"S. GOTO" <goto.shinichiro@lab.ntt.co.jp> wrote in message
news:96anpq$3p1$1@inc.m.ecl.ntt.co.jp...
> 後藤です。

ども(^○^)/。

> 「封印されたカード」の続きからで、もう事件は一切起こりません。

え〜〜〜〜〜〜〜〜(;_;)。

ならば、無理矢理にでも起こしてみしょう不如帰(字余り)。

> 小狼&苺鈴、日本滞在最終日。
> 苺鈴の計らいで、さくらと小狼はデートをすることに。

すっぴー「だそうですが、エリオル。」
エリオル「それは予想できない事でしたね。」
奈久留 「単にエリオルのお脳が回ってないだけじゃない?」
すっぴー「クロウの記憶を取り戻してからこっち、すっかりボケて。
     御蔭で『無( )』のカードを思い出すのに4日も…」
エリオル「なんか言いましたか?」

 ぶんぶんぶんっ(横旋回)

エリオル「宜しい。では早速、面白い事を行うとしましょう。」
奈久留 「で? 具体的には、どーするの?」
エリオル「それは・・・これから考えます。ふっふっふ。」
奈久留 「やっぱりお脳の回転数が・・・」
すっぴー「クロウの記憶を取り戻してからこっち・・・」
エリオル「なんか言いましたか?」

 ぶんぶんぶんっ(横旋回)

今日も平和な、エリオル家の人々であった(爆)。

> 待ち合わせ時間、噴水のそばに立っている小狼。

小狼 (早めに来てしまったが・・・やっぱりあいつは来てないか。
    まぁ仕方ない。男を待たせるのも女の甲斐性、と淮南子に
    言うしな。孟母参雇の礼とも言うそうだが。)

 嘘を言うな、嘘を(^^;)。

> 木陰から様子をうかがっている苺鈴と知世。
> とーぜん知世はビデオを構えている。

> 苺鈴「やっぱり、遅れているのね、木之本さんは」
    にしても、随分と待たせるわね。小狼が来たのって、確か…」
知世 「まだ夜明け前でしたわ。牛乳配達屋さんからホモ牛乳を
    買われて、腰に手を当て一気飲みなさっていましたから。」
苺鈴 「まだ冷たいってのに、まったく。付き合うこっちの身にも
    なってみなさいよっての。」
知世 「牛乳屋さん、いきなり3本も売れて嬉しがってましたけど。」

 つまり、アンタらも夜明け前から此処で牛乳飲んだ訳やね(^^;)。

苺鈴 「まぁ昨夜は浮き上がって舞い上がって躍り上がっていて、
    全然眠れなかったみたいだし。」
知世 「確かに苺鈴ちゃんの目は真っ赤でしたわ。」
苺鈴 「そーいう大道寺さんの目だって…って、そーじゃないの!
    小狼の事よ、小狼の。」

 つまり、アンタらも昨夜は眠れなかった訳やね(^^;;;)。

#付き合いの良い御子達だ(違)。

苺鈴 「でも、流石に木之本さんはぐっすり眠れたでしょうね〜。
    何時もと、全く、全然変わらず、そりゃあもうたっぷりと。」
> 知世「まあ、それがさくらちゃんのよいところですから。

 おぃ(^^;)。

>    それより、今日さくらちゃんと李君のデートをセッティング
>    なさったのは、どういったわけで?」
知世 「まさか・・・此処で『カードキャプターの任から解かれて
    うほほ〜い状態すっかり腑抜けモードの李君を見せつけて
    さくらちゃんったら李君嫌いになっちゃうわ』作戦ですの?」
苺鈴 「何なのよそれ(^^;)、違うわよ。」
> 苺鈴「まあ、あんな事件のドサクサにまぎれて、木之本さん、
>    告白しちゃってムードも何にもなかったでしょう。
知世 「ムードはたっぷりあったようですが・・・」
苺鈴 「へ? 小狼ったら何にも言ってなかったわよ? 木之本さんが?」
知世 「いえ、さくらちゃんも、何も。ですが、こんな物を見まして。」

 懐からDVDディスクケースを出す知世。「カードキャプターさくら
 劇場版 封印されたカード」のタイトルが(ちゅど〜ん)。

知世 「さくらちゃんったら、私に黙ってこんな作品に御出演なさって。
    ずるいと思いません?」
苺鈴 「だーっ! そんなメタなギャグかまして収拾つかなくなっ
    たって知らないわよ?」
知世 「大丈夫ですわ。この私が監修しないさくらちゃんの映像作品
    なぞ、大道寺の名にかけて流通させたりしません。もうじき
    全国の店頭から撤去されましてよ、ほーっほっほっほっほ。」

 そーか、どうもDVDを探しても探しても見つからないと思った
 ら大道寺グループの手が伸びていたのか。売り切れてた訳じゃ…。

苺鈴 「そ、そぉ(^^;)。頑張ってね。っと、なんだったっけ、そう、
>    だから、リターンマッチってわけでもないけど、
知世 「では最近流行のバトルロワイヤルですの? 危険ですわ、
    苺鈴ちゃん。寺田先生が『これから君たちには殺し合いを
    して貰います。』なんて言ってナイフ投げて山崎君殺して…」
苺鈴 「その発想から離れなさいって。危ないのは貴女よ。だから
>    せめて普通のカップルのように過ごさせてあげようかなって。
>    明日帰っちゃうし。」
知世 「まぁ、苺鈴ちゃんにしては珍しく悪巧みも姦計も裏工作も
    ない真摯な物言い。この大道寺知世、感激致しましたわ。」
苺鈴 「そ、そぉ(^^;)、ありがと。」

 こんな会話が交わされた訳ではありません、おそらく多分(爆)。

> 知世「お優しいんですね、苺鈴ちゃんは。
>    …でもこれで、私も『さくらちゃんのおデート』の画が
>    撮影できますわ。」知世の目がキラリン。
> 苺鈴「…いつも思うんだけど、大道寺さんのビデオカメラ、
    どうして大道寺さんが居ない所から撮影しているような
    アングルからの絵も撮れるの?」
知世 「知世チョップ!」 (まるしー:他の方のSS)
苺鈴 「おふぅ!」    (まるしー:同上)

 知世チョップは食らわせた者の記憶を10秒間巻き戻せるのだ(嘘)。

知世 「大丈夫ですか?苺鈴ちゃん」
苺鈴 「あいたたた・・・はっ! 私、どうしたの?」
知世 「今、通りすがりのラッシャー木村が。」
苺鈴 「おのれラッシャー木村。団体に言いつけちゃうんだから。
    っと、そーじゃなくって。それより大道寺さんのビデオ
    カメラ、どうして撮影直後にも関わらず既に編集済みなの?」
知世 「知世チョップ!」
苺鈴 「はふぅ!」

 以下、延々と疑問を変えながら繰り返され。だが数分間の記憶を
 も引き換えにしながら苺鈴は、それでも質問を止めなかった。
 彼女の無駄に強靭な根性に幸いあれ。そして、

苺鈴 「おのれ力道山。刺されて死んだと思ったら、こんな所に。
    っと、そーじゃなくって。それより大道寺さんのカメラ、
>    今小狼がいるところまで録音できるの?」
> 知世「今日は特別な日ですから、隠しマイクを用意しました。
>    昨日さくらちゃんにお渡しした腕時計に仕込んでありますの。」
苺鈴 「それって列記とした犯罪(^^;)。」
知世 「ほほほ、大道寺家の辞書に刑法の2文字はありませんわ。」
苺鈴 「そ、そぉ(^^;;;)。それより、その時計。木之本さんがそれ
    を本当に巻いてくるの?」
知世 「ご心配なく、ちゃんとお願いしましたから。それにこれまで、
    さくらちゃんへプレゼントしました各種物品玩具アクセサリー、
    全てに何らかの盗聴盗視システムは組み込み済みですわ。」
> 苺鈴「…ぬいぐるみも言ってたけど、大道寺さん、人が悪いわね。」

 しかも本人は「手段を選んでない」だけ程度にしか思っていない(^^;)。

> 知世「まあ、ケロちゃんが?」
   「これで次回の御茶会に『今週のびっくりドッキリケーキ』
    が出品される事が決まってしまいましたわ。」
苺鈴 「何よそれ(^^;)。」
知世 「只の抹茶ケーキですわ・・・見かけは(にっこり)。」

 抹茶は緑色・・・日本の誇る香辛料、天然山葵も緑色・・・(怖っ)。

> 苺鈴「ぬいぐるみったら、元の姿に戻れるようになったのがよっぽど
>    うれしかったのか何か知らないけど、私に見せびらかすのよ。
>    木之本さんの部屋の中で変身して、翼を目一杯広げちゃってさ。
>    ぬいぐるみが剥製になっただけじゃない、ねぇ?」
知世 「まぁ! で、その後ケロちゃんに、その、あの・・・」
苺鈴 「?」
知世 「やっぱり圧し掛かられ押し倒されて、…されましたの?」
苺鈴 「何よそれ!そんな事されないわよ、ったく。何のネタなの?」
知世 「えぇ、実はこの・・・」

 また懐からDVDケースを取り出そうとする知世。慌てて止める。

苺鈴 「わーっ! だからメタなギャグは止めなさいって。それとも、
    そんなシーンでもあったの?」
知世 「えぇ。実は、李君が。」

 「実は」「李君(=小狼)が」の2単語で、全ての想像を完成させて
 しまう苺鈴。やおらいきり立ち、即座に駆け出そうとする。

苺鈴 「おのれケルベロス! この私でさえ奪えなかった小狼の
    貞操を、よくも蹂躙してくれたわね! 許すまじケルベロ
    ス、今すぐ撲殺絞殺刺殺殲滅して7代祟ってくれようか!」
知世 「ほほほ、相変わらず愉快な方ですわ、苺鈴ちゃん。」

 笑ってないで止めなさいよ知世ちゃん(^^;)。

> 知世「あ、さくらちゃんが…」

 ナイスタイミング(爆)。

> さくら、現れる。息を切らせて。
> さくら「…ごめんね、待った?」
> 小狼「いや…」

苺鈴 「ちっ、そこで『今、来た所だから』でしょ!」
知世 「苺鈴ちゃん、ヘッドフォン半分返して下さいな。」

 結局、盗聴音声を聞いてるんか、苺鈴ちゃん(^^;)。

> さくら「夕べから待ち遠しくて、全然眠れなくなっちゃって、ごめんね…」

苺鈴 「でも眼も充血してないし、顔色も良さそうよ?」
知世 「きっと明け方になって漸く眠れたんですわ。御可哀想に。」
苺鈴 「なるほど、そこからたっぷり眠れた訳ね。流石木之本さん。」
知世 「8時に待ち合わせして、この時間ですから。」

 既に太陽は中天高〜く上り詰めていたのであった(爆)。

#何時間遅れなんだよ(笑)。あ、小狼が「今来た」と言わなかった
#のは、自分も遅刻したと言いたくなかったからか?

> 小狼「あ、あの、…、さくら、…」
> さくら「なあに?」
> 小狼「その、…その服、かわいいな。さくらに似合っていると思う…」

苺鈴 「よしゃ! ちゃんと昨夜レクチャーした通りに進めてるわね。」
知世 「でもあの御洋服、先日に皆で映画に行った時のと同じですわ。」
苺鈴 「いーのよ、そんな事。どうせお互い覚えちゃいないんだし。」
知世 「それもそうですわね。大体李君、真っ当にさくらちゃんの事
    見てませんし。空向いたままですわ。」
苺鈴 「木之本さんだって、最初に挨拶してから後はそっぽ向いてて。」
知世 「・・・妙なカップルですわね、考えてみたらば。」
苺鈴 「まぁ小狼と木之本さんらしくって良いんじゃない?」

 結構・・・いや、かなり酷い事言ってないか?(^^;)

> さくら「本当?…うれしい、ありがとう。」
> 小狼「…」真っ赤っ赤。手がふるえている。

知世 「李君、血圧心拍数ともに上昇。発汗量増大。顔面紅潮。
    上肢末端および膝部分に若干の震え。随分と緊張なさってる
    様ですわね?」
苺鈴 「また随分と細かいデータまで映るビデオカメラねぇ(^^;)。」
知世 「それはもう。さくらちゃんが酷いお怪我でもされたら大変
    ですから、それを防ぐ為の概観医療モニタリングシステム
    ですわ。戦闘時には常にフィードバックされてますのよ。」
苺鈴 「・・・今、戦闘時?」
知世 「・・・違いますの?」

一見、只の民生用DVカム。しかしてその実体は、超高性能コンバッ
トモニタリングシステム。次世代携帯電話回線から衛星回線までを
複数双方向で使用し、モニタする対象はおろかその周辺空域地域の
全情報を集中情報センタへ伝送し、ここで常時モニタリングしている
専門コンサルタントシンクタンクチームの意見を含めた戦闘情報を
高密度HD液晶モニタへ返す事が出来るこのカメラは、米国陸軍機甲
歩兵部隊の次々世代戦闘情報システムとして大道寺アメリカが開発し
納入が決まっている物だった。

#そんな代物を、只のビデオカメラとして使っちゃいけません(^^;)。

> 隠しマイクからの会話を聞いている知世と苺鈴。
> 苺鈴「ほら、そこよ、小狼。それをきっかけに手を握れって、
>    言ったじゃない。もう、じれったいわね。」
> 知世「まあ、素晴らしい演出、ありがとうございます。」
苺鈴 「そりゃそうよ。この『小狼、さくらちゃんと嬉し恥ずかし
    初二人っきりデート』計画を立案するのに、何人のライター
    とディレクターとプロデューサーを引っこ抜いて使い潰した
    と思ってるの? 両手両足じゃ効かないんだから。」
知世 「あぁ、昨日あたりからそっち畑の人員が集めにくいと思って
    いましたら、李家が動いていましたの。道理で、ですわ。」

#李家も大道寺家も、何やってんだか(^^;)。

> さくらの方から、小狼の手を握る。見つめあい、微笑む。
> 苺鈴「ふぅ、…結果オーライってとこね。」
> 知世「さくらちゃんのはにかむ笑顔、かわいいですわ。」
苺鈴 「小狼、きっちり握り返してる?」
知世 「いえ、まだ・・・あ、今。ちょっと躊躇ったみたいですわね。」
苺鈴 「何してんのよ、たくもぅ。昨日あんなに練習したじゃない。」
知世 「ちなみに、何方が御相手して?」
苺鈴 「そんなの、私が人に譲るわけ無いじゃない。」
知世 「なるほど。それでどうやって?」
苺鈴 「ちょっと握り方や触り方、手の伸ばし方が悪かったりしたら
    容赦無く叩きのめして体に教え込んだつもりだったんだけど、
    まだまだ甘かった様ね。」
知世 「其処までされていながら。李君、情けないですわ。」

#「その教え方が悪かった」とは、どちらも考えないだろうな矢張り。

> 映画館、ボーリング場、公園、等々、デートコースをこなす。

◆映画館編

小狼 「えーっと『Avalon』の館は・・・。」

#初デートでそんなマニアックな映画、小学生が見に行っちゃいけません。

さくら「何処の映画館も、随分混んでるね?」
小狼 「あぁ。そう言えば、今日は映画の日だったっけ。」
さくら「はにゃ〜ん。私たち、座れるかなぁ?」
小狼 「・・・あ、あの映画館だ。・・・あれ?」

 そこだけ、がら〜〜〜〜ん状態の映画館。あっけに取られる小狼。

さくら「わぁ!空いてて良かったね小狼君。」

 一方、素直に喜ぶさくらちゃん。当然、何も疑問に思ってません(爆)。

知世 「もしや、貸し切られましたの?」
苺鈴 「ううん、最初はそうしようとしたんだけど、こんな人気作品の
    上映館、貸し切れる訳ないって断られて。だから・・・。」

 小振りながら趣味の良い概観内装の瀟洒なその映画館には、上映
 作品を示す看板以外の表示は無かった。が、入館料を払う時、
 小狼は目敏くモギリ嬢の胸元に、それが光るのを見つけた。

 見慣れた、そのマーク。それは、

苺鈴 「だから、1館作ったわ。」

 李グループ、アミューズメント部門の社章だった(ちゅど〜ん)。

苺鈴 「どうせだからって、最新のデジタル上映方式と音響施設を
    放り込んだからちょっと…40億ばかり掛かったけど、
    業者に任せたにしては結構なものを作ってくれたわね。」
知世 「あぁ、昨日横田基地へカリフォルニアから大荷物が届いた
    と聞いていましたが、李家でしたの。それならウチの空港
    を御利用頂ければ、近くでしたのに。」
苺鈴 「大道寺さんにこれを言ったら、自分のAVルームの機材を
    持ち出しちゃうでしょう? 駄目よそれ、こんな小さな映
    画館には贅沢すぎる機材になっちゃうもの。」
知世 「確かに私の部屋にあるキャノンウーファは入りそうにあり
    ませんわねぇ。投影機にも専用変電所が要りますし。」

 (^^;)・・・ま、まぁ小館ながら豪勢極まりない(なんせ500吋
 級スクリーンでいながら、座席数20客)映画館で、小狼とさくら
 ちゃんは無事に座って映画を見られたのでした。

 そして、そんな二人の様子を暖かく、覗く^H^H見守る2名が。

知世 「それにしても苺鈴ちゃんのそつなさには感服致しましたわ。」
苺鈴 「そぉ? えっへっへ、たぶん大道寺さんがきっと撮影した
    がると思って仕込んどいたんだ。使えそう?」
知世 「えぇ。館内各所に仕掛けられた隠しカメラと隠しマイク、
    その総数千箇所以上。上映中でも鮮明に写せるスターライト
    スコープ付き。それらを全て手の内で制御できる集中コンソ
    ール。気に入りましたわ。」

 数十のスクリーンがマルチアングルで小狼とさくらちゃんを捕らえ
 ている、ここ館内監視センターに居た(爆)。数百のスイッチやトグ
 ルやスライダックやキーパッドが並ぶ縦1m横5mの半円状コンソ
 ールの上を、カデンツァを弾くピアニストの様に慣れた手つきでひ
 らひらと腕を動かし操作する知世ちゃん。その度に、実に絶妙な画
 枠で小狼とさくらちゃんの様子・肢体・表情を切り取ってゆく。

苺鈴 「はぁ、やっぱり流石ねぇ。」
知世 「ハーマン・カードンのコンソールは使い慣れていますから。
    苺鈴ちゃんも流石ですわ。これ、最新型のフルデジタルコ
    ンソールでしょう? お台場にだってまだありませんわ。」
苺鈴 「うぅん、それの次世代型。まだ市場には出てないわ。」
知世 「それは…よく引っ張れましたわね。 さぞかし手間が?」
苺鈴 「そんな苦労、小狼と木之本さんの初デートの為なら。」

 深く頷く、知世ちゃんであった(爆)。

◆ボーリング場

 がらがらがら! がっしゃがっしゃがっしゃがっしゃ!

さくら「わー、随分深く掘れたねー。」
小狼 「でも、まだ温泉は出ないな。」

 やぐらの下で高速回転するポールを見つめる二人であった。互いに
 「こんな穴掘り場に来て、何が面白いのだろう?」と思いながら。

 そして、そんな二人を遠めに見ながら派手に挫けている二人(笑)。

苺鈴 「幾ら渡したメモに『ボーリング場』って書いちゃったから
    って、素直に"boring"場に来る事は無いでしょう、小狼!」
知世 「でも、素直についてくるさくらちゃんもさくらちゃんですわ」

 流石にこれはおかしいと感じた小狼が、ひなた温泉湯本のボーリ
 ング場から立ち去ったのは、二人で湯本観光をし終えた30分後
 であった。そしてこれらのシーンは「これを残すのはあまりに不
 憫ですわ」と珍しくも察した知世ちゃんにより、削除されたそう
 な。まぁ二人が喜んでいたのだから、良かったのかも(笑)。

◆ボウリング場

 がらーん! がしゃがしゃがしゃ

さくら「凄いすごーい! 小狼君、またスペアだよ!」
小狼 「あぁ。・・・まぁな、でも」
さくら「ほぇ?」
小狼 「・・・いや、なんでもない。」

 余計な疑問を抱かせる事は無い。こう思い、口をつぐむ小狼だっ
 た。そう、さくらがこうして楽しんでいるのなら、何を言う事も
 無かろう。それが・・・

さくら「凄いボールだったねぇ。両端のスプリットを、直角に曲が
    って落としちゃった。ねぇねぇ、どうやったの?」

 本当、どうやったのだろう? 小狼にその謎が判る訳は無かった。

 そう、この2名にしか判る訳は無いのだ。

苺鈴 「・・・ったく。もうちょっと練習させとくんだったわ。」
知世 「李君、ひょっとしてボウリングは御経験無いのですか?」
苺鈴 「だって香港では李家次期頭首としての帝王学中心な英才教
    育とカードキャプターとしての魔力増大訓練しかやった事
    無かったんだもの。日本に来たばっかりの頃、よく日曜日
    に『何もしない休みの日って、何を訓練すれば良いんだ?』
    って香港の御姉様たちに聞いてきてたわ。」
知世 「道理で今時の小学生にしてはナンパも碌に出来ない方だと
    思いましたら。」
苺鈴 「だっからこんなものまで仕込んでやってるんじゃない。
    あぁっ、また!」

 と、目の前のジョイスティックを動かす苺鈴ちゃん。連動して
 レーン下に仕掛けられた強力な電磁石が、小狼の投げたボールを
 誘導する。ガーターレーンにはまりそうになっていたそれは奇跡
 的(笑)に立ち直り、見事にストライクを決めるのだった。

#良かったな小狼。持つべきものは、財布の大きい友達だ(爆)。

◆公園編

さくら「ふーっ。あっちこっち回ったね、小狼君。」
小狼 「あぁ。」
   (・・・苺鈴の奴、たっぷり引き回してくれやがって。
    妙に分厚いスケジュール帳だと思ったが、なにも分刻みで
    タイムテーブルを切る事はないだろう?)

#でもまぁ、アイドルのスケジュールはそんなもんだ。全世界の
#アイドルを独り占めしているんだから、そのくらいの苦労はしろ。

さくら「私、ちょっと疲れちゃった。」
小狼 「あ、なら其処のベンチにでも座ろうか。」

 小狼的には単にさくらちゃんを気遣っての台詞だったのだが、こ
 れが見事にハマった。意味する所をたちどころに理解するさくら
 ちゃん。当然、まっかっか(爆)。それを見て、自分が何を言った
 のか漸く気付く小狼(笑)。こっちも当然、まっかっか(誘爆)。

 そして、此方で密かにガッツポーズをしている約1名(連鎖爆)。

苺鈴 「よしゃ! やれば出来るじゃない、小狼。」
知世 「苺鈴ちゃんの特訓の成果が出ましたわね。」
苺鈴 「頭じゃ理解しないからいつも体に教えなくちゃいけなくって
    苦労するけど、今回は何とか成果が出たわね。うんうん。」

 本当はそうじゃないんだが…ま、お互い幸せそうだから、いっか。

苺鈴 「でもぉ。小狼が場馴れしてないから、此処に持ち込むまでに
    5時間も掛かっちゃったわぁ。」
知世 「でもその5時間で、見事にスケジュールはこなされたよう
    ですし。先ずショッピングモール入り口のファーストフード。」
苺鈴 「おーかた緊張しまくる小狼がトレーをひっくり返すだろうと
    思ったけど、案の定やらかしてくれたわね。」
知世 「店と客ごと大道寺アミューズメントパークのスタッフに入れ
    替えといて正解でしたわ。慣れたスタッフでしたから、転び
    そうになった李君を上手くフォローできましたし。」
苺鈴 「まぁその後ろから間髪いれずに木之本さんがコケて突っ込ん
    でくるとは誰も思ってなかったみたいだけど。」
知世 「それがさくらちゃんの良いところですわ。」

#きっと近在の何店かも、丸ごと入れ替えていたに違いない(^^;)。

苺鈴 「で、映画館。手ぐらい握るかと思ったけど、そんな事無し。」
知世 「李君、情けないですわ。」
苺鈴 「折角回りにRieGroupのテーマパークからアクタースタッフ
    を配置して、いろんな例を見せ付けてやったのに。」
知世 「お二人とも、映画の方に集中してしまいましたから。」
苺鈴 「誤算だったわ。面白すぎる映画ってのもデートには不向きね。」
知世 「李君もさくらちゃんも、すっかりはまっちゃってましたわ。」
苺鈴 「二人とも映画館から出て来た時には、物陰から物陰へ移動
    する癖が付いちゃってたわね。挙句、匍匐前進まで始めて。」
知世 「それがさくらちゃんの良いところですわ。」

#きっと次のバトルコスチュームはコンバットゲリラ服だ(^^;)。

苺鈴 「それからボウリング場までの間、ショッピングモールでの
    ウィンドーショッピング・・・の予定だったんだけど。」
知世 「まさか江ノ電に乗ってひなた温泉に向かうとは思いません
    でしたわ。御蔭でシフトを変えるのに一苦労しました。」
苺鈴 「流石の大道寺家だと思ったわぁ。兵員輸送ヘリが師団級の
    数で鎌倉上空を埋め尽くしたのは圧巻だったわね。」
知世 「即座に2万人も変装済みで温泉に送り込めた李家の機動力
    こそ流石ですわ。何時の間にひなた温泉の地下空洞まで、
    人員移送用の高速地下鉄道を這わせたんですの?」
苺鈴 「でも結構派手に配備したから絶対気付くと思ったんだけど、
    小狼も木之本さんも全然気付かなかったわね。」
知世 「それがさくらちゃんの良いところですわ。」

#大道寺家も李家も、今回の作戦に幾ら掛けてるんだろう(^^;)。

苺鈴 「漸く小狼が気付いて元のコースに戻ってくれたから、後の
    シフトと仕掛けは変更せずに済んでくれてほっとしたわ。」
知世 「ボウリング場の機材が無駄にならず、良かったですわね。」
苺鈴 「プールバーのビリヤード台にも仕掛けといたんだけど、
    そっちは無駄になっちゃったわね。」
知世 「カラオケルームの採点マシンもいじっておいたんですけど」
苺鈴 「ゲーセンのゲームも全部裏モードでイージークラスにねぇ」
知世 「李君もさくらちゃんも、ボウリングばかりやってましたわ」
苺鈴 「まっさか8ゲームもするなんて思ってなかったぁ。」
知世 「二人とも負けず嫌いですし。」
苺鈴 「同点にするまで止めなかったわね、あれはやっぱり。」
知世 「だから何とかお二人ともパーフェクトにさせたんですのね」
苺鈴 「こりゃ流石におかしいと思うだろうと思ったけど、小狼は
    すっかり頭に血が上っちゃってたから全然気付かなかった
    わね。でも木之本さんは結構冷静そうだったんだけど…?」
知世 「それがさくらちゃんの良いところですわ。」

#盗撮ばっかりしてた訳じゃなかったのね(^^;)。

苺鈴 「でも8ゲームもするもんだから、すっかり時間くっちゃっ
    て。残りのショッピングは殆どカットされちゃったわ。」
知世 「折角大道寺家と李家が気合を入れて品物を揃えておいたの
    に、残念ですわ。ジュエリーなんか小学生でも買える値段
    にしましたから99.999%オフでしたのに。」
苺鈴 「ブランド物も今年のNYコレクションに出た、本国でさえ
    揃わないレア物を並べたのに、全然見てなかったわね。」
知世 「大道寺とRieのスタッフは慣れたものでしたけど、ブランド
    から来てたスタッフは結構落胆なさってましたわ。」
苺鈴 「まーいーわ。残ったら結局私が全部買う様にしておいたか
    ら、向こうとしても損はないでしょ。大道寺さんは?」
知世 「幾つかのジュエリーは家のコレクションから持ち出しちゃ
    いましたから、それだけ戻させて頂きますわね。」
苺鈴 「千分の1の値段にしても百万円超えるようなジュエリーな
    んか元々小狼には買えないわよ。木之本さんも勿体無い事
    したわねー。今ならダイヤだろーがプラダだろーがベンツ
    だろーが小狼にねだり放題だったのに。」
知世 「さくらちゃんは何方かと違ってそんな事しませんわ。」
苺鈴 「わ、判ってるわよ。私も婚約者時代と違って、最近は自分
    のお小遣いで買ってるんだから。偉いわ木之本さん。」
知世 「それがさくらちゃんの良いところですわ。」

#小狼が苺鈴ちゃんと婚約解消したのには、こんな理由が(^^;)。

苺鈴 「ま、小狼にしては頑張った方かな? けど木之本さんも、
    良く着いて行ったわね。」
知世 「さくらちゃん、あれでなかなか体力派ですから。」
苺鈴 「けど、流石に二人とも疲れちゃったみたいね。」
知世 「仲睦まじくてとっても宜しいですわぁ。」
苺鈴 「でも、そろそろ起きないと拙いかも・・・」

 そう言えば、もう日暮れ近い。大道寺家の私設技術衛星による
 気象コントロールが成功し(爆)1日晴天だったここ関東平野の
 西空も、そろそろ茜に染まりつつある気配だ。

 ふと、気付く小狼。自分もベンチに座り、傍らにはさくらちゃん。
 当然疲れきっていたさくらちゃんは、すぅすぅと寝息を立てている。

 小狼の肩に凭れて(爆)。

 漸く事態に気付いた小狼。当然、固まってしまう(笑)。

小狼(ど、どどどどどうしよう。起こすべきだろうか。起こすべき
   だな。日が暮れたら寒くなるし。風邪引いちゃうし。でも…)

 ふと、自分の肩に凭れるさくらちゃんの寝顔に見入ってしまう。
 信頼しきっているかのように、その寝顔はあくまで安らかだ。

 もっとよく見ようとして、何となく覗き込んでしまう小狼。肩の
 角度が変わる。流石に小学生の肩幅では女の子の頭を支えられる
 スペース的余裕は少ない。ずり落ちそうになるさくらちゃん。

小狼 「っと!」

 思わず、伸ばした腕でさくらちゃんを止める。抱きしめるような
 ポーズになってしまい、矢張りそのまま固まってしまう小狼。

小狼 「・・・わはは。」

 何となく、笑ってみたりして。が、そんなことしたら

さくら「・・・ふ・・・あ・・・あ、あれ?」

 そりゃいくら「ぽややん」でも起きるだろうて(笑)。
 反射的に顔を上げるさくらちゃん。元々その寝顔を覗き込んでい
 た小狼。小狼はさくらちゃんを抱えた格好でいた。つまり・・・

 当然、大接近(爆)。お互い、相手の瞳しか見えないくらい(核爆)。

苺鈴 「こっ! これは計算外だったわ。でも結果オーライ、いけ!」
知世 「あぁっ! どうして私はお母様から撮影班を借りてこなか
    ったの! こんなシーンにカメラ1台なんて知世のバカバカ」

#お互い、悔やんでないで、とめなさいよ(^^;)。

 ま、絶好のチャンスに違いないのだが、小狼にそれを生かす根性
 なぞある筈は無いのであった(笑)。しかし反射的に離せばよかっ
 たものを、何故か固まってしまった小狼。そのまま3秒、4秒…

さくら「・・・離してくれる?」

 ま、こんな時に冷静なのは女性の方でしょう。その御蔭で漸く目
 覚められた小狼。飛びのく様に、さくらちゃんの肩から手を外す。

小狼 「ご、ごめん! つぃ、」

 どぎまぎと弁解する小狼。その様子を「なんか、可愛い(はぁと)」
 と見るさくらちゃん。つい悪戯心で、言ってしまう。

さくら「小狼君・・・エリオル君化した。」
小狼 (ぐわ〜ん、が〜んが〜ん)

 時として少女の悪戯心は、男の心を深く傷つける事もある。今回
 がその典型例。余人の近寄る事を許さぬように、顔へ縦線引いて
 落ち込んでしまった小狼。彼の悲壮な様子を見て、さくらちゃん。

さくら「・・・ほぇ?」

#それだけかぃっ!(^^;)

苺鈴 「そうよっ!」
知世 「メタなツッコミはおよしになった方が?」
苺鈴 「ンなヘタレSS書きの事なんか構っちゃられないわよ!」

#ぐわ〜ん、が〜んが〜ん・・・

知世 「…御蔭で静かになりそうですわね。」
苺鈴 「ほら、私のする事に何時だって間違いは無いのよ、ふん。
    んじゃなくって。こんな事で落ち込んでどーするのよ小狼。
    あぁあ折角ここまでいい雰囲気でリード握ってたのに。」
知世 「緊急にシフトを『男性主導型』へ敷き直しましたのに、
    これでは出番が難しそうですわ。」
苺鈴 「BGMの楽団をポール・モーリアからレーモン・ルフェー
    ブルへ入れ替えるのは何とか間に合わせたってのにぃ。」
知世 「まぁそのくらいは当初予算の誤差のうちですから。」

#アンタら、ホントに幾ら掛けてんの?(^^;)

知世 「社外秘ですわ、ほほほほほ。」
苺鈴 「日本の内需拡大へ貢献してやってんだから感謝しなさいよ」

 と、はたでオバカな事を相変わらずツッコミ返している二人…

 を放っておいて、事態は唐突に進行するのであった!。





 ちゅ(はぁと)





小狼 「・・・え?」

 縦線をべったり顔に引いて落ち込んでいた小狼が、その感触に目
覚め、ついと顔をあげる。と、見れば傍らに彼女の顔が。ほんのり
と頬を染め、はにかんだように微笑む、花の様な彼女の顔が。

さくら「…えと、ありがと、小狼君。今日は楽しかったよ。」
小狼 「あ。あ、あぁ・・・」
さくら「それじゃ。わたし、そろそろ行かなくっちゃ。」

 つ、とベンチから立つさくらちゃん。不思議な感触が残る頬へ完
全に意識を奪われつつも、それでも昨晩に我が身へ叩き込まれた条
件反射に従い小狼がベンチの座面を蹴る。

小狼 「お、送るよ、家まで。」
さくら「うぅん、いい。うち、直ぐ近くだから。」
小狼 「だが、」
さくら「いいってば。じゃね、また明日!」

 たたっ、とその場から駆け出すさくらちゃん。つい、と手をあげ
頬に残る感触を確かめながら小狼はなんとなく、それを、見送る。





 彼女の頬が、茜色に染まる夕空の様に紅く染まっているのを…。

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で、これで終わってしまっては流石に読者様も納得行かなかろう。
と言う訳で、オマケ(の筈?)のサポート部隊2名は、と言えば。

苺鈴 「やったわ小狼!主導権の持ち合いはともかく、終わり良け
    れば全て結果オーライよっ!今日はお赤飯よっ鏡餅よっ!
    これから香港ペニンシェラ借り切って大祝賀会よおっ!」

掛けたコストに関係ない箇所で事態が進んだにも拘らず、浮き上がっ
ちゃって躍り上がっちゃって舞い上がっちゃって喜んでる者、1名。
ちなみに祝賀会予算は今日の作戦予算とは別枠で確保されている。

知世 「何故!何故に私はこの場へ撮影部隊1個師団を配備しなか
    ったの!?こんなハイビジョンデジカム1台と隠しカメラが
    数十台程度で満足できると思ったの!?あぁぁこんな事なら、
    こんな事なら、この公園全体をデジタルスタジオ化してお
    くべきでしたのよ!知世のバカバカバカバカああぁぁ!」

掛けたコストに関係ない箇所で事態が進んじゃった御蔭で、折角の
もう2度と無いかもしれないシャッターチャンスを(所詮)手持ちの
ハンディカム1台と(画質の悪い)隠しカメラ数十台でしか収められ
なかった事を、身を捩って悔やむ者、1名。ちなみに「この手の事
態があろうかと」と考えられていた映画館には、前述の通り。

そんな彼女らに関係無く。またそのお子さま2名の下命の元、動か
された数個師団規模の人員や機材などとも全く関係無く。

カラスが「あほーあほー」と周りを罵倒しながら飛ぶ茜色の空から、
何を恥じるか、おっきな夕陽が今日も地平線の向こうへ隠れてゆく。

・・・子供たちの未来へ、幸あれかし(笑)。

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