幼児の咽喉に割り箸が刺さった事件は記憶しているが、此が裁判になっていたことには驚いた。当時のニュ−スを聴いた時に感じたのは、医師の初歩的なミスで、確か咽喉部の確認をしていなかったと思う。
 咽喉部を口を開けさせて確認していれば、出血や、微細でも擦過傷の形跡が確認出来た筈で、万一確認しなかったとすれば両親が状況を的確に説明しなかったか、医師に治療意志が存在しなかったかの何れかと受け取っていたからで、当時の報道から確実に医師の資格がない(免許の有無は別)者の行為として、病院が謝罪し解決していたと思っていた。
 今回の裁判ではCT撮影等の有無などの必要の有無に言及されていたが、一般人に治療、検査の方法を言及させるのであれば、医者に行く時には予め原因と治療、検査方法を調べて、医者に行かなければならない。
 緊急の場合、特に幼児の場合当然の事ながら自分がどの様な状態か意志伝達する事は皆無で、この場合少なくとも両親が状況経過を説明しているので、以降は専門職である医師の責任と言える。
 
 例としては不的確かも知れないが、獣医の場合、鳴き声、動作、触診等確実に且つ慎重に観察する。設備の整わない屋外でも殆ど的確に診断しえいる。
 今回の場合は医師の注意義務以前に適正が問われる事件と思う。

 最近、個人的に乳児が死に至る確率が30%とされる疾病に立ち会った。当初は風邪と同じ症状で一端帰宅し、数時間後再度病院に行き、原因が判らないので要観察として入院させた。夕刻になっても改善しないので、検査技師を呼集し深夜精密検査をした結果、原因菌が判明し集中治療を行い、幸い後遺症も残らない様子でいる。
 この時に最初に診察した医師と部長にあたる医師の二人は、開口一番私に対し「申し訳ありませんでした」と謝罪され、以後安定する迄の間は20分おきに様子を観察に来られた。ICUに入ってもその状態は連続し、結果として5人の医師が交代で対応された。(インタ−ンではない) 途中2時間おきに経過と治療に使用する薬剤の作用、副作用の説明、リスクの確率も的確に説明された。 お座なりの治療計画書ではなかった。 小児科の医師は大変だと実感させられた。

 今回の裁判の両親も医師の対応を問題にされており、確かに人のする事だから手落ちがある。しかし手落ちがある事を前提に注意を持って行われる仕事は世の中にはいくらでもある。
 注意義務が果たせない医師は医師としても社会人としても失格である。まして、検査の要不要を争点にして判断された判決は、争点をすり替えているとしか思えない。

 小児科医師が不足する最大の原因が治療時間がかかり、多くの診察が出来ないから経営として成り立ち難い為である事は以前から言われている。逆説的に言えば多くの小児科医師は真剣に子供と向き合っているとも言える。この実体を把握しないで、単に技術論にのみ特化した判決は本来の医師があるべき姿を失わせる最悪の判決と言える。