Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
また、間隔が開いてしまいましたが。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
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それぞれどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その7)
●枇杷高校
「……じゃあ、お願いね」
放課後。
みんなからそう言われ、大門佳奈子は背中を押されるように、生徒会室の前に立ち
ました。
福祉委員として口実を設けては足繁く通っている場所ではありますが、その日は引
き戸を開けるのが躊躇われました。
扉に手をかける前に、自分が今曲がってきた方向を見ると、廊下の角から女子生徒
が数名、こちらを見ているのが判りました。
小さなため息と共に、佳奈子が戸に手をかけようとした時、向こうから戸が開きま
した。
「あ…」
小さく、驚きの声を上げた佳奈子。
目の前には、やはり少し驚いた表情を見せている、とうに還暦は過ぎているだろう、
見知らぬ和装の女性が立っていました。
生徒会室に入り込んでいるからには、学校周辺の自治会か商工会、生徒の祖母とい
った辺りだと思われました。
「あら、佳奈子さん」
その女性の後ろには弥白がいて、佳奈子に声をかけて来ました。
「弥白様」
反射的に佳奈子はそう答えます。
「あら弥白さん。あなた、学校のお友達に様づけで呼ばせてるの?」
「いえ、それは…」
ちょっと困った表情を弥白が見せました。
「いえ! 弥白…さんから言われているからではありません。私達が勝手にお呼びし
ているだけで」
弥白からは、様づけは止めるように何度か言われている佳奈子。
故に、その言葉は本当のことでした。
「慕われているようね」
「大切なお友達ですわ」
「そう…。大切になさることね」
「はい。誓って」
弥白に対して注意することが出来る人物。
どうやら、そのおばあさんと弥白が近しい関係にあるのだろうと感じます。
「お父様とお母様によろしくね」
「はい」
弥白の返事に小さく肯くと、お婆さんは弥白、そして佳奈子の二人に一礼して去っ
て行くのでした。
*
雑多な書籍や過去の書類が詰め込まれた書棚。
そして過去には何かの役に立ったのかもしれないがらくた。
そんな物が並んだ両側の壁に挟まれた、校長室のお下がりの応接セットに勧められ
るまま腰を落ち着けると、弥白は誰かが持ち込んだポットからティーバッグ──一応、
英国王室御用達とされる品──で紅茶を入れて出してくれ、佳奈子は恐縮すると同時
に、二・三年前に刊行され始めた少女小説の主人公に自分がなったような気もします。
「今の方は?」
「私の祖母の後輩」
弥白の祖母も、この高校の出身だとかつて聞いたことがありました。
「そして、私の先生でもあるの」
「先生? 何か、習い事ですか? お習字とか、お茶とか」
「まぁ色々と…ね。どれも中途半端で、恥ずかしいわ」
それが本人の謙遜でしか無いのは、学園で知らぬ者はありません。
が、もちろんそれを指摘するようなことは佳奈子はしませんでした。
その代わり、自分がここに来た目的を果たさなくてはいけません。
「あの、弥白様」
「様はよしてって言ってるでしょう?」
「いえ。それがその…」
佳奈子は、扉の方をちらりと見ます。
それだけで、弥白は全て察したらしく、佳奈子に続きを促しました。
「実は、今度の全国大会の件ですが、壮行会を行いたいとの声があるのですが」
不要ですわ。即座にそう言われるだろうと佳奈子は予想していました。
弥白様親衛隊の下っ端だった佳奈子は、何時の間にやら弥白と仲良くなったために、
一時は僻みや虐めの対象となりかけたことがあったものの、二人の友情がどうやら本
物らしいと判ると、手のひらを返して今度は弥白のための壮行会を開く許可を得る役
目を佳奈子に押しつけて来たのです。
不快に感じない訳では無かったものの、自分を頼ってくれる人がいるという、普段
はあまり目立たない人にしか判らない理由による嬉しさが勝り、その役目を引き受け
ることにした佳奈子でした。もっとも、弥白はあまりこのようなことを喜ぶとは思い
ませんでしたが…。
「壮行会…ね」
弥白は、今し方佳奈子が見た扉の方をちらりと見やります。
何か、物音がしたような気がしたのは、多分気のせいではなく扉の外で聞き耳を立
てている少女が複数いるからなのでしょう。
「そうね。それも良いかもしれないわね」
「え!? 良いんですか?」
弥白の意外な返事に、佳奈子は驚きました。
扉の外でも、喜びの声が上がったような気がします。
「それでちょっと考えたことがあるんだけど…」
弥白は佳奈子の耳元に口を近づけ、何事かを囁きました。
「……ということにしたいと思うの。協力してくれないかしら」
弥白の頼み事を断る佳奈子では、もちろんありませんでした。
●桃栗町・中心部
ノインからレイとミナのご機嫌取りの依頼を快諾したとはいえ、具体的にどのよう
に説得したものかと思い悩んでいたミカサ。
しかし、それは考え過ぎだったようでした。
レイとミナの二人は、ユキに勧められるまま、人間界でのショッピングを思う存分
満喫しており、機嫌を取る必要を感じさせませんでした。
桃栗町の商店街は正直、あまり規模は大きくありませんでしたが、魔界の基準から
言えば大都会であり、レイとミナにとっては、街に出るのが初めてでは無いとは言え、
見る物聞く物が驚きに満ちていたようでした。
そしてミカサと言えば、三人が買い込んだ品物の荷物持ちをするのでした。
当初は、ユキが持つと言ったのですが、人間界で目立たないように──三人の美貌
だけで目立たないことは不可能ではありますが──と、ミカサに言われて渋々荷物を
ミカサに預けたのでした。
ミカサ達の昼食の時間が遅れに遅れたのは、主としてこのような事情によるもので
した。もちろん、ノインの館での朝食の量が多かったからということもありましたが。
とは言え、流石にお腹が空いてきたこともあり、ミカサが昼食の提案をすると、や
はり同じ事を考えていたらしいレイ、ミナとユキは肯くのでした。
ミカサは、記憶の片隅で値段の割に美味しかった記憶のあるイタリアンレストラン
へと三人を連れて行きました。
個人的な趣味としては、港町らしく魚の美味しい店に幾つかの知見があったのです
が、そもそも魔界ではあまり食べることの無い生魚を食べられるのかどうかについて
自信が無かったがための、次善の策でした。
その薄汚れた内装のレストランのテーブルには、安食堂としか思えないビニールの
テーブルクロスがかけられていました。。
ミカサはこの店が4年が経過した今も何も変わってはいないのだと安心したミカサ
は同時にこの店内を見て三人はどう思うかとも不安に思いますが、三人ともあまり気
にしていない様子でほっとします。
「パスタセットで良いかな?」
運ばれて来たメニューを一瞥しただけで、ミカサはユキ達に訪ねます。
ユキは即座に、二人も一応メニューを見てからそれぞれ肯きました。
「それと、このライスコロッケとジャポネーズのピザも頼もうかな」
更に少し迷った末にワインまで注文するミカサなのでした。
*
店内が極めて家庭的な雰囲気の店であったこともあり、食事時には敢えて仕事向き
の話は一切しなかったミカサ。
とは言え、ユキはともかくとしてレイとミナの二人は熱心に食事を食べており、ア
ンティパストとサラダに続いて運ばれて来た、山のようにアサリが載ったボンゴレビ
アンコ、パンチェッタをこれまた大量に載せたカルボナーラ。これを4人でシェアし
たのですが、どう見ても二人で3/4は食べているように見えました。
更にオプションで運ばれて来た、シラスと紫蘇が載り、胡麻が振り掛けられたピザ、
ケチャップライスにチーズの入ったライスコロッケまでもやはり同じ比率で食べてし
まうのには、ミカサとユキは顔を見合わせて苦笑せざるを得ません。
「いや、食べた食べた。魔界に来た時も食い物が美味いと感じたが、人間界はそれ以
上だ」
苺のシャーベットを食べ、食後のコーヒーを飲みつつ、レイはいかにも満足そうに
言いました。ミナもニコニコしながら肯いています。
「うん。満足した。気分も晴れた。そうだな、ミカサ殿もこれで任務完了という訳
だ」
レイは魔界語──天界の言葉とほぼ同じ──で言いました。
「任務完了?」
「惚けなくて良いですよ。ミカサ殿。大方、ノイン様に依頼されたのでしょう?」
お見通しということか。
とは言え、肯定する訳にもいかずにミカサはぽりぽりと頭を掻きました。
「いや、君達のご機嫌伺いは僕が言い出したことでね。ノイン様は関係ない。それに、
街を視察するというのも本当だし、ユキが君達と約束していたからということもある。
更には、君達に頼みたいこともある」
「頼みたいこと?」
ミカサは今朝ノインに話したことと同じ内容をレイ達に話しました。
その話を最後まで黙って聞いていた二人。
「なるほど。攻撃の主軸を変えると言うことだな」
話が終わった後、先に口を開いたのはレイでした。
「私の出番、ということかしら」
「ミカサ殿。ミナはまだ…」
「いえ。身体はもう大丈夫。それにこの程度の作戦ならば」
レイが口にしかけたことは、ミカサ自身も気にしていたこと。
ミナの側から大丈夫だと言ってくれたことで、ミカサは少し安堵しつつも、本当に
大丈夫なのだろうかと思うのでした。
「君達には色々と面倒をかけることになってすまない」
「いや。それは良い。しかし…意外だな」
「意外?」
「ミカサ殿がこのような手を選択されることがだ。ミカサ殿はもう少し…」
「レイ、失礼よ」
レイが何を言おうとしているのか察したらしいミナが、口を挟みました。
気になってミカサが横を見ると、ユキがレイの方をキッと睨みつけていました。
そんなユキの様子を見て、ミカサはこの娘が本当の私のことを知らないのだ感じま
す。
「いや、良い。私もこうして魔界の住人であるからには、それ相応の理由がある。私
も、800名からの部下を魔王様からお預かりしている身。楽に勝てる方法があるの
ならば、卑劣な手段も厭わないこともある」
心の色を感じ取る能力があると言われる天使達。
そんな彼女達に自分の嘘を気取られないように注意しつつミカサは言います。
「いや、卑劣な手段というのであればお互い様だ。むしろ、その後のことを考えれば、
そちらの方が良いのかもしれない」
そう言うと、ほぼ飲み干した状態のカップを手に取り、ずず…と残りのコーヒーを
啜っているレイを見て、本当にそう思っているのだろうか、と疑問に感じないでも無
いミカサなのでした。
●桃栗学園
都に言われた時には気づかなかったのですが、その日の部活に顧問のパッキャラマ
オ先生は外勤のためにいない筈でした。
それ故、今日はのんびりと練習をするつもり──流石に疲れていたのです──だっ
たまろん。しかし、それは外の用事を急遽切り上げて戻って来た先生に許しては貰え
なさそうでした。
「今日はここまで!」
紫界堂先生──ノイン──から告げ口でもされたのか、パッキャラマオ先生にやけ
に個人的に厳しく指導を受けたまろん。
もっとも、まろんを厳しく指導していたのは、先生だけではありません。
「どうしたの、まろんちゃん!? 今日は元気が無いわね」
「すいません! 加奈子先輩」
その日はたまたま、新体操部のOBである加奈子が来ていたのでした。
流石に妊娠7ヶ月を過ぎている──これは赤ちゃんが出来たというおめでた話を聞
いた時期からのまろんの推測──ともなると、自ら実演することはしませんでしたが、
彼女の意外に厳しい指導の集中砲火をまろんは集中的に浴びてしまっていたのでした。
実のところ加奈子の姿を見た時、また悪魔が出るのではないか──彼女自身と彼女
の夫である、体操部コーチの山際先輩が悪魔に取り憑かれていたことがあったので─
─と考えてしまったまろん。しかし、その心配は今のところは杞憂のようでした。
「また、彼氏と上手く行っていないのかしら?」
加奈子はまろんの耳元で、そう囁きました?
「へ!?」
思いもしなかったことを言われ、まろんは戸惑います。
「去年の秋頃、ここに来た時も、元気が無かったわよね? あの時も彼氏が原因だっ
た」
補足され、まろんは思い出しました。
稚空に心を許した直後に、彼がシンドバットだと判り、裏切られた想いを抱いてい
た頃のことを。
「いえ、そんなんじゃないです」
稚空のことじゃ無いんです。女の子のことなんです。
……とは、流石のまろんでも堂々とは言えず、俯いてしまいます。
「ちょっと、友達と色々とあって……」
「都ちゃんと喧嘩でもした?」
「いえ、それも無いです」
喧嘩どころかその反対です、とまろんは心の中で呟きます。
「まーろーん! 掃除!」
何となく、人生の先輩に遠回しに相談をしたくなったまろん。
しかし、部活をサボったがための罰である部室の掃除に行こうと呼びかける都によ
って、結局相談することは出来なかったのでした。
(つづく)
では、また。
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