この事件は、慈恵医大青戸病院で、全く経験にないに等しい医師3人が、極めて難しいとされている内視鏡手術法で前立腺がん摘出手術を行い、術法が分からず時間が掛かったために、患者を死亡させた、という事件であった。
 医師は自分たちの手術経験実績を造るために、敢て未経験手術を敢行したものであるが、ひとりの人間を実験台にしたものである。こんなことは絶対に許されない。
 手術に承認を与えた担当部長は、指導医の立会いを条件としたが、担当医に拒否されたため、黙認したというが、これも許されないことである。
 さらに、事件発生後、大学側は、このミスを隠蔽するために、死因を「心臓麻痺」に偽装しようとしたのだが、これについては罪にさえ問われてもいないというのだ。
 しかも、判決は、執行猶予付きで、当の3人の医師は、既に診療に復帰しているのである。
 執行猶予をつけた理由は、担当医3人だけの責任に帰することは酷だからだという。これもおかしい。技術がないのに、人間を実験台にして手術をして死亡させた行為とこれを黙認した行為は別であり、この両方を厳しく罰するのが筋と言うべきなのだ。
 医療上の事件が多発している昨今、このようなおかしな判決は絶対になくさねばならない。今後の控訴審に、その是正を期待したい。
 村上新八