第 9地区
「第9地区」を見てきました。
社会派だのなんだの言われてるけど、そんなの関係なく単なるSFX戦闘
アクションとして十分楽しめる映画だと思います。とりあえずガンダム
的モビルスーツというか人型戦車が出てきてそれなりに活躍したりもす
るので、その筋のマニアなら見て損はないかと。
# 以下、ややネタバレ。
物語の骨格は、よく考えたらかなり「アバター」と似てます。少なくと
も、凡才的な白人男性が資本主義の走狗として"下等な"エイリアンのコ
ミュニティに派遣されて土地の明け渡し交渉に臨む、という発端部分の
設定は同じ。
本作は、もともとはHaloの映画化が頓挫して失業しちゃったスタッフた
ちが、せっかくだからってんで監督の過去の短編映画を元に製作したも
のらしい。ただ、その短編にはストーリーらしいストーリーはなかった
ぽいし、スタッフが何らかの意図を持って(もしかすると冗談半分に)、
あえて超大作アバターにさりげなくケンカを売ってみた、という可能性
はありえなくもないのではないか。とか。
# アバターと違って、こっちのエイリアンは基本的には着ぐるみらしい
# し。って関係ないか。
本作が社会派云々と評されがちなのは、難民や人種差別の問題をエイリ
アンに置き換えて…ということだろうけど、正直、それはちょっと買い
かぶりというか見る側の思い込み如何な気がする。少なくとも声高なメ
ッセージ性はないというか、その辺は本当に淡々とした感じ。これに比
べるとアバターは、異文化とかエコロジーとかを単に物語を盛り上げる
ネタにしてるだけって気もしてくる。
アバターといえば、主人公の描かれ方も典型的な凡人成長ヒーローとい
うか、いかにも一般受けしそうな(純朴な原住民の側に立って悪い白人
と戦う)善意の白人。実際は単に欲望の赴くまま行動してるだけという
か、最初は報酬に釣られて資本家の犬(笑)になり、エイリアンの肉体に
馴染んで彼女ができたら手のひら返し。って気もするんだけど。ラスト
だって、あれ冷静に考えたら前途多難な状況だろうに、なんとなくハッ
ピーエンド風。要するにすべては甘いファンタジー。
一方、本作の主人公は、ほぼ一貫してあからさまに利己的。まあ凡人が
あの状況に放り込まれたらそうなるかもなっていう妙な親近感は持てて
しまうけど。自己嫌悪というか。
だからまあ、メッセージ性云々の件も含めて、そこら辺は本当に淡々か
つ殺伐とした映画です。砂糖ミルク抜きのネスカフェ程度にはビターと
いうか、ある種のハードボイルド。
そういえば、映画の冒頭にエイリアンへの嫌悪を語る市民の映像が出て
くるけど、これ、少なくとも一部は現実の難民に関するインタビューと
して撮影されたものらしい。あと、エイリアン居住区の撮影に使われた
屋外セットは、実はセットでもなんでもなく、実際に南アでスラム街の
住民が集団移転させられた跡地だとか。エイリアンのスラムに巣食って
る黒人ギャングの集団がナイジェリア人という設定とか。なんともスト
レートというか身も蓋もないというか。
以上、なんか変にアバターにこだわってますが、ともあれ個人的には見
終わったあとの満足感はこっちのほうが上でした。いや満足っていうか
腹にたまるというか。確かに細かいツッコミどころはあるし、そもそも
細かいことは意図的に放置されてるっぽい気もするけれど、とにかくパ
ワフルなのは間違いないと思います。
# ちなみに、さっき公式サイトで予告編を見てきたけど、あれはかなり
# サギっぽい。あれじゃまるで謀略系サスペンス(?)
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AMAUMA
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