こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day Zero-Hour ### @ 学園都市 @ PROGRESS 00:04:30 STAGE:17th GARAGE

「衛星からのストリーミング、とまった!」

 狭苦しい暗闇の中、膝上で開いた借り物のネットブックの液晶が示すインジケーターが
示す配信量のビットレートを確認した憂が隣の初春に言う。たたん! と自分のラップ
トップにキーインしながら、憂に答えて初春が顎先のインターカムマイクに叫ぶ。

「フェーズワン終了! 予定通りフェーズツーを開始して下さい!」

 ガラガラガラッと耳障りなスターターモーターががなり、すぐに一層耳障りなディーゼ
ルのアイドリング音が響き渡る。ハンドルを握る一癖も二癖もありそうなヤンキー親父が
ドライバーズシートの尻位置を直しながら額の「高尾温泉峡」タオルを巻き直し、ニヤリ
と笑って運転席のベンチシート反対側に二人で縮こまっている初春と憂に言う。

「ウルサくてワリぃな! 何せ旧式も良いところのエンジンだから、学園都市の御上品な
 エンジンとは違くてよぉ!」
「出して下さい! 衛星はもう盲ですが、5秒で市街監視システムに捕まっちゃいます!」
「わぁーってらぁ!」

 かなりエンジンもクラッチも痛むだろうに、親父は構わずアクセルを踏み込み回転を
上げたディーゼルエンジンに2速に入れたギアを繋いだ。途端に急発進するトレーラー
は、構わず正面の軽合金製シャッターへ突っ込んでゆく。

「きゃーっ!」

 派手派手しい金属の擦過音と崩壊音を後に残し、1台のトレーラーがガレージの正面
シャッターをぶち破りながら道に飛び出す。すぐにハンドルを切り無人・無車両の街区を
疾走し始める。カーゴの褶動が収まったタイミングで、再び初春がインターカムを呼ぶ。

「唯さん! 大丈夫ですか!?」
“あー、初春ちゃん? だいじょうぶだよー、平気平気。”
「お姉ちゃん! 転ばなかった!? 酔ったりしてない!?」
“憂ー、そっち大丈夫?シートベルト締めてる?”
「うん、こっちも大丈夫。ごめんね、お姉ちゃんだけそっちで、」
“えー、でも一人じゃないから大丈夫だよ。”

 あ、そうだったっけ。はっとして思い出し、てへ、とか微笑んだりする憂。自分の耳に
も掛かっているインターカムをぎゅ、と握る。こうすると姉に繋がっている気がする。

「各車、大丈夫ですか!?」

 こうした時でも「状況報告!」なんて叫ばない初春さんって、やっぱりこんな荒事には
向いてないかもと思う憂だったが、ガレージでちょっと話した時に聞いた事では結構凄い
事をやってきたらしかった。数メートル先でぬいぐるみが爆発したり、崩壊した高速道路
から叩き落とされたり、パワードスーツに締め上げられたり殴られたり。まだ中学生なの
に。やっぱり学園都市の学生って、みんなこんなに凄いのかなぁ、とか思ったりする。

“こっち3号車、山中! えーっと、今、幹線道に入ったとこ! 障害なし!”
“こちら2号車、純です! こっちも順調! 連絡ハイウェイは見渡す限り何もいません!”
“4号車、和! 繁華ブロードウェイも車通り無し! 琴吹さんも平気! 喜んでるけど!”
“5号車、美琴! 32号線もクリア! ちょっと律さん! たんこぶ作ったって、何!?”
「さわ子先生! 純さん! 梓さんと澪さんは!?」
“中野さんは無事問題無し! なんか振り回されて楽しんでるみたいだけど!"
“澪先輩も平気だそうです! 澪せんぱーい! 2秒で落ち着きますからスタンバッて!"

 初春がたたんっとラップトップにまたキーインする。有線結線された携帯に光が灯る。
インターカムに叫ぶ。
「フェーズツースタート! ステージング、オン!!」

 トレーラーのギアがシフトアップされ、カーゴがスピードに乗る。カーゴカバーのラッ
チが開放され、無人の街区に無地のゴム引き帆布が舞い捨てられる。下から現れたカーゴ
側面からギー太を下げる唯のバストショットと一緒に「けいおん!」のロゴが顕になる。
トレーラーが疾走する無人街区のスピーカーから、唯が刻むコードがまた流れ始める。

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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