私と私の息子が、初めて九州の田舎に里帰りしたときのことである。
実家の前庭に車を止めると、「お、お父さん。お父さんの実家は凄い」と
息子が興奮しながら大声を出すのである。息子の視線の先には白い
ニワトリが、顔をあちこちに向けながら、何羽も歩いていた。

息子はつづけて叫ぶのである
「紅い顔、白い羽根、あれは日本では絶滅した筈のNipponia Nippon だよ。
朱鷺だよー 」って。私は、父母にこのバカ息子を見せるのは忍びないと
思い、座席の下に隠し持っていた拳銃を取りだし、息子の眉間に銃口を充て、
射殺した。

久しぶりの田舎は私を癒してくれた。帰るとき、私の母が少し残念そうに
言った。
「こんどは、ニワトリを黒い色に塗っておくよ」
それを聞いて、私と父が笑い、最後に母も笑った。
私は、田舎にいると人は純朴になる、と思いながら、
実家をあとにした。

もうあれから何年も経つ、けれども、わたしの心にはその時のことが、
温かい思い出として残っている。人は、今や将来だけではなく、
過去の思い出の中にも、同時に、生きているのである。
ささやかな人生に幸あれ。

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123.あ〜い●◎∵太陽[]<>+P)==~|◇diagram×!#&ぶーんbottle☆:-tt??