Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
先週に書いてあったのですが、色々あって投稿が遅れました。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
Message-ID: <fdl90t$30g4$1@ccsf.homeunix.org>の下にぶら下げています。
(その1)は、Message-ID: <fdlb9p$5ob$1@ccsf.homeunix.org>から
どうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その2)
●オルレアン
ツグミの家での朝食後、途中動き出したバスを利用してオルレアンへと戻って来た
まろん達。
セルシアはツグミの家に残り、トキは山茶花家へ、アクセスはオルレアン周囲の警
戒のため、再度散って行きました。
守るべき対象は多いのに、あまりにも手駒が少なすぎる──そう考えかけて、天使
達は自分の駒では無いな、と自分で突っ込みを入れた稚空はこうも考えます。
「(いや、俺こそが彼等にとっての駒なのかもしれない)」
*
他の住民──特に都──に気づかれぬように、静かに家に戻ろう。
二人でそう言い合っていたのですが、その目論みはマンションの入り口で崩れ去り
ました。
「お帰りなさい」
「え…委員長!?」
大和に声をかけられ、まろんと稚空は驚きました。
オルレアンの入り口には都と眠そうな顔をしたチェリー。そして何故か委員長こと
大和までが待っていました。
「お帰りなさい」
「まさか、稚空と朝帰りだとは思わなかったわよ」
オルレアンの入り口付近にビニールシートが敷かれ、その上にはお菓子か軽食が入
っているのであろうバスケットと魔法瓶が置いてありました。
「そちらこそ、まさか委員長と朝からお茶会しているなんて思わなかった」
ジト目で見つめる都に、まろんは言い返しました。
すると都は表情を真剣なものに変化させて言います。
「馬鹿まろん。心配したのよ」
「都…本当に?」
「嘘じゃ! ぼけ〜!!」
「え〜!?」
いきなり態度を豹変させた都に、まろんは大げさにずっこけてみせました。
口先はともかく、都が真剣に心配していたことは判っていたからです。
だから。
「ただいま、都」
後ろを向いてしまった都に後ろから抱きついて、まろんは耳元で囁きました。
都はひょっとして泣いているんだろうか。
両親の離婚の報せを聞いて家を飛び出した自分を待っていた時のように。
そう想うと、何だか自分も泣けて来てしまうまろんなのでした。
●通学路
「それで、何であんた達までついて来るのよ」
慌ただしく支度をして、朝練へと向かうまろんと都。
……に加え、稚空と大和、更にはチェリーも一緒に登校していました。
「何でって、なぁ」
「酷いです東大寺さん。夜中に呼び出しておいて」
「全くだ」
「そう言えば、何で委員長と一緒だった訳?」
「た、単に待っているのが暇だったからよ」
都の顔が赤くなっていたように見えたのは気のせいだろうか。
そうまろんは思います。
「僕は暇つぶしの相手ですか」
「その通りじゃ」
「え〜」
都と大和の様子をまろんと稚空は微笑ましく見ていました。
もっとも、それを見て何を思うのかは二人で異なっていたのですが。
「ところで」
委員長をからかっていた都は、今度はまろん達の方を見ました。
「どうして稚空とまろんが朝帰りなのよ。さっきは深く突っ込まなかったけど。ツグ
ミさん家に慌てて出かけたのは嘘だった訳?」
「そうですよ。何だかまろんさんが大変だって聞いたのに」
何故か大和も都に加勢します。
「そ、それは…」
「それは?」
ジト目でまろんを見る都。
「俺が自分からツグミさんの家に行ったんだ。まろんのことが心配でな」
「え!?」
「まろんから行き先も何かあったらしいということも聞いていたし。都もそれは聞い
ていたんだろ?」
「ええ、まぁ」
「まろんには止められていたんだが、何時まで経っても戻らないんでな」
そう言う間にも稚空はまろんに目配せします。
「そうなの。稚空には来ないでって言ったんだけど。でも、稚空が来てくれて助かっ
たのも事実よ」
「何かあったのね」
「うん。実は、ツグミさんが倒れちゃって…」
まろんは、咄嗟にツグミが熱を出して倒れたというストーリーをでっち上げ、稚空
もそれに合わせました。
「……と言う訳なの」
「それでツグミさんは今は大丈夫なの?」
何を疑っているのか、都はジト目で言いました。
「う、うん。今は意識も戻ってるし熱も下がったし。私はツグミさんの側にいるって
言ったんどけど」
「ツグミさんが学校に行けって言ったんでしょ」
「どうして判ったの!?」
「ツグミさんらしい台詞だわ」
そう言うと、都はふぅとため息をついた、ように見えました。
「良い、まろん? 帰りに、ちゃんとツグミさんの様子を見に行くのよ」
都にそう言われたまろんは肯きつつも、何だかやけに物分かりが良いなぁと、逆に
不安となるのでした。
●桃栗山の麓・魔界遠征軍宿営
ユキの懸念とは異なり、レイとミナはあっさりとミカサが説明したその事実──せ
っかく捕らえたまろんをあっさりと逃がしてしまった──を受け入れました。
「話はそれだけだろうか」
「ああ。後はノイン様の館の朝食会で」
「了解した」
予想よりも遙かに短い時間で出て行ってしまったレイとミナ。
残されたユキとミカサは、顔を見合わせました。
「……もっと怒られると思ってました。天使の方々はそんなものなのでしょうか」
レイ達の反応の感想を述べたユキに、ミカサは驚きの目を持って応えます。
「え!? …何か」
「あ、いや。そう言えばユキは、正当悪魔族の一員だったなと思って」
「ああ、なるほど」
つい最近まで、ミカサは自分のことを堕天使の一員だと思っていたのだとユキは思
い出します。
「思えば、魔王様から、ユキの扱いについてお言葉を頂いた時点で気づいているべき
だった。君の本当の姿に最近まで気がつかなくて済まない」
「い、いえ、そんな…。あの、お茶入れて来ますね!」
本当は自分が正体を明かしていなかったのが原因なのに、ミカサから謝られてしま
い、気恥ずかしくなったユキは、慌てて部屋を出て行くのでした。
*
「随分あっさりとしているのね」
レイの部屋で、二人きりになるとミナは言いました。
「起きてしまったことは仕方が無いだろう。福助盆に返らず…と言うのかな。この地
の言葉では」
「それを言うなら覆水じゃないかしら」
「そ、そうか」
ミナに諺の誤りを指摘され、レイは、頬をぽりぽりと掻きました。
そんなレイにミナはすっと近寄ると、自分の口をレイの耳元に寄せ囁きます。
本当はそんなことをせずとも、「心の声」で語りかけても良い話ですが。
「本当は、自分でも作戦が気に入らなかったんでしょ? だから失敗に終わってほっ
としている」
「認めたくないものだな、その感情は」
そのような言い回しで、ミナの言葉をレイは肯定します。
「しかしミカサ殿の話通りだとすると、気になるな」
「そうね。その夜のうちに救援が来たということは、ノイン様の館の位置が敵に知ら
れている、ということではないかしら」
「うん。早急に防衛体制を整えなければ」
テーブルの上に広げられた地図。
その上には術で現在の部隊配置が描かれていました。
部隊の配置をシミュレーションしようとした時、扉が叩かれました。
扉を叩いたのは、療兵長──作戦のために必要な薬を調達した──でした。
「昨日は騒ぎがあったようですな」
開口一番、療兵長がそう言ったので、情報の早さにレイは内心驚きます。
とは言え、人族の部隊であれば最先任下士官に当たる療兵長であれば、それも当然
かと思い直しました。
「情報が早いな。私も先程聞いたばかりだ」
「第三中隊の連中に聞きました」
昨晩の歩哨の担当となっている部隊の名を療兵長は出しました。
頬に傷を持つ中隊長の顔をレイは思い出します。
「人族の者とも仲が良いのか?」
「ええ、まぁ、色々と交流がありまして」
兵達には兵達の事情があるのだろう。
言葉を濁した療兵長に、それ以上の追求はしませんでした。
「どんな話を聞いたのだ?」
「はい。まず、聞いた話の前に、報告すべきことがあります」
「何か」
「昨晩、中隊長殿達がお休みになられた後の話です。ノイン様のお屋敷の方角に霧が
出ました。明らかに人族の術で作られたものです。中隊には、一部の部隊に警戒配置
を行い、残りの部隊には霧の中に踏み込まないように命じました」
「私達にどうして報せてくれなかったの?」
報せられたらそれはそれで、困ったことになったと思うけど。
そう思いつつ、ミナは当然の疑問を口にします。
「実は…第三中隊が歩哨の番の時には、良くあることです。魔界での話ですが」
「どういうことだ?」
「どうも、霧に隠れて武器を用いた訓練を行っているようです」
「指定された訓練区域以外でか」
「そのようです。霧は訓練を隠蔽するためでしょう。霧には限定的ながら遮音効果ま
であるようなので、同士討ちを避けるために、中には踏み込ませないように命じてい
ます」
「それで良い」
療兵長の判断を肯定したレイは、話の続きを促しました。
「それで、霧が晴れてから斥候を出したのですが。これを」
療兵長は、服のポケットから何かを取り出して見せました。
「確か、これは…」
「薬莢です。これが多量に地面に落ちていたそうです」
「訓練でも出るものだろう」
「訓練時は回収しているので、多量に落ちていることはありません」
「実戦があった…のね?」
ミナの質問を肯くことで療兵長は肯定します。
「さもなければ、実戦さながらの訓練でしょうか。確認するため、私は第三中隊の宿
営に出かけたのですが」
「何かあったのか?」
「兵達が何人か、怪我をしたり二日酔いで苦しそうにしていました」
「二日酔いって…」
「で、少し治療してやったのですが」
「そんなこと、出来るのか?」
「人族の治癒術は、天界で我ら天使の習得する術では基本だと思いますが?」
「う…」
「レイ、そう言うの苦手だもんね」
「馬鹿」
「まぁ、そのついでに、その夜の状況について聞き出しました。まず、敵は天使2、
人族1。後に天使1が増援で来ています。トキとアクセス、セルシアのことですが。
人族は情報にあった名古屋稚空のことですな。一方、迎撃に当たったのは……」
療兵長の話は、ミカサから聞いたよりも詳細でした。
特に、初めて実戦投入されたという新型兵器──詳細については、どうしても聞き
出せなかった──に興味を惹かれましたが、障壁を破る程の威力は無いと知ると、当
面の脅威では無いと結論づけました。
「(脅威…?)」
そう感じるということは、やはりまだ自分は天界の一員でいるつもりなのか。
自分達を捨てたような、あの世界の一員に。
“レイ”
レイに手を触れ、ミナが心の声で呼びかけて来ました。
“ああ。大丈夫だ。ミナ”
そう呼びかけてから、レイは先程の説明で感じた疑問点について訊ねました。
「敵の突破を許してから、部隊を後退させたそうだが」
「はい。オットー隊長の命令で」
「損害が出たとか?」
「はい。そうではありません。手持ちの弾薬が無くなったからのようですが」
「再補給は容易だと認識しているが。それに、予備兵力があったはずだ」
「彼等の任務は、ある方向に敵を追い込むことにあったようです。その先に何があっ
たのかは判りませんが。ああ、この方向です」
地図に気づいた療兵長が指さした先には。
「ここには、何も無いはずよね?」
「そこに敵を追い込んで、待ち伏せをかけたか…」
「でも、神の御子が逃げたってことは、結局作戦は上手く行かなかったのよね」
「え!? 逃げた…ですか?」
ミナの言葉に心底驚いた、という表情を療兵長は見せました。
「何だ、知らなかったのか」
「はい。人族の者達は神の御子のことについては何も」
「そうか…判った。ありがとう。ああ、今の話については」
「判っております。そもそも、ご命令により正式発表までは神の御子を捕らえたこと
も部隊には伝えておりません」
療兵長が出て行ってから少しの間無言だったレイ。
心配になったミナが、恐る恐る話しかけてみようとした時です。
「……ノイン様は何を考えておられるのだ」
小声で、レイが呟きました。
ミナにはレイの気持ちが痛い程良く判ります。
「これも愛故か。しかし、それとこれとは話は別だ」
そう言うと、レイはノインの館に出かけるので支度すると告げました。
自分の部屋へと戻りつつ、今日の朝食会は荒れそうだ。
そう思うミナなのでした。
そしてもちろん、先程のユキとの約束などすっかりミナは忘れていました。
(つづく)
では、また。
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