Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
携帯@です。
2ヶ月程間が空いてしまいましたが、再開します。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
^L
★神風・愛の劇場 第176話「天使が見える乙女」(その1)
●桃栗町の外れ・某所
セルシアが光球で切り開いた視界は、再び霧によって閉ざされようとしていました。
そうなる前に、アクセスを先頭に、森の外へと駆けて行くまろん達。
その途中、何かにつまずき、転びかけたツグミ。
「ツグミさん!」
ツグミの手を引いていたまろんは、膝をつきます。
「乗って! 背負ってあげる」
「いや、待て」
稚空はそう言うと、自分でツグミを背負いました。
「よし、行くぞ」
ツグミを背負い、再び駆け始めた稚空はすぐに立ち止まります。
しかし、まろんは立ちつくしたまま、これまで来た方角を見ているのでした。
「まろん?」
「あ、ごめん。今行くから」
再び駆け出したまろんを見て、稚空も駆け始めます。
「(お、これは…)」
背中に柔らかい物を感じた稚空。
しかし、それを表情に出すことはもちろんしません。
もしも顔に現したら、まろんにぶっ飛ばされるでしょうから。
*
「行きは何時間もかかった気がしたんだがな」
森を出たところで腕時計を見て、呟いた稚空。
元来た道を帰り始めてから、未だ30分と経過していませんでした。
「あの、もう森の外ですか?」
「ああ」
「じゃあ、降ろして」
言われた通り、ツグミを背中から降ろした稚空。
ツグミの手を取ろうとした稚空。
しかし、その前にまろんが彼女の手をしっかりと握っていました。
「ツグミさん大丈夫? 怪我はない? 家まで送って行くから!」
ツグミに向かい一気にまくし立てたまろんは、続いて稚空をジト目で睨みます。
その様子はツグミには見える筈もありません。
しかしながらその雰囲気は察したのか、苦笑しているのでした。
「さあ、早く帰りましょう。イカロスのことも気になるし」
まろんにジト目で見られ、何となく腹が立ち見返した稚空。
そんな二人を置き去りにツグミは一人で歩き出し、まろん達は慌てて後を追うので
した。
●桃栗町・西部地区・ツグミの家
既にバスどころか電車も終電を過ぎた時刻。
天使達は、それぞれ周辺の警戒のために散り、まろん、ツグミと稚空は駅前に出て
酔客待ちのタクシーを拾い、ツグミの家に到着しました。
稚空は先に家に帰ってて良いとまろんが言ったにもかかわらず、二人が心配だと無
理矢理ついて来たのです。
本当は稚空に守られるどころか、逆に守る心配しないといけないんだけど。
それに本当はツグミさんと二人きりで話したいのに。
心の片隅では思っても、助けられた立場では言えません。特に後者は。
そのような訳で、心ならずも稚空の好意に甘えることにするまろんなのでした。
玄関の扉が開け放しなのではと心配していたまろん。
しかし、扉には鍵がしっかりとかかっていました。
「ツグミさん、鍵が…」
「あるわ」
ツグミはポケットの中から鍵を取り出して見せました。
「誰が鍵を…」
「イカロス!?」
扉を開けてすぐに、電気を点けずにイカロスの姿をツグミは探します。
「イカロス、何処にいるの?」
狼狽えたような声を上げるツグミ。
「イカロス〜」
玄関から上がり、電気を点けたまろんは、ツグミと一緒にイカロスを探します。
「あ、そうか」
そう呟き、階段を登っていったまろん。
それからしばらくして、彼女の声が響きます。
「いたよ! イカロス!」
それを聞くや、ツグミは目が見えないとは思えないスピードで──ツグミはこれが
普通だと稚空も知っていましたが──、階段を登って行きました。
少し遅れて、稚空も階段を登って行きます。
そして、ツグミが入って行った部屋──寝室──に入ろうとしたのですが。
「来ないで!」
稚空の顔を目がけ、枕が飛んで来ました。
「何だよ…」
稚空が中を覗き込もうとすると、今度は目覚ましが飛んで来ました。
避けるのは簡単でしたが、壊れたらと思い手で受け止めた稚空。
「危ないだろ!」
「良いから! 女の子の部屋覗くなんて最低!」
まろんの剣幕に、すごすごと退散する稚空でした。
*
セルシアが言うところの微妙に散らかった部屋──まろん達はその事を知りません
が──の床に、イカロスはいました。
……が、イカロスは身動き一つすることはありません。
「だ、大丈夫かな」
「……大丈夫。息はあるみたい」
イカロスに触れたツグミがそう言ったので、まろんも胸を撫で下ろしました。
「悪魔に眠らされたのかな」
「多分、それは違う」
「え!?」
自分の推測をツグミが即座に否定したので、反射的に聞き返したまろん。
「あ、何でもない。そうね、日下部さんの言う通りかも」
即座に、自分の言葉を打ち消したツグミ。
ですが、まろんはツグミが何かを隠しているのではともやもやとした気持ちとなる
のでした。
「ところで日下部さん」
「何」
「これ……日下部さんのでしょ?」
ツグミは、淡いピンク色のそれを手に取りました。
それを見たまろんは、頬を赤く染めました。
「ああ、そうそう、こんな所に。ツグミさんのはこっちにあるよ」
自分の足下にあった、稚空を追い出した原因となった黒いモノをまろんは拾って、
お返しとばかりにツグミの頬に触れさせるのでした。
「もう、日下部さんったら」
それを奪い取ったツグミ。
「ノインの仕業じゃ無かったんだ。でもどうしてここに?」
「それは……」
ある時点からの記憶が途切れているまろん。
実はそれはツグミも同様なのですが、何となく想像が出来てしまいます。
それでしばらくの間、二人は恥ずかしさで俯いてしまうのでした。
*
することも無いのでリビングのソファに座っていた稚空。
緊張が解けると、それまで忘れていた眠気がまとめて襲ってきます。
知らず知らず、稚空は眠ってしまうのでした。
再び稚空が意識を取り戻した時、身体の上には毛布が掛けられていて、リビングま
で味噌汁の良い匂いがしていました。
窓の外を見ると、未だ日は昇っていないものの、空が明るくなっていました。
腕時計で日付を確認した稚空。3月6日の月曜日か…。
日の出は何時だっけか?
いや待てよ、月曜日!?
「学校!」
「そうよ、稚空」
リビングの入り口に、エプロン姿のまろんが立っていました。
「エプロンしてるってことは、朝飯の準備か」
「まぁ…ね。昨日は助けに来てくれたし、朝食位、作ってあげる。もっとも、材料は
ツグミさん家のだけど。待ってて。すぐに出来るから」
そう言うと、再び姿を消したまろん。
ううむ。こういうオーソドックスなエプロン姿も良いなぁ。
……などと、稚空の脳内では確定事項となっている、まろんとの新婚生活を妄想し
ているうちに、朝食の用意が調いました。
この日の朝食は、まろんとツグミが二人で作ったものでした。
味噌汁を一口啜り、これはまろんが作ったのだろうと稚空は推測します。
訊ねてみると、まさにその通りでした。
「どうして判ったの?」
「いや、出汁の取り方がまろんの味だ」
「日下部さんって、いつも名古屋君のご飯とか、作ってあげてるんだ」
「いや、それはいつもって訳じゃなくて、その」
「冗談よ」
まろんの慌てぶりをどう解釈したものかと一瞬考えた稚空。
しかし、すぐに肝心なことを思い出しました。
「これ食べたら、すぐに家に戻らないと朝練間に合わないんじゃないか? 俺はまだ
余裕だが」
腕時計を見て、稚空は言いました。
「うん。だけど……」
横に座っているツグミの方を見たまろん。
「私なら大丈夫よ」
「でもでも、また悪魔に襲われたりしたら」
「それは…」
途端、暗い表情となるツグミ。
「そう言えば、どうして捕まったりしたんだ? まだ、聞いていないと思うが」
「えっと、それはその…」
「私が悪いの」
ツグミさんから熱い口づけを受けたら眠ってしまった。
流石に稚空にそれを口に出しては言えなかったまろん。
しかし、ツグミが即座に謝罪の言葉を口にして、落ち込んでしまいそうだったので
慌てます。
「その、ツグミさん家で出されたお茶に、悪魔が眠り薬を入れたみたいで…。ツグミ
さん、それを気づかなかったことを気にしてて」
「え…」
ツグミの反応から、稚空はまろんが嘘をついていると感じます。
しかしながら。
「要するに、まろんが悪いんだろ?」
「何ですって!?」
稚空に突然自分の所為にされ、むくれるまろん。
「何があったかとともかく、まろんが悪魔の気配に気づかなかったのが悪い。ツグミ
さんが気にすることは無いさ。ツグミさんは、普通の人間なんだから」
「あ…。うん、そうだね。稚空の言う通り、私が気づくべきだったよね。ごめん、ツ
グミさん」
すぐに稚空の意図を察したのでしょう。まろんはそう言いました。
「日下部さん」
「だから、この話はこれでお終い。ごめんね、気にさせちゃって」
そう言うと、まろんは稚空に向かって小さく肯いて見せたのでした。
「それで話は戻るんだけど、ツグミさんのことが心配。出来ればしばらく、側につい
ていてあげたいんだけど…」
「それは駄目! 新体操の大会の練習があるんでしょ」
稚空より先にツグミが反対しました。
「大体、まろんの家には今、チェリーが来てるだろ」
「あ、そうか。困ったな…。じゃあ、ツグミさんが家に…」
まろんの懸念は判るもののそれはあまりさせたくなかった稚空。
しかし、放置するのも確かにまずそうな気もします。
“心配は要りません”
稚空が結論を出しかける前に、別の声が稚空の持つ天使の羽根を通して割り込んで
きました。
「トキか?」
“はい。実は、もう窓の外まで来ています”
稚空がダイニングの窓の外を見ると、小さな姿となったトキとセルシアが浮かんで
いて、後者はこちらに向けて手をぶんぶんと振っていました。
「待ってて!」
慌てて駆け寄り、窓を開けたまろん。
すぐに、二人の天使はダイニングに入って来ました。
「お疲れさま、ご飯、二人の分もあるよ!」
「はいですです!」
「……ここ、ツグミさんの家だろ……」
あたかも自分の家であるかの如く言うまろんにすかさず突っ込む稚空。
「ありがとうございます。その前に、今の話ですが」
「どの話だっけ?」
「ツグミさんをどう悪魔から守るかという話だな?」
稚空の言葉に、トキは肯きます。
一方セルシアは、物欲しげに食卓の方を見つめていて、稚空を苦笑させます。
「取りあえず、飯を食ってる最中だから、飯を食いながらにしよう」
そう稚空が言った瞬間、セルシアは元の(どちらの大きさが元であるのか、稚空に
は判りませんが)姿に戻り、着席していました。
「セルシア!」
「ご飯、大盛りで良いかしら?」
「あ、ツグミさん。私がやるよぅ」
「トキも座れよ。取りあえず俺の椅子に。どこかから、別の椅子持って来る」
本当は要件だけ言ってすぐに周辺の警戒を継続したかったトキ。
しかし、セルシアがすっかり腰を落ち着け、ご飯を食べる気満々であるのを見ると、
ため息をついて稚空に譲られた椅子に座るのでした。
稚空は台所からスツールを持って来てそれに座り、総勢5名と、この家ではあまり
無い賑やかな食卓となりました。
「酸っぱいですです」
「それで、ツグミはどう悪魔から守るんだ?」
「一口で梅干し食べるからよ。でもこれ、本当に酸っぱいわね」
「簡単なことです。セルシアと私が交代でツグミ嬢を守ります」
「それ、ホームヘルパーの方から頂いたんです」
「すると弥白の方が無防備に」
「手作りなんだ。家ではスーパーでたまに買う位だからな」
「一人暮らしで家を空けることが多いと、梅雨時に干すのが大変よね」
「…大事な話をしてるんだ。ちょっと静かにしろよ!」
女性陣のおしゃべりに、ちょっと切れた稚空。
軽く咳払いして、トキは「大事な話」をもう一度繰り返しました。
「話は判ったわ。でも、稚空は良いの、それで?」
「そこで話が止まってた所だ。弥白がまた、悪魔に取り憑かれたりすると、色々と面
倒だからな」
本当にそれだけ?
……と、言いたげに、稚空をジト目で見るまろん。
「稚空さんの言う事にも一理あります。この前の遠距離からの即時攻撃を可能とする
武器。あれは情報を総合すると、弥白嬢が製作させたもののようですし。彼女が魔界
の協力者として取り込まれることがあると、色々と厄介です」
ここ2ヶ月程──そう、まだフィンが再臨してからそれだけしか経っていないので
す──の弥白の行状をまろんと稚空は思い出し、それぞれ肯きます。
「…なので、毎日彼女の様子は確認しに行きます。それに、彼女の周囲には、最近は
常に誰かがいる様子ですし。普段は一人で暮らしているツグミ嬢の方を優先的に警戒
すべきと思料します」
トキの提案に対して、少しの間、黙考した稚空を一同が注目します。
「判った。そのようにしてくれ」
「……ということで、セルシアをこの家に残しておきます」
「よろしくですです。ツグミさん」
ぺこり、とセルシアは頭を下げました。
なおも何か言いたげな表情だったツグミ。
ですが、やがて笑顔を見せ言いました。
「じゃあ、ご飯を二人分…いえ、三人分用意しないとね」
「あ、材料は家から持って来るから!」
「大丈夫よ。別にお金には困ってないから」
「そういう問題ではなくて…」
これで毎日ツグミさんの家に行く口実が出来る。
そんなことを考えて浮き浮きしていたまろんは、相談しなければいけない肝心なこ
と──ロザリオをノインに奪われたらしい──をすっかり忘れているのでした。
●久ケ原神社跡地 魔界遠征軍宿営
ノインの館から宿営に戻った後、様々なことがあって疲れたこともあり、すぐに就
寝してしまったミカサとユキ。
翌朝ユキが目覚めると、ミカサは既に起き出していて、人間界に来てから入手した
パソコンで何やら書き物をしている最中でした。
慌てて、お茶の準備をしようとしたユキに、ミカサはレイとミナを呼ぶように頼み
ます。あの二人は、もう起きている筈だからと。
呼ぶ理由については、ユキは訊ねません。
どちらにせよ、今日の朝食の際には明らかとなることなのですから、事前に話して
おこうということなのでしょう。
二人が捕らえて来た神の御子──日下部まろん──が、逃げ出してしまったという
ことを。
呼んで来ると言ってもレイとミナの部屋は、ミカサ達の部屋のすぐ側でした。
具体的には大隊本部付の副官であるミナの部屋はそもそもユキの部屋の正面から見
て左隣でしたし、レイの部屋も正面から見て右を曲がってすぐの部屋です。
どちらを先に覗いてみるかと一瞬考え、ユキはレイの部屋に先に行きます。
大抵の場合、レイとミナは夜はどちらかの部屋にいることが多いのですが──その
理由について、この宿営内で知らぬ者はありません──、どちらかというとレイの部
屋にいる確率が高いからでした。
レイの部屋の扉をノックしたユキ。扉をノックする習慣自体は、魔界ではあまり無
いものですが、やはりいきなり入り込んで、正視して良いものかどうか判断に困る光
景を目にしたいとは思いません。
ユキとしては、扉の外から要件だけ告げようかと思っていたところですが、中から
は「どうぞ」とレイの声で返事があり、ユキは扉をそっと──宿営内に軋む扉の音が
響かないように──開けます。
「あ…。ごめんなさい!」
慌てて、扉の外に出たユキ。
部屋の中には想像通り、レイとミナがいたのですが、二人は丁度、レイは青いシャ
ツを素肌の上に直接着ようとしており、ミナはミニスカートを履こうとしている最中。
ユキが慌てて通路に出て程なく、「どうぞ」と今度はミナの声があり、ユキは再度
部屋の中へと入ると、二人は普段の制服──戦闘服──では無く、人間界の服を着て
いるのでした。
二人の人間界の服装を頭の天辺からつま先まで、見つめたユキ。
「何だ、珍しいものでも見るかのように」
「あ、すいません。つい見とれてしまって」
言い訳半分、本音が半分でユキは弁解しました。
「クスクス。変なの、女の子同士なのに。それとも…」
「成る程。ユキも私達と同じか。こうして見ると、ユキも可愛いな」
そう言い、ユキの頬に触れようとしたレイ。
ユキは慌てて、壁際まで後退ります。
「何もそんなに慌てなくても良いのに」
「ユキに手を出したら、ミカサ殿に怒られてしまう」
そう言い、二人は笑うのでした。
「お二人とも、ひょっとして街にお出かけですか?」
「ああ。偵察も兼ねてな。天使達の残党の動きが気がかりだ」
“残党”この言葉に、昨日の騒ぎのことを二人は知らないのだと、ユキは再確認し
ます。
しかし、そのことを伝える前に、ユキは言いたいことがありました。
「あの、少し確認したいのですが」
「何か?」
「ひょっとして、そのシャツの下、何もつけて無いのでは?」
「そうだが、何か?」
見かけだけは人間のように振る舞っていても、やはりどこか足りない。
元々は人間の魂から作られた筈なのに。
それとも、趣味の問題なのだろうか?
「出歩かれるのでしたら、やはりブラウスの下にはブラをつけられた方が」
「……何だ、それは?」
「ほら、あの胸当てのことよ」
「あれは戦いの時に金具が当たるしつけるのが面倒だからな」
なるほど、それで、神の御子達も…。
「でしたら、気にならないのを教えてあげます。今日、ノイン様の館の朝食会が済ん
だら、私達と一緒に買いに行きましょう」
「私達?」
「……成る程、な。良いだろう」
「きっとですからね」
そう言うと、部屋の外に出て行ったユキ。
しかし、通路に出てすぐに肝心なことを言っていなかったことを思い出し、Uター
ンして、レイの部屋へと入っていくのでした。
(つづく)
微妙に最初からエピローグっぽいですが。
1クール位で終われば良いなぁ>絶対無理。
では、また。
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