昭和天皇が、A級戦犯を合祀した靖国神社を批判され、「もう靖国神社には参拝できない、それが私の心だ」と発言されたという、元宮内庁長官のメモが公表された。「私の心だ」と言われた一言の重みは大きい。 昔の子どもが、ものを選ぶときに「どっちにしようかな、天皇陛下の言う通り」と唱えながら選んだが、そのくらい戦前には天皇の大御心は絶対であった。今の時代でもこのメモの影響は少なくないと思われる。 それはともかく、このメモを見ると、昭和天皇は基本的には、平和主義者であったことが分かる。平和主義者だが、実質的には権限を行使できない立場にあったから、時の内閣や軍部の言いなりにならざるを得なかったのである。しかし、お飾りであったとは言え、自分の天皇時代にいくつもの大戦乱を起こし、多数の兵士が犠牲になったことに心を痛め、それを惹き起こしたA級戦犯を憎悪した心情は良く分かる。  これれに対して小泉は記者団に、「それは心の問題だ」と突き放し、自分の靖国参拝についての影響はない、と語ったが、昭和天皇の「心」と比べて、なんと見劣りのする卑しい「心」だと、言わざるを得ない。 村上新八