こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day 08:57AM ### @ 学園都市 第17学区 車両整備センター予備ガレージ @

  「うぉーい!こっち終わったゼェ! セットアップ頼まぁ!」
  「こっち、あとちょい! …配線材、どっか余ってないか!?」
  「ねーこっち手伝ってぇ! なんか可愛くなんなーい!」
  「ハーイ炊き出しだぞー。手ぇ空いた人から食べてよいからー。」

  広大な筈のガレージなのだが、流石にフルハーフのトレーラーが5台も並んでいると
 狭苦しく感じられる。そんな中を罵声と怒声と怒号が、工具やら材料やら部品やらと
 一緒に飛び交っている。そして当然、それらの主たちも。はっきり言って喧しい。何故
 かメイド服姿の少女が炊き出しをやってたりして実はそれの味が特級で好評だったり。

  わらわらとトレーラー5台に取り付いた人々は、みな疲れた表情こそしているものの
 一様に熱気と高揚感に満ちている。一晩くらいの徹夜などへっちゃらなのだ。

  何と言っても、まだ学生。肉体が精神の無理を凌駕させる。これが若さ。

初春「それにしても、よくこれだけかき集められましたねぇ。」

  ほとほと感嘆しきったように初春が話しかける。唖然とした表情でこの光景を見てい
 る美琴も実は全く同じ感想。何故だ?確かあの時、梓さんに渡した携帯には5件くらい
 しか美大やら工芸大やらのコレ関連なIDは入っていなかった筈なのに。

初春「その5件がそれぞれ5件づつに話を回して、またその5件が5件づつくらいに話を
   回して、でそれでもう125件です。このくらいはすぐに集まりそうですね。」
美琴「いやいやいやそれにしても、私が話しかけたってこんなに集まりゃしなかったと
   思うんだけど。」
初春「そこはやっぱり梓さんの力じゃないんですか?
   だって、あの『あずにゃん』ですよ? そこからの直接コールですよ。」
美琴「ふーん。やっぱそう?」
初春「そうですよ!あーもう信じられない御坂さん!そんな調子で、他の放課後ティー
   タイム様のメンバ様へ失礼なこと言ってないでしょうね!?」
美琴「てぃ、ティータイムさま?メンバさま?」
梓 「あのー?」
初春「はいぃ!」

  怖ず怖ずと声を掛けた梓に、もう思いっきり全身で振り返り、満面の笑みで応対する
 初春。実はミーハーなんじゃないかとかねがね思っていたが、遂に本性を表したか、と
 美琴は嘆息する。このトレーラー5台を侵入させた警備局サーバーへの情報書換やら
 放課後ティータイムの楽器探索やらこのコッチの計画に伴う各種防壁の作成と情報欺瞞
 工作なんかで殆ど寝ていない筈なのに、これまで以上に初春のテンションは上がって
 いる様に見えた。もう頂点の悦楽状態。

梓 「あの、やっぱり私たち、なんかお手伝いした方が良いんじゃ...」
初春「とんでもありません! こんなローディとバックスタッフがやる仕事を、あの
   放課後ティータイム様にやらせたなんて知られたら、全国100万人のファン
   クラブから学園都市が焼打ちされちゃいます!さささ、梓さんはバックヤードで
   お休み頂き、今晩の英気を養って下さいませ。さぁさぁさぁさぁ」
梓 「え、でも、あの、その、初春さん、」
初春「はい!...あ、でも、あの、」  もじもじもじもじ
梓 「?」
初春「私のことは、飾利ちゃん?て呼んで頂けませんか?」 頬赤らめ、目パチパチ
梓 「…飾利ちゃん?」
初春(きゃー!)「で、あの、もし宜しければ、あずにゃん、て呼ばせて貰っても、」
梓 「えーっと、それは別にいいけど、」
初春(きゃーきゃーきゃー!)「あずにゃん♪っ」
梓 「…ゴメンナサイ。やっぱその、語尾の♪、やめて。」

  何故か必要以上にがっくし来てしまった初春に代わり、美琴が梓から聞く。

美琴「おはようございます、梓さん。どうですか、そっちの調子?」
梓 「ん、御心配なく。紬先輩も澪先輩も張り切ってガシガシ仕上げてますし、律先輩も
   パワー全開です。少し絞ってくれた方が良いんだけどな。それでなくても、何時も
   走り気味なんだから。」
美琴(それで夜まで持つのかいね?)「唯さんは?」
梓 「あの人は心配いりません。つか、心配する方がバカバカしいって言うか、とにかく
   そんな人ですから。」

  それは実際、その通りなのだろう。昨日だって携帯越しに和さんと木山せんせいが
 悩んでいたフレーズを「ん?こんなかんじ?」でアッサリ弾き片付けてしまい、周囲を
 唖然とさせ、かつ黒妻をまた大笑いさせていた。本人は「えへへー」で、相変わらず。

美琴「…すごいのかすごくないのか、よくわからない人ですね。」
梓 「わかりますか!?」
美琴「わかりますよ。私の友達には、そんな人がワンサカです。」

  特に、あのツンツン頭のレベル0男とか。む?なんかムカムカしてきたぞ。
  あ、でも何だか梓さん、すごく嬉しそう。良かった、気分は治ったみたい。

梓 「まぁそんな感じで、こっちは大丈夫です。御心配なく、皆にお伝え下さい。」
美琴「りょーかいしました。こっちも時間通り定刻通り仕上がります。お任せ下さい。」

  ふふ、と微笑み交し合う。ちょっと手を振り、梓がバックヤードへ引っ込む。その
 梓に手を振り返しながら、なんか良いもんだなぁ、と美琴は思ったりする。はて、
 何がこんなに良いもんなんだろう?

  「うぉーっし!基礎設置完了!セットアップの組み付け出来るぞ!」
  「配線完了!内装、被せちゃってくれ!」
  「やたーっ!やーっだ可愛い!凄いね、この子ったらもー!」

  あぁ、そうか。

  ガレージの中で喧しく飛び交う人々の声を聞き、熱気を感じ、美琴は納得した。
  そっか。これが。そうなのか。と、ふ、と昨夜の光景が思い出される。

黒妻「俺ァこれでオサラバさせて貰う。こう言ったベタな仲間付き合いは合わなくてな」

  少年院の地下で打ち合わせた内容が本決まりになり、今度はこの学区の無人工場地帯
 まで私たちを案内してきた彼は、そう言うとふぃっと居なくなってしまった。何故か
 和さんが必死に縋って止めていたが、なんだか遠い目をしながらそんな和さんを見ると
 ふ、と笑い、黒妻は和さんの頭を一つ撫で、手を振って去っていった。

初春「こーらー! 憂さんに何て事させてるんですかぁー!」

  何時の間にか立ち直ったらしい初春が、ガレージの中で内装から外装から基板から
 跳び回って手伝いしていた憂に向かって駆け出してゆく。えーいーじゃん?だってこの
 子の才能ったら凄いよ?何でも一発でマスターしちゃうよ?ねーねー何処の学校?卒業
 したらウチの学校においでよ絶対合格させるから?なんてチヤホヤしまくる大学生たち
 の中で嬉しそうにおろおろしている憂へ突貫していく途中で、あ、インターセプト。

さわ「まあまあ初春さん、あなたはこっちこっち、」
初春「え、あの、その、さわ子先生?私のことは飾利ちゃんって呼んでくれた方が、」

  ま、こっちは心配いらなさそうだ。美琴はそう納得すると、再び今晩の手配を再開し
 始めた。愛用の携帯を開き、小型化され内装組み付けになった暗号化秘匿回線の調子を
 インジケータで確認しつつ、携帯の電話帳を開く。片っぱしから電話を掛けまくる。

美琴「あ、おっひさー。あたしあたし。ねぇねぇ今晩ヒマ?…そう!ならばちょっと、
   出てこれない? ほんでちょっとだけ、能力(ちから)貸してくんないかな?

   …うん。イベントがあんの。うん、かなりでっかい、祭りが。」

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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