Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
Message-ID: <fdl90t$30g4$1@ccsf.homeunix.org>の下にぶら下げています。
(その1)は、Message-ID: <fdlb9p$5ob$1@ccsf.homeunix.org>から
(その2)は、Message-ID: <ffc19v$1psh$1@ccsf.homeunix.org>から
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それぞれどうぞ。
# あ、Message-ID:の付き方が変わってる。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その4)
●桃栗学園
学園に至るまでの間、悪魔によると思われる攻撃を何度か受けたものの、まろんの
障壁は都達にその事実を感じさせることも無く──多分──、それらを易々と跳ね返
しました。
自動的に攻撃は跳ね返すとは言うものの、やはり心臓には良くないとまろん、そし
て稚空は感じ、自然と急ぎ足となりました。
もっとも、チェリーを連れていたためにそれには限度がありましたが。
ところが学校に入ると、悪魔達の攻撃はおろか、気配までも消えました。
「気づいた? 稚空。悪魔が」
「ああ。気配が消えた」
丁度、都と大和が何の案件か話しているのを機会に、稚空とまろんは小声で囁き合
いました。
「どうしてかな?」
「紫界堂の奴が居るから、ここは良いってことじゃないか?」
「なるほど」
「だが、油断するな」
「判ってる。稚空こそ気をつけて。稚空はさ、私と違ってフツーの人なんだし」
前にもこんなことを言われたことを思い出し、ちょっと腹が立った稚空。
が、まろんの表情を見て少し考えを改めます。
「まろんもそうだろ。何でも一人で解決しようとするんじゃないぞ」
「……判ってる。ありがと」
と、やや寝不足のせいか、疲れた笑顔をまろんは見せます。
「ふ〜ん」
声に振り返ると、都が稚空とまろんをジト目で見つめています。
「どうしたんですか? 東大寺さん」
「ううん。何でも無い。あ…やば、急がないと、まろん!」
「あ、本当だ」
思っていたよりも時間が経過していたことで朝練に遅刻しそうになった二人は、稚
空と大和を置き去りに、部室へと駆けて行くのでした。
*
「今日はイギリスから来られたチェリー・ストーンさんが授業を見学されるザマス。
知っている者も多いと思うザマスが、チェリーさんは昨年、我が町を訪問された英国
親善大使の娘さんで──」
新体操部の朝練は、微妙に遅刻して怒られた他は何事もなく終了し、朝のホーム
ルームの時間。
パッキャラマオ先生は、チェリーをまろんのクラスの生徒達に紹介しました。
まろん達は教室の片隅で見学させてくれれば良い、とお願いしたのですが、先生は
正式にチェリーが高校を見学出来るように取りはからってくれたのでした。
「よろしくお願いします」
顔を真っ赤にして、教室の前で挨拶したチェリーは、先生の指示した空いている席
へと腰を下ろします。
「では、本日のホームルームは──、ああ、言い忘れていた。今日は私は昼から外勤
ザマス。午後の世界史の授業は自習にするザマスから、ちゃんと勉強しておくように。
それと日下部、東大寺」
「はい」
「部活のミーティングに遅れて来たので聞いてないと思うザマスが、夕方の練習も私
は来られないかもしれないザマスから、当番は忘れないように」
「……はぁい」
部活をサボっていた罰の掃除当番のことを忘れかけていたまろんと都は、渋々と言
った表情がありありで返事をするのでした。
●桃栗町の外れ・ノインの館
朝食兼会議は結局、昨晩の戦闘の報告と、総攻撃の前に御子側に対し、牽制攻撃を
実施する──子細は後ほど説明──の方針がノインから告げられ、散会となりました。
主立った者が帰ってしまった後、館の居間に残っていたミカサ、ユキとオットーに
珈琲のお代わりをエリスは置きました。
昨晩の戦いで仕事用のエプロンドレス──メイド服──を失ってしまったエリスは、
この日はアンから借りた服にエプロンをつけた姿でいました。もっとも、そのことを
面と向かって口にしたのは、ノインだけでしたが。
「口が堅い者ばかりを揃えているという話でしたが」
自分の前にカップが置かれてから、ノインはオットーに言いました。
もっとも、その口調に責める様子はありません。
「すまない。どうも、天使に術で昨日のことを喋らされたらしい」
「術に対抗する訓練は積んでいると思っていましたが」
「昨日、お嬢に殴られてのびていた連中に天使が治療と称して、術をかけたらしい。
あ、治療の方も完璧にしてくれたそうだが」
話す途中でユキの方を見ながら、オットーは言いました。
ああ、この人は私のことをまだ天使と思っているのだろうか。
オットーの様子を見ながらユキは思います。
「とにかく、オットー隊長がこのことを知らせてくれて良かった。おかげで、上手く
口裏を合わせられました」
「そうでしょうか…」
ノインの言葉に疑問を差し挟んだのはユキ。
一同が注目したので気後れしつつも、ユキは自らの疑問について話します。
「本当に、レイ様、ミナ様は私達の話に納得されたのでしょうか。とてもそう言う風
には見えなかったのですが」
ユキの言葉に、ノイン以外の全員が大小の差はあれど肯きました。
「まぁ、そうでしょうね」
皆の注目を全く意に介せず、ゆっくりと珈琲を飲み干してから、ノインはユキの疑
問を肯定します。
「ですが、二人はそのことに対して深くは追求しなかった」
「単に、怒りを抑えているだけなのかもしれません」
「可能性はあります。それで、お願いがあるのですが」
ノインに言われ、ミカサはやれやれという表情をほんの一瞬だけ見せます。
「判りました」
「まだ何も言ってませんが」
「レイ達の機嫌を直せば良いのでしょう」
「ミカサなら出来ると信じています」
「微力を尽くします。総力戦を前に、内部分裂は避けたいですからね。しかしその前
に、幾つか確認したい点があるのですが」
ミカサはそう言うと、幾つかの点についてノインに訊ね、その回答に満足すると、
ユキを連れて館を出て行くのでした。
*
「あの計画は、隊長自身が一番反対していたと思うんですがね」
ミカサ達が去った後で、何やら考えていたノインに声をかけたオットー。
「おや、まだいたんですか」
「酷い言われようですな」
何時ものノインらしい物言いかと思ったオットー。
しかし、ノインが本当に自分が残っていることに気づいていなかったという風であ
ることに気づくと、先程の問いかけを繰り返しました。
「確かに、ミカサから実施を提案されるとは思わなかったのですが」
「そもそも、何で隊長は計画に反対されていたので?」
「反対はしていませんよ。準備は進めていました。ただ…」
そこまで言って口を濁したノイン。
「聞かない方が良いということですかな?」
「魔界に住む人間は、色々と事情がありますから」
「しかし、ノイン様はそれを知っておられる」
「ええ、まぁ」
これ以上はこの件について引き出せそうにないと感じたオットーは、自身がこの場
に残っていた理由である、自らの要望をノインに伝えました。
その要求が完全とは言わないまでも、十分に叶えられたと感じたオットーは、今度
こそ館を後にするのでした。
●桃栗山の麓
「良く我慢してくれたわね」
会議の後、宿営に戻ってからミナはレイに声をかけました。
「いや。良く止めてくれた」
「レイ」
「この大切な時に、内輪もめをしている余裕は無いからな。だが…」
「不満なのね」
「当たり前だろう。先程の会議の様子からすると、ノイン殿もミカサ殿もオットー殿
まで、みすみす神の御子が逃げ出すのを見送ったのに相違あるまい!」
憤懣やるかたない。という表情のレイの震える拳。
その上にミナの手がそっと重ねられます。
「落ち着いた?」
「ああ。すまないな、ミナ」
ミナに礼を言うレイ。その表情からは怒りが消えています。
「ノイン殿の心情は判らない訳ではない」
「先代の神の御子とは色々あったそうだしね」
「だが、兵を率いるものとして、情を理に優先させることなど」
「でも、ミカサ隊長もオットー隊長も、それに従ったのよね?」
「これだから、人間は…」
と言いつつ、自分もかつては人間だったのだがなとレイは自分に突っ込んでいまし
た。
「なら、レイはいざという時に、情よりも兵理を優先するのね」
「無論だ」
「なら、必要があれば私でも見殺しに出来るかしら?」
「ば、馬鹿を言うな。そんなことは」
「殺して」
いつの間にか背後に回り込んでいたミナが、レイの首に両手を回し、つまりは抱き
ついた状態で囁きました。
「え!?」
「もしも目的の為に、私の命が必要ならば、貴方が私を殺して。敵の手にかかる位な
ら…」
「ミナ……」
レイが振り返ると、ミナの顔がすぐそこにありました。
そのまま、良い雰囲気──二人にとっては日常の出来事ではありますが──となり
かけたのですが、そうなる前に二人を呼ぶ声がありました。
「あの……、お取り込み中の所、大変申し訳ないのですが」
ノインの館を出てからミカサより先に空間を跳躍して宿営に戻って来たユキが真っ
先に向かったのは、レイの部屋でした。
ミカサの依頼もあり、二人の様子を見に来たのですが、少し声をかけかねる状況で
あり、機会を見計らっていたところ、このままではますます声をかけにくい状況とな
りそうだったので、思い切って声をかけることにしたのでした。
「ああ、取り込み中だ。後にしてくれないか」
「レイ!」
こんな状況でも慌てず騒がず、レイはユキを追い払おうとしました。
「しかし…」
「そう言えば私達、ユキと約束をしていたのでは無かったかしら?」
ミナはそう言い、ゆっくりとレイから離れます。
名残惜しいと感じていると、レイに感じて貰えるように。
「ああ。そうだったな。だが、今は…」
「今だからこそです、レイ様」
今はそれどころでは無い──正論ですが──約束をキャンセルしそうになったレイ。
慌ててユキはミカサからの言伝を言いました。
「先程の会議でノイン様が新たな作戦を実施すると言ってましたよね」
「そんなことも言っていた気もするな」
「ミカサさ…隊長が、作戦を立てる前に街を偵察に行かれるそうです。レイ様とミナ
様にも同行して欲しいと」
「そうね…。隊長の副官としては、同行しない訳にはいかないかしら」
突然、自分の本来の立場を思い出したミナが言いました。
「でも、朝の約束も当然実行するのよね?」
「はい!」
レイを置き去りに、ミナとユキの間で勝手に合意が成立し、そうなってはレイも不
承不承──見かけは──出かけることにせざるを得ないのでした。
●桃栗学園
午前中の授業の終わりを告げる鐘の音が響くと、まろんはチェリーを昼食に誘おう
と、腰を浮かせかけました。
「あの、一緒にお昼を食べに行きませんか? 食堂を案内しますよ」
するとまろんより先に、チェリーに大和が声をかけました。
「あ、私も!」
委員長にしては積極的だなぁと思いつつも、まろんも手を上げました。
「都も行くよね?」
「……うん。行くわよ」
考え事をしていたらしく、都の反応は一瞬遅れました。
「ついでだから、稚空も行く?」
「……俺はついでなのか」
小声で、稚空は呟くのでした。
*
いつもであればかなりの混雑となる学生食堂。
ですが、三学期になってからは三年生が来ない分空いています。
まずは、何を食べようかと、まろん達はケースの前で思案します。
「この学校は、給食ではないのですね?」
「う〜ん、高校は給食の学校はあまり聞いたこと無いなぁ」
「確か、こういう蝋細工のメニューって、イギリスには無いのよね?」
ケースの中に並べられた、定番メニューの食品サンプルを見ながら都はチェリーに
言いました。
「ええ。だから、お土産で買って行ったこともあります」
「お土産になるんだ…」
「何にしようかな…」
「まろん、朝ご飯抜きでしょう? しっかり食べないと」
「そうだねぇ」
う〜んと、腕組みをして考えるまろん。
その目はメニューに書かれたカロリー表示を見ています。
しかしながら、都がチェリーの手を引いて先に行こうとすると、まろんは慌てて後
を追いかけるのでした。
*
「お待たせ」
稚空と大和が先に確保してくれていたテーブルの一角。
まろん達はそれぞれ注文した昼食を持って戻って来ました。
「チェリーちゃん。ラーメン好きなの?」
コーンが山盛りで載っている味噌ラーメンを箸──正しい持ち方──で食べている
チェリーにまろんは聞きました。
「ええ。両親共に好きなので、たまに家でも食べてます」
「都、そんなので足りるの?」
都の前には、自分で自由に乗せられる白葱がてんこ盛りのかけうどんだけがあり、
日替わり定食ご飯小盛に、おまけでケーキまでつけているまろんとの差が目立ちます。
「今月、お小遣いがちょっとピンチなのよ。色々と散財しちゃったし」
「まだ月の初めだろう?」
と、突っ込みを入れたのは稚空。
「まぁ、色々とあったのよ」
「(枇杷高校での団体戦も遊園地も温泉もノインに捕まっちゃったことも、考えてみ
ればこの一週間の間に起こったんだよね)」
都が言う所の「色々」をまろんは思い出します。
「……………まろん、まろん」
「へ!?」
都に脇を突かれ、まろんは我に返ります。
「よだれ、よだれ」
「あ…」
ごしごしと口元をまろんは拭うのでした。
「一体、何を考えてたのよ」
都はまろんの耳元で囁きます。
「何って…、最近は“色々”あったなって。都と」
まろんがそう都に囁くと、都の顔色が瞬時に変化しました。
「馬鹿」
都はそう言うと、ぷいと横──要するに正面ですが──を向いて、うどんを食べ始
めます。
そんな都をニコニコと見ていたまろんは、二人の様子をじいっと稚空が見ていたこ
とには気づかないのでした。
(続く)
そう言えば、普通に学園ものとなったのは何年振りだろう……。
では、また。
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