Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
この記事は、第174話(その15)です。
Message-ID: <newscache$j0vlqi$nc4$1@news01a.so-net.ne.jp>
にぶら下げる形となっています。
(その1)は、<newscache$7vxlqi$196$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<newscache$vkqyqi$s7d$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<newscache$itlbri$943$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<newscache$g3gzri$c4h$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<newscache$96vhsi$9h5$1@news01f.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<newscache$zrwrsi$s4k$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<newscache$p093ti$xrc$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その8)は、<newscache$i4bsti$q6h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その9)は、<newscache$kmlkui$f61$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その10)は、<newscache$0gaavi$und$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は、<newscache$2dwgwi$cth$1@news01f.so-net.ne.jp>から
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それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第174話『盲目の愛故に』(その15)
●桃栗町郊外
昼食を終えたまろん達は、都の先導で公園の入って来たのとは反対側の出口につながる
海岸通りを歩いていました。
一応国道となってはいるものの、車道は1車線ずつという狭さ。
夏ともなれば、海水浴へと向かう人の車が多く通るこの道も、この日は日曜日にしては
比較的空いています。
車道の横には、申し訳程度に作られた歩道があり、まろん達はその狭い歩道を縦列に歩
いて行きました。
歩道は道の両側に作られているのですが、陸側は殆どが切り立った崖か急な斜面からな
っており、自然と眺めの良い海側の歩道を歩くことになりました。
時折乗用車に混じり大きなトラックやダンプカーなどがまろん達の横を追い越し又はす
れ違い、排気ガスをたっぷりと吸わされる度、何でこんな遠回りの道を歩いていくのだろ
うとまろんは感じます。
急な曲がり道を過ぎると、それまでのごつごつとした岩場の景色から、向こうの方に砂
浜が見えて来ました。そして、海にはサーフィンに興ずる人の姿がちらほらと見えます。
「この辺りは泳いだりとか出来るんですか?」
チェリーが海でサーフィンをしている人を指差し訊ねました。
「ええと、もっと先の方まで行けば海水浴場があったはずだけど…」
「遊泳禁止よ。この辺りは海流が早いから、流されやすいんだって」
「でもあの人達は…?」
「サーフィンは泳ぐんじゃないから良いんだよ…多分」
「そう言えば、そんなこと、考えたことも無かったわ」
立ち止まり、まろんは海でウインドサーフィンをしている人を注視しました。すると、
その若者が手を挙げてこちらに手を振って来るのが分かりました。
つられるように、まろんも手を振り返します。
「何手を振ってるのよ」
まろんの左側から、都の声が届きました。
「え? あそこの人がこっちに手を振っているから」
「そうなの? 全然見えないけど。あんたそんな視力良かったっけ?」
「都だって良いじゃない」
まろんが見ると、先程手を振っていた人はまだ手を振り続けていました。
「ほら、まだ手を振っている」
「え〜、どの人よ」
「ほら、あそこ」
都は、まろんの指差した先を注視しようしました。
「キャー!」
浩美の悲鳴を聞き、まろんは瞬時に身構えます。
白昼堂々、悪魔が襲ってきたのか。
しかし、まろんの想像は現実によって否定されました。
「!」
コンマ数秒差で都も事態に気付きました。
しかし、まろんも都も運動神経は人並み以上であるにも関わらず、この時は何もするこ
とが出来なかったのです。
まろん達の目の前に、片側のタイヤを歩道に乗り上げた状態でダンプカーが迫りつつあ
りました。ダンプカーはまろん達の存在に気づかないかのように、クラクション一つ鳴ら
さず、真っ直ぐに迫っていました。
「危ない!」
まろんが意識する前に展開されていた“神のバリヤー”こと障壁。
ダンプカーのタイヤはそれに乗り上げるような形で持ち上がり、大きく斜めに傾きまし
た。まろんの目の前をダンプカーの車の底が通り過ぎて行きます。
まろんの障壁によってダンプカーは横転。そのまま道路を滑って行き、反対側の車線て
停止しました。
まろんの目の前の事故はそれだけでは終わりませんでした。
たまたまそこに先程まろん達が歩いて来た曲がり角を通り、路線バスが現れます。時間
が遅れていたのか、普段よりはかなりのスピードで。
バスの運転手は角を曲がった所で道路の惨状に気づいたのでしょう。ダンプを避けるよ
うに、反対側の車線へと侵入しました。
「ちょ、ちょっと!」
曲がりきれなかったのか、今度はバスが歩道に乗り上げる形でまろん達の方に先程とは
反対側から迫ってきます。しかしおかしな事に、こちらもブレーキをかける様子がありま
せん。
今度は身体が反応した都は、チェリーと浩美を連れ、車道の反対側へと逃げようとしま
す。
「まろん!」
都に言われるまでも無く、まろんも都と同じ方向に逃げようとしています。
しかし、まろんは確かに見ました。バスの運転手がまろん達の方に曲がろうとハンドル
を切っているのを。
まろんはその時、何かをしようと判断はしていませんでした。
ただ、それがまろんを守ろうとしたことだけは間違いありません。
先程と同じように、バスのタイヤが持ち上がり、バスは斜めに傾きます。そしてその状
態のまま今度は、海沿いに設けられた柵を破って道路の外へと飛びだして行ったのです。
「駄目!」
まろんは叫び、何とか自分の障壁でバスを押し止めようとしますが、叶いませんでした。
バスの飛び出した先を見ると、見た目よりも水深が深かったらしく、海に飛び込んだバ
スは沈みかけていました。
後先を考えずに、まろんは海に飛び込もうとします。中に取り残されているだろう人々
を救い出すために。
しかし、まろんは海に飛び込むことは出来ませんでした。
「駄目!」
「離してよ都! あの中に人が…」
「まろん、落ち着いて!」
まろんを背中からしっかりと都が抱きしめ、飛び込ませまいとしていました。
「まろんが行かなくても大丈夫だよ、ほら」
都はバスが落ちた先を指差しました。
何時の間にかバスの周囲に、サーフィンをしていたと思われるウェットスーツ姿の若者
達が集まって来ていて、バスの中から運転手と乗客を救出していました。
「おーい! そこのお嬢さん達!」
海から、若者の一人がまろん達に声をかけて来ました。
その声に、まろんは聞き覚えがあります。
「救急車を、呼んでくれないか!?」
そう呼びかけたのは、昨日、エリス達と勝負をした若者の一人。
「あの人、昨日の…」
「確か、シドさんとか言ったかな? あ、都、それより電話電話!」
「うん、判った」
PHSを取り出し、電話をかける都。
まろんは、横転したダンプカーの方を見ました。
こちらの運転手の方は無事なのだろうかと。
そして気づきます。ダンプカーの運転席から、それが出て来たことに。
「し損じたか」
それは、確かにそう言いました。
まろんが反応する前に、それは何処かに逃げ去ってしまいます。
「(悪魔…?)」
人に取り憑くタイプの悪魔だろうかとまろんは想像します。
そうだとすれば、あのダンプカーの運転手は普通の人間。
バスの運転手も悪魔に取り憑かれていたのかも。
障壁の使い方、もう少し注意しないと…。さもないと…。
「あれ…?」
障壁で、自分が人を殺してしまうことになるかもしれない。
そう感じた時、まろんは自分の身体が震えていることに気づきます。
「まろん? どうしたの、まろん?」
都の呼びかけを上の空で聞きながら、まろんはただ立ちつくし、その場で震え続けるの
でした。
●オルレアン・稚空の部屋
その日の午後になって、アクセスからの連絡を受けて自宅に戻って来た稚空。
彼を出迎えたのは、アクセス、トキ、そしてセルシアでした。
「あれ? みんな揃っているのか」
「はい。私が集合をかけました」
トキが答えます。
「弥白の方は」
今でもトキとセルシアが交代で、悪魔が近寄らないか監視している弥白。
そちらの方を稚空は訊ねたのですが、最早魔界の者が弥白に手を出すことは無いだろう
と思ってもいます。
「問題は無いと考えています。あの家の周辺からは、全ての魔族を駆逐してありますので。
むしろ、このオルレアンの周囲の方が、魔族が多い位です」
「そうなのか?」
「ここに戻る間、龍族と思われる魔族の気配を感じました」
「大丈夫なのか?」
「向こうも私に気づいたようですが、取りあえず戦う気は無いようなのでやり過ごしまし
た」
稚空はバルコニーに出て、外の様子を伺いました。
何時もと変わらぬ、街の景色が広がっているようにしか見えません。
「それで、トキがみんなを集めたということは、何かあるのか?」
「はい。天界から重要な連絡がありました」
「天界から? 増援でも送ってくるのか?」
そうなったら、もう家には置ききれないなと稚空は思います。
「はい。最近の魔族のなりふり構わない行動を天界は最早座視することが出来ず、遠征軍
を派遣することに決したようです」
「軍?」
「はい。総勢で1万」
「1万だぁ!? そんな数、家には置けないぞ?」
馬鹿な反応だと思いつつ、そう突っ込みたくなった稚空。
「もちろん、稚空さんにご迷惑をかけるつもりはありません。この街の外に適当な宿営地
を見つけてありますので、そちらで待機することになります。それから、1万の軍勢が皆
地上に降下する訳ではありません」
「後方支援に必要ということか」
「人間が考えるような意味での補給は私達には必要ありません。その気になれば、飲まず
食わずで戦闘を続けることも可能な生き物ですから。私達は」
肯きながらその割には、大食らいが揃っていると稚空は思います。
「そして戦うのに武器弾薬も不要ですので、休息を行うに足る場所さえ確保出来れば良い
のです。話を戻します。軍勢の大半は、魔界の連中が増援を行うことがないよう、魔界か
らの魔族の出入りを監視する任務に当たります」
「それで? 最終的に何人がここに降りて来るんだ」
「大凡1個旅団。約3千といったところでしょう。正確な数はこちらに連絡がありません
が」
「降下して、どうするんだよ。まさか…」
街中で戦闘をされては、溜まったものじゃないと稚空は思います。
「休息の後、恐らくは街の外にある魔界軍の宿営地を攻撃して殲滅するか、退却させるの
が一番なのですが」
「宿営地の場所、正確には判らないんだよな」
「私達はこれまで、この町の隅々まで飛び回り、魔族の気配を調べました。その過程でこ
の街の周辺に、巨大な結界らしきものを幾つか発見しています。かなり巧妙に偽装されて
いるため、ただ飛んだだけでは気づきにくいのですが…」
トキは桃栗町周辺の地図を何処からともなく広げました。
その地図には、幾つかの黒丸が描かれています。
「桃栗山の周辺もそうなのか…。ちょっと待てよ。ここは…」
稚空は、電話機の側に行くと、クリップボードを持って来ました。
「ノインの家の辺りもそうなのか」
「悪魔騎士ノインの家の場所を知っているのですか!?」
驚いた様子で、トキは言いました。
「ああ。住所録に紫界堂の家の住所と電話番号が載っているからな。あいつ、桃栗学園の
講師だから。でもあの住所、嘘じゃなかったのか」
「この場所、俺も知ってる。フィンちゃんの後つけた時に入った家がこの辺」
アクセスも言いました。
「どうしてそんな大切なことを!」
「あれ? 言ってなかったか?」
「こちらからノインの家に攻め込むなんてそう言えば考えなかったな」
真顔で言い合う稚空とアクセスの様子を見て、トキは頭を抱えます。
しかし、敵の本拠地が判明したのなら、軍勢が到着次第、そちらを攻撃すれば良いのだ
と思い至ります。
「でもさ、この結界、ちょっと大きくないか?」
アクセスが、地図を指差しながら言いました。
「え? 大体、この大きさで合っていると思いますが…」
「ですですっ」
この結界を発見したらしいセルシアがこくこくと肯きます。
「でもよ、俺はノインの屋敷の庭まで入って行けたけど?」
「成る程、ノインの奴、結界を拡張したんだな」
「ううん。結界を拡張したということは、敵襲に対する備えを充分にしていると考えた方
が良さそうですね」
トキは腕組みをして言いました。
どちらにせよ、敵の指揮官の居場所が判明したのは大きい。
後は、増援の到着を待って……。
これからのことを考え始めたトキ。
一方セルシアはそわそわとしています。
「セルシア」
「はいっ。ご飯ですです?」
何かを言われる前からそう言い出したセルシアを見て、トキは更に頭を抱えます。もっ
とも稚空は慣れたもので、「待ってろ」と言うと少し遅い昼食の準備を始めようと席を立
ち上がりかけたのですが。
「おや? まろんかな」
チャイムが鳴らされたので、稚空は玄関へと向かいます。
まろんはチェリー達と何処かに昼食を食べているはずだがと思いつつ、ドアの覗き穴か
ら外を見た稚空。
そこには、稚空の記憶にない金色の長い髪の少女が立っていて、扉に向け微笑んでいる
のでした。
(続く)
やっとここまで来た^^;;;;
では、また。
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