Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
本年も宜しくお願い致します。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
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^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その5)
●桃栗学園
「そう言えばさ、今日、学校が終わった後どうするの?」
みんなが昼食を大体食べ終わった頃合いで、都はそう切り出しました。
「どうふるって…。放課後も部活じゃない」
ケーキを口に入れたまま、もごもごとまろんは言います。
「そうね…。あ、ちょっとじっとしてて」
「あ…」
まろんの口元についていたクリームを都は紙ナプキンで拭います。
「何にやついてんのよ」
「にやついてなんか、ないもん」
口元を拭うため、都の顔が接近して来た時に、舐め取ってくれる都という妄想をし
ていたまろん。ですが、それを口にするには、周りの耳が多すぎました。
そのような訳で、実は都も一瞬それを考えたことをまろんは知ることはありません
でした。
「コホン」
ややわざとらしく、咳払いをした稚空。
そのために、都は自分が今言おうとしたことを思い出しました。
「チェリーちゃんとどこか遊びに行くのかって話よ」
「あの、私は…」
「う~ん、せっかく日本まで来たんだからねぇ」
遠慮するチェリーを遮り、腕組みするまろん。
「あの、私、まろんさん達の部活を見ていますから」
「え? でも飽きないかしら」
「ううん。全然」
それはチェリーの本心でしたが、そうは取らなかった人もいました。
「じゃ、取りあえず部活終わるまでチェリーちゃんには待っててもらうとして…委員
長!」
「はい?」
「それまで、チェリーちゃんのアテンド、よろしくね。あと、終わってからの行き先
も考えといて」
「え、僕がですか?」
「委員長、この街では色々と顔が利くでしょ? どこか良い所案内しなさい」
「僕じゃなくてお爺ちゃ……僕の祖父ですよ。それに…」
「委員長でもお爺さまでも良いから、考えといて」
「判りました。何とかしてみます」
強引に押しつけられた割には、嫌がる風もなく、チェリーの方に向かって大和は微
笑んでみせました。
それで、面倒を押しつけたのでは無いかと気にしていたチェリー、そして実は同じ
事を考えていた都も救われた思いがするのでした。
●桃栗町の中心部
桃栗山の麓にある陣から桃栗町の中心部までやって来たユキ達。
到着したのは、昼食を取るには少し早めの時刻でした。
男性一人に美人の女性三人という組み合わせは、時間が時間なら人目を引くところ
ですが、商店街を歩く人はまばらでした。
「さぁ、とっとと用事を済ませよう」
レイに急かされたこともあり、まずは目的の場所──ランジェリーショップ──へ
と向かうことになりました。
*
「買い物の場所って……ここか?」
「はい!」
店の前で立ちつくすミカサに対して、ユキは元気に答えました。
「ほぅ…。下着の専門店なのか」
「人間というのは、妙なところで衣装に凝るものよね。でも、面白そう」
「取りあえず入ろうか」
出かけることに一番難色を示していたレイが一番真っ先に、躊躇無く店内へと踏み
込んでいくことに、ユキは苦笑します。
「さ、ミカサ様も入りましょう」
「わ、私は遠慮するよ」
「え~。遠慮なさらずに」
ぐいぐいとミカサの手を引いて行こうとするユキ。
しかし、頑としてミカサは自らの意志を曲げることはありません。
店の前で待っているので、買い物を済ませるようにと言い渡すと、ユキの背中を押
すのでした。
「(全く、恥ずかしがり屋さんなんだから…)」
ミカサのそんな態度にほんの少しだけ不満を覚えつつ、ユキは何度も名残惜しそう
に振り向きながらランジェリーショップの中に入って行くのでした。
*
ユキ達が店内に消えた後、流石に恥ずかしかったこともあり、約束をやや違えてミ
カサは店の前から離れて商店街の中を歩いていました。
姿が見当たらなければ、携帯で電話をして来るだろう。それに、女性が服を選ぶの
には時間がかかるものだろうから。
「(そう、魚月も……)」
妹の名をその想い出と共に思い浮かべたミカサ──久ヶ原相模──は胸が少し痛む
のでした。
その思いを振り払い、やや異なる部分はあるものの、基本的にはほぼ見慣れた商店
街を眺めつつ歩き、その中で見つけた一軒の書店──これは新しい店──に入ると、
魔界では入手困難な書籍をしばらくの間読み漁り、その中から何冊かを購入しました。
そのように時間を潰していても、ユキからの連絡が一切ないところをみると、彼女
達はまだ下着選びに余念がないようでした。
「(そう言えば、人界の花を持って行くという約束をしていたな)」
書店を出たミカサは、続いて目に入った花屋の前で立ち止まりました。
魔界を出立する時に、魚月に約束したことを思い出したからです。
「(魚月はどの花が好きだったか……)」
記憶を辿ろうとしたミカサの行為は、先程と同様に、辛いことも同時に思い出して
しまうことに他なりませんでした。
「あの、お客様」
「……」
そのまま、じっと固まってしまったミカサに、いつ声をかけようかと手ぐすね引い
ていた店員が声をかけました。
が、ミカサは全く反応しません。そもそも、彼の耳には店員の声が聞こえてはいな
かったのです。何度か、店員は声をかけましたが、やがて諦めて元いた位置へと去っ
て行きました。
しばらくの間そのような状態であった為、ミカサは所持していた携帯電話が震えて
いることにも気づいていないのでした。
*
「ありがとうございました~」
紙袋を幾つも下げ、ランジェリーショップから出て来たユキ達。
そもそもの目的であった、ユキが主張するところの戦闘時にも痛くなくずれないス
ポーツブラを選んだ後、ユキとミナは店員の意見も聞きながら、実用性よりも装飾性
を重視した各種下着を入れ替わり立ち替わり、さほど広くもない更衣室の中に三人で
入り、レイに試着させていました。もちろん、自分達も試着はしており、互いに見せ
合って喜んでいたため、思ったよりも時間が経過してしまいました。もっとも、レイ
自身は口先では嫌がってはいたのですが。
店の前に三人が出ると、待っている筈のミカサがいません。
「ミカサ殿はどこに行ったのだ?」
「待たせ過ぎちゃったから、その辺歩いているのかも」
「あああ……」
ユキの顔は青ざめていました。待っていなかったミカサの方こそ悪い筈ですが、自
分達が待たせていたから、ミカサが怒ってどこか行ってしまったのだ、とユキは考え
てしまったのです。
慌てて、携帯電話を取り出してミカサを呼び出そうとしたのですが……。
「つながりません…。きっとミカサ様は怒っていらっしゃるんだわ……」
どよよん、と正統悪魔族らしくもなく落ち込んでしまうユキなのでした。
*
午前中の授業終了後、生徒達に話したとおり、パッキャラマオ先生は学園の外に出
ていました。
生徒達には外勤と伝えていましたが、正確には私立学校教員組合の行事のため、年
次休暇を取得しての外出なのでした。
しかもその内容が、各組合毎に割り当てられた動員人数に従い、あまり労働条件と
は関係無い集会に参加するだけ、というものでしたから、当然のことながらやる気の
あろう筈がありません。出来ることならそそくさと切り上げて学校に戻って来たい気
分なのでした。
徒歩で駅に向う途中、商店街を通り抜けようとした時、パッキャラマオ先生は花屋
の店先に立っている男を見て驚きました。
「え……!?」
風貌は二十代半ばから後半。
つまりは自分と同じかやや若いといった青年。
パッキャラマオ先生が知っている彼はもっと若い姿かつ、目の前の当人はサングラ
スをかけていたのですが、その姿は間違いなく本人であるように思われました。
「久ヶ原!」
パッキャラマオ先生に声をかけられたその青年は、ゆっくりと声をかけられた方向
に首を向けました。その顔に一瞬、驚きの表情が浮かんだのが判りました。
「久ヶ原ザマ……いえ、久ヶ原君よね。私よ、五十嵐」
「失礼ですが、どちら様でしょうか」
「あ…あの、桃栗学園で教師をしている五十嵐と申します。うちの学園OBの久ケ原
相模さんと思ったのですが……」
名乗りながら、先生は相模──と思われる青年──の表情を伺います。
しかし、その表情には先程のような驚愕の表情は無いのでした。
「いえ。人違いでは?」
「そうでしたか。昔の知り合いに似ていたものですから。失礼しました」
あまり納得はしていないながらも、電車の時間が迫っていたため、その場を離れざ
るを得なかったパッキャラマオ先生。その時、彼女の近くから声がしました。
「ミカサ!」
その声を聞き、青年は声がした方を向き手を上げます。
「(ミカサ? ……人違いだったザマスか)」
それを見て、自分が人違いをしていたことにようやく納得する先生なのでした。
*
携帯電話が通じないため、商店街の中をうろうろしていたユキ達。
さほど広い商店街では無かったこともあり、すぐにミカサは見つかりました。
しかし、ミカサは一人では無かったのです。
「(あの女の人は誰かしら?)」
一緒にいた女性はすぐに離れ、こちらの方に向かって歩いて来ました。
それで安心したユキは、その真っ赤なワンピースという目立つ格好をしている女性
が近くに来た時に、大声でミカサに呼びかけます。
「ミカサ!」
「隊長」でも「様」付きでもなく、敢えてそう呼びかけたユキ。
その場に合わせた、という意味もありますが、その名も知らぬ女性に自分の立場を
印象づけたい、という無意識な計算が働いていたからでした。
そんなユキの様子をレイとミナは微笑ましく見ているのでした。
●桃栗学園
午後の世界史の時間。
自習だと告げられていたので、雑談しようとしていたまろん達。
しかし、授業のチャイムが鳴った直後、入って来た人物を見て固まります。
「紫界堂…」
そう呟いたのは稚空。
この場では紫界堂聖ということになっているノインは、パンパンと手を叩いてまろ
ん達と同じように雑談していた生徒達に着席を促します。
「五十嵐先生からホームルームで自習とお伝えしていたかと思いますが、本日は私が
代わりに授業をさせて頂くことになりました。本当は世界史の教師の実習期間はとっ
くの昔に過ぎているんですけどね」
予めパッキャラマオ先生と打ち合わせていたらしく、授業の内容は前回の続きでし
た。
しかし、まろんと稚空の耳には、その内容は入って来ていません。
ノインが何かここで仕掛けて来るのでは。そう考えると、授業どころではない──
普段から授業など真面目に聞いていないという突っ込みはともかくとして──からで
した。
「日下部さん」
突然、紫界堂に声をかけられ、まろんは硬直します。
「今のところ、続きから読んで下さい」
「え、えっとえっと」
「234頁からよ」
慌てて、開いてすらいなかった教科書を捲るまろん。
都が囁いてくれたお陰で、何とか恥をかかずに済みました。
*
結局まろん達の懸念は杞憂に終わり、授業は何事も無く終了しました。その後、紫
界堂がそのままホームルームで伝達事項を伝え、その日の授業は終了となりました。
通常通りであれば、まろん達はそのまま部活に直行となるところですが。
「紫界堂先生がまろん達に用事って何かしら」
ホームルームの終わり際に、紫界堂はまろんと稚空に後で生徒指導室まで来るよう
に言っていたのでした。
「それはあれですよ。二人とも、紫界堂先生の授業全く聞いて無かったから注意する
んじゃないですか? 教科書も開いてなかったし、上の空でしたよ?」
「ああ、そうだったわね。じゃ、まろん、あたしは先に部活行ってるから。サボるん
じゃないわよ」
「はいはい」
*
生徒達があらかた帰ってから、まろんと稚空は二人並んで生徒指導室へと歩いて行
きました。校内からは生徒達のかけ声や斉唱、楽器の演奏音など、部活が活発に行わ
れていることを示す音がしましたが、まろん達が歩いている周囲には、殆どの生徒が
部活動に行ったか帰宅したかで、殆ど物音はありません。
「どうして簡単に行くって言ったんだ」
周囲に他の生徒達がいないことを前後左右と確認してから稚空は言いました。
「だって、あの場はああしか答えようがなかったし」
「何かの罠かもしれない」
「う~ん。それは何か違うような気がするのよね」
人差し指を顎に当て、上を見ながらまろんは言いました。
「何を根拠に」
「ノインには何度か助けて貰っているし、単なる敵とは違うような気がするの」
「俺にはそうは見えん」
「私に信頼されていないと知っているから、稚空も一緒に呼び出したんでしょ。まぁ、
何かあった時には期待しているから、稚空!」
そう言うと、まろんは稚空の背中をバンと叩きました。
「(ノインもまろんも、どうせ俺のことは戦力とは思っていないだろうが…)」
しかしながら、そのことを口にすることは出来なかった稚空。
それでも、何かあったらこの身に変えてもまろんを守り抜くと改めて決意するので
した。
(つづく)
う~ん、話が進まない(苦笑)。
では、また。
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