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「さくらと桃矢の秘密の終わり」制作秘話

関連があるので, このWeb「カードキャプターさくらF」を作った当時の裏話から語らせて頂きます。

Web「カードキャプターさくらF」制作秘話

2000年10月10日。かねてより考えていた, 「クロウ/さくらカード属性一覧」を作り始めました。これは, fj等に投稿された第46話スレッド中でPARALLAXさんが,

この点に付いては「魔力階級が同クラスまたは敵の魔力階級が自己のそれを下回る場 合には同属性のカードで捕まられえるが、魔力階級が異なり敵の階級が自己のそれを 上回る場合には同属性のカードを使用した時に自己のカードが敵に取りこまれる/利 用される恐れがある。」と解釈しています。ですから第1話では「翔(FLY)」のカー ドは魔力階級が上(何と言っても五大元素カード)の「風(WINDY)」で捕獲できたの でしょうが、第46話では「木(WOOD)」では「月(ユエ)」の魔力階級に及ばなかった (何と言っても相手は裏表紙)と言う事でしょうか。

良くあるボードゲームやカードゲームでは御約束な事なので「大きな御友達」では 判っている人が多くこうして説明が蔑ろにされがちですが、こう言った細かい所ほど 何回も説明するべきではないかと思います。それでなくったって「小さな御友達」に は判り難い所が多い作品なんだし。クロウカードも全枚揃いましたので、カードの名 称(和名・英語/広東語名)・属性・能力・発現パターン(翔=杖/背中に翼・跳= 靴に羽・声=幼女・歌=少女(人形?)・本=まんま・他)・魔力階級が整理されれ ば有り難いのですが…藤森さぁん、早く帰って来て下さいよー(;o;)。

とおっしゃっていたのを見つけ(Message-ID: (N) (Q) <7ks8ro$kuv$1@meshsv230.tk.mesh.ad.jp>), いずれ作ろうと考えていたためです。ちなみに, この記事が投稿された当時(Date: Thu, 24 Jun 1999 12:25:40 +0900)は, 私はまださくらちゃんのことを知りませんでした(笑) 当然この記事も, リアルタイムでは読んでいません。

翌11日, www2.tky.3web.ne.jpにC.C.SAKURAディレクトリを用意して, 一覧(当時はplain text)を公開しました。同時にfj.rec.animationに, この一覧の検証願いを投稿しました(Message-ID: (N) (Q) <8s27au$og1$1@news.osk.3web.ne.jp>)。

また, このとき, 「C.C.さくらF 妄想一覧」も(やはりplain textでしたが)公開しました。これは……何で作っていたのか, 既に覚えていない(笑)

実際に検証してくださった方がどれほどいらっしゃったかはわかりません。ただ一人, 私にメールをくださったのが, さくら記事および長編妄想の大御所・藤森英二郎さんでした。藤森さんの指摘を受けて修正し, 14日にHTML化して, 現在の「クロウ/さくらカード一覧」の形になりました。上下・強弱関係についての厳密な相関は作れなかったのですが。

藤森さんと数回メールをやりとりする間に, 未公開だった長編妄想(最後に残った「波」(WAVE)のカードの捕獲話)のプロットを見せていただきました。このとき私は, 脇からさらに妄想しようとしてとんでもない大ボケをかましてしまったのですが……


「さくらと桃矢の秘密の終わり」制作秘話

ともあれ, 藤森さんのプロットに触発され, 自分でも長編妄想をつくろうと考えるようになりました。実際にプロットを立て始めたのは, 11月13日になります(学校で(笑))

藤森さんが「クロウカード編で, 封印エピソードが語られていない4枚のカード」について妄想しているのにならい, 当初から「さくらカード編で, 変換エピソードが語られていない6枚のカード」で妄想することにしていました。コンセプトは「さくらちゃんが桃矢兄ちゃんの目の前で魔法を使う」でした。

これを実現するには, 「桃矢兄ちゃんは, さくらちゃんがやっていることを知っている」ということをさくらちゃん自身が知る, 第65話より後の話にしなければいけません。

しかし, 第65話と第66話の間は1日しかない上, このとき桃矢兄ちゃんは魔力を失って倒れています。第68話に達してしまうと, そのまま第69話の最終対決に雪崩込んでしまいます。つまり, 第66話と第67話の間, 第67話途中の1週間, 第67話と第68話の間にしか妄想の余地がないということになります。

余談。12月8日に講談社の「カードキャプターさくら ILLUSIRATIONS COLLECTION」を購入したのですが, これの2冊目(さくらカード編)に収録されているショートコミック(小狼が熱を出す話)も, だいたいこのあたりに入る話のようですね。原作設定ですが。


なんだかんだと思考を巡らせ, 考えがまとまって行きました。以下に, 当時作っていたメモを転載します。

こうして, 「矢」(ARROW)のカードのさくらカード化を妄想することに決まりました。しかし, ここに一つ問題があります。「矢」のカードはアニメ第35話と第36話の間の放送中断期間中に捕獲されたことになっているため, カード捕獲の様子がテレビ放映されていないのです。代わりに劇場版1999で登場していますが, 当時私はまださくらちゃんのことを知らず, 当然観に行っていません。ビデオの類も持っていません……

仕方がないので, Webで能力などを調査しました。その結果, 「放った1本の矢が途中で何本にも増える」という, 重要な能力が判明しました。これは確かに「撃」(SHOT)と区別されてしかるべきです。

カードキャプターさくらF banner 余談ですが, 検索しているうちに, NetNewsにも投稿されている北川達也さんのページ「さくら時計2000オフィシャルページ」に辿り着き, 勝手に触発されて作ったのがC.C.さくらFバナーです(笑)


実際には上記のメモと並行して作っていましたが, 以下が長編妄想のプロットです。なお, 本文執筆に際して変更した箇所も多々ありますので, 内容が微妙に一致していません。

"####"は, スペースを空けておいたものの, プロット段階では最後まで文章が追加されなかった部分です。


さて, 妄想内容の日付が3月2日と決まったことで, 第67話と第68話の間のエピソードということになりました。となれば, 目標は「NHK教育テレビの再放送で, 第67話が放送された直後に投稿する」です。

そのつもりで, 11月28日から妄想本文を書き始めました。しかし, なかなか思う通りに話は進まず, 結局投稿できたのは第68話も放送された後になってしまったのですが。

特に困ったのが「アイキャッチ前とアイキャッチ後の長さが違いすぎる」ことです。最終的に約350行のうち, 前半部がせいぜい100行しかありませんでした。藤森さんの長編妄想は見事にアイキャッチ前後の長さがほぼ同じなのに対して, 情けない限りです。

にもかかわらず, アイキャッチ前の奈久留ちゃん登場シーンは削りたくてしょうがありませんでした。脈絡上何の必然性もない上に, 「私も桃矢君たちをお迎えに行く!」と言い出しそうになる始末で……もしそんなことされたら, ケロちゃんが出て来られなくなる。カードキャプター出動に立ち会わせない方法は考えたのですが, どのみちケロちゃんが欠席するとラストシーンができなくなってしまうので(後述), 何としても避けなければなりませんでした。

奈久留ちゃんを完全に削ると, 前半部がさらに30行ほど減ってしまうので, そういうわけにもいきませんでした。さくらちゃんたちへの言い訳でフォローのしようもないことを口走りそうになるのをごまかしながら(当初は「桃矢君たちには黙っててね? ……私, もうすぐ日本を離れるんだ」なんて言っていました), なんとかあたり触りのない言い訳に収めることができました。

……そう, あの(余計なことは言わないっ!)は, 筆者の台詞でもあるのでした(笑)

他にも, 最初の「教室での会話」シーンに利佳ちゃん・奈緒子ちゃんの台詞を追加したり(当初はさくらちゃんと知世ちゃんだけの会話でした), 山崎君の講釈台詞を分割してさくらちゃんの台詞を挟むなど, セコく行を稼ぎました。女の子たちの台詞が一言だけだと, 利佳ちゃんファンの方などに斬られかねないので(笑), かえって気を使う羽目になりましたが。

結局, アイキャッチの位置自体をずらすという強引な手段に出ました。プロット段階では「帰宅途中での奈久留ちゃんとの会話→木之本家での会話」の間にアイキャッチがあったのを, 「木之本家でのコスプレ→駅で壊れながら撮影する知世ちゃん」の間に変更したのでした。


今回の知世ちゃん謹製コスチュームは, 具体的な描写はしていません(考えてもいません)が, フード付きのコートということにしています。こうすれば, ケロちゃんがさくらちゃんのフードの中に入ることで「ケロちゃんが, あくまでもぬいぐるみのふりをする=桃矢兄ちゃんとの関係に壁を作っておこうとする」ことを強調できるからです。

後にこの長編妄想を投稿する日, 妄想の直後の話となるはずの第68話を観て, 冒頭でさくらちゃんが「フードなしのコート」を着ているのに気が付いて焦りましたが(笑)

このとき, ケロちゃんは「兄ちゃんには顔合わせづらい」と言っています。これは「いままでずっとぬいぐるみのふりをしていたこと」「気付かれて何度も睨まれていること」などの理由もありますが, 実はもう一つ, 意味を持たせています(後述)。


アニメ本編では, 電車に乗るシーンはありましたが(第40話など)駅が出てきたことはない……はずです。私がイメージしたのは, 駅の構造は五反田駅(東京都), 駅前の風景は秋田駅と追分駅(秋田県)です。よく知っている駅ってだけですが。

ミラーボールのあった「お菓子屋さん」は, 秋田駅前の本金西武ビルくらいの位置で, アルス前のような飾り付けがされているというイメージです。地元ネタで済みません。

さくらちゃんたちに襲いかかるミラーボールは, 途中で3つに増えています。描写することはできませんでしたが, 実は「『火』『撃』などで1つだけを破壊しても, 他の2つが破片を吸い寄せて再生させる」という設定でした。2つが破壊されたら……どうなったんでしょ(笑) まぁ, 軒先にミラーボールはもっとたくさんあったと思うので, 数が少ないうちに全部一気に潰すのが正解ということで。

ともかく, その時点で活動していた3つを同時に破壊しなければならないので, 「矢」を使わなければならない……と強引に設定。

桃矢兄ちゃんの目の前で鍵を封印解除したさくらちゃんは, 「駆」(DASH)を使ってミラーボール3つ全部を直接攻撃できる位置に移動します。せっかく瞬発力を誇るカードがあるのに, アニメ本編では全然使われていないことが以前疑問視されていたので(Message-ID: (N) (Q) <7stloh$imv$1@meshsv230.tk.mesh.ad.jp>), ここで使ってみました。これでなければ, 使うのは「跳」(JUMP)だったでしょうね。

桃矢兄ちゃんの心の声(これが, さくらの魔法――)は, コンセプトを考えた当初から用意していた台詞です。しかし考えてみると, 最後の審判のときなど, さくらちゃんの魔法を目撃しているんですよね(苦笑) 「間近に見る」のは初めて, ということで勘弁してください。

結局桃矢兄ちゃん, 何もできなかったのが悔しい。


最後, 遅れて駆けつけた小狼。ここのナレーション, 文体が違っちゃってる……

事件に際しては何もできなかった小狼ですが, 話の流れ上は大きな役割を持っています。一つは, さくらちゃんを桃矢兄ちゃんから引き離すこと。これによって桃矢兄ちゃんがケロちゃんに話(お前がさくらを守ってくれよ)をすることができます。なお(あのガキも, いつまでここにいるかわからないからな……)は, 桃矢兄ちゃんは魔力のあった頃に, 小狼がいずれ帰国することを悟っていたという予知の記憶です。

もう一つは, さらに桃矢兄ちゃんをケロちゃんから引き離すこと。ケロちゃんが月さんと話(わいの名前まで知っとったな)をするためには, 桃矢兄ちゃんは邪魔になりますので。


こうして長編妄想は完成し, NHK教育で第68話が放送された12月10日に投稿されました。

タイトル「さくらと桃矢の秘密の終わり」が付いたのは投稿のわずか2日前。最初は「さくらと桃矢の禁断解除」と付けたのですが, 「禁断」の意味が強すぎるように感じたので変更しました。しかし, 二重の意味を持つタイトルですので, 考えるのも大変でした(直後述)。


最後に, ラストシーンのケロちゃんと月さんの会話についてです。「桃矢兄ちゃんが, ケロちゃんの名前まで知っていたこと」について, ケロちゃんが考え込んでいます。

これは実は, BS第2での本放送が終了したときにKEY00さんが投稿された長編妄想「カードキャプター桃矢」(Message-ID: (N) (Q) <8bfigi$odt$1@wa1.seikyou.ne.jp>)の設定を拝借したんです。

9年前, 桃矢兄ちゃんはケロちゃんと会っていた。その記憶は消されたが, 消しきれていなかったのか甦ったのか, とにかく桃矢兄ちゃんはそのことを思い出している……

題名に悩んだのもそのためです。「さくらちゃんの桃矢兄ちゃんに対する秘密」と, 「桃矢兄ちゃんの封印された記憶」(ケロちゃんが隠していること, または「思い出していること」をケロちゃんに対して隠していること)をかけるつもりだったので, 微妙に違うこの二つをうまく重ねられる題名がなかなか思いつかなかったのです。

第1案「さくらと桃矢の禁断解除」は, 完全に桃矢兄ちゃん寄りにした場合の題名「桃矢の封印解除」を, ニュアンスを残したまま無理にさくらちゃんの秘密と結びつけた形です。しかしこれでは表のストーリーであるさくらちゃんの秘密に対して意味不明ですので, 結局は「〜秘密の終わり」となりました。


水野夢絵 <mwe@ccsf.homeunix.org>
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