イラク政府が樹立されて10ヶ月を迎えようとしているが、この間イラク人の死者は毎月増える傾向を示している。
これは、主としてスンニ派とシ−ア派間のテロの応酬によるものである。
 イラク政権が樹立された今年の1月時点で月に2000人近かった死者はこの8月には3000人を越えている。1月から8月までの時系列相関を計算してみると、相関係数は0.89と強い相関を示しており、このままだと12月には4000人を越えるものと予想される。
 この原因は、フセイン時代に圧政側に立っていた少数派のスンニ派が、フセイン崩壊後人口の6割を占めるシ−ア派から弾圧される側に逆転したこと、及びクルド、スンニ、シ−アと連邦制国家への動きが出てくるに及んで石油資源のないスンニ地域だけが資源の恩恵から切り離されることへの不満の二つである。
 現在は、この宗派間闘争にバトンタッチしたアルカイダは介入はしていないであろうが、米軍占領のイラクを混乱に陥れるというアルカイダの狙いが着々と達成しつつあるのを喜んでいるのであろう。
 その傍らで、クルド族は、その悲願である独立への色合いを濃くしつつある。イラクの国旗の代わりにクルド民族の旗を掲げるなどはその表れである。    
 米国内の世論は、米兵のイラク駐留に反対する声が大きくなり始めているが、ここで米軍が撤退あるいは縮小でもしようものなら、イラクの宗派間内戦が一挙に爆発することになることは間違いあるまい。
 ブッシュは自分が惹き起こしたこのイラクの混乱から逃げ出すわけにはゆかないのだ。 

 ここは、イラク政府が宗教指導者の助けを借りて武力衝突を押さえながら、石油利権を中心とするスンニ、シ−アの利害の調整をはかる方策を立案し、その実行を着実に進めるしかあるまい。
 米国は、石油利権はすべて手放し、イラク警察と軍の支援に退くのが賢明である。
 村上新八