定年を迎えて、「おれは年金生活に入って、税金も払わなくてよくなったし、これからも政治に頼ろうとは思わないから、政治は関係ない」と言った人がいたが、これは大きな間違いである。
 所得税は払わなくても、すべての生活が政治と密着しているのである。上空を轟音を響かせて傍若無人に飛ぶ米軍のジェット戦闘機も、所得の多寡と関係なく払わされる消費税も、年金、介護、医療費、さまざまな公害、地球温暖化、鳥インフルエンザ、BSE牛肉から振り込め詐欺にいたるまでまですべて政治がらみなのだ。
 これに気が付かないというのは政治音痴もいいところだが、こういう政治音痴が日本には多すぎる。だから、自民党政治がいつまでものさばり、利権政治家、利権官僚が生き延び続けるのである。
 最近日本青年会議所(JC)が会員にアンケ−トをしたという。その一つの設問の一つに「小泉劇場で政治が身近になったか」というのがあった。
 「小泉劇場」とは、昨年秋の郵政民営化可否の国民投票だとした総選挙の際の、反対議員の非公認や刺客差し向けの選挙劇をいうのだ。これに対して「身近になった」とい回答が56%を占めたという。
 設問が低級なのは、会員レベルの低級さに合わせたものであろうが、これは「身近になった」というものではない。単に、面白がらせただけなのだ。面白がって、普段、選挙に無関心な人までが、投票所に足を運んで、刺客候補や自民党に投票した結果、投票率は飛躍的に向上し、自民党が大勝した、ということで、政治を身近に感じた云々とは関係ないのだ。
 郵政民営化の中身も本当の狙いも、その影響も分からずに投票したのが殆どだったと思う。
 政治を身近に感じない連中を面白がらせることに成功した、政治音痴日本の象徴的出来事が06年の総選挙だったのである。
 半世紀以上も自民党任せにしているから「政治は誰がやっても同じ」になるのは当たり前だし、そういう「あなた任せ」の政治意識が政治音痴を加速させるのである。この悪循環を断ち切らない限り、日本の政治は変らないであろう。
 村上新八