Path: ccsf.homeunix.org!ccsf.homeunix.org!news1.wakwak.com!news2.wakwak.com!nf1.xephion.ne.jp!onion.ish.org!news.daionet.gr.jp!news.yamada.gr.jp!uinet.or.jp!Q.T.Honey!ngate01.so-net.ne.jp!so-net.news!not-for-mail From: Keita Ishizaki Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18) Date: Thu, 08 Jul 2004 00:08:59 +0900 Organization: So-net Service Lines: 455 Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: news01e.so-net.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP X-Trace: news-fsa.so-net.ne.jp 1089212892 722 192.168.20.15 (7 Jul 2004 15:08:12 GMT) X-Complaints-To: abuse@so-net.ne.jp NNTP-Posting-Date: Wed, 7 Jul 2004 15:08:12 +0000 (UTC) In-Reply-To: X-Newsreader: Datula version 1.51.09 for Windows Xref: ccsf.homeunix.org japan.anime.pretty:206 fj.rec.animation:2159 石崎です。 例の妄想第172話(その17)です。 Keita Ishizakiさんのの フォロー記事にぶらさげる形になっています。 # 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から # 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。 # そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。 (その1)はから (その2)はから (その3)はから (その4)はから (その5)はから (その6)はから (その7)はから (その8)はから (その9)はから (その10)はから (その11)はから (その12)はから (その13)はから (その14)はから (その15)はから (その16)はからどうぞ ★神風・愛の劇場第172話『弱き者』(その17) ●濱坂市・水無月島・海の聖母マリア教会 「ジャンヌだ! 出会え、出会え!」  予告状の時間まで待機し続けていたミナがそれまで身に纏っていた術──身体 を小さくする術と見えなくする術──を解き、人間達の前に姿を現すと、自分の 姿に気づいた人間達は途端に騒ぎ始めました。  これまでの経験なのでしょう。いきなり飛びかかることはせず、人間達は自分 を中心に半包囲陣を敷きつつありました。  後ろを振り返るとそこには、今回のジャンヌの予告状の対象と人間が勝手に思 い込んでいる聖母子像がありました。 「怪盗ジャンヌ! もう逃げ場は無いぞ。大人しく縛について貰おう」  背後から人間達の指揮官と思われる声がして、ミナ──姿は怪盗ジャンヌです が──はゆっくりと振り返りました。  見ると、周囲の人間達が今にも自分に飛びかかろうとしていました。 「(あまりゆっくりしている時間は無さそうね)」  再度、今度は首だけを後ろに向けたミナは、聖母子像に手を向けてほんの一瞬 考えます。  事前の計画では、対象物は持ち去るか、さもなければ破壊することになってい ました。  当初の計画はもっと単純だったのに。そう、ミナは思います。  レイが最初提案した計画では、こちらでの作戦は予定されていませんでした。  しかし、会議で議論を重ねる内に今のような形になったのです。  全ては、奇襲効果を得るためとは言いながら、複雑な作戦は失敗する危険が高 まると考えないでも無かったミナ。  しかし、実際に作戦を実行する今とあっては、迷ってなどいられません。 「(持ち去るには大きすぎる。ならば破壊か)」  躊躇う必要は無いはずでした。  レイならば瞬きする間にこれを塵に変えていたでしょう。  これは人間達にとってもさほどの価値は無いとも聞かされています。  だけど……。 *  祭壇の聖母子像の前に怪盗ジャンヌは忽然と姿を現しました。  警官達の目だけで無く、センサー類にも何の反応も示さずに侵入を果たしたの は呆れる程見事。  それに加えて、先日の桃栗体育館倒壊事件で見せたジャンヌの不思議な力。 「(彼女は、本当に人間なのか?)」  これまでと同様、そんなことを氷室は考えていました。  しかし氷室はどこまでも警察組織の一員でした。  真実は、彼女を捕らえて聞き出すしか無いと考えていたのです。 「怪盗ジャンヌ! もう逃げ場は無いぞ。大人しく縛について貰おう」  氷室達に背を向け、聖母子像の方を向いていたジャンヌに氷室が呼びかけると、 一端こちらを向いた彼女は再び聖母子像の方を見やり、手を向けました。 「いかん!」  これまでの時と同様、美しい物を盗まれてしまう。  そう直感した氷室は、自らジャンヌに向け突進しました。 「警部に続け!」  背後から、春田の号令が聞こえ、聖堂内の警官達も走り始めました。 「何?」  こちらを向いたジャンヌは何時ものようにターゲットを消したりせず、一直線 に自分たちの方に向かって来ました。  もう少しで自分たちと激突する…その直前で、姿が消えました。  しかし氷室は全く慌てず、すぐさま上を見上げます。  ジャンヌの跳躍力からして、自分たちの頭上を越えることは訳はない。  その予想違わず、ジャンヌの姿は自分たちの頭上にありました。  以前の衣装であれば、スカートの中身まで見えて視線に困ったものですが、今 の姿であればその心配もなく、氷室は視線を逸らさずにジャンヌを注視しました。 「この手も駄目か…」  ジャンヌが祭壇の周囲に密集する形となっていた警官隊を飛び越し、入り口の 手前に着地したのを見て、氷室は呟きます。  彼の頭の上から、以前都が開発した特殊ワイヤーの改良版──主として安全性 を高める方向での改良品──である「クリスタルスパイダー改」の切れ端が落ち て来ていました。 「ジャンヌが外に出る! 正面入り口だ!」  氷室が命令を待たず、春田が教会の外で待機している警官隊に対して無線で指 示を出していました。  直後、自分たちで仕掛けたトラップの残骸を除去しつつ外に出た氷室達。  彼らが見たものは、取り囲む警官隊を無視するかのように道を進んでいくジャ ンヌの姿。 「何をしている! 早く取り押さえるんだ!!」 「そ、それが警部」  入り口の外の警官隊を率いていた夏田が説明するまでも無く、状況は氷室にも 飲み込めました。  日没後とは言え未だ明るい空。投光器の照明に照らされたジャンヌを十重二十 重に取り囲んだ警官が次々とジャンヌに飛びかかろうとしていました。  しかし、ジャンヌの周囲にある見えない壁に阻まれて、誰一人近づくことが出 来ません。  思い切って体当たりを試みた者は、その壁に弾き返されてしまい、周囲の警官 を巻き添えにして倒れていました。 「警部。狙撃班、準備出来てます」 「そのまま待機」 「ですが本署からは…」 「ジャンヌの周りを見ろ。あの壁を銃弾が貫けなかったらどうなる」 「成る程。跳弾の危険がありますな。了解です」  春田があっさり納得した所をみると、思いは同じなのだろう。  そう感じ、安堵の溜息をつく氷室なのでした。 ●水無月ギャラクシーワールド・大観覧車  全が希望したために、大観覧車に乗ることになったツグミ達。  入口に辿り着いてみると、次から次へと客を乗せる構造上、この時間にしては 珍しく行列らしい行列は出来てはいませんでした。 「山茶花さん、瀬川さん」  ツグミ達が早速乗り込もうとすると、水無月大和が現れ、声をかけてきました。 「あら、水無月さん」 「山茶花さん達も観覧車に乗るんですか?」 「ええ、そうよ。ところで、大道寺さん達は?」 「今、観覧車に乗った所です。僕は地上で留守番です」 「あら、観覧車のゴンドラは二人乗りだったかしら?」 「ここのキャビン…あ、この遊園地ではそう言うんですけど、キャビンは四人乗 りです。二人で乗りたいそうで、僕は置いてかれちゃいました。ハハ…」  大和が苦笑いをする様子を聞きながら、ツグミは気がつきました。 「四人乗りなの?」 「はい。ここのゴンドラは四人乗りですね。あ!」  佳奈子も今になって気づいたらしく、声を上げました。 「一度に乗れないでぃす」 「イカロスが居るものね……」 * 「(……で、何でこうなるんですの?)」  ゆっくりと上昇を始めたキャビンの中。弥白は心の中で叫びました。  四人乗りの箱の中には、弥白とツグミの二人きり。  人間に限定しなければイカロスもいるので厳密には二人きりではありませんが。  自分たちの後から続くキャビンには、佳奈子と全が乗っていました。  もっと他の組み合わせを考えていた弥白。  しかし、佳奈子が組み合わせをさっさと決めてしまい、自分たちだけ先にキャ ビンに押し込んでしまったのです。  沈黙を乗せたまま、キャビンは上昇して行きました。  そして不意に気づきました。 「(ツグミさん、景色を楽しむことが出来ないんですのね)」  イカロスも主人の足下に従ったままでいるのを見て、弥白は声をかけました。 「ね、イカロスに景色を見せてあげましょうよ」 「あ、そうだわ。イカロス、景色をご覧なさい」  ツグミも何か考え事をしていたのでしょうか。  そのことに今思い至った様子でした。  ツグミはイカロスのハーネスを外し、椅子の上ヘと導きました。  するとイカロスは窓の外から見える景色を眺めます。  既に太陽は海の彼方に見える陸地の向こう側に落ちており、まだ空には明るさ は残っていましたが、地上には灯りが煌々と点灯していました。 「どんな景色が見えるか、ガイドしましょうか? プロみたいには出来ないです けど」 「私なら、良いわ。聞かなくても、今日一日この身体で十分に感じられたから。 でも、イカロスは乗り物に乗る時、お留守番ばかりだったでしょう? だから、 今はイカロスに景色を見せてあげられれば、それで十分」 「そうですの…」  そう言われてしまうと、やはり話すことが無く、再び沈黙した弥白。  今度はツグミの方が口を開きました。 「今日は本当にありがとう。こんなに外で楽しく遊んだのは、久しぶり。イカロ スや全君も喜んでいると思うわ」 「喜んで貰えて、嬉しいわ。だけど…」  この先を言って良いものかどうか、弥白は一瞬迷います。  が、結局口にしてしまいました。 「だけど本当は、日下部さんと一緒の方が良かったのでは無いですの?」  何でこんなことを言うのだろう。  素直にツグミの感謝の言葉を受け取れば、お互いに幸せなのに。  そう、弥白の心の中の良心の部分が囁いていました。 「チケットは2枚しか無かったし、日下部さんは学校だし、全君はもうすぐ外国 に行っちゃうと聞いたから…」 「チケットは5枚は入れてあった筈よ」  ボランティア活動をしていたら偶然その相手がツグミ達だった。  自分たちの建前を振り捨てて、弥白は言いました。 「どうして…。そうか、そうなのね。貴方の家が、私のことを…」 「違いますわ」  ツグミが勘違いしかけたので、弥白は慌てて修正しました。 「私に貴方のことを依頼したのは、ボランティアサークルで一緒に活動をされて いる方。ネットワークでの付き合いが主なので、本当のお名前も存じ上げません わ」  一部を除けば、嘘は言っていませんわね。言いながら、弥白はそう思います。 「本当のことを言えば、貴方が来ると聞いてどうしようかと迷ったわ。だけど、 私は結局引き受けた。どうしてかしらね?」  本当にどうしてなのだろう? ツグミさんのお母様に恩があったから?  ううん、それだけじゃ無い。 「……ごめんなさい」  暫しの沈黙の後、弥白は言いました。 「弥白さん?」  目を閉じ、俯いた弥白の手にツグミの手が重ねられました。 「どうして…泣いているの?」  自分は涙を流しているのだ。  ツグミの言葉でそれを悟った弥白は、顔を上げ手でごしごしと目を擦りました。  ハンカチを使うと、本当に泣いていることを認めてしまう気がして。 「どうして、私は貴方みたいに強くなれないのかしら。私なら、好きな人が他の 人と一緒に居るなんて、耐えることは出来ない」  何故か断片的になっている過去の記憶。  稚空さんも日下部さんも私のことを責めはしないけど、何かとても恐ろしいこ とをしてしまった気がする。  いいえ。覚えていることだけでも、私はツグミさんの前に立ってなど居られな い。 「私には…耐えられない。だから、私は……ごめんなさい」  今度は涙が止まりませんでした。  そうか、私は彼女に謝って、楽になりたかったんだ。 「私、貴方に……」 「それ以上言わないで、弥白さん」  自分の頬にツグミの手の暖かみを感じました。  ハンカチを取り出したツグミは、弥白の頬を伝う涙を拭ってくれました。 「貴方が私に何を謝ろうとしているのか、私には判らないし、判りたいとも思わ ない」 「ツグミさん」 「私が貴方に対して感じている感情は、ただ一つだけ」  元々涙を拭うために顔を弥白の側に寄せていたツグミは、そっと弥白の頬に唇 を触れました。 「!? な、何するんですの!」 「手の上ならば、尊敬のキス」 「厚意のキスということですの?」 「正解。私は貴方に感謝する理由はあるけど、謝られる理由は無いと思ってる。 だから、暗い話はこれでお終いにしない?」  また、彼女に大きな借りを作ってしまったのかもしれない。  そう弥白は思います。 「でも、感謝しなければいけない理由はありますわ」 「そうかしら?」 「倒れていた私を介抱してくれた」 「そんなこともあったかしらね」 「ついでに雪の中病院まで案内してくれた」 「イカロスの散歩のついでにね。イカロスは喜んでいたみたい」 「とにかく……ありがとう」 「どういたしまして。でも、私からも貴方にお礼を言わなくてはいけないこと、 他にもあるんじゃないかしら?」 「そうかしら?」 「母と私の写真とか。あれ、山茶花さんがやってくれたんでしょ?」 「何のことかしら?」  自分でも半分忘れかけていたことを持ち出され、一瞬どきりとした弥白。 「稚空さんが持って来てくれたんだけど…山茶花さんしか頼む相手、居ないと思 ったんだけどな」 「知りませんわ」 「そう。名古屋君が持って来てくれたのだから、間違いないと思ったんだけど な」 「さぁ、水無月さんにでも頼まれたのでは無いかしら?」 「そうね。そういう事にしておきましょうか」  本当にこの人は、どこまで、何を知っているのだろう。  少し前ならば、薄気味悪く思える彼女の物言いも、今ではそれ程嫌悪感無く受 け入れることが出来ました。  多分、何もかも知った上で、それを受け入れられる人なのだろう。  だけど、それだけでは駄目な気がしてならなかった弥白。 「日下部さんのことですけど」 「何? 名古屋君との三角関係の話ならパスよ」 「違いますわ。どうして、日下部さんをお誘いしなかったの?」 「それは、学校があると思ったから…」 「だったら、昼間に会った時にどうして佳奈子さんの提案を断ったの?」 「……」  それまで笑顔を見せていたツグミの表情が、俄に曇るのが判りました。  その様子を見て、優越感を感じた弥白。  直ぐにそんな感情を抱いてしまった自分自身を恥じ入り、罪悪感すら抱いてし まいます。  そうでありながら、弥白は更にツグミに追い討ちをかけてしまいます。 「日下部さんのことを愛しているんですのね」  今度は言い逃れ出来ないように、弥白はストレートに言いました。 「愛しているから、殊更に無関心を装った。違うかしら?」  俯いてしまったツグミ。ですが直ぐに顔を上げました。  顔を上げたツグミは普段は閉じた瞳を開いていました。  何処までも深い、蒼き瞳。  目と目を合わせると、吸い込まれてしまいそう。  その瞳を見つめて、弥白はそう思います。 「私は強いって言ったわね。それは違う。どんなに絆を深めても、ううん、深め 過ぎたから、それが本当の絆なのかどうか判らない。それを確かめることも出来 ない。向こうは引き留めて欲しいのに、それが本当の絆かどうか判らないから、 逃げてばかり」  ツグミの言葉から、具体的な状況が想像出来た訳ではありません。  しかし、その言葉から自分にも通ずる部分を弥白は感じました。  だから、思うところを弥白はツグミに伝えます。 「どんなに触れ合って絆を深めても、いざと言う時に引き留めなければ、心は離 れてしまいますわ。私なら、絶対にその手を掴んで離さない」 「そう…。そう出来る貴方が羨ましいわ。私には出来ない」  どこまで本気で言っているのか判らない部分があると感じられるツグミの言葉。  だけど、今、この言葉だけは本気だと感じられました。 「そうでもありませんわ。私だって、逃げ出そうとしたことがありますもの。だ けど、そんな時、あの人は私のことをつなぎ止めてくれた。元々あの人のことは 好きだったけど、改めて好きになりましたわ。あの人の心がどこにあるなんて、 関係無いの。私はあの人のことが好き。愛しています」  この世界から逃げ出そうとした時、救ってくれたのが稚空。  まろんへの想いを知りつつも、強引に引き留め、想いを遂げた自分。  そんな私は悪い女なのだろうか。 「やっぱり羨ましいわ。貴方だけじゃない。日下部さんもよ。だけど、大変ね」 「え?」 「そんな二人に想われている名古屋君が、ね」  どう答えて良いのか判らなかった弥白。  話題を変えようと外を見て、そして言葉を失いました。 「何ですの、あれは…」 ●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ネプトゥヌス』 「行ってらっしゃーい」  従業員達に見送られ、まろん達を乗せたジェットコースターはこのコースター 最大の売りである、海に向けられたファーストドロップへと向かう巻き上げ部分 をゆっくりと登って行きました。  コースターの先頭部分にまろんと都、その背後にアンが一人で座っていました。  その後ろの黒髪美人も一人なので、一緒に座らせれば行列が早く進むのに。  そんなことをまろんは考えたりもしたのですが。  やがてコースターは行列の途中で聞いた説明を信じるならば高さ百メートルに まで達し、レールが見えなくなりました。  この日乗車したコースターの中でもかなり急な部類に属する落下角と高さ。  海面に向かってそのまま突っ込むような勢いで落下したコースターは、その勢 いのまま右方向に捻るように回転しながら上昇して行きました。  上昇を終えると、今度は海面上を旋回する水平ループ。  惜しむらくは、既に日が落ちて昼間ならば青い海が楽しめる筈が、その時は暗 い海しか見ることが出来なかったのですが。 「キャアアアアアア……」  隣で都が(楽しそうに)絶叫しているのを尻目に、案内板にあったカメラがあ る場所が迫っているのに気づきポーズを決めてみたりとまろんは冷静を保ってい ました。  一周目が過ぎ、再び巻き上げを経て二周目に突入したコースター。  ファーストドロップに比べるとやや物足りない二度目の急降下。  「海豚のジャンプ」と称する、急降下直後の急上昇にコースターは移りました。  この後はどうだったかなと、こんな時なのに考えてしまうまろん。  そんなまろんが驚愕の表情を浮かべたのはコースターが山の頂点に達しようと した時です。 「危ない!」  後から考えると間抜けな叫びをまろんを発しました。  隣の都は事態を最初把握していませんでしたが、すぐに前方にあるそれに気づ きました。  もっとも、先程から叫び通しだったので、叫び声を上げていること自体には変 化はありませんが。  二人が驚いたのも無理はありません。  ジェットコースターの頂点部。そこには金髪をなびかせた人影があり、それは 自分のもう一つの姿をしていたのですから。 「ジャンヌ!?」  そんな叫びを都が発したのは気のせいだったでしょうか。  しかし、それを確かめることは出来ませんでした。  ジェットコースターがジャンヌの姿をした人影に激突すると思われた直前、そ の姿は消えていました。  消えていたのは人影だけではありません。  光が幾筋か走ったかと思うと、ジェットコースターがこれから駆け下りる筈の レールが海面に向かって落下して居るのが見え、辿るべきレールを失ったコース ターも又、海面に向かって落下して行くのでした。 (第172話・つづく)  (その18)も、今書いてます…。多分(その20)までには終わると思います。  では、また。 -- Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp