16日のNHKドラマ「気骨ある判決」を観た。
 第二次大戦中、東條内閣の下での昭和17年の翼賛選挙で、東條内閣の戦争遂行方針を強力に支えるため「大政翼賛会」が組織され、天皇陛下が択ばれたこの推薦候補以外には投票するな、それに背いた者は非国民であるなどと真っ赤なうそを使ってまで、軍官一体の組織的な選挙法違反が行なわれ、落選した非推薦候補が「選挙法違反」として訴訟を起こした事案である。
 その裁判長となった、吉田判事は、国賊呼ばわりされ、軍官の様々な妨害、暗殺の危険さえあったにも拘わらず、法律家としての正義を貫き、「選挙無効」の判決を下したのである。
 明治の初期に、訪日中のロシア皇太子が斬り付けられ、重傷を負った大津事件で、大国ロシアを慮って「大逆罪」を主張する政府に反して断乎として「謀殺未遂罪」を適用した大審院長児島判事に勝るとも劣らない偉業であると思うが、それが知られていないのは、大津裁判とは違って、裁判所の恥になるからではなかろうか。
 村上新八