕方ないでしょ。ほら、深呼吸。吸って〜吐いて〜」

 訳の判らないまま、眞深の言う通りに深呼吸する航。しかしこれ
で一応落ち着いてしまう。見事に単純な肉体は頭脳と同じ。

眞深 「落ち着いた?」
航  「・・・なんなんだよ?」
眞深 「ま、そのくらいで何時も通りのアンちゃんか。こっちに来
    て。あ、そこに寝てる兵士の皆さんは踏まないでね、幾ら
    もう死んでると言っても、やっぱ可哀想だから。」
航  「うわぁ! ななななんなんだよ!まったく!」
眞深 「だからパニクらないでってば。ほら、そこらの椅子には碌
    なシートベルトも無いでしょ? だからきっと不時着した
    時にあっちこっちに叩きつけられて、それで打ち所が悪か
    ったんでしょ。なんまんだぶなんまんだぶ。」
航  「まままま眞深ちゃん、よよよよよく平気だね。」
眞深 「お、大分落ち着いたみたいだね、良好良好。」
航  「答えてよ!」
眞深 「いーじゃないの別にそんな事。それよりも、ほらこれ。」
航  「え?」

 どうやら暗闇にも目が慣れ、漸くほぼ暗黒の室内がLEDやディ
スプレイの輝きで様子が見えてくる。思ったよりは広くない室内の
床には軍人っぽいかっちりした詰襟の制服を着ている男がゴロゴロ
と2〜3人転がっており歩き難い事夥しいが、入り口以外の壁面と
天井全てを埋め尽くしているコンソールは随分と頑丈に出来ている
らしく傷一つない。いや、あちこちの角には何やらどす黒い染みが
着いているが、とりあえず見なかった事にして、航は眞深が指差す
コンソールの一つに近寄り、覗き込んだ。

航  「・・・なに、これ?」
眞深 「見りゃ判るじゃない。」
航  「わかんないよ! なんなんだよ、いったい!」
眞深 「あっつ・・・耳元で怒鳴らないでよ! 怒鳴ったって判る
    もんじゃないでしょ。で、本当に知らないワケ?」
航  「・・・ごめん。」
眞深 「アップダウンの激しい奴ねぇ、まったく。ま、いーわ。
    これはレーダーみたいなもの。中心がこの機体。ちかちか
    周りで光るのが、敵味方含めた関係者ってとこね。色分け
    されてるのが、たぶん敵味方を現してるんだと思う。で、
    このエゴエゴした線が、この島と対岸の海岸線ね。」

 とは言われても、全くの素人である航に航空レーダーの情報集積
表示なんかが読めるわけはない。縦横同心円の目盛りに区切られた
ディスプレイは、幾つかの輝点を略語らしい英数字を纏わりつかせ
てスクリーン上を動かしていた。それでも線画で重ねられている不
規則な曲線がこの島および近隣海岸の海岸線だと言う事が何とか判
ると、急に輝点と中心との距離が現実味を帯びて感じられた。

航  「眞深ちゃん・・・なんでこんなもの、読めるの?」
眞深 「細かい事は気にしない! それより、どんな風に見える?」
航  「これ・・・このちかちか・・・動いてるよ。」
眞深 「あったりまえでしょ! しかもなんか、この機体を探して
    るみたいって事が判らないかなぁ? 敵味方入り混じりで。」
航  「敵味方含めた関係者って・・・」
眞深 「あぁ。この赤いのが敵、青いのが味方。IFFに応答しな
    い機体は黄色で出ているみたい。」

 と言われ、慌ててコンソールの画面を凝視する航。





 どう見ても、何度見ても、どれだけ見回しても、





 真っ赤っ赤に見える。





航  「・・・敵だらけに見えるんだけど・・・」
眞深 「あ、やっぱそう見えるんだ。」

 にか、と笑って航を見る眞深。ディスプレイの光で下から照らし
出されているから、ホラーショーの魔女のように見える。これもあ
いまって、すっかり航は震え上がってしまった。

航  「ど!どどどどどどどどどーすんだよ一体!敵!?何で!?
    どうして!? 俺たち、何かしたのか!?」
眞深 「何かしたのは私たちじゃなくって連邦軍。敵らしい連中は
    この機体を追ってるらしく、現在は近傍海域を大捜索中。
    けれどこの島は人工島で、電波障害対策にステルス技術が
    使われているから、今んとこ、この機体はこの島ごと見つ
    かってない。だけど可視光まで曲げている訳じゃないから、
    目視で観測されたら一発で見つかっちゃう。つまり時間の
    問題。見つけるのは多分敵さん。ま、こんなとこかなぁ。」
航  「なんで!どうして!いったい!なに!え!てき!そんな!」

 すっかりパニック状態に戻ってしまった航を呆れ果てたように見
ながら、こちらはのほほんと言い切った眞深。こう言う時に一緒に
パニクっては相乗するだけだから彼女の態度は正しいものの、航と
言えば周りがさっぱり見えていない状態だから効果は極めて薄い。

 で、こんな時に効果がある手段と言えば。





 ぱぁん!





 ぱちくり、と目を瞬かせる航。頬を押さえる。熱い。目の前を見
れば、振り下ろした右手をひらひらと舞わせてふぅふぅ息を吹きか
けている眞深。にこ、と笑って航に尋ねる。

眞深 「落ち着いた?」
航  「・・・うん・・・いや、でも・・・」
眞深 「ま、人の話を聞ける程度にはなったみたいね。」
航  「・・・ごめん。」
眞深 「それはいーから。で、どうする?」
航  「・・・どうする・・・って?」

 どうしたら良いんだろう? こんな事、教科書にだって参考書に
だって載ってない。勉強した事も無い。予備校だって教えてない。

航  「・・・どうしよう・・・」
眞深 「あーもーじれったい! じゃ、逃げるの!?戦うの!?
    どっち!?」

 どっち?・・逃げる・・・戦う・・・戦う!?

航  「戦う!?」
眞深 「そーよ。敵は目前。数は絶対多数。これで逃げるんじゃな
    きゃ、戦うっきゃないでしょ。」
航  「ちょ、ちょっと待ってよ。敵?ってそれ、この飛行機の敵
    だろう? なんで俺たちが戦わなきゃいけないんだよ。」
眞深 「だって、こんなに深く関わっちゃったんだもん。この機体
    から私たちが発見された時、敵さんが大人しく私たちを解
    放してくれると思う?いんや今すぐ逃げ出して知らん顔し
    てても近隣住民って言ったら私たちだけなんだから、ウェ
    ルカムハウスに大挙して敵兵士が押し寄せ即時逮捕、拉致
    監禁は間違いなしね。待っているのは拷問と自白剤かな。」
航  「だって俺たち、連邦軍だの研究所だのって、何にも関係な
    いんだよ? たまたま覗きに来ていただけの、民間人じゃ
    ないか。なのになんで捕まったりする訳?」
眞深 「アンちゃん、あまーい。いーい?この機体が瀬戸内を両側
    の山地に隠れるようしてに飛んでたのは聞いた?」

 そう言えば、そんな事を鈴凛が言っていたと、可憐が言っていた。

眞深 「鈴凛ちゃんに手伝って貰ってこの機体のナビデータを呼び
    出したんだけど、それはほぼ間違いなし。加えてその時の
    敵分布を重ねてみたんだけど、そりゃもう見事に敵警戒網
    を掻い潜って飛んできてる。ただこの時期の瀬戸内の湿度
    の高さを計算に入れていなかったらしくって、エンジンの
    不調でおっこっちゃったってのが、真相みたい。」
航  「それが一体、どんな意味が・・・」
眞深 「つまりこの機体は、そんな落っこちるほどのリスクを冒し
    ても敵に見つかりたくなかったって事。そして今展開され
    ている敵味方入り混じりの捜索具合からしても、どっちも
    この機体を血眼になって探しているのは明らか。そんな中
    で、私たちは真っ先にこの機体を見つけ、中に入ってる物
    まで見ちゃった。」

 ここで一旦言葉を切り、また怪しげにニカと笑って、続ける。

眞深 「・・・こぉんな軍機密の塊みたいな物に触れた者を待つ
    運命って、たいていどんな?」

 確認されなくたって判る。世にあるハリウッドアクション映画を
紐解くまでも無く、「見た以上は、生かして帰さぬ」はMIBな連
中が採るステロタイプなパターンだ。そして自分を含め妹達全員が、
実につぶさに積荷の概要を見てしまい、あまつさえ積荷の正体まで
掴んでしまっている状況から考えれば、お目こぼしされる可能性は
ゼロ。もし捕まれば、敵味方構わず拉致監禁は間違い無しだろう。

航  「・・・そんなバカな・・・・」

 これだけを一瞬で想像し、加えて拉致監禁された後の自分や妹達
の姿まで脳裏へ描いてしまった航は、文字通り真っ青になった。が、
流石の航でも此処で迷っている時間が無い事は一応理解できる。彼
にしては珍しく瞬時に決断し、航は傍らの眞深に叫んだ。

航  「逃げよう!」

 が、眞深はそれに冷たく言い放つ。

眞深 「どうやって?」
航  「どうやってって・・・直ぐに此処から離れて、家に帰って、」
眞深 「だから無駄だってば。此処に一番近い民間の家ってウェル
    カムハウスでしょ? だったら真っ先に調べられるよ。」
航  「そんなの知らん振りしてればいいだけじゃないか!」
眞深 「おー甘。これだけ機内のあっちこっちに足跡を着けてちゃ、
    プロが見たら人数から性別構成、身長体重まで一発でバレ
    るって。しかも砂浜にも足跡だらけでしょ。あとを辿られ
    たら、ウェルカムハウスへ御案内〜ってとこね。」
航  「じゃ、今すぐ掃除して、」
眞深 「そんな事やってる間に、機内で捕まると思うなぁ。」
航  「じゃあどうしろって言うんだよ! 大人しく捕まれって言
    うのか!」

 元々キレ易い航だが、今回ばかりは無理も無いだろう。まさしく
八方塞がり。逃げてもあっさり捕まると言われてしまえば、何処に
逃げる事も思いつけない。思わず目の前の眞深に八つ当たり。いか
にも彼らしいといえば彼らしく、当然此処は憤ってしかるべきだが、
矢張り単なるパニックは時間の無駄。そんな彼へ眞深は、




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◆ドラゴン
○咲耶  中3 お兄様   過激系   発育:極めて良
○鈴凛  中2 アニキ   飛んでる系 発育:極めて良
○可憐  中1 お兄ちゃん 純情系   発育:年齢相応
○雛子  小3 おにいたま 無邪気系  発育:初潮前

◆ライガー
○千影  中2 兄くん   過激系   発育:年齢相応
○春歌  中2 兄君殿   過激系   発育:極めて良
○白雪  中1 にいさま  へっぽこ系 発育:年齢相応
○亞里亞 小4 兄や    おっとり系 発育:初潮前

◆ポセイドン
○鞠絵  中2 兄上様   おっとり系 発育:年齢相応
○衛   中1 あにぃ   純情系   発育:やや悪
○花穂  小5 お兄ちゃま へっぽこ系 発育:良
○四葉  中1 兄チャマ  へっぽこ系 発育:良

 眞深     あんちゃん

●ネタ
・「ゲッターを操れる者は、余程の天才か、バカだけだ!」
・4組の量産型ゲッターGの中に、1組だけオリジナルが。
・これを通信してきた連中は「九州方面から」「電波感度は
 弱いというより遠い」
・オリジナルゲッターの見極めは「本物を見抜くのに長けて
 いる」と評価された白雪。日々のお買い物で鍛えた技。
・亞里亞は「超光速粒子感知能力者」。そのために普段から
 人とテンポをあわせるべく極端にゆっくり行動しているが、
 本来は人より余程高速に活動できる。ゲッターライガーの
 稼動タイムラグが彼女の「先行時間行動」を丁度打ち消す
 事になり、結果としてライガー本来の高速戦闘を実現する。