不安定の弧を促進させる米国の失態
1月の総選挙から半年になろうとしているのに、イラクの政権は一向にまとまらない。首相は決まったが、今一番重要な治安対策の衝に当たる内相、国防相は首相兼務のままの宙ぶらりん。シ−ア派、スンニ派、クルドの抗争をそのまま取り込んだような閣僚配分の内閣では、まとまるわけがなく、それに付け込むアルカイダ勢力が、標的を米軍から宗派間抗争煽動によるイラク混迷化作戦に切り替えて、テロを激化させて揺さぶりを掛けてきている始末だ。
パレスチナ問題では、イスラエルのオルメルト首相との会談で、ブッシュは、ハマスがイスラエルとの共存を認めない姿勢をとり続けるなら、占領地を取り込んだ境界の一方的設定も已む無しと認めるなどのパレスチナを刺激する発言をしている。これは、米国で中間選挙が近づいていることから、ユダヤ票取り込みのための発言であろうが、パレスチナ問題を根っこに持つイスラム過激派テロを鼓舞する結果になることは明らかである。
更には、米国のインドへの接近に不満を持つパレスチナは、非合法化していたイスラム過激派の政治活動復帰を容認するなど、反米姿勢を露わにし始めた。これは息をふっ返しつつあるアフガン国境のアルカイダ残党を勢い付かせることになるであろう。
イランの核開発でも、英仏独の努力にもかかわらず、その進展を抑制しうる有効な手だては打たれないまま、なのだ。
このような一連の米国の動きを見ていると、テロとの戦いと言いながら、米国のやることは、テロを刺激し、勢いを加速させるような結果を招いているのだ。これでは、米国の危惧する「不安定の弧」の不安定度は増すばかりである。
村上新八
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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