阿部です。

だいぶ時間が経ってしまったのですが、さきごろ『ベネッセ表現
読解国語辞典』と『日本語大シソーラス』を購入しました。

『ベネッセ表現読解国語辞典』は、最重要語、重要語について
語によっては1ページ以上を費やしたり、語感を養えるよう図解
を取り入れたり、同義語を表形式で並べるなど新しい機軸を採用
しています。
また「機能語の説明」は、接続詞の「から」「ので」の違いなど
をチャート図で説明していて、題名に付いている『表現』が十分に
意識されていることが感じられます。語法の解説書になっていると
いえるでしょう。

しかし、用例がどれだけ「共に使われる可能性のある語」を意識
しているのか、まだあまり使い込んでいないので、私には判断が
つきません。
ある語を使うには、使ってよい文脈、一緒に使える助詞、あるいは
共に使う(使える)動詞や形容詞(その語が動詞だったら名詞)
などが分からなければ、結局おかしな使い方になってしまうので、
そうした情報が必要なのですが、これまで国語辞典はこのことを
あまり意識していなかったと感じてます。

あまり使い込んでいない一つの理由は、結局国語辞典を使う目的
は、何かを読んでいて分からない語を調べたり、漢字を確かめ
たりすることが主なものだからということもあります。
読んでいて分からない語を調べる目的からすると、掲載項目約3万
5千語は少ないと感じられます。結局別の辞書を引かなければ
ならないとなると、手が伸びなくなってしまいます。
また、文章を書くのに辞書をあまり引かないという習慣のせいも
あります。style bookや辞書を手許に置いて、常に参照しながら
文章を書くという習慣が身に付いておらず、結局思いつきを書いた
だけになってしまうという

一方『日本語大シソーラス』(大修館書店)は、従来の類語辞典が
記述していることが多かった語釈や使い分けといった情報を
載せず、索引と語(表現)で構成されており、語数は20万語、
索引の見出し語数3万2千語と帯に書いてあります。まさに
thesaurusにふさわしい内容となっています。索引がもっと充実
していると便利に感じます(著者も索引の問題についてはかなり
意識している)。

ただ、類語辞典は、日本語の文章を書くときには活躍の機会が
少ないのではないか、という疑問もあります。どちらかというと、
自分が表現したいことがどうもしっくり表現できないときに引いて
みるというのが私の場合の使い方です。

私は同じ語が続いて出るとなんだかいやな感じを受けるのですが、
とりわけ学術論文は、同じことを表す場合は同じ語を使わないと
いけない。英語で書かれているものを読むときは、違う語が
使われていてもそれほど違いを意識しなくてもいいみたい、むしろ
同じ語が続けて出るのを避けていると聞きます。そういう習慣で
あるのなら、シソーラスも使い甲斐があるのでしょう。

『日本語大シソーラス』の著者・山口翼さんは、巻末で「語釈
辞典」「シソーラス」「活用辞典、文例・引用辞典」の連携を
論じていますが、そのような連携が有効に働くためには、日本語の
文章の書き方、文章教育が変わらなければならないのではないかと
感じます。

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阿部圭介(ABE Keisuke)
koabe@ps.sakura.ne.jp (NetNews用)
関心 ・専門分野 :
 新聞学(ジャーナリズム、メディア、コミュニケーション)