Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
またまた間隔が空いてしまいましたが、
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
Message-ID: <fdl90t$30g4$1@ccsf.homeunix.org>の下にぶら下げています。
(その1)は、Message-ID: <fdlb9p$5ob$1@ccsf.homeunix.org>から
(その2)は、Message-ID: <ffc19v$1psh$1@ccsf.homeunix.org>から
(その3)は、Message-ID: <fhor52$i8n$1@sakura.ccsf.jp>から、
(その4)は、Message-ID: <fitbqv$1l4o$1@sakura.ccsf.jp>から、
(その5)は、Message-ID: <flqd7m$1fri$1@sakura.ccsf.jp>から、
(その6)は、Message-ID: <fmt1m5$acr$1@sakura.ccsf.jp>から、
(その7)は、Message-ID: <fp8a7u$2ort$1@sakura.ccsf.jp>から、
それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その8)
●桃栗学園
他の部員は制服に着替えて帰ってしまった新体操部の部室。
まろんと都は、部活と学校をさぼって遊んでいた──実際には色々と大変なことが
ありましたが──罰として、部室の掃除をしていました。
「まろん、そっちは終わった?」
自在箒とちり取りを手にした都が、窓を拭いていたまろんに声をかけました。
「んー。大体」
「隅でも拭き残していると、先生目ざといわよ」
「判ってるって」
掃除が終わった後で、しっかりとパッキャラマオ先生のチェックが入ることが最初
に掃除をした後で判ったので、渋々真面目に掃除をしていたまろん達。
もっとも、二人とも元々きれい好きではあったので、それが無くてもそこそこ綺麗
に掃除をするつもりではありましたが。
「よし、完璧!」
罰掃除は今日が初めてでは無く、今日は時間をかけずに掃除は終了しました。
後は着替えて帰るだけですが、都は無言でジャージ姿のまま部室を出て行ってしま
いました。
「よっこらせと」
トイレかな? …と思いつつ、パイプ椅子に腰を下ろしたまろん。
先に着替えていれば良いのですが、単純に疲れていたのです。
*
「ひゃっ」
頬に冷たいものを感じてまろんは飛び上がりました。
振り向くと、手に冷たい缶入り緑茶を持った都の姿がありました。
「ひょっとして、私、寝てた?」
「ぐっすりと。これ買うちょっとの間に爆睡しているんだもの。びっくりした」
ちょっと呆れたような表情──まろんから見て──を浮かべつつ、都はまろんに緑
茶の缶を差し出します。
「ありがと」
座ったまま缶を受け取ろうとしたまろんの手を都の手が握ります。
「え…!? 都?」
「昨日は寝ないでツグミさんの看病をしていたのね?」
まろんは言われたことを理解するのに少しの時間が必要でした。
「えっとそれは、その…」
都に咄嗟に嘘をついていたことで、まろんは口ごもってしまいます。
「別にそのことは良いの。でも、あたしに何かあった時には、まろんはもっと心配し
てくれる?」
真顔で言う都に、まろんはやはり真顔で肯きます。
「それから、前にも約束してるけど、親友同士で隠し事はなし」
「親友ねぇ」
ジト目で言うまろん。何となく、面と向かって親友というのが照れくさかったので
す。もっとも、都の言うことを否定するつもりもありませんが。
「それとも、恋人の方が良かった?」
すると、何を考えたのか都は耳元でそのように囁きました。
「なっ」
自分の顔が紅潮するのがまろんには判りました。
「わ、判ったわよ。隠し事はなし、ね」
「じゃあさ、それを今誓ってくれる?」
都の後の問いに対しては曖昧にしたまま答えたまろん。
その曖昧な辺りに突っ込みを入れられるかと思ったのですが、そちらの方は都には
どうでも良いことだったらしく、むしろ隠し事に対する誓いを要求されてしまいまし
た。
「誓うよ、当たり前じゃない」
即答したまろん。
「(隠し事、一杯してるよね…。ごめん都!)」
直後に、心の中でまろんは都に謝ります。
まろんがいくら誓っても、それは嘘を嘘で固める行為でしか無い。
同じことを何度も聞いてくるのも、都がそれを判っているからではないだろうかと
まろんは考えます。
そして、まろんの返答に都は一瞬目を見開きました。
「(ああ、やっぱり、都は私が隠し事をしていると思ってるんだ……)」
ひぃぃと心の中で頭を抱えるまろん。
しかし、都は首を振ると、まろんの心中に気づかぬように言いました。
「それじゃ足りないな。誓うにしても色々とやり方があるでしょ」
都は背中からまろんの肩に手を置きました。
「色々?」
都が何を求めているのか、少し考えたまろん。
やがて、自分の肩に置かれた都の手を取りました。
そして。
「それでも良いけど…。それじゃまるでまろんがあたしに忠誠を誓うみたい」
「んー。それじゃあね」
都の手から顔を離したまろんは立ち上がり、都の肩に両手を置きました。
ツグミ相手だと、今更躊躇わないのですが、何となく親友だと照れくさく、まろん
は躊躇します。
「(でも、やっぱり今更だよね)」
覚悟を決めたまろんは、少し背伸びをします──都の方が背が高いので──。
「掃除はもう終わったようザマスね」
まるで二人の顔が離れるのを待っていたかのように、パッキャラマオ先生の声がし
ました。
「(見られた……見られちゃった?)」
いつの間にか扉を開けてそこにいたパッキャラマオ先生は、飛び退くように離れた
まろんと都の二人を順番に見ました。
続いて、窓際に歩いて行き、掃除の具合を確かめた先生。
「まぁ、ちゃんと掃除してあるザマスね。なら良いザマス」
それを聞いて、まろん達はほっと胸を撫で下ろします。
どうやら先生に取っては掃除をしてあるかどうかの方が今の出来事よりも重要だっ
たようでした。
「良いザマスよ、加奈子」
「お邪魔するわね」
「先輩」
パッキャラマオ先生が声をかけると、先程まで練習を見学していた加奈子先輩が入
って来ました。
「どうザマスか?」
「ええと……あ、あの箱ね」
ロッカーの上には、以前使われなくなった。かと言って捨てるに捨てられない物が
詰められた──多分、今の部員にとってはあまり価値の無い代物──段ボール箱やら
木箱が積んであり、その中の一つを加奈子は指さしました。
「あ、あたしが取ります」
妊娠中でありながら自ら椅子を運んで箱を取ろうとした加奈子を止め、都は先輩の
指さした箱を取りました。
「あ、結構重い…」
「中身、紙だからね」
「都、こっちに」
箱自体の大きさもさるものながら、重さも相応にあった段ボール箱。
折角掃除した部室の内部に埃が舞い散り、箱を受け取ったまろんはゴホゴホと咳き
込みます。
その箱にはマジックで、「○年度関係資料」と書かれており、その頃の部活関係の
書類が入っているようでした。
「大分古いわね」
「私が在学していた頃の資料ザマス」
パッキャラマオ先生の年齢を正確には把握していなかったまろんは、それを聞いて
素早く先生の年齢を逆算します。
「棚が手狭になったので、古いのは箱に詰めてあったんです」
「どうりで、見当たらなかったザマス」
呟きつつ、加奈子は箱を封印していたガムテープを剥がしました。
中に入っていたのは、紙ファイルに綴られている何かの書類と帳簿らしきノート類。
そして、新体操の専門雑誌のバックナンバーと新聞の切り抜きらしいスクラップ帳で
した。
机の上に広げられた雑誌を都とまろんは手にします。
「あ、これって先生?」
雑誌に掲載されていた写真を指さす都。
「若〜い」
言ってしまってから、しまったと思うまろんですが、先生は気にしている様子はな
く、何かを探している様子でした。
「あったザマス」
先生が箱から取り出したのは、何冊かのミニアルバムでした。
写真毎に、キャプションではなく番号が書かれているところから、どうやら焼き増
しの注文のために作られたミニアルバムがそのまま保管されているという代物のよう
でした。
「ええと、確かここに……あったザマス」
「え、どれどれ?」
目的の写真を見つけたらしいパッキャラマオ先生。
まろんと都は覗き込もうとしますが、二人には見せまいと、アルバムをぱっと取り
上げてしまいました。
「あら、久ヶ原先輩じゃない、これ?」
先生の努力も空しく、加奈子先輩がアルバムを覗き込んで、写真の正体について言
いました。
「久ヶ原先輩?」
いつの間にか、加奈子先輩と先生の後ろに回り込んでいた都はアルバムを覗き込み、
そして言いました。
「あれ、この人どこかで……?」
「久ヶ原先輩を知っているの? あ、神社で見たのかな?」
「神社?」
加奈子の言葉に、何のことだか判らない、という表情で都は言いました。
「どれどれ?」
遅ればせながら、アルバムを覗き込んだまろん。
先生も諦めたのか、テーブルの上にアルバムを置きました。
「久ヶ原先輩って、ひょっとしてこの男の人?」
何かの集合写真に、一人だけ写っている男性をまろんは指さしました。
「そう。久ヶ原相模先輩。剣道部の主将で生徒会長。久ヶ原神社の跡取り息子。見て
の通りの美形で当時は女子に人気だったそうよ。ちなみに、五十嵐先生とつき合って
いたと聞いたわ」
「ええっ!?」
色々な意味を込めて、まろんと都は驚きの声を上げました。
「違うザマス!」
「またまた〜」
即座に否定するパッキャラマオ先生をここぞとばかり、都とまろんはからかいまし
た。
「違う…ザマスよ。彼は」
むきになって否定すると思いきや、寂しそうな表情で先生は呟きました。
「相模は…久ヶ原とは、良き友人だったザマス。けれど、彼は恋愛の対象としては、
私のことを見ていなかったザマス。私だけで無く、学園の女生徒の誰も」
「それって、同性が好きだったってことですか!?」
自分のことは棚に上げて、脊髄反射で突っ込みを入れるまろん。
「違うザマス!」
「あぁ、成る程ね」
「加奈子先輩、何か知ってるんですか?」
「久ヶ原先輩ね、実は…」
「加奈子!」
何かを話そうとした加奈子を止めたパッキャラマオ先生。
しかし、観念したのか話し始めます。
「久ヶ原は、両親を早くに亡くしていたザマス。それで、唯一残された妹さんを溺愛
していたザマス。それで…」
「つまりはシスコンだった訳だ」
「日下部さん!」
即座に突っ込んだまろんを加奈子先輩は窘めました。
「良いザマス。久ヶ原は、誰でも分け隔て無く接して、生徒会長としても有能だった
ザマス。当時の私は副会長として彼の一番側にいて、みんなは私と彼がつき合ってい
ると噂していたザマス。けれど…彼は病弱な妹さんのことを大切にしていて、周りに
いた女子のことが見えていなかったザマス。一番近くにいた私だから判るザマス」
パッキャラマオ先生の話を聞いて、本当は久ヶ原先輩のことを先生は好きだったの
だろうかと考えたまろん。しかし、それを突っ込むのは流石に自重しました。
「待って下さい。神社の跡取り息子って、桃栗山の麓にある久ヶ原神社のことです
か? 確か、あの神社は…」
口を閉ざしたまろんに代わり、都が質問しました。
「そう、もう無いザマス。久ヶ原は高校を卒業して、神社の跡を継ぐために神道を学
ぶために進学したザマス。卒業後、神社の後を継いだザマスが……」
そこまで話して、絶句した先生。
代わって加奈子が話します。
「久ヶ原先輩の妹さん、魚月さんって言うんだけど、彼女もここの学園の生徒だった
わ。まろんちゃん達の4年先輩位じゃないかな。でも、病弱で休みがちだったそうよ。
それでも、友達も出来て、ボーイフレンドも出来たみたいで、幸せそうだったんだけ
ど……。悲劇は突然だったわ」
「悲劇?」
「久ヶ原神社が火事になってね、その晩神社にいた久ヶ原先輩も魚月さんも、焼け焦
げた服だけ残して行方不明。もう、二人とも死亡届が出て、お墓まであるという話だ
けれど…」
そこまで言ってから、加奈子は先生の方を見ました。
「久ヶ原は死んでいないザマス。現に今日……」
「そうそう。先生ね、突然私の携帯に電話をかけて来て、この写真の在処を聞くのよ。
今日街で、久ヶ原先輩にそっくりな人を見かけたって。それで、部室で昔の写真を確
認しようと思ったら、見つからないからすぐ来てって」
「それで、前触れも無く部活に来られたんですね」
「まぁ、全国大会の前に一度仕上がりを見たかったんだけどね。全国大会は見に行け
るか判らないし」
「そんなぁ、是非見に来て下さいよぉ。ね、都」
まろんが都の方を見ると、都は話を聞いておらず、じっとアルバムを見ていました。
「都?」
「……似てる。やっぱり」
「似てるって、この久ヶ原先輩が? 誰に?」
「うん。まろんも会ってるじゃない。遊園地で」
「へっ!?」
遊園地での出来事を思い出そうとしたまろん。
あそこではあまりにも色々なことがあり過ぎて、中々思い出せませんでした。
「う〜ん」
「ほら、お昼食べたレストラン。銀河亭とか言ったわね。あそこでユキさんと一緒に
いた男の人。この写真の人が年取った感じだなと思って」
「そんな人いたっけ?」
「その人、名前は何て言ったザマス!?」
まだ、思い出せなかったまろん。
一方、二人の会話を聞きつけた先生は、もの凄い勢いで都に訊ねます。
「ええと、確か……。サイゴウ……ミカサさんとか言ったわね。ユキさんの会社の同
僚だとか。先生の会ったそっくりさんって、ひょっとしてその人だったりして」
「ユキさんと言うのは、ひょっとして長い黒髪で……」
先生が上げた特徴は、まさしくユキの特徴──ユキが外を出歩く時の姿──そのも
のでした。
「多分、その人はユキさんだと思います。でもどうして?」
「相模と…相模に似た人と会った時、一緒に居たザマス。じゃあやはり、あれは他人
の空似だったザマスね……」
そう呟く先生の表情は、とても寂しそうでした。
「(きっと、その相模さんのことを先生は忘れられないんだ……)」
そんな先生のことを見ていると、何となく、居たたまれない思いを抱くまろんなの
でした。横を見ると、都も同じような思いらしく、どちらとも無く肯きます。
「あの、私達これで失礼して良いですか?」
まろん達に呼びかけられ、先生は我に返ったようでした。
「あ…。良いザマス。が、着替えずに帰るつもりザマスか?」
掃除で汚れるからと、練習中のジャージ姿のままでいたまろん達でした。
「まろんちゃん達が着替えるのに邪魔だから、私達の方が失礼しましょ?」
「そうザマスね。じゃあ、戸締まりをちゃんとするザマスよ」
加奈子は、先生の肩に手をやり、彼女を慰めるかのような形で二人で部室を出て行
くのでした。
*
「でも意外だよね。あのパッキャラマオ先生が」
制服に着替える手を止めて、まろんは言いました。
「何がよ」
こちらはさっさと着替え終わった都が言います。
「先生に、好きな男の人がいたってことよ」
「別に好きな男の一人や二人、いてもおかしくないでしょ」
「先生は女の子にしか興味ないかと思ってた」
「確かにねぇ」
先生にされた「指導」を思い出した都。
「あ、そうか! 好きな男の人がいなくなっちゃったから、他の男の人を好きになる
ことが出来なくなった、とか?」
妄想たくましく言うまろん。
そんなまろんをジト目で見ていた都。
突然、まろんのつけていた薄青色のブラの脇の肉をつまみます。
「ちょ、何するの!?」
「まろんがとっとと着替えないから、ブラのサイズが合ってないのに気づいちゃった。
ひょっとしてまろん、また大きくなった?」
「そ、そんなこと無いわよ」
「でも、肉がはみ出しているし…。誰かさんに揉んで貰ってるからかな…?」
「そ、そんなこと無いもん!」
そう言うと、まろんは着替えを再開するのでした。
「ほら、早くしないとチェリーちゃんが待ってるわよ」
「あ、そうか。街を案内するんだっけ」
「まぁ、委員長が適当に案内してくれている筈だけど。そうだ、連絡しないと」
都はPHSを取り出して、大和に部活が終わったと連絡を入れました。
その間に、着替えを完了させたまろん。
やがて二人が、部室を出ようとした時です。
部室の扉が外から開かれました。
「あら、あなた達まだいたのね」
「桐嶋先輩」
「五十嵐先生がここにいらっしゃるって聞いたんだけど…」
「さっきまでいましたけど、加奈子先輩とどこかに行きましたよ」
「あら…行き違いだったか」
そう呟きながら、部室から出て行こうとしたまなみですが、まろん達の方を振り返
って言いました。
「あ、あなた達にも先に話しておいた方が良いかな」
「何ですか?」
「実は、うちの生徒会に枇杷高校の生徒会から連絡があってね、今度の全国大会、壮
行会を合同で開催しないかって」
「別にそんなの良いのに…」
あの山茶花弥白と一緒では、何かが起こるに決まっている。
ほぼ同時に、内容は違えどまろんと都はそう思いました。
とは言え、表だって反対は出来ませんが。
「何でも、枇杷高の生徒達が壮行会をやろうと言い出して、その際に向こうの新体操
部が──どうも、山茶花さんらしいんだけど──、桃栗学園の新体操部の壮行会も一
緒にやったらどうか、と提案したらしいの」
まなみの話を聞いて、嫌な予感がますます高まったまろん達。
「でね、これは向こうの提案なんだけど──」
枇杷高提案の壮行会の案を聞かされるにつれ、「うげ…」とあからさまに嫌そうな
表情を浮かべていくまろん達。
「…ね、中々面白そうじゃない? 部長もそう言ってたわ。でね、この話は受けるつ
もりだから、あなた達もよろしくね」
そう言い残し、まなみはまろん達の返事も聞かずにパッキャラマオ先生を捜しに出
て行ってしまい、後には嫌なことになったと言わんばかりの表情を浮かべたまろん達
が残されたのでした。
(つづく)
では、また。
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