こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day Zero-Hour ### @ 学園都市 @ PROGRESS 00:09:28 STAGE:16th district

「まぁ手は出せないでしょうね」
「まさかこんな手を使ってシンクロしてるなんて、思ってないでしょうからね」

 街区を疾走するトレーラーの助手席から、背後のカーゴを覗く憂と初春。そこには最後
のMCを気持ち良さ気に叫んだ唯が立っていた。

「唯さん大丈夫ですか? とミサカは唯さんを案じます」

 背中ごしに、一人の少女を貼りつけて。ゴツいゴーグルが押さえる茶髪が揺れる。

「ん、へーき。不思議だね車に酔わないよ。それよりミサカさんは? ミサカさんたちは」
「勿論、全員異常問題ありません、とミサカは胸を張って答えます」
「張るほどの胸はないみたいだけど」
「あ、ヒドい、とミサカは密かに不貞腐れます」

 ふふ、と笑いあう。

「ミサカ10735からカウントが来ました、とミサカは唯さんに伝えます」
「律ちゃんとこの? あ、次か。よーし」

 急いでヘッドフォンを掛け直す唯。唯と背中合わせに張り付くミサカ11523は唯の
ヘッドフォンから出るケーブルが自分のゴーグルに繋がっているのをシステムが表示する
ステータスで確認し、唯と自分を背中合わせでぴっちり合わせるベルトを締め直すと、
再び自分たちのネットワークに没入した。

 何時もは曖昧模糊として取止めが無く使いようの無い、自分たちの集団意識。そこに、
これまでより若干スピードが抑えめのスローバラード気味なリズムが流れ始める。ぴたり
それに合わせて、ベースのコードとキーボードのメロディが重なり、サイドギターのメロ
ディが加わり、

  ♪なんでなんだろ

 背中越しに、唯の甘くて舌っ足らずなボーカルと、確かなコード進行が聞こえてくる。

  ♪

 リアルタイムでこれをミサカが集団意識へ流す。ぴたり、と重なるメロディラインと
コードとリズムとボーカル。それをヘッドフォン越しに聞きながら、唯は他のメンバが
確かに自分と背中合わせでいるのを感じ取っていた。うん、全然へーき。しっくりくる。

  ♪

「それにしても凄いですね、ミサカネットワークって」
「私も初めて見ましたけど、ホントに凄いんです。1万弱のノードをリアルタイムに
繋いでいて、それでいて光速限界のタイムラグが無いんです」

  ♪

 すすっとラップトップのパッドを操作し、初春がウインドウの一つを全面に出す。現在
この瞬間にミサカネットワークから拾い上げている、この歌"わたしの恋はホッチキス"
を学園都市全域に配信している状況が映し出される。複雑に絡まり合い、伸びたり縮んだ
りして蠢いている図形を見ても憂はさっぱり解らないが、学園都市を模した背景の上に
広がる図形が秩序だって動いているらしいこと程度は何とか掴めた。

  ♪

「その、1万人のミサカさんたちが?」
「えぇ。今は学園都市中に散らばって、放課後ティータイムの演奏を聞いています」
「それを自分たちのネットワークにフィードバックして、お姉ちゃん達はそれをベースに
 シンクロして演奏している、と」
「私に言わせればそっちの方がよっぽど凄いですよ。自分の演奏を聞きながら、ミサカ
 ネットワークに先に流れる他4人の演奏を聞きながら、学園都市中に広がってる演奏も
 聞きながら、全部あわせてシンクロさせる。一体、どんな脳と耳をしてるんですか?」

 如何にも不可解と言った表情で初春が憂に聞く。はは、とちょっと困った顔の憂。

  ♪

 お姉ちゃん達にとっては、ごく当たり前の事なんだけどな。

  ♪

 そう思うし何度も説明したんだけど、初春さんや御坂さんはやっぱり理解できない様子
だった。はは、とか笑いながら憂はちょっと困った顔をする。だって普通のライブと同じ
だもんね。ステージの上で自分の演奏を聞きながら、後ろや前にいる他のみんなの演奏も
聞きながら、会場に広がるアンプとPAからの音を聞きながら、

  ♪

 会場を埋めるオーディエンスの反応を伺いながら、演奏するってこと。

  ♪

 ちょっと会場が広いし(都市中だもんね)みんなの演奏を直に聞いてるわけじゃないし
(でも律さんも澪さんも紬さんも梓ちゃんもヘッドフォンからの音を聞いて「違和感
 ない!」て驚いてたっけ)会場の様子が見えるわけじゃないけど、

  ♪

 1万人のオーディエンスの反応は、タイムラグ無しリアルタイムに解るから。

  ♪

“わたしの恋はホッチキス、でした! ありがとうみんな!”

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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