Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
Message-ID: <fdl90t$30g4$1@ccsf.homeunix.org>の下にぶら下げています。
(その1)は、Message-ID: <fdlb9p$5ob$1@ccsf.homeunix.org>から
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それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その16)
●砲台山公園
「お父さん! 気をつけて!」
自らが仕掛けたトラップにより動きを封じられ、またここまで持って来た装備を手
の届かない場所に蹴り飛ばされてしまった都は父と偽ジャンヌとの戦いに加勢するこ
とは出来ず、ただ見ているしかありませんでした。
戦いそれ自体は氷室が優位であるようにも見えるものの、偽ジャンヌの強さを目撃
した都にとっては、彼女が遊んでいるという気がしてなりません。
(あれさえあれば…)
目の前に装備が転がっているのに、手が届かないもどかしさ。装備の中には、接着
剤を剥がすための溶剤も入っているのです。
「ぐはっ!」
悲鳴が聞こえ、振り返った時には父は既に気を失って倒れていました。
そして偽ジャンヌは、都の方に向かって一歩、また一歩と歩いて来ます。
「く…」
偽ジャンヌを睨みつけた都。その時、異変が起きました。
都がいるモニュメントの台座の一部に見えたものが開き、そこから色の付いた煙が
勢いよく噴出しました。一歩遅れて、広場の四隅の地面からも同様に煙が噴出し、忽
ち偽ジャンヌの姿が見えなくなりました。
その煙の正体を知っている都。しかし、ハンカチを口に当てる以外のことは出来ま
せんでした。そしてそれは、一時の気休めにすらなりませんでした。しかしすぐに、
都はおかしな点に気づきます。本来であれば、都のいる場所が最初に煙で覆われる筈
でしたが、都のいる場所には未だ煙が来ていませんでした。
「お待たせしました」
程なく煙の中から声がして、ガスマスクを装着した大和が姿を現しました。
「遅いわよ!」
本当は嬉しかったのですが、ついいつもの調子で怒ってしまいます。
「すいません。プログラムの修正に時間が…」
そう言いつつ、都にガスマスクを装着します。
「今、そっちも剥がしますから」
バッグの中から溶剤の入った瓶を取り出した大和。
「急いで!」
「急には剥がせませんよ」
一気に剥がすと、靴や服や肌を傷めるのは判っていましたが、都は急かしました。
「でも、あいつが来ちゃう!」
「大丈夫ですよ。いくら怪盗ジャンヌでも…」
そう言いかけた大和の表情が凍りました。
「く…。やっぱり、同じ手じゃ駄目か」
かつて怪盗ジャンヌを倒した催眠ガス。都スペシャル・零。
ガスから逃げたのでもガスマスクを用意したのでも無く、偽ジャンヌは口を覆うこ
とすらせずに平然と煙の中から姿を見せました。
「今のは少し危なかったわね。まさか、味方巻き添え覚悟の攻撃だなんて」
偽ジャンヌの言う通りでした。全ての警官に行き渡るガスマスクの数がなかったた
め、この作戦は最後の最後まで使わずにありました。この公園の周辺にいた警官達で、
ガスの巻き添えで眠らされている者が何名かはいる筈でした。
「この公園の中は現時点では動ける警官はいません。風向きからして、巻き添えは無
いか、いても僅かです」
大和の耳打ちされ、都は肯きました。
「委員長、あんたは逃げなさい。あたしなら大丈夫だから」
「嫌です。僕が時間を稼ぎますから、その間に接着剤を剥がしていて下さい」
「無茶よ。委員長も見たでしょ? 相手は、マスクも無しでガスの中を歩いて来る化
け物よ!?」
「そんな相手だからこそです」
「良いから逃げなさい!」
「そうしたいのは山々ですが…。僕、やっぱり男の子なんですよね。大切な女の子を
置き去りにしてはいけませんよ」
そう言うと、大和は都に背を向け、偽ジャンヌへと相対します。
その手には、杖状の物──杖型のスタンガン──がありました。
電撃が相手には利かないと言いかけ、都は止めました。
恐らくは大和はそのことを見ていた筈だからです。
「都さんは自分の自由を確保することに専念して下さい。良いですね」
どさくさに名前で呼んでいることに都は気づきます。
「うん…」
「それから、都さんがそれを剥がすまでは、僕の方を見ないで下さい。…その、僕が
女の子に負けてたりしたら、格好悪いじゃないですか」
「あんたが勝つなんて、誰も思ってないわよ」
「酷いです…」
「冗談よ。見ないでいてあげるから、頑張りなさい。すぐに加勢するから」
大和と約束した通り、都は大和と偽ジャンヌの戦いを見ることは無く、剥離液によ
り接着剤を剥がすことに専念していました。
しかしながら、耳から聞こえて来る音までは消すことが出来ませんでした。
音から判断する限り、それは戦いというにはあまりにも一方的なものでした。
大和が悲鳴を上げる度、何度顔を上げようかと思ったか知れません。
しかし、その度に大和との約束を思い出して耐えました。
「委員長!」
漸く都は接着剤を剥がし自由を取り戻し、都は大和の名を呼びました。
しかし、返事は無く、それどころかつい先程まで聞こえていた大和の悲鳴すら聞こ
えなくなっていました。
「委員…長?」
恐る恐る、顔を上げた都の目の前に、偽ジャンヌが立っていました。
「委員長!」
偽ジャンヌの背後の地面には、大和が倒れていたのでした。
●郷土資料館
「う…ん…」
氷室と偽ジャンヌことミナが戦っている頃、まろんはセルシア達と潜んでいる郷土
資料館の隣の建物の屋根の上で目を瞑り、うんうんと唸っていました。
「何唸っているですです?」
視線はモニュメントの方から離さず、セルシアは訊ねました。
「いや、私、一度ロザリオ無しで変身することが出来たらしいの。その時のことは覚
えてないんだけど。だから、試してみようかなって」
「本当ですです?」
「うーん。でも、駄目みたい。どうしてなのかな?」
照れ笑いを見せつつ、まろんは言いました。
「それは……どうしてでしょうですです」
一瞬間をおいてセルシアが答えます。
「ああっ!!」
突然、セルシアが叫び目を瞑り集中していたまろんは目を開け、双眼鏡で公園の様
子を観察しました。
「おじ様!」
そう叫ぶなり、立ち上がり、建物から飛び降りようとしたまろん。
しかし、背後から腰を抱きかかえられ止められてしまいます。
「離して! セルシア!!」
「はい?」
てっきりセルシアに止められたものだと思ったまろん。しかし、彼女は目の前にい
ます。
「俺だ…まろん」
「稚空!?」
振り返ろうとしたまろん。
しかし、自分の腰に抱きついている彼の表情を伺うことは出来ません。
「お前…変身出来ないん…だろ」
「稚空? 苦しそうだよ」
「……」
「稚…空?」
まろんの腰に回されていた手の力が抜け、ずるりと落ちていくのが判りました。
「稚空? ……稚空!」
まろんが後ろを振り返ると、シンドバットの姿の稚空が倒れていました。
「ねぇ、稚空、稚空! 稚空!」
稚空を抱きかかえ、まろんは彼の身体を揺すりました。
まろんの動揺する声を聞いて、公園の様子から目を離し振り返ったセルシア。彼の
命には別状は無いことは、先ほど確かめていましたが、改めて彼に触れて確かめてみ
ました。
人の命の輝きの強さを確かめる能力(ちから)。天使としての仕事には必要なこの
能力に関しては、セルシアは誰にも負けない自信はありました。その彼女が確かめて
みても稚空の身体には問題は無く、それどころか、その輝きは人間としてはあり得な
い早さで回復しつつありセルシアを内心驚かせます。
「……稚空君は大丈夫ですです。だから」
まろんを安心させるように、セルシアは呼びかけました。
「本当に?」
「本当ですです」
セルシアが断言すると、まろんは漸く安心したような表情を見せました。
その時です。公園の中に突然煙が充満し始めました。
「うわっ。何だこれは」
公園の近くで、氷室を追いかけて来たらしい警官の叫び声がここまで届いて来まし
た。
「ただの煙幕じゃないぞ」
「おい、しっかりしろ!」
「状況ガス! 状況ガス!」
「退避〜」
どうやらこの煙を吸うと眠ってしまう様子でした。もちろん、この煙がここまで流
れて来たとしても、周辺に巡らされた障壁で、セルシア達に影響はありませんが。
公園の中は煙で見えなくなってしまい、その様子を伺うことは出来ません。
セルシアは、天使としての力で煙の中の熱源を探しました。
すると、直前まで公園の中にいた人間に加え、更に一人の人間が増えていることが
確認出来ました。それはまろんの友人の一人、委員長と呼ばれている水無月大和だろ
うと推測しました。
その人影は、モニュメントの都の側にいましたが、やがてミナに向かって駆けて行
きました。
「あっ」
無茶ですです! …と叫びたくなる衝動をセルシアは抑えました。
もしも状況をまろんに知らせたら、彼女が煙の中に突入しかねなかったからです。
セルシアの任務の第一は、神の御子──すなわちまろん──の身の安全を確保する
こと。その任務を放棄することは出来ませんでした。
「何、あれ?」
「あの煙を吸うと、眠ってしまうみたいですです」
「あの偽者さんに効くのかなぁ」
「多分無理…と思うですです」
「だよね」
その会話の最中、セルシアの耳には公園から微かに大和の悲鳴が届いていました。
やがて煙は薄くなって行き、公園の状況が肉眼でも確認出来るようになって来まし
た。
「…あ…あ…委員長! 都!!」
双眼鏡越しに公園の様子を目撃したまろんをセルシアは抑えようとしました。
しかし、まろんは恐らくは無意識に自身の障壁でセルシアの手をはね除けてしまい
ます。
「日下部さん!」
まろんを止めようとしたツグミ。しかし、その手は空を切ります。
「セルシア、稚空とツグミさんをお願い!」
そう言い残すと、まろんは建物から飛び降りてしまうのでした。
●砲台山公園
「よくも委員長を!」
感情のまま、特殊警棒を偽ジャンヌに向け振り下ろした都。
しかし、彼女はそれを素手であっさり受け止めます。
「く…」
「よくも…ですって? あの少年から襲いかかって来たから、正々堂々相手をしたま
でのこと。戦士としてそれが礼儀だと思わない?」
「でも委員長は…」
「何? 彼に手加減でもして欲しかったというの? 随分と自分の彼氏に失礼なこと
を言うものね」
「委員長は彼氏なんかじゃない!」
反射的に言い返してから都はしまったと思います。
「あら、そう。彼がそれを聞いたら悲しむでしょうね。彼、言っていたわよ。東大寺
さんを守るんだって」
その光景を思い浮かべ、都は歯噛みします。
「く…委員長…」
特殊警棒を握る手に力を込める都。
しかし、それはぴくりとも動くことは無く、都の目には知らず知らず涙がこぼれて
きました。
「守れなくて悲しい?」
偽ジャンヌは都に近寄ると、その髪を掴み引っ張り上げました。
「痛…」
「彼が感じた痛みはこんなものじゃすまないわ。貴方のお父さんも、その部下も!
みんな…みんな貴方のお遊びの所為なんだからね」
「きゃあっ!」
偽ジャンヌに放り投げられ、都はモニュメントに叩き付けられました。
「うう…」
よろよろと立ち上がった都。
その目の前に、偽ジャンヌが立っていました。
「同じ痛み、味わってみる?」
冷たい目で偽ジャンヌは都を見ていました。その目は、かつて兄の研究所で間近に
見た本物のジャンヌとはまるで違っています。
「やるなら…やりなさいよ。この偽者!」
都は、偽ジャンヌを睨みつけて身構えました。しかし、偽ジャンヌはそれ以上都に
何かをしようとしませんでした。どうしたの? するならしなさいよ。……と、心で
は思ったものの、痛い思いを好き好んでするつもりも無いので口にはせず、ただじっ
と偽ジャンヌの目を見続けていました。
「ふうっ」
先に根負けしたのは偽ジャンヌのようでした。
彼女はため息をつくと、都から目を逸らしました。
「ねぇ東大寺さん」
「何よ」
「どうしてそこまでして、怪盗ジャンヌを捕まえようとするのかしら?」
「それは…。刑事の娘として、将来刑事を目指す者として、この街を愛する者として、
当然のことよ!」
本音とは大分異なる、表向きの理由を都は口にしました。
「嘘おっしゃい。本当はそんな理由じゃ無いんでしょ」
「嘘じゃない!」
偽ジャンヌに即座に断言されて、都はムキになって言い返しました。
「嘘。だって、本当は…」
その続きを偽ジャンヌは言いませんでした。
彼女は都の方では無く、振り返り背後を見ていました。
「やっと来たか。だが遅い」
偽ジャンヌが見る視線の先をガスマスク越しに見た都は、目を見開きました。
今、この場にいる筈が無い者──まろん──がそこにいたからです。
「都!」
まろんはそう自分に呼びかけてきました。
ガスが完全に晴れていない中、まろんはマスクもつけずにここまで駆けて来ていま
した。
「まろん! 来ちゃ駄目!」
都の叫び声を聞いてか、偽ジャンヌは都の方を見ました。
彼女は都に手を伸ばすと、都からガスマスクを引き剥がしました。
鼻孔に、人為的につけてあるガスの匂いを感じた都は、息をしないように呼吸を止
めようと努力しました。
「ちっ。黙ってお前は寝ていろ」
偽ジャンヌは都の首筋に手を触れました。びりっとした感触があり、都の意識は遠
のいて行きました。意識が無くなる前、都はまろんが自分の名を呼ぶのを聞いていま
した。
郷土資料館の隣の建物から飛び降りたまろん。公園が催眠ガスで充満している上、
指揮すべき氷室警部や春夏秋冬の刑事達が全ていなくなっており、警官達は混乱の最
中にあるとは言え、流石に警官達の前を走り抜ける訳にも行かずに隠れながら公園に
向かったために、思ったよりも時間がかかってしまいました。
公園に続く道は通らず、斜面を駆け上がっていったまろん。
公園の中はガスが未だ残っていましたが、まろんは構わず内部に突入します。
それと意識しなくても、まろんの身を守る「神のバリヤー」こと障壁が、ガスの影
響から自分を守ってくれる筈だからでした。
モニュメントの上でジャンヌに化けたミナの側には、ガスマスクを装着して立って
いる都がいました。
「都! 逃げて!!」
本当はこの場に自分がいてはいけない気もするのですが、そのようなことを気にし
ている場合ではありませんでした。まろんとしても、変身出来ない状態で敵をどうこ
うしようとまでは考えておらず、都を救い出せればそれで良いと考えていました。
「都!」
再度呼びかけたまろん。
「まろん! 来ちゃ駄目!」
都もまろんのことを認めたらしく、こちらに向かって呼びかけて来ました。
ミナは都の方に振り向くと、都のマスクを引き剥がしました。
やがて都はぐったりとして、ミナの腕に抱きかかえられました。
「都ぉ!」
都を救出すべく、まろんは真っ直ぐにミナに向けて駆けて行きました。
そのまろんの視界が突然光に包まれ、まろんは立ち止まります。
「く…」
光が消えてからミナ達のいる方を見ると、モニュメントの台座の上でミナは片腕で
都を抱きかかえ、片腕を自分の方に向けており、今の光が自分への攻撃だと判りまし
た。
「都は関係ないわ! 都を離しなさい!!」
ミナに向かって、無駄と思いつつもまろんは呼びかけました。
「関係ない? 関係大ありだと思うのだけど」
「え…?」
「彼女が追いかけているのは怪盗ジャンヌ。すなわちもう一人の貴方」
「!」
まろんは、ミナの腕の中にいる都の様子を伺います。
「安心なさい。彼女の意識は今は無いから、貴方の本当の姿を知られることはない。
貴方がジャンヌにさえならなかったら、彼女はこんな危険なことをすることは無かっ
たのに、真実を知ったなら、彼女はどう思うのかしら?」
「だって、それは…!」
私に怪盗ジャンヌになるように言ったのは、あなた達の仲間のフィンじゃない。
その言葉をまろんは飲み込みました。言ってしまったら、罪をフィンに擦り付ける
ことになる気がしたから。
フィンは自分に嘘をついて──アクセス達の主張では、記憶を書き換えられて──
自分に怪盗をさせていたのですが、あくまでも決めたのは自分自身。当時のフィンは
自分にお願いはしても決して強制はしなかった。
「だけど安心して良いわ。これからは、私が怪盗ジャンヌをやってあげるから。そう
なれば、貴方も、……そして彼女も、もう悩むことなんてないから」
「え…? ちょっと待って!」
「今日からは私が本物の怪盗ジャンヌ。誰もそれを疑う者はいない。だって、怪盗ジ
ャンヌの正体なんて、誰も知らないのだから。それともみんなに話してみる? 私が
本物の怪盗ジャンヌです…って。貴方にそれが出来るの? 出来ないわよね」
「く…」
みんなを危険に晒し、傷つけていく目の前の怪盗ジャンヌの姿をしたミナを怪盗ジ
ャンヌとして認めることは、本物としては絶対に出来ませんでした。しかし、それを
口にすることも出来ませんでした。
「出来ないのなら、貴方はそこで私の仕事を見てなさい。It's a show time!」
「待っ…!」
「神よ、種も仕掛けも無いことをお許し下さい」
都を抱えたまま、ミナは言いました。
「1!」
モニュメントの台座が一瞬、光ったような気がしました。
「2!」
台座から光の筋がが何本も上空に向かって伸びて行きました。
「3!」
何の音も無く、モニュメントがゆっくりと浮かび上がって行きました。
「都!」
浮かび上がろうとするモニュメントの台座に飛び乗ろうとしたまろん。
しかし、上空から幾つもの光球が降って来て、まろんの行く手と視界を遮りました。
そしてまろんが視力を取り戻した頃、モニュメントはまろんの手の届かない所にま
で浮かび上がっていました。
「今宵もまやかしの美しさ、頂き!」
上空から、怪盗ジャンヌの──自分の──決め台詞を残して。
(つづく)
では、また。
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