こん○○わ、PARALLAXです。では早速。
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  │ 【 軽 音 部 、 西 へ  - HTT live @ 7th district - 】 │
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### D-day -1day 08:17AM ### @ 学園都市 第4学区 収容施設 モニタルーム@

  きゃははははは、と甲高い笑い声が先程からずっと室内に響いている。それを横目で
 苦々し気に見やりながら、副長が指図した。

副長「もういい!コンビニでも何処へでも行かせてやれ。監視の目は絶対に外すな!」

  きゃははははは、と笑い声が響き続ける。流石に感に触り、副長は声を荒げた。

副長「もう宜しいでしょう!」

  ぴた、と笑い声が止まる。それでも可笑しくて堪らない、と言った口調で続く。

影 「…本当に宜しいのですか? それにしても見事にあっという間にバレましたね?」
副長「いえ、宜しくは有りませんね。認めます。流石にこの事態は想定外です。」

  それはそうだろう。彼自ら、彼女らをレベル0の無能力者だと断じていたのだから。
 だからこそ今回の計画に必要なチップやメカを組み込んだコピー楽器を「公演前に慣れ
 て貰おう」と直ぐに渡したのだったが、まさかそれが触っただけで見破られるとは到底
 思ってもみなかった。技術局め、とんでもないガセを寄越してくれたものだ。彼は憤っ
 ているが、事前にその偽楽器を本物と比較しGOサインを出したのが自分である事は
 勿論既に心の棚に上げて仕舞い込んでいる。流石、高級官僚。

影 「同時に彼女らの信頼も全て失われてしまいましたが?」
副長「それも仕方のない事です。御心配なく、そちらは想定の範囲内です。何と言っても
   所詮は外界の小娘。何とでも言いくるめられますよ。今日いっぱいありますしね」
影 「助けがくる。そう言っていませんでしたっけ?」
副長「えぇ『明日になれば』ね。日曜日です。敵さんもそうそうは早く動けませんよ。」

  平沢唯がそれを発言した時、確かに標準時は土曜日に入っていた。間違いない。
  それにいざとなったら例の手もある。いや寧ろ其方が都合が良いかもしれない。

  そんな副長の考えを読むかの様に副長の横顔を見つめていた、人物が言葉を続けた。

影 「それにしても見事なものですね。こちらが用意した偽物を即座に見抜き、モニタに
   映る友人がCGだと直ぐに見抜き、一晩あけて直ぐにこちらを攻め立ててくる。」
副長「CGの件については、まだ完成度が低いものでした。入管ゲートで取得出来た情報
   程度では、まぁあんなものです。現在は昨晩の会話で得られた疑似人格ロジックも
   実装出来ていますから、もう本人以上に本人らしく対処出来ますよ。御心配なく」
影 「…外界の女子高生の世界って、そんなに油断ならないのでしょうか?」

  そんな筈はない、と彼は思うが、しかし現在の女子高生の生活ぶりなど業務知識の
 範疇には全く無い。せいぜい外界のマスメディアの流行さえ押さえておけば十分だし、
 彼女たちの行動もそれに従っている。ほら、今も彼女らは某国営放送の朝のミニドラマ
 を見終えてから動いている。漫画家の古風な嫁が人気らしいが、何処が良いのやら?と
 彼は思う。しかしまぁ原作と似ても似つかぬ程に美形なゲゲゲ女房の話は置いといて。

副長「確かに油断ならない一団だと認めます。ですが、今の彼女らに何が出来ますか?
   確かにこちらの手に気づいた鋭さには驚きましたが、所詮は小娘9人。しかも
   幾つも学区を隔てて、今はバラバラです。同期して動く事すら出来ませんよ。」
影 「同期してますよ?ほら。」
副長「朝ドラを見終えてから、ですからね。コンビニに行きたがるのは、それもまた
   女子高生なら如何にもある話です。部屋に置いてあるのは所詮ホテルの消耗品、
   女子高生の好みに合う物ではないでしょうし。」

 「対象A、1階ロビー店舗へ現着」「対象B、地上店舗へ現着」「対象C、同じく」

  モニタを眺める部下からの報告が次々に入る。宿泊施設付きの店舗設備であるが故に
 外部からアクセスしやすい階層にあり、対テロ警備として不合格なのは仕方ないが、
 入管ゲートの様に此処でまたテロ活動を自作自演する予定など全く無い。だから彼は
 幾分リラックスしてモニタを眺めていた。平沢唯がきょろきょろと見回し突然駆け出す
 のを、平沢憂と中野梓が二人掛かりで諌めている。田井中律の左腕を掴み秋山澪がおず
 おずとコンビニの狭い通路を進む後ろで、山中さわ子がその姿を誂っている。琴吹紬と
 眞鍋和と鈴木純はコスメのコーナーで、頬まで寄せ合い検討中だ。

  ぴったりと、3人が一緒になって。

  は!とそれに気付いた副長が口を開く。

副長「ま!」

  待て、と叫び切ることすら彼には出来なかった。突然、コンビニ店内をモニタしてい
 た3枚のスクリーンが真っ白に染まる。スピーカーから全く同タイミングで衝撃音が
 幾つかの悲鳴と叫び声と一緒に聞こえてくる。

  つい昨日も聞いた、あの瞬間的な破裂音に特徴がある、無害煙幕弾の破裂音が。

 「対象Aロスト!」「対象Bロスト!」「対象Cロスト!」「店内、視程ゼロ!」

  監視室に報告の怒鳴り声が輻輳する。朝方の割合と混み合うこの時間帯、コンビニ内
 の客数は結構多かった。レジが混み合う程ではなかったが、たちまち視界を埋めた白煙
 のせいで対象の姿を見失う。最寄の監視局員が対象に駆け寄ろうにも狭いコンビニの中
 では如何ともし難く、避難して駆け出してくる一般客も邪魔になった。

  時間にして僅か1分少々後。白煙が強制排気され惨憺たる光景があからさまになった
 コンビニが映ったが、また避難誘導された店内の客(何故か殆ど学生だった)も集まっ
 た野次馬(何故かスキルアウトが多かった)も市街監視カメラで具に映し出されたが、

  それらの何処にも、放課後ティータイムの9人の姿は無かった。

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今回は、一先ず此処迄。 では。
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