こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day -1day 11:43AM ### @ 学園都市 第2学区 先進状況救助局 主管制室@

副長「何故見つからない!」

  何度目になるのか、副長のそのセリフが管制室に響きわたる。最初の頃にはビビった
 局員たちも、数晩目の徹夜勤務のせいと怒鳴られ慣れのせいで、もう麻痺している。

局員「警備局(アンチスキル)からも風紀委員(ジャッジメント)からも報告無し!
   副長!本当に彼らはこちらの指示に従って捜査しているのですか!?」

  それはその筈だ。が、こちらのゴリ押しが通じやすい警備局はともかく、所詮は学生
 のNPOである風紀委員はアテにならない。そして市街の対人探索にかけては警備局は
 基本ノータッチであり、風紀委員の助力が無ければ効果があがる筈も無い。

  そして風紀委員は、HTTと同じ、学生だ。

影 「落ち着きなさいな、副長ちゃん。」

  ぎ!と焔の様な視線で、副長は隣の小柄なオブザーバー席を見やる。何時の間にか
 消えていた、この鬱陶しいオブザーバーは、また何時の間にか戻ってきていて、何故か
 堂々と先進状況救助局のセキュリティが厳しい主管制室に入り込んでいた。そんな副長
 の苛立を一切慮る事無く、小柄な人影は言葉を続けた。

影 「現場からのレポート、読んだでしょう? コンビニで彼女らを助けたのは、結局
   そこに居た全員。けれど彼らはネットの掲示板で見た『イベントのごっこ遊び』に
   付き合った気でいるだけ。彼女らをコンビニから移動させたのはトレーラー。市外
   から来た車で、おまけにGPSはおろかEGIすら着いていないような古い古い
   ディーゼル車だから、学園都市の交通管制システムでさえモニタリング出来ない。
   加えて彼らが使った逃亡ルートは、よりにもよってスキルアウト達が根城にする
   街区ばかり。市街監視カメラは殆ど壊されていて映像追跡もできない。そして最後
   に、逃亡し続けている彼女たちは全員が揃いも揃ってレベル0でID無し。だから
   AIM拡散力場のパッシヴ測定でも引っかからない。正直、お手上げですね。」
副長「ならば何故、そんなに都合が良いトレーラーが揃って3台も市街を走っている!」
局員「あ、あの、副長? それは多分、こういう事ですかと。」

  苛立を押えきれない副長へ報告しただけでも、この局員はほめられるべきだろう。
 ぱきゅ、と軽い音を立てて正面モニタに映し出された監視映像には驚愕すべき光景が
 映っていた。

副長「…なんだ、これは?」
局員「一昨日夜半の、学園都市外部から都市内へ入る高速下り線の映像です。」
副長「そんな事じゃない! 何故、市外部居住要人送迎用のスーパーリムジンが5台も
   コンボイ組んで走っているんだ!? あれは1台しかない虎の子だぞ!」
局員「判りません! ですが通過時の映像、提出されたID、警備局へのアクセスキー、
   どれも矛盾しません! これは全て例のスーパーリムジンではないのですか!?」
影 「だから副長ちゃんが事前に根回しした通りに、各警備局や管制局がノーチェックで
   通過させちゃったんですねー。」

  きゃらきゃらと笑いながらオブザーバーが言いにくい事を言う。また焔の様な視線で
 彼女を見つつ、副長はついに決断を下した。

副長「MARの権限で、都市管制監視システムへ緊急指示コードを送れ。
   全ての監視衛星を市街の対人探索に振り向けさせろ。例外は無し。大至急だ!」
局員「そ、そんな事をしたら学園都市の外部防衛は丸裸になります!」
副長「構わん!全権限は此処にある!」

  副長が懐から、かなり大ぶりの鍵を取り出した。おぉ、と局員達の間から歓声が漏れ
 る。あれが噂のアクセスキー。全権限承認を司るIDキー。

  血走った目の副長が、それをコンソールのスロットに差し込み、回した。

  途端にそれまで火が入っていなかった天井と床面の巨大スクリーンが稼働し始める。
 複数の低軌道衛星による監視システムのパワーが丸々こちらに振り向けられ始める。
 それまで見えなかったものが見え始め、聞こえなかった音が聞こえ始める。都市管制の
 巨大なリソースが、このMAR管制室に直結された。

  学園都市の大いなる力が、MARに流し込まれ始めた。

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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