Path: news.ccsf.jp!not-for-mail From: =?ISO-2022-JP?B?GyRCN0hCUyF3GyhC?= Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18) Date: Sun, 08 Jun 2008 19:09:24 +0900 Organization: CCSF NetNews Archive Lines: 355 Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: p78a3d0.kngwnt01.ap.so-net.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP X-Trace: sakura.ccsf.jp 1212919776 81529 61.120.163.208 (8 Jun 2008 10:09:36 GMT) X-Complaints-To: usenet@ccsf.jp NNTP-Posting-Date: Sun, 8 Jun 2008 10:09:36 +0000 (UTC) In-Reply-To: X-NewsReader: Datula version 1.51.09 for Windows X-Antivirus: avast! (VPS 080608-0, 2008/06/08), Outbound message X-Antivirus-Status: Clean Xref: news.ccsf.jp japan.anime.pretty:13476 fj.rec.animation:8731 携帯@です。 またまたまたまた間隔が空いてしまいましたが、 # 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から # 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。 # そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。 Message-ID: の下にぶら下げています。 (その1)は、Message-ID: から (その2)は、Message-ID: から (その3)は、Message-ID: から、 (その4)は、Message-ID: から、 (その5)は、Message-ID: から、 (その6)は、Message-ID: から、 (その7)は、Message-ID: から、 (その8)は、Message-ID: から、 (その9)は、Message-ID: から、 それぞれどうぞ。 ★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その10) ●桃栗町・郷土資料館 「こんなモノがここにあったのか…」  入り口のロビーから、チェリーが現在いる人文関係の展示がされている展示室の一 つに戻って来た都と稚空。  彼女が館長から説明を受けているそれを見るなり、稚空はそう呟きました。 「何だ稚空、知らなかったの?」  この街の人間ならば知らぬ者は無い──と、都は思っている──それを稚空が知ら なかったことに、少し驚きの表情を都は浮かべます。 「俺は元々、この街には引っ越して来たからな」 「あ、そうだったわね。あれは、十年ほど前に作られた、純金製の『ももたとくり こ』像よ。あたしは当時、幼稚園だったけど」 「本当に純金なのか?」 「ええ。純度99.99%の本物よ。当時の金の価値で1億円相当だって。よく、これま で怪盗ジャンヌに狙われなかったものだわ」  2つの純金像──重さはそれぞれ30kgで、意外と小さい──を見ながら、誰でも触 れることが出来るようになっているこの像の警備はどうなっているのかと都は考えま す。 「確かにな」  口先で同意しつつ、それは無いなと思う稚空。  怪盗ジャンヌが狙う──即ち、悪魔が取り憑く──何かに欠けていると感じたから です。 「まぁ、こんな趣味の悪いモノ、ジャンヌも狙うわけないわよね」  都の呟きを聞いて、稚空は欠けている何かが判ったような気がするのでした。 ●桃栗町の何処か  桃栗町に数ある小高い丘の一つ。  少なからぬ丘は斜面や頂上部分が造成されて宅地となっていましたが、その丘は、 自然の姿が残されていました。  誰もいないように見えた森林が少し途切れた場所。  そこでは、完璧に偽装を施した二人の人物が、向こうに見える砲台山公園の方向を 一人は双眼鏡で、もう一人は対物狙撃銃のスコープ越しに見ていました。 「隠れていないで、出て来てくれないか。落ち着かん」  そのうちの一人。顔に迷彩ファンデーションを塗りたくり、更に偽装材まで被った オットーが、誰もいないように見える空間に呼びかけました。 「すまない。そのつもりは無かったのだが」  呼びかけの直後にレイの声がして、何も見えない空間からすっと、白い翼を生やし た少女──レイとミナ──が姿を現しました。 「でも、隠れているのは、お互い様でしょ」 「そりゃ、そうだな」  ミナに指摘され、オットーは立ち上がりました。 「で、仕事は済んだのか?」 「ええ。滞りなく。もっとも、本番は後の話だけど」 「貴官らも、ご苦労なことだな」 「肝心の御子が来ないとは思いませんでしたがね。御子は今?」 「愛人のところらしい。シン隊長から位置だけは把握していると連絡が」 「何をしているのかは判らないんですかね」 「近づきすぎると気づかれる。それに…。いや、何でも無い」 「?」  シン隊長には覗き趣味が無かったということだろうとレイは想像しており、そして それは、ほぼ真実でした。 「それはそれとして…。副官殿、今からその格好ですか」  ミナの姿を見て、オットーは指摘します。 「気分を盛り上げるために必要な演出よ」 ●桃栗町西部地区・ツグミの家  ここに来るまでの間、二人になったら何をしようかと、あれこれ妄想してきたまろ ん。  ですが、その期待はツグミの家に到着してから一時間以上が経過した今まで、裏切 られ続けていました。セルシアを含めての三人でのティータイムは、確かに楽しくは ありましたが、二人きりになれない、さりとてセルシアを追い出すことも出来ないも どかしさに、まろんの苛立ちは徐々に募っていきました。 「あら、もうこんな時間。夕食の支度をしないと。セルシアちゃんはここで待ってて ね。ご馳走、用意するから」 「あ、私も手伝うよ」  居間の時計が時報を告げたのを合図に、ツグミは夕食の支度のため、腰を浮かせ、 慌ててまろんも後を追いました。 * 「お醤油取ってくれないかしら?」 「あ、はい」  台所でツグミの手伝いをしながらも、まろんは悶々としていました。  どうしてツグミさんは、セルシアを引き留めたりしたんだろう。  そんな二人きりになりたくないのかな。  やっぱり、昨日の晩のことを気にしてる?  私は、そんなことは全然気にしないのに。  ううん。ツグミさんはそんなことは考えていない。  きっと、セルシアに親切で言っているだけよ。  悪いのは空気読まないセルシアの方。  とは言っても、セルシアにそれを期待してもなぁ……。 「え!? 何?」 「あ、ううん。何でもない」  自分の想いを見透かされたかな。  そう思いつつ、それならそれでも良いかとも思うまろんなのでした。 ●桃栗町の何処か・ノインの館 「戸締まりと火の元には気をつけて下さいね」 「大丈夫ですよ」 「それから……」 「あなた達が来るまで、この家のことは私がしていたんですがね」 「僕もでぃす」 「そうでしたね」  玄関先に立ったまま、あれこれ心配しているエリス、アンとシルク。 「では、行って参ります」 「はい。お願いしますよ」  にこやかに微笑み、ノインは三人を見送るのでした。 *  その日の夕方。学校から戻って来たノインは、館に同居する三人に、やや遠い場所 ──と言っても、正確な場所は三人とも知りません──にある場所への使いの用事を 言いつけました。  お使いの内容はわざわざ三人で行く必要は無いと感じられるもので、エリスは自分 一人で行くと言ったのですが、「貴方たちにこの世界のことを良く見せておくように との魔王様のお言葉です」と、ノインに言われると、何だかんだ言って、育ての親に 等しい魔王の言葉には逆らえないエリスは肯かざるを得ないのでした。 *  普段の街へのお使いであれば獣道同然の近道を使うエリス。  しかし今日は、アンは兎も角、人間の姿では脚力がやや弱い──と言っても、人並 み以上はありますが──シルクのために、通常の県道へと下っていく道を降りて行き ました。 「友枝町ねぇ…。どう乗り換えれば良いのかしら。この国の交通網は複雑だわ」 「多分、この駅で乗り換えて、ここで乗り換えて、この駅でぃす」  言葉は出来ても、漢字の読み書きは完璧では無いため、首を捻ったアン。  一方、この地の経験がやや長いシルクは、路線図を読みこなしていました。 「でもこの方って、一体ノイン様の何なのかしら」  使い先の地図と名前が書かれたメモをひらひらさせてアンは言いました。 「ノイン様の古いご友人……って話だけど、ノイン様の人間界でのご友人として知っ ているどの名とも違う」  王宮仕え故に、その手の情報には通じているエリスが言いました。 「エリスでも判らないことがあるのね。シルクは知ってる?」 「僕が生まれる前からの友達だと言ってましたぁ」 「すると、少なくとも五十年以上は経っているってことか……」  などと、お使い先の人物について噂をしながら歩いていると、向こうから誰かが歩 いて来るのが判りました。  気配が人間のそれだと判ると、途端、緊張するエリスとアン。  結界が張られたこの場所には人間が入って来ることは滅多に無かったからです── 郵便配達人や宅配便は除く──。 「あ、お姉さ〜ん」  二人が緊張を解いたのは、人影の正体──痩身の少女──に気づいたシルクが、手 をぶんぶんと振ったからでした。  その人物のことは、写真だけですが、エリスは見ています。 「あら、全君」  その少女──桐嶋まなみ──も、シルクこと全の姿を認めて声をかけて来ました。 そして当然のことながら、シルクと一緒にいるエリスとアンのことを注視します。 「全君、この人達は?」 「えぇと…」 「聖さんのことを向こうでお世話していた、エリスと申します。その縁で、日本では 私達がお世話になることに。こっちは、妹のアン」  どう説明したものかとシルクが考え込みそうになったのを見て、エリスは嘘になら ない範囲で、かつ人間に疑念を抱かせないように説明しました。  ただし、ちょっと悪戯心でフランス語で。 「……紫界堂先生のフランスでの下宿先の方…という理解で良いのかしら」  まなみがそう言うと、エリスは軽く驚きました。 「フランス語が判るの?」 「……ごめんなさい。単語が聞き取れる程度なの。それより、貴方も日本語が判るん でしょ?」 「バレちゃいましたか。すいません。ちょっと悪戯心で。フランス語はどちらで?」 「昔、父の仕事の関係で、ちょっと住んでいたことがあるんです。あなたも、日本語 がお上手ね。どちらで?」 「私も、似たようなものです。桐嶋…まなみ様でしたよね。これから聖様の所へ?」 「ええ。ちょっと用事が…」 「私たちは、遠方に用事があって明日まで戻って来ませんので、何のお構いも出来ま せんが、どうぞごゆっくり」  意味深な視線をまなみに向け、エリスは一礼すると、さっとと先に歩いて行くので した。 * 「ノイン様が私達を全員お使いに出した理由が判った」 「そうねぇ」 「どうしてでぃすか?」 「ノイン様とまなみ様で二人きりで色々したいということ」 「色々って何でぃすか?」 「それは…フゴ」  子ども──アンから見て──のシルクに余計なことを聞かせまいと、エリスの口を 手で塞いだアンは知りません。シルクが見た目と言動とは裏腹にずっと大人で、二人 の関係についても何となく判っていることを。 ●桃栗町・郷土資料館  ツグミの家でまろんが悶々としていた頃。  都達のいる郷土資料館ではちょっとした騒ぎが起きていました。 「これが、予告状なのね」 「はい。2階入り口の扉の間にいつの間にか挟み込まれていました」  何処からか取り出した白手袋をはめて、都は資料館職員からそれを受け取り、文面 を眺めます。  その様子をこの場にいた者は、誰も疑問に思いません。  都がしていることは、表立って報じられることは少ないとは言え、町内では有名だ ったので…。         予告状  桃栗郷土資料館長様  今宵、丘の上の「ももたとくりこ」像の美しさ、  頂きます。               怪盗ジャンヌ 「まさか、あの純金像が狙われるとはな。都」  気配も無く背後に立った稚空が、都に話しかけます。 「そうね。でも…」  稚空に突然話しかけられても全く動ぜず、お小遣いをやりくりして購入した高倍率 のポケットルーペを取り出し、都は予告状を調べました。 「(……違う?)」  紙質と字体が、これまでに見た予告状と微妙に違うことに気づいた都。  これまでの予告状は、ほぼ同じものだったからです。  ただ、最近の予告状を都は直接見たことがありませんが。 「しかし変ですね」 「何が? 委員長」 「この予告状です。何で「丘の上の」なのでしょう。この資料館じゃなくて」 「でも、宛先はこの資料館長あてよね。…あ、そうか。まさか、砲台山公園のモニュ メント? あの公園の管理も、この資料館長の所管だっけ」  ロビーから見えた、資料館のある公園に建てられた巨大な「ももた」と「くりこ」 のモニュメントのことを都は思い出しました。 「とは言え、いくら怪盗ジャンヌでも、あれを盗むことは…」 「確かに。だけど、可能性はあるかも」 「でも、どうやって?」 「判らない。とにかく、この件について判断するのはお父さん。館長、警察に連絡は したのよね?」 「はい。既に」  都は肯くと、稚空の方に振り返って言いました。 「稚空と委員長は、会長とチェリーちゃんを連れて、家に帰って。あたしは、これか ら仕事だから」 「判った。気をつけろよ」  内心では色々と思うことがありながら、止めるだけ無駄なので素直に肯いた稚空。 しかし、似たようなことを考えていても大和は違いました。 「僕は残って東大寺さんを手伝います!」 「委員長に手伝って貰うことなんか無いわよ」 「でも、東大寺さんだけだと不安です」 「お父さんも、春田さん達もいる。委員長に心配される言われはないわ」 「ついこの前も、遊園地で危ない目に遭ったじゃないですか!」 「傷一つついてないけどね。奇跡的に」 「奇跡は滅多に起こらないから奇跡って言うんです」 「危険は一人だけで十分よ」 「いえ。東大寺さんを危険に遭わせることはしません」 「委員長にそんなことが出来るの?」 「止めますから」 「え!?」 「危ないと思ったら、僕が東大寺さんを止めます。それ位なら、僕だって」  大和の真剣な表情から、彼が本気だということは都には判りました。  そうであるが故に、彼を巻き込んではいけないと都は思うのです。  自分一人だけであれば、危険など回避出来ると……。 「そうだな。委員長がいれば、都も無茶は出来ないだろう。委員長、頼んだぞ」 「はいっ!」 「な…ちょっと、稚空! 何勝手に決めてんのよ!」 「良く言った大和! それでこそ男じゃ」 「水無月会長まで…。もう、しょうがないわね。足手まといになるようだったら、容 赦なく置いていくからね」 「判りました!」  とても嬉しそうな、そして活き活きとした表情を見せる大和と資料館の館長達を残 し、チェリーと水無月会長を連れ、稚空は水無月会長の車で郷土資料館を離れました。  とはいえ、このまま黙って事態を見守るつもりもない稚空でした。 (つづく)  では、また。 -- 携帯@ mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp