非公式とはいえ「米朝直接交渉」があったのは何故か?
北朝鮮が核放棄を約束したわけでもないし米国が譲歩したわけでもあるまい。

元々安保理による制裁には中露も賛意を表したものの、これら二国並びに韓国
の場合、北を崩壊させるつもりなどないことは、ライス米長官が韓中露首脳を
歴訪したときに既に感得されていたのであり、国際制裁がどの程度効果があるのかは
疑問視されていた。
このまま時を過ごせば、北は本格的な「日本攻撃用の核装備」を完成しかねない。
さらに、米国中間選挙では、野党民主党が「ブッシュによるイラク戦争の失敗」を衝き、
加えて「米朝二国間の直接対話」を強力に主張するようになってきている。
それ故、米国が実戦部隊投入の中心となる恐れのある「武力制裁を是認する新たな
国連決議」は、米国の国内事情からいっても恐らく無理であろう。米国が積極的に
提案するわけにもいかず、仮りに日本が提案するとしても通過する見込みがない。
然らばといって、米国独自の武力行使は今の状況では到底考えられない。
以上が、米国にとっても悩みであったのではないか?

さて日本だが……、中ロ韓は北の崩壊を望んでいない、こうした状況からブッシュは
中国の今次外交の成果に屈服し、中国に感謝せざるを得なかった。既に米国自体が
中ロ韓に接近し出しているのである。これに北朝鮮が加わる。いつの間にか日本だけが
つんぼ桟敷だ。
“関係各国と緊密な連携を保ち……”なる日本政府高官のたびたびのこの発言、
なんとそらぞらしく、むなしいことか。

安保理決議の際には、“日本が国際社会をリードした”との自画自賛振りであったが、
あれは実は“痩せ馬の先走り”であって、中国は実に巧くこの動きを利用した。
「無駄ではなかった」との唐中国国務委員の言葉が印象深い。
中国は、米国に対しても北朝鮮に対しても一定の恩を売る計画を先読みしていたのでは
なかったか? だとすれば、中国外交の面目躍如たるものがある。

米国の核実験には、うんともすんとも言わない日本政府が、北朝鮮と聞くや否や、
アヒルのように口を揃えて喚きまくる。弱虫の遠吠えはやめにした方がよい。
ちゃんとした外交をやる事、それを精魂篭めて検討することだ。そうでもしなければ
六者協議はだらだら長くなるだけで実質を伴わない恐れが出てくる。