日中主脳会談が実現した。
 胡錦濤主席の思いは次ぎのようなものであったと思う。
 日本で来年参院選がある。民主党はこの選挙で勝って、政権交代に勢いをつけるべく、小沢代表を先頭に、自民党の弱みを攻め立てようとしている。その第一は「日中韓外交の氷結」問題である。安部が総理就任後の最初の訪問国として中韓を選んだのは、この弱み消さんがためである。
 これは、日米間に割り込んで、台湾問題に対する日本の姿勢を牽制したり、日本の米国一辺倒を修正させるにはよい機会である。これを利用しない手はない、ということなのであろう。
 これに対して、安部の狙いは、来年の参院選で、小泉遺産最大の負であの「中韓外交氷結」問題を、民主党から攻撃の的にされないようにするためである。
 こうして、両者の思いが違う、呉越同舟の会談は成立した。が、そこで、「靖国に行くか、行かないかを言いたくないと言うのは、周辺事情から許すし、しつこくは言わないが、今後靖国参拝をしたら終わりだよ」という「歴史認識」の釘を打たれたのは安部である。
 安部が所見表明で述べた「主張する外交」は、胡錦濤の先制で完全に封じられたのである。
 村上新八