DOCTOR WHO / Father's Day
「ドクター・フー」第8話「父の思い出」。ネタバレしまくり。
今回は、時間ものとしては超基本的な歴史改変ネタのお話。ある意味で
は「親殺しのパラドックス」というか、事実上、初代スタトレの「危険
な過去への旅」と同じネタです。ただし、パラドックスの扱い方という
部分では、スタトレのそれと比べても、かなりお子様向けな印象。
生まれてすぐに父親を亡くしたローズ。ひき逃げされて、誰にも看取ら
れずに死んだという父親を自分の腕で抱きしめたいと望み、ドクターと
ともに事故現場へ向かう。
しかし、実際に事故の瞬間に立ち会ったローズは、身体が硬直して何も
できず。もう一度同じ現場に戻ってやり直そうとするが、今度は気持ち
が先走って、ドクターの制止を振り切り、父親の命を救ってしまう。
歴史が変わってしまったと激怒するドクター。ローズと喧嘩別れして、
一人でTARDISに乗り込もうとするが、すでにそれはタイムマシンではな
くなっていた。
一方、ローズは父親とともに行動。若き日の母親から父親の浮気相手と
誤解されてみたり、2人の夫婦生活の現実を知って幻滅を感じたり。
そうこうするうちに、突然、異形の怪物が出現。街の人々を次々と消し
始める。ローズたちと合流したドクターは、なんとかTARDISを復活させ
て事態を打開しようとするが、作業が完了しないうちにローズたちをか
ばって犠牲となる。もはや世界の命運も風前の灯。
で、最後は、すべての事情を察知したローズの父親が、歴史の歪みを回
復させるべく、自らクルマの前に飛び込んでいく。わけですが。
まあねえ、最後の決着のつけ方については、導入部のあらすじを読んだ
だけで想像できるし、それはいいんです。でも、歴史を変えてしまった
ことが、なぜ世界の終わりにつながるのか。そして、それがなぜ異形の
怪物が人々を襲うという形で表現されるのか。すでに多くの人間が消え
ちゃったあとで、いまさら父親が死んだからって、どうしてすべてが回
復してしまうのか(具体的な描写はないけど、ローズとドクターの記憶
を除き、本当に何もなかったことになってるっぽい)。ローズが赤ん坊
の自分を抱き上げようとしたときの、「本来、同じ時間と場所に同じ人
間が2人いてはいかんのだから、あんまり近寄っちゃダメ」云々という
ドクターのセリフも、なんだか理屈がよくわからない。
先週の予告編でね、道端に佇むローズとドクター、の後方からその様子
を伺うローズとドクター、という映像を見たときには、わくわくしたん
ですけどねえ。実際の本編を見たら、2度目のほうのローズが歴史を変
えた途端、1度目のほうの一行は、霧のように消えちゃうし。
もっとも、その辺の矛盾というか疑問点については制作側も自覚してる
のか、ドクターと口論するローズのセリフに「どうしてドクターが歴史
に介入するのは良くて、自分が父親を救うのはダメなのか?」云々とい
うのがあったり(それに対してドクターは無言で立ち去るのみ)。
もしかしたら、シリーズの先のほうに出てくる並行世界ネタ(父親も再
登場)と何か関係があるのか。あったらいいなあ。でもないだろなあ。
スタトレの「危険な」との対比でいうと、最後に犠牲になる人間とそれ
を傍観せざるを得ない人間の関係が、スタトレのほうは浮気性の男の色
恋沙汰だけど、こちらは理想と現実のギャップとか乗り越えた家族愛、
という違いがあり。あと、スタトレのエディス・キーラー(だっけか?)
は何も知らずに死んでいくけど、ローズの父親はすべての事情を飲み込
んだうえで自ら決断する、という違いもあり。その辺は捨てがたい気も
するんですけどね。ただ、ローズの父親の決意については、単に「危険
な」式の後味の悪さを消すための措置に過ぎないかもしれないし。
あー、私、基本的にはこのシリーズ、楽しく見てるんですけど、今回の
エピソードだけはちょっと不満のほうが大きいです。次回からの2週連
続エピソードは、第2次大戦中の空襲下のロンドンを舞台としてヒュー
ゴー賞授賞、ってことなので、とりあえずそっちに期待。
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AMAUMA
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