Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
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(その12)は、Message-ID: <g9db9v$bdn$1@sakura.ccsf.jp>から、
それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その13)
●桃栗町西部地区 ツグミの家
プルルルルル……
暗闇の中に電話の音が響きました。
ツグミがすぐに取りに行くだろうと思い、微睡み横になったままでいたまろん。し
かし、電話は鳴り続けていました。目を開けると、横でツグミは眠ったままでした。
段々と意識がはっきりして来て、まろんは眠る前のことを思い出しました。天使の
羽根を通じ、周辺の警戒をするのでしばらく戻れないと連絡して来たセルシアは、通
信の最後に「ごゆっくりですですっ」と言い残しました。それでまろんとツグミは、
セルシアが気を利かしてくれたのだと理解し、二人は親密な時を過ごすことが出来た
のでした。
服を整え、慌てて電話へと階段を駆け降りて行ったまろん。
稚空からの連絡かと思ったからです。
「もしもし、瀬川ですが」
“まろん?”
受話器の向こうから風の音混じりで親友の声が聞こえました。
「都? ひょっとして外にいるの?」
とっくに帰宅していると思っていた都が外にいたことで、まろんの緊張が高まりま
す。
“うん。今、郷土資料館。怪盗ジャンヌからの予告状が出たのよ”
「ええっ!?」
予告状なんて出していないのにと思わず言いかけ、まろんは口をつぐみます。
“何よ、そんなに驚いて。てっきり稚空から聞いてたかと思った”
「うん…そう言えばそんなことを言ってたかも」
“それでどうなの? ツグミさんの具合は”
「あ、うん。もう大丈夫。今は眠ってる」
“そう…。良かった。今日はもう遅いから、朝までツグミさんのことを宜しくね”
「うん」
“後、それから…。病人相手に、ヘンなことするんじゃないわよ”
「し、しません!」
“フフフ…。冗談よ。じゃあね”
受話器を置いて、ため息をついたまろん。
冗談って、一体どういう意味なのだろうと思います。
そんなまろんの耳に息が吹きかけられました。
「ひゃあっ!」
飛び上がったまろんの背後に、いつの間にかツグミが立っていました。
「……嘘つき」
ぼそりと、ツグミは呟きます。
「え、え〜と、何がかな?」
まろんの背中に汗がだらだらと流れます。
「色々と…ね。でも、私も日下部さんに隠していたことがあるからおあいこね」
「え?」
「怪盗ジャンヌからの予告状のこと」
「聞いてたの?」
「聞こえちゃったの」
「でも、ツグミさんが嘘って…あ…ひょっとして、さっきの」
ツグミは肯きました。
「名古屋君から聞いていたわ。けど、私はそれを日下部さんに伝えなかった」
「どうして」
と言いつつも、その理由もまろんには判っています。
「名古屋君には、日下部さんが間違っても一人で郷土資料館に行くことが無いように
と依頼された。貴方は戦える状態ではないからって。だから、私は彼に言われたこと
の全てをあなたに伝えなかった。ごめんなさい」
「ううん、気にしないで。……でも、私行かなきゃ」
「戦うことが出来ないのに?」
「遊園地の時だって、ロザリオが無くても何とかなったし、昨日だって」
「でも…」
「あそこには、都がいるの」
きっぱりと言うまろんにツグミは抱きつきました。
「ツグミさん?」
「私よりも東大寺さんの方が大切なのね……」
「う…」
肯定も否定も出来ず、まろんは言葉に詰まります。
「行っても良いわ。でも、条件がある」
「何?」
「私も一緒に行くわ」
「えっ!?」
「名古屋君に私、お願いされているの。まろんと一緒にいて欲しい。間違っても、ま
ろんが一人で郷土資料館に行くなんてことが無いようにって。だから、私が日下部さ
んと一緒に行けば、名古屋君との約束を破ったことにはならないでしょ?」
「危ないよ」
「あなたと一緒なら、たとえ地獄でも怖くないわ」
「でも……」
まろんは迷っていました。都の所へ行けば、ツグミを一人残して行かなくてはいけ
ない。かといって、都の方も放っておけない。
「迷うことは無いですです!」
「セルシア!?」
いつの間にか、リビングの窓の所にセルシアが立っていました。
「話は聞いたですです! まろんちゃんとツグミさんのことは、セルシアがしっかり
と守るですです! だから、三人で一緒に行くですです!」
セルシアは真剣な表情……というよりは、何故か怒っているようにまろんからは見
えました。どうして彼女が怒っているのかまでは判らないのですが。
「じゃ、決まりね」
「え?」
「三人と…それと、イカロスも一緒で良いかしら?」
「はいですです!」
勝手に話を進めてしまうツグミとセルシアに、まろんはとんでもないことになった
と頭を抱えるのでした。
●砲台山公園の近く
「稚空、予告状を出して来たぜ!」
「お疲れ。それと今はシンドバットだ。アクセス」
「すまねぇ」
海に続く斜面にへばりつくように生えている木の枝で、稚空は相棒に注意しました。
殆ど崖に近い急斜面であるが故に警戒も薄い。読み通り、展望台の足下にある斜面
には警官は配置されていませんでした。流石の都もジャンヌがここから侵入して来る
とは思わなかったのだろうかと、今はシンドバットの姿となっている稚空は思います。
「トキはどうしてる?」
“稚空さん達の真上です”
羽根を通して、本人からの応答がありました。
「姿が見えないが」
“不可視の術を最大にしていますから、同族であっても見えないと思います”
昨日訪れて来たミナのことを稚空は思い出します。そして、彼女の置き土産のこと
も。
トキの証言によれば、遊園地でも偽物のジャンヌにミナが化けていたことから、今
日も恐らく彼女が姿を現すと思われました。
(そうであるならば)
稚空は、ポケットから彼女の置き土産を手にします。
「何見てんだよ稚空。あれ…、その羽根はまさか、ミナのものじゃ」
稚空が手にしていた白い羽根を見て、アクセスは驚いた様子で言いました。
「判るのか?」
「ああ。羽根を見れば、誰のものかは大体判る。どこで手に入れた?」
「昨日、家に来ただろう。その時に落としていったらしい」
「それは変だな」
「え?」
「だって羽根は…」
“稚空さん! 始まったようです!”
トキの声に斜面の上を見上げると、それまで点灯していなかったサーチライトが上
空へ向けて突然、照射されました。そして、そのサーチライトの中に、見覚えのある、
それでいて、今、この場にいる筈の無い存在が映し出されていました。
「行くぞ、アクセス!」
「おう!」
●砲台山公園・展望台
「それにしても東大寺さん。ジャンヌとシンドバットはいつ来るんでしょうね。予告
状にはどちらも今宵としか書いていませんでしたけど」
大和は、ジャンヌからの予告状と、つい先ほど届けられたシンドバットからの予告
状のコピーを見ながら都に訊ねました。
「そろそろ来るんじゃないかしら。丁度こちらの準備も整ったことだし」
「そうそう、二人とも都合良く現れるものですかね?」
「来るわよ、必ず。予告時間通り現れるか、時間が曖昧な時はこちらの準備が整った
所で現れ予告通り物を盗み出す。それがあいつとの暗黙のルールだもの。まぁ、たま
にはルール違反もあったけどさ。そしてシンドバットはジャンヌが現れない限り、ま
ず姿を見せない。あの二人、どういう訳かライバル関係にあるようね」
そう言いつつ、腕時計で時間を確認した都。
時刻は午後十一時半になろうとしていました。
郷土資料館の周辺はサーチライトやら照明やらで照らされており、上空は警察のヘ
リコプターが飛び回り、やはりサーチライトを照らしながら周囲を警戒していました。
何時もよりも厳しい警戒態勢。最近、怪盗ジャンヌに派手に建造物を破壊され、市
民から批判を浴びた警察が威信を賭けていると感じられました。
しかし、都が警備を任されている「ももたとくりこ」モニュメント周辺は暗闇に包
まれ、モニュメントだけが元からある灯りでライトアップされていました。それは、
都がそのように指示したからですが、もちろん訳がありました。
「でも…本当に良いんですか?」
「何が?」
「あれをいきなり使うのは拙いんじゃ…」
「戦は先手必勝。向こうもいきなりとは思わないでしょう」
「でも、問題にならないんですか?」
「良いのよ。そう、決まっているんだから」
ぽつりと、都は呟きました。
「決まった?」
「あたし、お父さんの机の上の書類を読んじゃったの。今後の怪盗ジャンヌに対する
対処方針って件名の書類をね」
それはわざと、読ませるために氷室が置いているのだろうと都は推測しています。
「それって…」
「うん、実は……」
都がその中身について話そうとした時、大和が用意してくれた単眼式暗視装置を通
し、夜空に何かが見えたような気がしました。
「あ…! あそこ!!」
都が手にしていたスイッチを押すと、サーチライトが自分が今見ている方向に自動
的に旋回し、点灯しました。それで更にはっきりと彼女の姿を確認すると、首から下
げた笛を吹こうとしたのですが。
「何もいないじゃないですか……」
「え!? でも、あそこに…嘘…」
一瞬目を離した間に、都が見た人影はいなくなっていたのでした。
●公園上空
「何!?」
地上からサーチライトの光を浴びせられた時、ミナは驚きました。
予定では、直前までは姿を見えなくする術を使って接近する筈だったからです。
他の力──例えば障壁──などと同時に力を使った場合、姿が見えてしまうことも
ありましたが、ミナ程の術力があればその心配も無く、そもそも障壁も現在は展開し
ていません。術が解けていないか確認したところ、どうやら自分の姿を認めたのは、
遊園地での作戦でも神の御子──まろん──の側にいた彼女の親友、東大寺都だけで、
その隣にいた少年は、自分の姿を認めていないようでした。
(そう言えば、彼女は)
術をかけ、眠らせた筈なのに彼女にかけた術はすぐに解けてしまった。
フィンと深く交わっていたが故に、天使の術が効きにくくなっているのか?
(確かめている余裕は無いか)
腕につけた刻時機──要するに、時計──で時間を確かめると、ミナは攻撃目標に
向けて急降下して行きました。
サーチライトに照らされた怪盗ジャンヌの姿をした何か。それが自分の予想通りミ
ナであることは、同族であるトキにはすぐに判りました。この距離に接近されるまで
判らなかったということは、向こうも同じく不可視の術を使っていたということなの
でしょう。
にも関わらず、東大寺都は気づいた。彼女が危険だとトキは判断しました。
当初の作戦では偽物のジャンヌの目標が二箇所考えられたこともあり、彼女の目標
が明らかとなった段階でシンドバット、トキ、アクセスの三者が共同で妨害する予定
でした。しかし、トキは稚空と同様、「見える者」となった可能性のある都をミナが
排除する可能性を危惧し、彼女の安全の為に先に仕掛けることにしました。
トキは不可視属性を弱め、障壁を展開した上でミナに急速に接近して行きました。
彼女の背中はがら空きで、背後からの一撃を加えようとしたトキは障壁に不意に強い
衝撃を受け、横方向へとはじき飛ばされました。
「く……」
その衝撃の方向に向き直った途端、第二の衝撃が障壁に到達しました。
その衝撃の正体が、昨日、まろんを救出に向かった時に人族が使ったそれと同一の
物であることに即座に気づいたトキ。しかし、その時と異なるのは、この距離から下
界の人間に気づかれずに反撃する手段が無いということでした。
“トキ! 銃声があったようだが!?”
「稚空さん。昨日の奴らが向こうの山から攻撃して来ているようです。派手なことも
出来ませんから、向こうに行って黙らせて来たいのですが」
“判った。こっちは任せろ”
「お願いします」
トキは、攻撃を加えて来た方向に進路を変えました。
●オットー隊陣地
“ブラウよりシュバルツへ。天使1、急速接近中!”
「ブラウは陣地転換。他の各分隊は引きつけて各個射撃開始」
“了解!”
山中各所に配置した部下に慌ただしく指示を出したオットー。
自分でもパーティーに参加したいのは山々ですが、今は指揮に専念していました。
(しかし向こうから突っ込んでくるとは…。ルールに縛られているのは、こっちだけ
じゃないってことか。ありがたい)
自分を射撃した火点に辿り着いたトキ。しかし、そこは既にもぬけの空でした。
つい先頃までそこに何かがいたことは気配から間違いが無いのですが。
逃げられたか。そう思い、稚空達に加勢しようかと思った瞬間、トキは同時に三方
向から攻撃を受けました。発射速度は高くないものの一発当たりの威力は高い攻撃。
一瞬障壁を解除しての速射が可能な光線による攻撃は人族由来の魔法陣による防御壁
で無効化されていました。ならばと接近戦を挑もうとしたトキの無警戒だった背後か
ら一撃が加えられます。トキが振り返ると既に敵は姿を消していました。
トキは自分が、いつの間にか敵の十字砲火のただ中にいることに気づいていました。
●砲台山公園
背後からトキが接近して来ていることは判っていました。しかし、敢えてミナはそ
れを気づかない振りをしていました。銃声がして、トキの気配が遠ざかります。作戦
通り、オットー隊が背後を守ってくれているのが判り、ミナは安堵します。
(ここからは、時間との勝負)
急降下しつつ、敵陣の様子を直接観察したミナ。敵の指揮官──都──が陣取って
いる高台から少し離れた場所にある「ももたとくりこ」像の周囲は暗闇に包まれてい
て、何があるのかは見えません。ただ、人がいるような気配はしましたが、それに伴
い当然ある筈の熱が感じられないのが不思議でした。
しかし、人間の仕掛けであれば、最悪障壁があれば何とかなる。
そうミナは判断しました。
「銃声?」
オットー隊がトキを狙撃した銃声は、都達の耳にも届いていました。
最近、町外れで派手な銃撃事件があったことを都は思い出しました。しかし、その
銃声が何者によるものなのかを考えている余裕はありませんでした。
銃声のした方角をみた都は、見慣れた人影を暗闇──といっても、街の灯りもある
ので全く見えない訳ではない──の中に見つけました。
「現れたわ!」
都が再び手の中のスイッチを押し、サーチライトが都の視線に連動して動くと、地
面に立てたシートをかける為に設置した猫足場の上に立っている人影が照らし出され
ました。
「怪盗ジャンヌ!」
姿を見るや大和は叫び、都は笛を吹きます…が、人の動きはありません。
怪盗ジャンヌは戸惑ったように左右を見回しますが、こちらの動きが無いことに気
づいたのか、足場から飛び降り「ももたとくりこ」像に近づこうとしました。それを
見て、都はニヤリと笑うと、手にしていたグリップ式スイッチケースの上蓋を開け、
スイッチを2回押し込んで叫びます。
「都スペシャル!」
都が別のスイッチを押すと、暗闇の中に何台か停車していたトラックの荷台に設置
されていた箱状のものが旋回しつつ角度を変え、そこから何かが発射されました。
都が何かを叫ぶと、暗闇の中から小さな銃声らしき音がして、何かがこちらに向か
って飛んで来ました。その物体は十字架の形状をしているようにミナからは見えまし
た。
ミナが余裕で跳躍して回避すると、それらは足場やシートに当たって地面に落ちま
した。その攻撃は一度では終わらず、次々と連続して行われました。その攻撃はミナ
の回避運動に正確に追随しているばかりか、未来位置に先回りして飛んで来るため、
何度かの攻撃は障壁を使って受け止めざるを得ませんでした。
ミナは知りませんでしたが、警察や軍が暴徒鎮圧用に、また民間でクマなどの猛獣
の撃退用に用いられるゴム弾が攻撃の正体でした。トラックの荷台のそれぞれの箱の
中には警察が装備しているショットガンを数十丁束ねてあり、広場の各所に事前に設
置した、赤外線画像、レーダー、音響等の複合センサーからの情報を元に、箱の方位
と角度が自動調整されて発射される──当然、銃身の位置による補正済み──という、
ハイテクとローテクが合わさった珍品でした。それは、非致死性のゴム弾を連射可能
な発射装置が間に合わなかったという事情によるものでしたが、家を何軒も買えるよ
うな開発費と製造費──殆どの費用は警察でなく水無月グループ持ち──がかかって
います。
「中々しぶといわね」
「普通の人間が回避出来る訳は無いんですが」
「あれ…?」
「どうしました」
「なるほどね」
何かを都は納得した様子でしたが、大和にはその意味は判りません。
「え?」
「まだまだ! 次、行くわよ!!」
「はい!」
大和は、展望台に元々あったコンクリート製のテーブルの上に設置されたノートパ
ソコンを操作し、リターンキーを押すのでした。
(つづく)
では、また。
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