阿部です。

講談社の“闘うイラストーリー・ノベルズマガジン”『ファウスト』
のvol.2に掲載されているトム・ジョーンズ著、舞城王太郎訳の
「コールド・スナップ」は「舞城王太郎 × Thom Jones専用書体」
で組まれています。
同誌は創刊号から、それぞれの作家に合わせた書体で本文を組む
という面白い試みをしていますが、ついに書体まで開発して
しまったわけです。

新聞社が専用フォントをもっていたり、精興社のような印刷会社が
専用フォントをもっていたり、一つの雑誌専用フォントとしてAXIS
専用フォントがあったり(現在は販売されるようになったので一般
でも利用できる)というケースはこれまでありましたが、作家専用
フォント開発というのは、かなり珍しいケースではないでしょうか。

印刷物は活字になればみんな同じ、ではなく、フォントの種類に
至るまで表現であるという考え方で、しかもそれを実現したのが
非常に面白い試みです。

いま活字という言葉を使ったものの、最近の印刷物は実際には
鉛などで作った「活字」を使っているわけではありません。
「コールド・スナップ」は、「活字」こそ使わないものの、
活版(凸版)での印刷を行っているのもユニークです。他の
ページはオフセット印刷なのに、印刷方式まで変えています。

-- 
阿部圭介(ABE Keisuke)
koabe@ps.sakura.ne.jp (NetNews用)
関心 ・専門分野 :
 新聞学(ジャーナリズム、メディア、コミュニケーション)